報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアー」 4

2022-10-15 20:22:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日15:30.天候:晴 宮城県柴田郡川崎町某所 プレハブ小屋]

 私達はプレハブ小屋の前に車を止め、その建物に近づいた。
 窓にはカーテンが引かれており、中の様子を伺うことはできない。
 昔からここにあったかのような佇まいだが、窓ガラスが割れてたりとかは無かった。
 一応、ノックをしてみる。
 が、反応は全く無かった。

 愛原:「よし。開けてみよう」

 私は保養所の金庫からゲットした鍵を使用した。
 すると、これで鍵が開いた。

 愛原:「よし。開けるぞ」
 高橋:「こん中に、何かいるんスかね?」
 愛原:「モールデッドくらい、いるかもしれんぞ?」
 リサ:「別にカビの臭いはしないけど……」

 モールデッドとは、特異菌に感染し、それが適合できずにクリーチャー化した人間のことである。
 バイオハザード事件においてはゾンビのような立ち位置であるが、出現場所と行動範囲が限られており、例えドアが開いていても、指定場所からは離れることができない為、そこから先は追跡できないという特徴がある。
 その点では、従前のゾンビよりも不自由なクリーチャーであると言えよう。
 但し、支配する側は楽だ。
 何しろ、その行動範囲を指定するのはエブリンなのだから。
 リサが感染者を使役するのと似ている。
 ここにいるリサの能力の最大の特徴は、自分が保有しているウィルスを感染させた人間を使役できるということだ。
 洗脳に近い使役の為、感染者達の意識ははっきりしている。

 愛原:「どうだ、中は?」

 閉め切っているせいか、中は薄暗い。
 また、通電していないせいか、電気のスイッチを入れても照明が点灯することはなかった。
 中は事務所のような感じになっていたが、何年も使われていないのか、埃だらけである。
 事務机の上には、埃被った書類や本がそのままになっていた。

 愛原:「金庫を探すぞ」
 高橋:「はい」

 仮設のプレハブ小屋の中だ。
 それはすぐに見つかった。
 早速、メモ用紙にあった番号通りにダイヤルを回す。
 すると、扉が開いた。

 愛原:「うあー、また鍵が入ってるよ……」
 高橋:「マジっスか……」

 一体、いつまで続くのだろう?
 小さな鍵とメモ用紙があった。
 メモには、『ここを出る前に神頼みせよ』とあった。

 愛原:「ん?神頼み???」
 高橋:「先生、あれを」

 高橋が指さした所には、神棚があった。

 愛原:「神棚か?ちょっと、脚立持って来てくれ」
 高橋:「はい」

 神棚に何かあるのだろうか?

 愛原:「ん?」

 どうやら宮形の扉の所に、鍵穴が付いているようだ。
 あれの鍵だろうか?

 高橋:「先生、持って来ました」
 愛原:「ああ」

 数段程度の小さい脚立だが、長身の高橋なら届くだろう。

 愛原:「高橋、あそこの扉に鍵穴があるのが分かるか?」

 私は懐中電灯で照らした。
 神棚の所は外から光が当たらない為、尚暗い。

 高橋:「ああ、分かります」
 愛原:「多分その鍵だと思うんだ。これで開けてくれないか?」
 高橋:「分かりました」

 高橋は鍵を受け取ると、脚立を上った。
 案の定、高橋の身長なら神棚に手が届いた。
 ていうか、とても余裕で、あれなら私でも届いただろう。
 で、金庫の鍵は、やっぱり神棚の鍵だったらしい。
 開けると、普通は御札が入っているはずだが……。

 高橋:「先生、変な紙が貼ってあります」
 愛原:「そうだろう。それは神宮大麻と言って、伊勢神宮の御札……」
 高橋:「先生、紙の裏に何か書いてあります」
 愛原:「って、剥がすな!この罰当たりが!……って、ええ!?何だって!?」

 私は脚立に乗ったままの高橋から、御札を受け取った。
 表には『天照皇大神宮』と書かれていたが、裏には、次の行き先が書かれていた。

 愛原:「結局、次の場所かーい!」
 高橋:「でも先生、何かボタンがあるんスけど?」
 愛原:「ボタン!?」
 高橋:「赤いボタンです。押してみていいっスか?」
 愛原:「あ、ああ」
 高橋:「ポチッとな」

 高橋がボタンを押すと、ガコンと床板が下に開いた。
 まるで落とし穴だ。

 愛原:「何だ、ここ?」
 高橋:「行ってみますか?」
 愛原:「うーむ……」

 下に下りるには、梯子を使うようである。

 愛原:「ちょっと待ってろ」

 私は一旦小屋から出ると、車のハッチを開けて、ロープを持って来た。

 愛原:「梯子が壊れて落ちないように、命綱を着けておこう」
 高橋:「いいアイディアですね」
 愛原:「よし。俺がちょっと行って来る」

 私は腰にロープを巻き付けた。

 愛原:「よし。行って来る」
 高橋:「お気をつけて」

 私はヘルメットを被り、そこにヘッドランプを付けて梯子を下りた。
 その下は、石造りの地下室があった。
 しかも通路があって、その先に進もうとすると……。

 愛原:「うあー……。水が溜まってる」

 水は濁っていて、深さは分からない。

 愛原:「これは……無理だな」

 私は首を傾げて、これ以上先に進むのを諦めた。
 だが、これもアンブレラの施設なのだということは分かった。
 何故なら、水が溜まり始めている辺りの壁にアンブレラの社章がペイントされていたからだ。

 愛原:「これも主任に報告だ」

 私はデジカメで、ここの空間を撮影した。

 愛原:「ん?」

 すると、水が溜まっている向こうから、何か聞こえた。
 あいにくと、通路は長いのか、ランプで照らしても奥の方は闇に包まれてよく見えなかった。


 愛原:「何かいるのか?」

 その音は、何かの雄叫びのようにも見えた。
 それが聞こえてくる度に、水が波打つから気のせいではないことが分かる。

 愛原:「何かマズいかもしれない。一旦、戻ろう」

 私は梯子に手を掛けた。
 そして、上ろうとすると、水をバシャバシャと掻き分ける音が聞こえて来た。
 水は案外、浅かったのだろうか?
 それとも……。

 高橋:「先生、どうしました!?」
 リサ:「な、なに?この声……」

 リサの長く尖った耳は、聴力も鋭いのだろう。
 水たまりの向こうから聞こえてくる雄叫びが、しっかり聞こえてくるようだ。

 愛原:「何かヤバそうだ!一旦、戻る!」
 高橋:「は、はい!」

 私は一気に梯子を上った。
 最後の一段まで来たところで、高橋とリサが一気に引き上げてくれた。
 そして、上から梯子の下を照らすと、ゴリラの腕のような物が見えた。

 愛原:「何だ、あれは?!」
 リサ:「ネメシスか何か!?」

 ネメシスのようにも見えたが、もっと違う……とにかく、巨人とも言える化け物だった。
 それが私達を見上げて雄叫びを挙げている。

 高橋:「……の野郎!」

 高橋はマグナムを構えた。

 愛原:「待て!ヘタに攻撃しない方がいい!」

 私は上からカメラを構えて、その巨人を撮影しようとした。
 1枚目のシャッターを切ったところで……。

 リサ:「先生、危ない!」

 リサが私を引っ張った。
 と、巨人が腕を伸ばして私を掴もうとした。
 リサに引っ張られなかったら、掴まれていたかもしれない。

 高橋:「やっぱり攻撃します!」
 愛原:「いや、ここは退散しよう!高橋は車を準備してくれ!」
 高橋:「わ、分かりました!」
 愛原:「俺は扉を閉める!多分、もう1回ボタンを押したら閉まるだろう!」
 リサ:「私は上がって来れないようにする!」

 私は脚立に向かった。
 化け物は床を掴んで、地上に上がろうとしている。
 リサが化け物の腕を、自慢の長くて鋭く尖った爪で引き裂いた。
 そして、化け物の腕が再び地下に戻ったのと同時に私はボタンを押した。
 案の定、グググと引き上がる扉。
 しかし、その間を化け物の腕がまたぬって這い出てくる。

 リサ:「出て来るな!気持ち悪い!」

 リサはまた爪で化け物の腕を引き裂く。
 だが、化け物は放そうとしない。

 愛原:「放れろ!」

 私は腕に向かってショットガンを発砲した。
 そのおかげで、やっと化け物は手を放した。
 そして、私は床板が閉まるのを確認した。
 閉まればロックが掛かるらしく、試しに床板を踏んでみたが、開くことはなかった。

 高橋:「先生!早くこっちに!」
 愛原:「おう!」

 私は脚立を持って、建物から出た。
 そして、それを車に中に積み込むと、ハッチを閉めた。

 愛原:「急いで離脱してくれ!」
 高橋:「分かりました!」

 高橋は車を発進させた。

 愛原:「取りあえず、あの渓流釣り場まで行けば何とかなるだろう」
 高橋:「はい!」

 あの化け物が地上に現れたりしたら、ここから最も近い人の集まる場所である渓流釣り場は危険に晒されることになる。
 だから急いで、主任に連絡する必要があった。
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“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアー」 3

2022-10-15 15:13:01 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日12:00.天候:晴 福島県福島市飯坂町 日本アンブレラ専用保養施設“雨傘園”]

 金庫を開けると、中にはまたもや……。

 愛原:「また鍵か!?」

 再び鍵が1つと、メモが入っていた。
 メモには、次の行き先が書かれていた。
 その住所と、そこに新たな金庫があるのだろう。
 そして、その金庫はダイヤル式のようだ。
 その解錠番号が書かれていた。

 高橋:「こ、今度はどこですか?」
 愛原:「再び宮城県に戻る」
 高橋:「マジっスか……」

 私は項垂れた。
 次に行く場所にも何らかの敵がいて、やっと金庫を開けたら、また別の鍵が入っているというオチだったらどうしようかと……。

 愛原:「と、とにかく出よう。事の成り行きを、善場主任に報告するんだ」
 高橋:「分かりました」

 私達は建物の外に出た。
 建物内も蒸し暑かったが、外は外で夏の日差しが照り付ける。
 駐車場に止めていた車も、灼熱の地獄になっていた。
 すぐに高橋にエンジンを掛けてもらい、エアコンをガンガン入れてもらう。
 まだ暑い車内にいながら、私は善場主任に電話を掛けた。
 祝日ではあるが、主任は事務所に出勤しているようだ。

 愛原:「……というわけで、また鍵とメモが入っていたんですよ」
 善場:「分かりました。しかし、これで所長方の探索した建物が、日本アンブレラの施設であったことは確定したわけですね」
 愛原:「その通りです」
 善場:「お手柄です。後ほどBSAAに調査してもらいます。他にも何か見つかるかもしれません」
 愛原:「はい。私達は、次の場所に向かおうと思います」
 善場:「どうか、無理はなさらないでください。費用は後ほど請求して頂ければ、お支払い致します」
 愛原:「ありがとうございます」

 私は電話を切った。

 高橋:「すぐに向かいますか?」

 ペットボトルのお茶をガブ飲みした高橋が言った。

 愛原:「いや、ちょっと待て。まずは、体をきれいにしよう」
 高橋:「?」
 愛原:「ここに来る途中に、共同浴場があっただろ?そこに寄って行こう」
 高橋:「一っ風呂浴びるんですね」

 高橋は笑みを浮かべた。

 リサ:「先生、お腹空いた」
 高橋:「オマ、空気読めや」
 愛原:「牛串食べただろ。……あー、まあ、腹も減るか」

 リサはリサで、子グモを相手に戦ってくれたのだ。

 愛原:「風呂に入ったら、何か食べよう」
 リサ:「おー!」
 愛原:「まずは風呂。汗臭くてたまらん」
 高橋:「俺は先生の汗、好きです!」( ー`дー´)キリッ

 自称LGBTQのGだが、事実上はBの高橋。

 リサ:「Me too!」
 愛原:「俺が嫌なんだよ!さっさと行けや!」
 高橋:「は、はい!」

 高橋は車を走らせた。

[同日13:15.天候:晴 福島県伊達郡国見町 東北自動車道下り線・国見サービスエリア]

 共同浴場で汗を流し、服を着替えた私達は再び東北自動車道に乗り、国見サービスエリアに寄った。
 ここで昼食を取ることにする。
 リサは黒Tシャツから水色のTシャツに着替えている。

 愛原:「福島に来たなら、やっぱ喜多方ラーメンだろ」
 高橋:「そうですね」

 尚、ここではステーキなども売っており……。

 リサ:「前沢牛ステーキ……」

 ステーキに目が行ってしまった。
 そのステーキのお値段、5000円也!

 愛原:「ご、午前中、牛串食べただろ!せっかく福島に来たんだから、名物食べないと!」
 高橋:「そうだぜ!空気読めや、ゴルァ!」
 リサ:「それもそうか」

 リサ、コロッと気を変える。
 あー、良かった。
 これで午前中、牛串食わせてなかったら、ステーキに有りつくまで駄々こねていたかも……。

 愛原:「喜多方ラーメンにしよう」
 高橋:「冷やしラーメンもありますよ?」
 愛原:「ラーメンは熱い方がいい」
 高橋:「なるほど」
 リサ:「肉盛りラーメン、麺大盛り」
 愛原:「ああ、いいよいいよ」

 前沢牛ステーキを注文されるより、ずっとマシだ。

 愛原:「ラーメンを頂きます」
 リサ:「写真に撮って、エレンに送る」
 愛原:「それはいいな」
 リサ:「沖縄に来てってうるさくて……」
 愛原:「それは大変だ」

 来年の修学旅行、どこに行くのだろう?

 高橋:「それより先生。次の行き先なんですけど……」
 愛原:「うん。今度は林道の奥みたいだな」
 高橋:「今度は今度で、何かありそうですね。それこそ、ゾンビだらけの洋館とか」
 愛原:「アホか。そんなものあったら、日本じゃすぐにバレるよ」

 とはいえ、やっぱり何らかの廃墟があるのではないかと思うのだ。

 愛原:「日が暮れる前に帰るようにしよう」
 高橋:「ここからなら、1時間ぐらいで着けるっぽいですね」
 愛原:「ああ」

 で、またどこかの鍵とかメモとか入っていたら、また明日にしよう。

[同日15:00.天候:晴 宮城県柴田郡川崎町某所 プレハブ小屋]

 昼食を終えた私達は、再び車に乗って高速道路を北上した。
 そして宮城県に戻り、北上を続けると、途中で山形自動車道との分岐点である村田ジャンクションに差し掛かる。
 ここから山形道に入り、最寄りのインターである宮城川崎インターで高速を降りた。
 このインターは国道286号線(通称、ニーパーロク)の川崎バイパスと接続しており、これの下り線を西進する。
 国道286号線も、改良が進んでいる道路であり、所々に短い新道や新橋がある。

〔この先、左方向です。続いて、斜め左方向です〕

 高橋:「え?え?」
 愛原:「まずは左側の旧道に入るんだ」
 高橋:「は、はい」

 左に曲がると国道の旧道があり、旧橋がある。
 いずれも1.5車線ほどの幅しかなく、大型車同士のすれ違いは困難だっただろう。
 この旧橋、途中に分岐があって、真っ直ぐ進めば旧国道で、左に曲がると林道である。
 ナビは、ここに入れと言っているのだ。
 橋自体変わった構造だが、広島市にある相生橋(米軍の原爆投下の目標となった橋)を小さくした物だと思えば良い。
 但し、広島市の物はT型だが、こちらはY型である。

 高橋:「先生、もしかして御存知で?」
 愛原:「さっきから渓流釣りの看板が出てるだろ?」
 高橋:「ええ」
 愛原:「釣り好きの父親に、子供の頃、よく連れてってもらったよ」
 高橋:「そうだったんですか!」
 愛原:「……そ、そういえば公一伯父さんもたまに一緒に来ていたんだが、何故だか伯父さんは釣りをやらず、単独行動をしていたな……」
 高橋:「その単独行動の理由が、これから行く所にあるんですね?」
 愛原:「……だといいがな」

 舗装は途中で無くなり、いかにも林道といった砂利道になる。
 また、道幅も狭く、渓流釣りの客の車とのすれ違いに苦労させられる。
 こういう時、軽自動車やコンパクトカーだとやり易い。
 しかし、それも渓流釣りの駐車場を越えるまでだった。
 そこから先は、全く車が無くなった。

 愛原:「うへ~……大丈夫かな」
 高橋:「何か、いきなりハンターが飛び掛かってきそうですね?」
 愛原:「だったらとっくに、さっきの渓流釣り場が大変なことになっているから、それは無いだろうが……」

 しかし、アメリカの片田舎の農場で起きたバイオハザード事件の舞台のような雰囲気は出ていた。
 今度はウィルスではなく、特異菌だったりして……。
 そんな雰囲気の中、車は進んだ。

〔目的地周辺です。音声案内を終了します〕

 林道はまだ続いていたが、辺りを見回すと、何らかの工事関係の物っぽいプレハブ小屋があった。
 まさか、あそこなのだろうか?
 人の気配は全く無いのだが……。
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“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアー」 2

2022-10-15 12:01:51 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日11:30.天候:晴 福島県福島県飯坂町 日本アンブレラ専用保養施設“雨傘園”1F]

 今日は山の日である。
 その通り、私達は山の中にいる。
 いや、厳密に言えば山というよりは丘に近い場所かもしれない。
 しかし、『丘の日』は無いのだからしょうがない。
 ……まあ、何年か経ったら『丘の日』もできそうな気もするが。
 それはそれとして……。

 愛原:「うわっ、出たーっ!」

 ガサガサという音。
 廊下の向こうから現れたのは、体長数メートルのゴキブリ。

 高橋:「お任せを!」

 高橋はマグナムを構えると、大型拳銃たるマグナム44をゴキブリの化け物に放った。
 ゴキブリと行ったら素早い動きをするというイメージがあるが、この化け物はそこまで素早いというわけではなかった。
 まあ、普通の人間が歩いて来るくらいの動きかな。
 なので、高橋のマグナムを簡単に避けることはできず、ゴキブリは2~3発ほど被弾すると、体を仰向けにして死んだ。

 高橋:「ざっとこんなもんです」
 愛原:「さすがだな!」

 因みに私もショットガンを持っているのだが、今はまだ使っていない。
 尚、リサは第1形態に戻っていた。

 愛原:「ゴキブリは1匹いたら、30匹いるって言われてるからな。他にもいるかもしれん。気をつけて行こう」
 高橋:「はい!」

 このゴキブリの大きさは尋常ではない。
 恐らくだが、Tウィルスに感染して巨大化したのではないだろうか。
 アメリカのラクーンシティにも、このような巨大ゴキブリはいたというし。
 霧生市にも恐らくいたと思うが、霧生電鉄のトンネル内においては、巨大化した蜘蛛に勝てず、捕食されて全滅したものと思われる。
 ここでは、蜘蛛を食べて巨大化したのだろうか?
 確かに、ここには蜘蛛の巣1つ無い。
 それよりも……。

 愛原:「あのゴキブリ、どこでTウィルスに感染した?」
 高橋:「ですよね」

 リサは壁の臭いとかを嗅いでいた。

 リサ:「あっちこっちから、ウィルスの臭いがする。だから、たまたまなんじゃない?」
 愛原:「あっちこっちに、Tウィルスが付着してるのかよ。危ねーな」

 私達は抗体を持っているからいいようなものの……。

 愛原:「あった。113号室」
 高橋:「では早速、鍵を……!」
 愛原:「うん」

 私は金庫から持って来た鍵を差した。
 大きな鍵は、この部屋のドアの鍵だと思うが、小さな鍵は何に使うのだろう?

 愛原:「あれ!?」

 鍵は開いたのだが、何故かドアが開かない。
 しかし、鍵が掛かってて開かない感覚ではなく、内側が何かに引っ掛かって開かないという感じだった。

 高橋:「ちょっとすいません!」

 高橋がバトンタッチ。
 高橋が思いっ切り引くと、僅かにドアが開いた。

 リサ:「あっ、内側からチェーンがされてる!」
 愛原:「なにっ!?」

 何故か客室のドアは、内側からドアチェーンが掛けられていた。
 これでは、ドアが素直に空いても入れないではないか。

 愛原:「ちょっと待ってろ。こんなこともあろうかと……」

 私はこれまでのバイオハザード事件から、必要な物が何かを割り出し、なるべく持参するようにしている。
 チェーンカッターもその1つだった。
 他にも、バール(のようなもの)も持って来ている。
 いずれも、警察に見つかったら職質レベルだし、場合によっては軽犯罪法違反でしょっ引かれるかもしれない。
 今回にあっては、善場主任が間に入ってもらえば、警察は退散してくれるだろうが。

 愛原:「うりゃっ!」

 私はチェーンカッターで、ドアチェーンを切った。

 愛原:「よし、これで開く……ぞ?」

 ドアの隙間から、わきわきと現れる何かの……足?
 そこから現れたのは、直径1メートルほどの蜘蛛が4~5匹だった。

 愛原:「うわっ、また出た!!」

 その蜘蛛の種類は分からない。
 だが、先ほどのゴキブリよりは素早いことから、ハエトリグモが巨大化したものだろうか。

 愛原:「撃てっ!撃てっ!」
 高橋:「だ、ダメです!的がさっきのGより小さく、動きが素早いんで当たりません!」

 こういう時、私のショットガンの方が役に立つ。
 リサも長く鋭い爪で、飛び掛かって来る蜘蛛を引き裂いたりした。

 愛原:「リロードリロード!」

 弾が無くなると、私は予備の弾を装填する。

 高橋:「うらっ!!」

 高橋は弾が当たらないので、手持ちの特殊警戒棒で蜘蛛を殴りつけるくらいしかできない。
 そして、どうにか私のショットガンとリサの爪攻撃で蜘蛛の集団を退治した。

 愛原:「これ、中ボスかな?大ボスかな?」
 高橋:「でも先生、その割にはドロップアイテムがありませんよ?」

 敵が落とすアイテムのこと。
 特に、中ボス戦においては、その先へ進む為の鍵を持っていることが多いので重要である。

 愛原:「ゲームじゃないんだから……」

 私はドアを開けた。
 どうやら、さっきの蜘蛛達がドアを押さえていたのかもしれない。
 今度は、すんなりと開いた。

 愛原:「こ、これは……」

 客室内は蜘蛛の巣だらけだった。
 それも、ただの蜘蛛の巣ではない。
 細い髪の毛とか繊維が雑に集合している感じである。
 場所によっては、藁が積み上がっているような感じになっていた。
 これは蜘蛛が変化するに当たって、吐き出す糸の質も変わったということだ。
 そして、この部屋には大ボスが待ち受けていた。

 愛原:「またいた!!」

 さっきのは子グモだったのか?
 親グモが待ち受けていた。
 大きさは2トントラックくらい。

 高橋:「今度は俺に任せてください!」

 高橋はマグナムを構えた。
 そして、動きの遅い親グモに集中砲火を浴びせた。
 一応、私もショットガンで援護するが、先ほどの子グモよりも動きは鈍く、図体もデカい(的が大きい)ということもあり、親グモは大した攻撃を私達にすることなく、そのままひっくり返って絶命した。

 愛原:「これでもういないだろうな?」
 高橋:「多分……」
 愛原:「金庫はどこだ!?」
 リサ:「あそこ!」

 リサが指さした所には、金庫があった。
 しかし、太い蜘蛛の糸が天井から床まで伸びている。

 高橋:「ここは俺が!」

 高橋はサバイバルナイフを取り出すと、それで蜘蛛の糸を切った。
 特に、そこまで粘ついているものではないようだ。

 愛原:「金庫は……鍵式か」

 しかし、これも私の記憶にあるような金庫とは違うように見えた。
 これはただの、貴重品ボックスとしての金庫である。
 案の定、キーホルダーに付いていた小さな鍵で開いた。

 愛原:「これは……!」

 一体、何が入っていただろうか?
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