報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「一夜明けた民宿」

2022-10-04 20:16:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月31日07:00.天候:曇 静岡県富士宮市(旧・上野村)某所 民宿さのや2F201号室→2Fトイレ]

 枕元に置いたスマホのアラームが起床時刻を告げる。
 それで私と高橋は起きた。
 枕が変わると、抵抗無く起きられるものである。

 高橋:「先生、おはようございます……」
 愛原:「ああ、おはよう」

 公一伯父さんの話が終わった頃には、栗原姉妹を迎えに行く時間になっていた。
 高橋は、『迎えは自分が行くから、先生は先に寝てください』と言ってくれたので、御言葉に甘えることにした。
 しかし、私はすぐには寝なかった。
 伯父さんがくれたUSBメモリーの中身が気になったので、手持ちのノートPCで確認してみた。
 すると、中はカムフラージュと思われる無関係の動画や画像のデータが入っていて、その中に重要なデータが混じっているといった感じだった。
 そして、伯父さんが私に昨夜話してくれたのとは、また別の内容の物が入っていたのである。

 愛原:「迎え、ご苦労さんな?」
 高橋:「いえいえ、とんでもないっス。俺は先生の弟子ですから」
 愛原:「はは、そうか……」

 もっとも、私がいなかったことに、栗原蓮華はがっかりしたらしい。

 愛原:「取りあえず、顔洗おうかな」

 室内にはバスルームは無いが、洗面台はある。

 愛原:「先にトイレ行ってくる」
 高橋:「俺は先に顔洗わせてもらいます」
 愛原:「おーう」

 私が部屋を出て2階の共同トイレに向かうと、リサと絵恋さんに会った。

 愛原:「おっ、リサと絵恋さん、おはよう」
 リサ:「おはよう」
 絵恋:「おはようございます」
 リサ:「これからトイレ?」
 愛原:「まあな」

 2人の少女は、女子トイレから出て来たところを見ると、使用した後なのだろう。

 リサ:「先生、昨夜出掛けるなら言ってよー」
 愛原:「え?ああ、栗原姉妹の送迎のことか?まあ、大石寺への送迎だけだし、そのくらいでいちいち起こすこともないと思ってさ」
 絵恋:「あんな真夜中に御寺参りですか?」
 愛原:「丑寅勤行と言って、大石寺さんにとっては朝のお勤めに当たる時間なんだと。お坊さん達だけじゃなく、信徒も参加できるから、それであの姉妹は参加したそうだよ」
 栗原蓮華:「そういうことです。おはようございます」

 すると、栗原姉妹も部屋から出て来た。

 愛原:「朝の勤行は部屋でやるのか?」
 蓮華:「いえいえ、先生。今日の朝の勤行は、大石寺の丑寅勤行を以って終了しております」
 愛原:「そうなのか」
 蓮華:「丑寅勤行は御法主上人猊下様が導師を務められるのです。それに従って朝の勤行をしておきながら、改めて朝の勤行を行うことは、猊下様を否定する大変御不敬な行為なのです」

 雲羽:「尚、宿坊に宿泊している場合は、この限りではありません。宿坊宿泊者は、むしろ宿坊の朝勤行に参加することが望ましいとされています。何故なら、宿坊の御住職が朝の勤行をされているというのに、信徒がグータラ寝てるのは如何なものか?というものです。但し、宿泊したタイミングによっては朝の勤行が行われない場合もあります(御住職が不在の場合など)。その為、宿坊に宿泊される場合は、そこの御住職に確認されると良いと思います」
 多摩:「捕捉説明の尺、取り過ぎだよ~w」

 愛原:「なるほど。分かった分かった」

 私は適当に手を振ると、男子トイレに入った。
 用を足している間、トイレの外からは……。

 リサ:「先生を勧誘しようとしても、そうはいかないから」
 蓮華:「邪悪な鬼が、折伏を妨害したら、堕獄確定だよ?」
 絵恋:「リサさんは邪悪な鬼じゃありません!ヘイトスピーチはやめてください!」
 愛理:「私、その邪悪な鬼に襲われたんですけど……?」
 絵恋:「光栄に思いなさい!」
 蓮華:「アホかーっ!」

 という賑やかな少女達の声が聞こえてきた。

[同日08:00.天候:曇 同民宿1F大広間]

 朝の身支度が終わると、朝食を取りに大広間に向かう。
 そこは夕食の時と同じ席順で、壁掛けテレビが点いていた。
 今朝の朝食は、大きな鮭の切り身の塩焼きと、昆布の佃煮、味付け海苔と漬物、そして厚揚げのあんかけであった。
 御飯と味噌汁はお代わり自由。
 ペンションだと洋食が中心になるが、民宿だと和食が中心になるのはベタな法則通りか。

 リサ:「おかわり」

 尚、リサの食欲が1番旺盛なのは言うまでもないが……。

 蓮華:「すいません、お櫃ごとお代わりください」
 絵恋:「味噌汁もお願いしまーす!」

 体育会系の蓮華(剣道部)と、絵恋さん(空手部)も食欲は旺盛なのであった。

 愛原:「す、凄ェ……」
 高橋:「こいつら、昨日の夕食もお代わりしまくってましたよね?」
 愛原:「う、うん……」

 リサは変化の時にエネルギーを消費するので、太る心配はまず無いのだが、普通の人間であるこの2人は大丈夫なのだろうか?

 蓮華:「私は家が道場なので、そこで稽古をみっちりやっています。今日は休みですが、帰ったらまた筋トレくらいはすることなるでしょう」
 愛原:「そ、そうなの?体重が増えると、義足の方とか大変なんじゃない?」
 蓮華:「増え過ぎるとそうですが、そこは上手く調整してますので。ええ、この通り」

 蓮華さんは、制服のブラウスの裾を捲くった。
 ヘソが露わになるが、その腰回りは、確かに引き締まったものだった。
 剣道部員というよりは、パラスポーツのアスリートといった感じ。
 パラスポーツとしての剣道を、極めようとしているのか。

 愛原:「さ、さすがに引き締まってるねぇ……」
 リサ:「先生!わたしの方が引き締まってる!わたしのも見て!!」

 リサは対抗するかのように、自分のTシャツを捲り上げた。
 筋肉質ではないが、言うてそこまで脂肪が出ているわけでもない。
 普通の人間ならブヨブヨの脂肪が出るほどの食欲を満たしているわけだが、そのエネルギーは変化の時や人外クラスの身体能力に消費されていることが窺える。
 それで鍛えている蓮華みたいに筋肉質とはならないまでも、肥満という感じでもないわけだ。

 愛原:「あー、はいはい。家で何度も見てる」
 蓮華:「何度も!?先生、フケツです!!」
 愛原:「いや、だって、1つ屋根の下だし……」
 リサ:「体操服とブルマ以外の恰好をしろって言われたから、うちの学校の女子陸上部のユニフォームを着てあげた」
 蓮華:「ああ、あのセパレートタイプで、上はスポブラ、下はショーツになってるヤツか……」

 蓮華のように道着に袴、防具着用という重装備で試合に出る剣道部と、なるべく風抵抗を少なくする為に極力薄着のユニフォームになっている女子陸上部とは、確かに大きな差だろう。

 蓮華:「試合中は集中するから気にならないらしいんだけど、後で映像で観たりすると、少し恥ずかしいらしいね」
 愛原:「やっぱりなぁ……」
 蓮華:「布面積で言うなら、女子水泳部より少ないからね?」
 愛原:「あっ、そうだ!」
 蓮華:「夏は涼しそうだなぁって思うけど」
 愛原:「で、剣道部の夏は……?」
 蓮華:「いや、暑いなんてもんじゃないです。部活の後、水泳部に頼んでシャワー借りたいくらいです」
 絵恋:「ホントよねぇ……。空手部の道着も夏は暑くて……」

 いつの間にか話題は、剣道部と空手部あるあるの話題に転換した。
 ギリギリ、鬼斬りと人食い鬼とのバトルは回避できたようだ。
コメント
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