報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「市街地にて」

2022-10-26 20:25:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日17:19.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台市営バス仙台駅前バス停→地下鉄仙台駅改札外トイレ]

 リサ達を乗せたバスは、仙台市営バスでも屈指の長距離路線である。
 その為、途中で乗務員交替があるくらいだ。
 白沢車庫前バス停は、名前の通り、バスの車庫がある場所である。
 営業所としての機能もあるのか、そこで運転手が交替した。
 数分停車するというので、高橋は乗務員に断って、営業所のトイレを借りた。
 確かに、作並温泉元湯バス停でバスを待っていた時、トイレに行かなかったのは高橋だけである。
 高橋が戻って来て発車の時間になったバスは、再び国道48号線を東進した。
 途中に愛子駅前バス停があり、そこでここから本数の多くなるJR仙山線に乗り換えるという案もあったが、疲れていた愛原達はこのまま終点まで乗って行くことにした。
 尚、途中に愛子バイパスや仙台西道路などのバイパスがこの国道にはあるが、路線バスは旧道を走行した。
 国道の資格を剥奪され、県道に格下げになった旧道を進んだ。

〔「ご乗車お疲れ様でした。まもなく終点、仙台駅前、仙台駅前です。車内にお忘れ物、落とし物の無いよう、お降りください」〕

 バスは愛原が言った通り、青葉通の仙台市地下鉄仙台駅の乗り場近くの降車場に停車した。

 愛原:「おい、リサ。降りるぞ」

 リサは疲れてうとうとしており、被っていたピンク色のキャップを深く被っていたが、愛原に揺り起こされ、それで目を覚ました。
 作並温泉街では数えるほどしかいなかった乗客も、いつの間にかその数を増やしており、終点に着く頃には前扉に長蛇の列ができるほどだった。
 リサは帽子を浅く被り直すと、愛原の後ろに続いた。
 そして、手持ちのPasmoを運賃箱の読取機にタッチする。

 運転手:「ありがとうございました」
 リサ:「ど、どうも……」

 リサがびっくりしたのは、1130円も引かれたからである。
 まあ、路線バスで片道およそ1時間20分も乗っていたら、それくらいはするだろう。
 これがタクシーなら、およそ10倍の値段はすることを思えば、安いと言えば安い運賃だと思われる。

 高橋:「先生、荷物を回収しましょう」
 愛原:「そうだな。この地下鉄の中を通って、JRに行けるから、それで」
 高橋:「はい。……おい、リサ。付いて来いよ」
 リサ:「うん……」

 リサは体のだるさを感じていた。
 具合が悪いというよりは、疲労困憊といった感じだ。
 BOWとして体力に自信はある。
 だが、さすがに自分の過酷な人間時代の記憶が断片的にでも蘇ったことは、思いの外、苦痛であったらしい。
 それと、もう1つ……。

 リサ:「先生、トイレに行きたい」
 愛原:「あー、そうだな。地下鉄の駅にトイレがある。そこに行こう」
 高橋:「オマエ、近いな」
 リサ:「違うの……!」

 リサは眉を潜めて、自分の股間を指さした。

 愛原:「高橋」
 高橋:「あー、サーセン」

 JR仙台駅に向かう通路から外れると、改札外トイレがある。
 都営地下鉄もそうだが、こういう公営地下鉄の場合、市民への公衆トイレの意味合いもあってか、トイレが改札外にあることが多い。

 愛原:「俺もついでに行って来るよ。リサも、ゆっくりでいいからな?」
 リサ:「うん……」
 高橋:「先生、おりものが多い日ってのは、危険日ってことですから、気をつけた方がいいですよ」
 愛原:「う、うん……って、何で俺に言うんだよ!?」
 高橋:「パールにその逆を教えられた時、危うく騙されるところでしたよー」
 愛原:「いや、知らねーし!」

 彼女持ちの高橋が愛原にそんなことを言いながら、男子トイレに入って行く。

 リサ:(じゃあ、今は妊娠できないのか。でもなぁ……)

 リサは女子トイレに入ると、手近な個室に入り、デニムのショートパンツを下ろした。
 そして、手荷物の中からナプキンを取り出した。

 リサ:(妊娠したら、学校行けなくなっちゃうからなぁ……)

 我那覇絵恋とのLINEで、沖縄中央学園那覇高校では、既に1人の女子生徒が『危険な一夏の思い出』を作ってしまい、産婦人科に入院したとの情報が入った。

 リサ:「……!」

 1~2年くらい前までは、愛原との子供を妊娠するか学校に行けなくなるかを天秤に掛けて、それだけで興奮してしまい、何度もオナニーしたのだが、今は少しそれを冷静に俯瞰して考えられるようになったことに驚いた。

 リサ:(大人になったの……かな?)

 トイレから出た後で、洗面台の鏡を見てみたが、体型はそんなに変わっていなかった。

 リサ:(巨乳になれば、先生の秘蔵動画、『巨乳JKにぱふぱふされて何度もイカされた件について』を再現してあげられるのに……)

 こればかりはGウィルスやTウィルスではどうにもならない上、むしろGウィルスが成長を阻害していることに絶望した。

 リサ:「はぁ……」

 そして、深いため息をついたのだった。

[同日17:45.天候:晴 同県仙台市宮城野区榴岡 ホテル東横イン仙台駅東口2号館]

 JR仙台駅で荷物を回収し、そこから東口に出る。
 更に少し東進した所に、東横インが2つ建っている。
 旧館の1号館と、新館の2号館である。
 そのうち1号館にあっては、現時点でコロナ患者の療養施設になっている為、一般客は2号館を利用することになる。
 愛原が高橋とリサの部屋を予約したこともあり、愛原もホテルまでついてきた。

 愛原:「それじゃ、これが部屋の鍵だ。悪いけど、宜しくな?」
 高橋:「いえ、とんでもないです」
 リサ:「気にしないで」

 鍵はカードキーではなく、普通の鍵であった。

 愛原:「じゃ、俺はすぐ帰らないといけないから」
 高橋:「はい。お疲れ様っした!」
 リサ:「気をつけてね」

 高橋はリサに鍵を渡した。

 高橋:「飯はどうする?」 
 リサ:「うーん……。今日はいいや」
 高橋:「いいのか?」
 リサ:「疲れたから、もう寝る」
 高橋:「そうか」
 リサ:「お兄ちゃんは?」
 高橋:「俺は軽く飯食ってくるよ。で、ついでにちょっと打ってくる」

 高橋は右手でハンドルを回す仕草や、スロットのボタンを押す仕草をした。

 高橋:「オメーがいない間、ちょっとな」
 リサ:「うん、分かったよ」
 高橋:「いいか?今日はホテルから出るんじゃねーぞ?勝手にBOWが出歩いたとなっちゃ、真っ先に俺が怒られるんだからな?」
 リサ:「分かってるよ。お菓子とかなら、途中で買ったし。飲み物は、ここで買えるし……。ん?ホテルから出なければ、部屋からは出ていいんだよね?」
 高橋:「あ?どういうことだ?」
 リサ:「だから、ジュース買いにロビーに下りるくらいはいいよね?」
 高橋:「ああ、そんなことか。まあ、それくらいならいいんじゃねーか」
 リサ:「やった!それなら……」

 リサ、ロビーの自販機に向かう。

 高橋:「今買うんかーい!」
 リサ:「さっきのは、足りなくなったら、の話」
 高橋:「あのなぁ……」

 自販機で飲み物を買ったリサは、それからやっとエレベーターに乗ったのだった。
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“私立探偵 愛原学” 「市街地へ向かう」

2022-10-26 15:23:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月12日15:45.天候:晴 宮城県仙台市青葉区作並 仙台市営バス作並温泉元湯停留所→市営バスS840系統車内]

 現場監督に教えられた通りの道を行くと、迷わず作並温泉の温泉街に辿り着くことができた。
 そして、大きな旅館を名乗るホテルの向かい側に、仙台駅前行きのバス停があった。
 バス停のポールは2つ立っており、1つは山形県のバス会社が運行する特急バスの停留所。
 もう1つは、このバス停を起終点とする仙台市営バスの停留所だった。
 尚、市営バスの方は『作並温泉元湯』という名前であり、山交バス(山梨交通ではなく、山形交通)は『作並温泉』を名乗る。
 時刻表を見ると、どちらもあまり本数は多くない。
 市営バスにあっては、1時間に1本という状態だ。
 だが、市営バスの方は、少し待っていれば乗れるようである。
 もっとも、バス停に先客はいなかった。
 上り線の方には酒屋が建っており、この時間はまだ営業していた。

 高橋:「先生、ちょっと一服します」

 高橋はそう言って、タバコを取り出しながら喫煙所に向かった。
 酒屋ながらタバコも売っており、店先に吸い殻入れもある。

 愛原:「俺は何か買って来る」
 高橋:「酒っスか?」
 愛原:「なワケあるか!……昼抜きだったから、少し食べ物買ってくるよ。酒屋だから、つまみとか何か売ってるだろ」
 高橋:「さすがですね」
 愛原:「リサはどうする?」

 リサは自分の人間だった頃の記憶を断片的に思い出したショックで、嘔吐したくらいだ。
 食欲は……。

 リサ:「……食べる」

 リサのお腹がグウグウ鳴っているのが分かった。
 時間が経って、少しは落ち着いたのかもしれない。
 私は店内に入った。
 コンビニではないので、少し気は引けたが、リサはトイレも借りた。
 こういう時、リサの方がコミュ力が高かったりする。
 さすがに酒は買えないが、水やら麦茶やらを購入した。
 買った後で一気にガブ飲みしてしまったのは、それほどまでに喉が渇いていたということだ。
 それはリサも同じだった。
 高橋にあっては飲み物の他、タバコも買い足している。

 愛原:「バスが来るまでの間、ちょっと善場主任に連絡しよう」

 私はスマホを取り出すと、それで善場主任に連絡した。
 さすがに温泉街まで来れば、電波もバリバリ入っている。
 報告が長くなると思い、私は重要点だけをまず話した。
 やっぱり今回の探索で最重要点だったのは、日本アンブレラの秘密研究施設だろう。
 そして、そこに捕らわれていた少女達。
 カプセルの中に入れられ、液体に浸されているので、生きているかどうかは分からない。
 今現在の段階で警察が捜査中の、行方不明の少女達は間違いなくあの中にいると思われる。
 そんなことを話しているうちに、バスがやってきた。
 市街地まで片道1時間以上掛けて走る路線バスだが、車種は全国的に見られるごく普通の大型ノンステップバスである。

 高橋:「先生、先に乗って席確保してますんで」

 1時間に1本のローカル線ながら、交通系ICカードが使える。
 中扉から乗った高橋とリサは、手持ちのICカードを当てて、後ろの席に向かった。
 この時点で、ここから乗る乗客は私達の他に2~3人ほど。
 地元民と思われる老婆と、温泉客と思われる壮年男女の2人連れくらい。

 善場:「バスが出るのですか?それでは、続きはまた後ほどでお願いします」
 愛原:「申し訳ありません」
 善場:「いいえ。これはお手柄なんてものではありません。表彰ものです。すぐにBSAAに出動してもらいます。所長達も、どうかお気を付けて」
 愛原:「はい。失礼します」

〔「16時ちょうど発、仙台駅前行き、発車致します」〕

 愛原:「待って待って待って」

 私は電話を切ると、急いでバスに乗り込んだ。
 もちろん、カードをタッチすることは忘れない。

〔発車致します。ご注意ください〕

 私が乗り込んだのを気に、中扉は電車のようなドアチャイムを鳴らして閉まった。

 高橋:「先生、こっちへ」
 愛原:「ああ」

 私は1番後ろの席に誘導された。
 進行方向左側の窓側にはリサが座り、私がその隣に座って、高橋に挟まれるような形だ。
 バスはダイヤ通りに起点のバス停を発車した。

〔ピン♪ポン♪パーン♪ いつも、市営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスはS840系統、作並駅前、市営バス白沢車庫前、愛子駅前経由、仙台駅前行きです。次は作並温泉仲町、作並温泉仲町でございます〕

 バスの中は冷房が効いて涼しい。
 リサは酒屋で買ったつまみのビーフジャーキーや、サラミジャーキーを食べている。
 私も、アタリメを購入した。
 ところがこのアタリメ、何だか味がしない。
 ……まさか、私もついにコロナに感染!?
 ……なわけがない。
 Tウィルスに抗体を持つ者は、新型コロナウィルスにも抗体があるのだとアンブレラの資料に書いてあった。
 何しろ、同じ生物兵器繋がり、材料が同じという陰謀論が……ゲフンゲフン。
 要は私も思いの外、汗をかき過ぎて、体内の塩分が不足していたのだ。
 それで体が塩分を欲しがって、アタリメに含まれている塩分、つまりしょっぱさを感じにくくしてしまったのだろう。
 麦茶にもミネラルは含まれているが、これよりもスポーツドリンクの方が良かったか。

 高橋:「先生、駅に行って、荷物取って来ないと、ですよね?」
 愛原:「それもそうだな。これだったら、JRじゃなくて、地下鉄のコインロッカーに入れておけば良かったな」
 高橋:「そうなんですか?」
 愛原:「俺の記憶が正しかったら、このバス、終点の仙台駅前は、青葉通の地下鉄乗り場の前に止まると思うんだ。だから、そこからJRの駅まで行かないといけないという思いをするならな……」
 高橋:「あー、なるほど」
 愛原:「もっとも、ホテルに行くなら、ちょうど道のりなんで、けして無駄足というわけではない」
 高橋:「さすがですね」

 この2人が宿泊するホテルは、仙台駅東口を出た所にある。

 愛原:「宿泊代と食事代は俺が出すから、まあ、ゆっくりしていてくれ」
 高橋:「あざっす」
 リサ:「先生、今日の夕飯、一緒じゃないの?」
 愛原:「悪いが、今夜は集まって来た親戚達と夕食会があるんだ。それに出なきゃいけないんでね」
 リサ:「えー……」
 愛原:「東口にも食べる所とかあるから、高橋、リサに好きな物食わせてやってくれ」
 高橋:「了解っス。どうせこいつが食べるの、肉一択でしょうけどね」

 高橋はリサが持っているビーフジャーキーの袋を指さして言った。
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