報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「帰京の旅」

2022-10-06 20:25:19 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日11:07.天候:晴 静岡県富士市 JR新富士駅→東海道新幹線710A列車1号車内]

〔ピン♪ポン♪パン♪ポーン♪ 新幹線をご利用頂きまして、ありがとうございます。まもなく1番線に、11時10分発、“こだま”710号、東京行きが入線致します。黄色い点字ブロックの内側まで、お下がりください。この電車は、各駅に停車致します。グリーン車は8号車、9号車、10号車。自由席は1号車から6号車までと、13号車から16号車です。……〕

 通過線を最高速度で通過していた通過列車に対し、停車列車は時速70~80キロほどでやってくる。
 それでも、最後尾となる車両の位置で待っていると速く感じる。
 新富士駅にはホームドアが無いので、尚更だ。

〔しんふじ、新富士です。しんふじ、新富士です。ご乗車、ありがとうございました〕

 降りてくる乗客はいなかったが、予想通り、車内は空いていた。
 自由席の通り、自由な場所に座る。
 と、轟音を立てて通過列車が通過していった。
 私と高橋は2人席に隣り合って座り、リサと絵恋さんはその後ろ。
 栗原姉妹は私達の席の、通路を挟んで隣のまるっと空いている3人席に座った。
 まあ、この乗客の数からして、通路側に別の乗客が座ることは無いだろう。
 というか蓮華は、通路側に荷物や麻袋に入った刀剣を置いているし(今更だが、ちゃんと許可は取っている)。
 仕込み杖で許可を取ろうとしたら、却って却下されたらしい(左足が義足なので、本当の杖としても兼用するつもりだったという)。

〔「この電車は11時10分発、“こだま”710号、東京行きです。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 尚、復路の列車はN700Aである。
 こっちの座席の方が、しっくり来る感じではある。
 尚、この車両の場合、充電コンセントは普通車では窓の下。
 ホームから、発車ベルが聞こえてくる。
 東京駅では発車メロディだったが、新富士駅では発車ベル。

〔1番線、“こだま”710号、東京行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください。お見送りのお客様は、黄色い点字ブロックの内側までお下がりください〕
〔「ITVよーし!……1番線、“こだま”710号、東京行き、まもなく発車致します。……乗降、終了!」〕

 けたたましい客扱い終了ブザーの音がして、ドアが閉まるのは東京駅と同じ。
 ドアチャイムの音が聞こえて来て、ドアが閉まる。
 音色は在来線のそれは甲高く響くような感じだが、こちらはもっとソフトな響き方である。
 同じ2点チャイムでも、色々と違うものだ。
 エアーの抜ける音がしたかと思うと、インバータの音が響いて来て列車が発車した。
 復路のN700Aの方が、走行音が響く感じだ。
 列車は通過列車が最高速度で走行する本線へと進出した。

 高橋:「取りあえず、ミッション終了ですね」
 愛原:「まだだよ、高橋君。例の物を善場主任に渡してからだ」
 高橋:「報酬をもらうまでが仕事でしたね」
 愛原:「そういうことだよ」

 私は大きく頷いた。
 その時、私のスマホに着信が入る。
 善場主任からのLINEだった。

 愛原:「明日、主任が朝イチで事務所に来るらしい。帰ったら、報告書を仕上げよう」
 高橋:「事務所に行きますか?」
 愛原:「いや、書類の作成だけなら家でもできるから、取りあえずは帰ろう。元々日曜日は事務所も休みだし」
 高橋:「了解っス」

 事務所は朝9時に開けているから、そのタイミングで来るといった感じか。
 それなら明日は、少し早めに開けておくか。

[同日12:18.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅・東海道新幹線乗り場]

〔♪♪(車内チャイム。JR西日本車“いい日旅立ち・西へ”イントロ)♪♪。まもなく終点、東京です。【中略】お降りの時は、足元にご注意ください。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 新幹線は至って順調に走行している。
 品川駅を出ると、在来線と並行して走る。
 1964年、東海道新幹線開通の日、新大阪発の上り1番列車は、かなり余裕時分を持たせたダイヤ設定となっていたが、担当運転士が飛ばし過ぎた為、東京駅にかなり早着しそうになった。
 東京駅には定着を厳命されていた為、品川から先はかなりの徐行運転を行って時間調整を行い、その速度は山手線に抜かれるほどだったという。
 私は並走する山手線を見て、そう思った。

〔「15番線に到着致します。お出口は、左側です。お降りの際、電車とホームの間が広く空いている所がございます。お足元には、十分ご注意ください。……」〕

 東海道新幹線ホームの14番線と15番線は、他の東海道新幹線ホームと比べても湾曲している。
 隣のJR東日本新幹線ホームと並行していることもあり、『旧国鉄時代、東海道新幹線と東北新幹線が相互乗り入れしようとした名残』という噂もあるが、これはデマである。
 相互乗り入れ計画など、最初から無かった(構想はあったもよう)。
 これは東海道新幹線の列車本数が増大してホームが足りなくなった為、東北新幹線用のホームを東海道新幹線用に融通した名残というのが真相である。
 旧国鉄時代だからこそ、できたことだろう。
 もっとも、JR化後、北陸新幹線の開通に伴って、今度はJR東日本側のホームが足りなくなって、結局は増設することになるのだが。

 愛原:「2人とも、降りるよ」

 私は後ろの席に座るリサ達に声を掛けた。
 2人は仲良くうたた寝していた。

 リサ:「お……。もう到着?」
 愛原:「そうだよ。降りる準備しろ」

 この時、列車は既に有楽町駅の横を通過していた。

 リサ:「ん、分かった。サイトー……じゃなかった。エレン、もう降りるって」
 絵恋:「あ……はい」

 一方、栗原姉妹の方は寝てなくて、大石寺の売店(仲見世商店街)で購入したという本を読んでいた。
 機関紙や機関誌の類なら所属寺院でも手に入るが、それ以外の資料とかとなると、そういう所でしか手に入らないという。

 

〔とうきょう、東京です。とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました〕

 列車が湾曲したホームに到着し、乗客達がぞろぞろと降り出す。

〔「……15番線の電車は折り返し、12時33分発、“ひかり”643号、新大阪行きとなります。……」〕

 愛原:「こっちも暑いな!」
 高橋:「東京の暑さはパねぇっスね!」
 愛原:「なあ!」
 高橋:「涼しい先生の御実家に、早いとこお邪魔したいっス」
 愛原:「……仙台も仙台で、夏はクソ暑いんだよなぁ……」

 列車を降りた私達は、まずは八重洲南口改札に向かった。

 栗原蓮華:「愛原先生、お世話になりました」
 栗原愛理:「ありがとうございました」

 2人の姉妹は礼を言って、そこの改札口から外に出た。
 そして、都営バスの発着する八重洲南口の駅出口に向かったのを確認した。

 愛原:「それじゃ、俺達は別の駅に行こう」

 菊川に帰るには、都営地下鉄新宿線に乗り換える必要がある。
 まずは秋葉原駅に向かうことにした。

 リサ:「先生、お腹空いた」
 愛原:「ああ、分かった。アキバで何か食おうか」
 リサ:「おー!」

 私達は乗り換え改札口から在来線コンコースに出た。
 そこの自動改札機では特急券が回収され、乗車券だけが手元に残る。
 秋葉原駅では、そのキップを自動改札に突っ込んで出る形になる。
 私達は、3番線・4番線ホームに向かった。
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“私立探偵 愛原学” 「帰りの卯酉東海道」

2022-10-06 16:49:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日10:15.天候:晴 静岡県富士市某所 某ガソリンスタンド]

 チェックアウトをした後、私達は車に乗って、新富士駅を目指した。
 昨日立ち寄った市民プールやJAの販売所の前を通るコースを辿る。
 それから、国道139号線に入って、あとは南下した。

 愛原:「あっ、高橋。途中でガソリン満タンに入れないと……」
 高橋:「あ、そうですね」

 レンタカーはガソリン満タンにして返すのが原則だからだ。
 なるべく、レンタカーの営業所の近くが良い。
 そこはナビをセットしておく。
 1番いいのは、車を借りる時、営業所の社員に最寄りのガソリンスタンドを聞いておくことだ。
 私は、いつもこれを忘れる。

 愛原:「高橋、ENEOSのカード持ってたろ?そこの方がいいか?」
 高橋:「はい、そうですね。先生のカードは?」
 愛原:「俺のはdカードだから、多分、コスモ石油辺りだろう。いいよいいよ、オマエ、ポイント溜めとけ」
 高橋:「あざーっス」

 今日も天気は良いので、西富士道路にと入ると、富士山がよく見える。
 作者の御登山の時とは大違いっとw
 富士市内に入ると、ナビの通りのガソリンスタンドに入る。
 セルフ式であるが、高橋は慣れた様子である。

 愛原:「最近の車は燃費いいな」
 高橋:「そうですね。この車も、eーPowerですし」
 愛原:「なるほど。そうか」

 尚、支払いは私が現金で払った。
 もちろん、領収証を受け取るのは忘れない。

 愛原:「おっ、割引クーポン出たぞ。もらっとけよ」
 高橋:「あざーっス!」

[同日10:40.天候:晴 静岡県富士市 新富士駅レンタカー→JR新富士駅]

 ガソリンを入れた後は、レンタカーの営業所に戻ってレンタカーを返却した。
 この時も領収書は忘れない。
 一応、公一伯父さんから有力な情報を得た上、USBメモリーを頂戴したことはLINEで善場主任に報告しておいた。
 さすがに日曜日は休みなのか、返信はあったが、翌日の月曜日にこちらの事務所に来るという。
 それまで預かってて欲しいということだった。

 

 愛原:「次の新幹線まで、まだだいぶ時間があるな。何しろ、30分に1本だからな。ここで、お土産買って行くか」
 高橋:「姉ちゃんへの土産ですか?」
 愛原:「それもあるし、後は実家かな」
 高橋:「なるほど。それはいいアイディアです」

 私達は駅構内の土産物店を除いた。

 愛原:「キミ達は買わないの?」
 栗原蓮華:「私達はもう買ってあるので」

 蓮華さんは自分の荷物を指さした。

 愛原:「いつの間に?」
 蓮華:「大石寺の売店です。……あー、大石寺には仲見世商店街があって、それを私達は『売店』と呼んでいます。そこには、お土産屋さんもあるので」
 愛原:「何だそうか」
 蓮華:「そこに行けば良かったですかね?」
 愛原:「まあ、別にいいや」

 私達は自分達用の土産の他、善場主任用の土産も買った。
 実家には宅急便で送る。

 愛原:「次の列車は、名古屋始発のようだ。また、先頭か最後尾に乗れば空いてるだろう。2人はどっちがいい?」
 蓮華:「そうですね……。東京駅から都バスに乗るので、南側の方がいいですね」

 東京駅八重洲南口(バス停名は『東京駅八重洲口』)から、東武浅草駅経由の南千住車庫行きの都営バスが出ている(便によっては東武浅草駅止まりだったり、南千住駅行きだったりする)。
 本所吾妻橋駅の近くに住んでいる栗原姉妹は、往路も東武浅草駅前からバスに乗って東京駅まで来たという。

 愛原:「そうか。品川駅で降りて、そこから都営浅草線という手もあるぞ?」

 むしろその方が、徒歩距離が少ないと思う。

 蓮華:「いえ、バスの方が楽です」

 恐らく、階段の上り下りが路線バスの方が無いからだろう。
 地下鉄と並行して走る路線バスがお年寄りに人気なのは、偏にそれだという(作者の祖母談。あと、自治体によっては、地下鉄よりもバスの方が老人は無料で乗れるというのもある)。

 蓮華:「浅草駅から本所吾妻橋まで、そんなに距離もありませんから」
 愛原:「そうか」

 かなり訓練して慣れているとはいえ、階段の上り下りはゆっくりになる。
 それはいいのだが、鬼斬りがリサという人食い鬼の前で弱点を晒したくないのだろう。
 リサの奴、『そこを狙ってやる』みたいなことを言うものだから……。
 お土産を買った後は、改札口を通過する。
 作者の時みたいにキップが途中で詰まってエラーなんてことは無かった。
 コンコース内にあるトイレに立ち寄ってから、ホームに上がる。
 ホームに人は疎らで、後ろの1号車の方に向かって歩いて行く。
 すると、通過線を轟音を立てて通過列車が駆け抜けて行った。
 新富士駅の前後は線形も良いので、多くの通過列車は最高速度の時速285キロで通過する(上り列車の場合、次の三島駅停車の“ひかり”は減速して通過することもある)。
 東北新幹線だと、ホームの無い通過線を列車が通過する時も、その旨の放送がホームに流れるのだが、東海道新幹線では流れないようだ。
 新富士駅では停車列車よりも、通過列車の方が多い。

 愛原:「新幹線でも人身事故は発生するんだよ」
 高橋:「あー、何か聞いたことあります」
 愛原:「在来線の電車でも跳ねられたら一たまりも無いのに、ましてや新幹線だったら【お察しください】」
 高橋:「霧生市じゃ、クモの化け物のボスをブッ倒す時に、電車をぶつけましたよね」
 愛原:「ああ。あれはいい判断だった」
 蓮華:「さすが先生ですね」
 高橋:「もっと褒めて差し上げろ」
 愛原:「いやいや、あれは霧生電鉄の職員さんの英断だろ?」

 地下鉄のトンネルに元々巣くっていた普通の蜘蛛。
 それがTウィルスに感染し、巨大化したもの。
 哺乳類がTウィルスに感染するとゾンビ化するが、虫類が感染すると巨大化する。
 蜘蛛の場合は巨大化すると網を張らなくなるが、その代わりに獲物を見つけると、積極的に襲って来る凶暴性が増している。
 ……のだが、今から思えば、私達が戦った蜘蛛の親玉は、もともと網を張らないハエトリグモだったかもしれない。

 蓮華:「人食い鬼とは遭いませんでしたか?」
 愛原:「いや、遭わなかったなぁ……。俺達が遭った日本版リサ・トレヴァーは、そこにいる『2番』のリサだけだ」
 リサ:「他の連中は、Tウィルスがばら撒かれたと同時に脱走したからね。あれでも『1番』は、わたしの次に最後まで残っていた方だよ」

 『1番』が襲った栗原家は、霧生市の北部に位置していた。
 私達の行動範囲は南部のクライアントの家からタクシーで中心街に移動し、そこでバイオハザードに巻き込まれて、西の方へと移動している。
 北部には一切行っていない。
 その為、『1番』とも蓮華さんとも会わなかったのだろう。

 愛原:「俺の目が黒いうちは、そこのリサには一切人食いさせないから、信じてくれ」
 蓮華:「お願いしますよ」

 そんなことを話しているうちに、また通過列車が轟音を立てて通過線を走行して行った。
 さしものタイラントも、最高速度で走行中の新幹線にぶつけられたら一たまりも無いのではと思ったりもするが、実験なんかできるわけがない。
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