報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」 3

2022-10-31 20:48:49 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日18:00.天候:雨 宮城県仙台市若林区 愛原の実家]

 夕食はしゃぶしゃぶ鍋が出た。
 当然の如く、リサはガツガツ食べていたが、おかげで完全に機嫌が直ったようだ。

 愛原:「明日は俺が温泉に連れて行くよ」
 父親:「それは楽しみだ。だけど、宿泊じゃないだろ?」
 愛原:「明日の夕方、帰るからなぁ……」
 父親:「まあ、いいや。宜しくな」
 高橋:「先生。まさか、今日行ったのは、明日の予行演習でしたか?」
 愛原:「違う。ちゃんと、温泉街のあるホテルに行くよ。そこの日帰りプランを利用するんだ」
 高橋:「あ、そうでしたか」
 愛原:「リサ、水着は持って来たな?」
 リサ:「持って来た」
 愛原:「明日はホテルのプール、入れるから」
 リサ:「! おー!」

 やっぱり、水着着たかったんだな。

[同日23:00.天候:晴 愛原の実家2F 愛原の自室]

 今夜は客間ではなく、2階の自分の部屋で寝る。
 昼寝をガッツリしてしまったので、あんまり眠くない。
 それをいいことに、持って来たノートPCで、報告書を記載している。
 やっぱり、お盆明けの朝一に届くようにして欲しいということだった。

 愛原:「あれ、この写真……」

 報告書に載せる写真をデータの中から選ぶ。
 さすがに全部は載せられないからだ。
 何枚か選んでいると、少女達が入ったカプセルを写したものがあった。
 机の上に何枚もの書類が散乱している。
 だが、その中に、どう見ても撮影した記憶の無い物が写っていた。
 無意識のうちに撮影した物も確かにある。
 だが、これはさすがに撮ってないだろうというものだった。
 それは書類そのものを撮影した写真。
 しかもその書類というのが、やっぱり見たことの無いものなのだ。
 拡大すればハッキリと読めるほど、しっかり撮っている。

 愛原:「??? こんなの撮ったっけ???」

 カメラは常に自分が持っていた。
 だから、高橋やリサが勝手に撮ったということは無い。
 ただ、たまに彼らが手持ちのスマホで撮影した画像が役に立つことがあり、それを報告書に使わせてもらうことも稀にある。
 しかし、この画像は私のデジカメに入っていたもの。
 なので、彼らが撮影したものではないというのは分かる。
 それにしてもだ。

 愛原:「何が書いてあるんだろう?」

 拡大してみると、目を丸くした。
 それは、私のことだったからだ。
 作成者は白井伝三郎だということは、冒頭の名前で分かった。
 どうやら白井の奴、私の脳の病気を親切心から治したわけではなかった。
 やはり、自分の開発した新薬の実験台にしようと思ったようである。
 確かに、この新薬のおかげで、私は元気にここにいる。
 その薬を脳の病気の特効薬として売り出せば良かったのに、何故そうしなかったのだろうか?
 その理由が、この書類に書かれていた。
 以下、抜粋する。

 『……被験者の脳に強い衝撃が起こると、変異することが予想される。その衝撃がどの程度の物からなのかは不明であるし、どのように変異するのかもまだ実験していないので不明である。しかしながら、この問題をクリアすることは非常に難しい。知り合いの脳科学者も、この新薬には否定的な考えである。よって、商品化するのは困難と思われる』

 愛原:「……脳に衝撃……?」

 私の脳裏に、フラッシュバックが起きる。
 直近で私が頭を強く打ったのは、豪華客船・顕正号での事件の時だ。
 ゾンビの大群から逃げる最中、転んで頭を強く打った。
 思えば、あの頃から、高橋と再会するまでの間の記憶が無い。
 高橋の話では、私はずっと入院中だったそうだが、ある時、その病院から抜け出してしまい、行方不明になっていたと。
 行方不明になっていたのは、半年間。
 私の記憶が再開するのは、東京の豊洲にある寿司屋で飲んだくれになっていた時だった。
 そこに高橋が現れ、私の記憶を呼び戻そうと色々と話してくれたんだっけ。
 記憶が無かった頃の私は、何をしていたんだろう?
 リサだって人間だった頃の記憶は殆ど無いに等しいが、私だって、顕正号から高橋との再会の時までの記憶が全く無いのだ。
 この書類によると、特に『記憶障害が発生する』とは書かれていない。
 もっとも、どんな影響があるかは不明ということなので、記憶障害も想定内なのかもしれない。

 愛原:「高橋に聞いた方がいいのか?」

 そういえば高橋は、私が記憶を失っていた頃の話は全くしてくれなかった。
 私が聞かなかったからというのもあるが、それにしてもこれだけ親しい間柄なのだから、話してくれてもいいだろうに……。
 夜も遅いから、また後で話を聞くとするか。
 報告書を作成している間は眠くなかったのに、作成が終わったら、急に眠くなってきた。

 愛原:「印刷は明日にしよう」

 私はUSBメモリーに報告書を保存した。
 そして、就寝することにした。

[8月15日07:00.天候:晴 愛原の実家2F・愛原の自室]

 枕元のスマホがアラームを鳴らす。
 今頃、1階で寝ている2人のスマホも鳴動していることだろう。
 私は手を伸ばして、スマホのアラームを止めた。

 愛原:「ううーん……」

 アラフォーのオッサンの寝起きシーンなんて見たくもないだろうが、一応私が主人公なので、1つ宜しく。

 愛原:「ん?」

 起き上がってまずはトイレに行き、再び部屋に戻る。
 ドアを開けると前方に机があるので、そこに置いたノートPCが目に付くのだ。
 それはいいのだが……ん?私、PCをシャットダウンしたかな?
 いや……したよな。
 首を傾げるのは、私は就寝前、PCをシャットダウンした後、モニタを閉じたはずなのだ。
 はず、というのは、無意識にやった行為なので、はっきりと覚えているわけではないということだ。
 私が首を傾げたのは、モニタが開かれている状態だったのだ。
 で、マウスに触ってみると、何やら画面が出た。

 愛原:「うわっ!?」

 びっくりしたのは、黒いモニタに、リサの白い仮面を着けたセーラー服の少女が現れたからだ。
 日本版リサ・トレヴァーが着ていた物である(『6番』の吉田美亜と『10番』の日野貞夫は除く)。
 その姿が消えると、画面に血文字で、『思い出すな』『忘れろ』という文字が浮かんだのだった。

 愛原:「な、何だこりゃあ!?」

 その時、部屋のドアがノックされた。

 高橋:「先生!先生!どうかなさいましたか!?」

 外から高橋の声が聞こえた。
 私は立ち上がって、ドアを開けた。

 愛原:「高橋!」
 高橋:「せ、先生!?何かありましたか!?今、先生の大きな声が聞こえたもんで……」
 愛原:「ぴ、PC……俺のPCが何か変なんだ!」
 高橋:「えっ!?」

 高橋が部屋に入り、私もPCに向き直ると、また変なことが起きていた。
 高橋は私の部屋に入ると、机のノートPCのモニタを開いた。
 そう。
 いつの間にか、閉じていたのだ。
 そして、高橋は電源を入れた。
 そう。
 PCはスリープモードではなく、ちゃんとシャットダウンされていた。
 その証拠に、シャットダウンからの立ち上げの時にモニタに映し出されるPCのシリーズ名が浮かんだのだ。
 それから、やっとホーム画面が映る。
 いや、これでいいのだ。
 これでいいのだが……。

 高橋:「……? どこも、おかしい所は無いみたいですが?何か操作した時に、おかしくなるってことですか?」
 愛原:「ち、違うんだ。違うんだよ」

 私は先ほどの出来事を高橋に話した。
 高橋も目を見開いたが……。

 高橋:「で、でも、何も無い……みたいですけど?」
 愛原:「今は、な。これは一体、どういうことなんだろう?」
 高橋:「変な夢でも見られた……とか?」
 愛原:「いや、夢じゃないだろ、これは!」

 私は試しに自分の頬をつねってみた。
 ベタ過ぎるやり方だが、ちゃんと痛みを感じた上に、もちろんこれで目が覚めるということもなかった。

 愛原:「い、いや、しかし……」
 高橋:「先生、取りあえず、下に下りましょう。顔を洗って、朝飯食べて落ち着けば、いいんじゃないでしょうか?」
 愛原:「…………」

 こうして待ってみても、PCには何も起こらない。
 ついにスリープモードに入って画面が真っ暗になったが、何かが浮かび上がるということもなかった。
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“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」 2

2022-10-31 16:36:17 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日17:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区蒲町東 仙台湯処サンピアの湯]

 私達は日帰り温泉で、家の大掃除の疲れを癒やしていた。
 私はそうなのだが、リサに関してはストレス解消というのもあるだろう。
 この施設、マンガコーナーがあって、入浴の後、リサは主にそこで過ごしていた。
 私はというと、リクライニングチェアで昼寝
 ……おっと、これではレポートできないではないか。
 だから……。

 高橋:「先生。そろそろ引き上げた方がよろしいかと……」
 愛原:「ん……?おー、もうこんな時間か」

 昼寝をしていたら、高橋に起こされたでござるというテイで宜しく。

 愛原:「冬なら、もう真っ暗という時間だな」
 高橋:「そうです」

 私はリクライニングを起こした。

 愛原:「夕飯までに帰れって言われたし、そろそろ帰るとするか」
 高橋:「俺はリサを呼んできます」

 高橋はそう言うと、マンガコーナーに向かった。
 今は館内着を着ているので、脱衣所に行って着替えて来なくてはならない。
 少しして、高橋とリサが戻ってきた。

 愛原:「よう。少しは機嫌が戻ったか?」
 リサ:「先生がわたしとシてくれたら、機嫌爆戻り」
 愛原:「少しずつ戻るようになれば良し!」
 高橋:「俺にとっては、物凄く安い条件なんスけど……」
 愛原:「じゃあ、オマエが代わりにシてあげればいい」
 リサ:「ヤダ!!」
 高橋:「カンベンしてくださいよ!こんな化け物と……」
 リサ:「化け物って言うな!」
 高橋:「いや、だって、本当だろうが。いつの間に、手から炎出せるようになった?」
 リサ:「いつの間にか」
 高橋:「こいつに銃は要らなさそうですね」
 愛原:「それならそれで良し」

 私達は脱衣所に移動すると、私服に着替えた。

 愛原:「忘れ物は無いな?それじゃ、行くぞ」
 高橋:「はい」

 私達は受付に行って、料金を精算した。

 愛原:「今から地下鉄に乗れば、すぐに帰れるだろう」
 高橋:「そうですね」

 退館すると、夏の暑さが私達を襲う。
 せっかく汗を流しても、これでは帰るまでに、また汗をかくことになりそうだ。

[同日17:32.天候:曇 仙台市若林区六丁の目東町 仙台市地下鉄六丁の目駅→東西線電車(列番不明)先頭車内]

 

 愛原:「何か曇ってきたな……」

 駅に着くと、空がどんよりと曇って来た。

 高橋:「先生。どうやら、ゲリラ豪雨が降るみたいですよ」

 高橋がスマホを片手に言った。

 愛原:「マジか!?」
 高橋:「アプリの情報です」
 愛原:「それじゃ、急いで帰らないとな」

 私達は乗り場に急いだ。
 高橋とリサは1日乗車券を持っているので、そのまま改札口を通れる。
 私は手持ちのSuicaで改札口を通過した。
 これでこの2人は、元を取ったことになる。

〔2番線に、八木山動物公園行きが、到着します〕

 ホームに降りると、ちょうど電車が来るタイミングだった。
 もう何度も乗った4両編成の電車がやってくる。
 日曜日ということもあり、車内はガラガラだった。
 恐らく、市街地から郊外に向かう方が賑わっているのだろう。
 そこは東京も同じだ。
 ドアが開いて電車に乗り込むと、3人並んで座った。

〔2番線から、八木山動物公園行きが、発車します〕

 短い発車サイン音は全駅共通。
 南北線もかつては発車ベルであったが、東西線と同様のサイン音に変わっているという。
 駆け込み乗車は無く、ドアが閉まるとすぐに発車した。

〔次は卸町、卸町。仙台卸商センター前です〕

 平日なら、この辺りや次の卸町駅界隈で働いている人達の帰宅ラッシュが始まり、西行きでも混雑するのだろうが、日曜日の今日は空いていた。

 高橋:「先生、お疲れでしたね。随分よく寝ておいででしたよ」
 愛原:「そ、そうか?」
 高橋:「夜、寝られなくなるんじゃないですか?」
 愛原:「そう、かもな」
 リサ:「わたしと熱い夜を!」(;゚∀゚)=3
 高橋:「バカ野郎。俺との熱い夜が優先だ!」
 愛原:「部屋で報告書書くから、先に寝てていいよ」
 リサ&高橋:「はーい……」

 2人はガッカリした様子になった。

 愛原:「中途半端に寝ると、変な夢を見るものでな」
 高橋:「何の夢ですか?」
 愛原:「何のことはない。デカい船で、バイオハザードに巻き込まれる夢だよ。多分、顕正号の時の記憶じゃないか?」
 高橋:「記憶が戻られたんですか!?」
 愛原:「いや、まだだ。オマエや高野君と、顕正号に乗り込んだところまでは覚えてる。あとは……あれか。朝起きたら、いつの間にか船内中がゾンビだらけになっていたんだっけ」
 高橋:「そ、そうです!何せ、いきなりのことなんで、船内を逃げ回るのがせいぜいで……」
 愛原:「で、逃げてる最中、俺は転んで頭を打って、それから意識と記憶が飛んだわけか」
 高橋:「そ、そういうことです。幸い、早いタイミングでBSAAが救助に来てくれたんで、それで助かりました」
 愛原:「……なるほどな」
 高橋:「あ、あの……」
 愛原:「何だ?」
 高橋:「姉ちゃんの話では、あんまり急に思い出そうとすると、脳に影響があるらしいんで、あんまり触れない方がいいと思うんスけど……」
 愛原:「分かってる。自然に思い出すに任せるよ」
 高橋:「お、オナシャス。先生は脳の御病気だったということで、それが影響しているらしいっス」
 愛原:「そう、らしいな。……と、あれ?善場主任からのLINEだ。……ああ、やっぱり報告書の件か」

 リサは顕正号事件の時にはいなかったせいか、俯いて黙っていた。
 だが、その表情は硬いものであった。
 そして、高橋はそんなリサを肘で突いて、小声でこう言ったのである。

 高橋:「オメ、ぜってー言うんじゃねぇぞ?先生と一緒にいられなくなるぞ?」
 リサ:「……分かってる」

 リサは眉を潜めたまま、小さく頷いた。

 愛原:「何が?」
 高橋:「い、いえっ!何でもないっス!リサが欲しいマンガがあるって話で……」
 愛原:「そうなのか?」
 リサ:「う、うん。面白いマンガを見つけた。今のところ、4巻まで出てる」
 愛原:「そうなのか。クオカードや図書カードは?」
 リサ:「図書カードはまだ残額あるけど、足りるかどうか……」
 愛原:「よし、分かった。その図書カード、使い切っていい。足りなかったら、俺が出してやる」

 望みが叶うと、リサは大抵、『おー!』と声を上げる癖がある。
 しかし、今回は……。

 リサ:「う、うん。ありがとう」

 という反応であった。
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“私立探偵 愛原学” 「休暇のドタバタ」

2022-10-31 11:11:40 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月14日09:30.天候:晴 宮城県仙台市若林区 愛原の実家]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 昨日まで滞在していた親戚達が帰宅して行き、高橋とリサが掃除の手伝いに来た。

 愛原の父親:「それじゃあ、高橋君とリサちゃんは客間の掃除を頼む。今夜はそこを使っていいからね」
 リサ:「おー!」
 高橋:「お任せください!」
 父親:「学は風呂とトイレ掃除。あと、自分の部屋も掃除しろ」
 愛原学:「俺だけキツくね!?」
 父親:「何を言っとる?本当は御客に客間を掃除させるのも、おかしいことなんだぞ?それを高橋君達が自らの申し出でやってくれるんだ。やらせる側がキツい所を率先しなくてどうする?」
 学:「ぐぬぬ……」
 高橋:「せ、先生。客間が終わったら俺達、手伝いに行きますから」
 学:「スマンな。うちの毒親のせいで……」
 父親:「おい、聞こえてるぞ!」
 学:

 私は脱兎の如く、浴室に向かった。
 それから……。

 愛原:「お母さん!誰かが脱衣所にパンティ忘れてるぞ!?」
 母親:「あらま?……これはセイコちゃんのね。こんな高い下着、忘れて行くなんて……」
 愛原:「10代に頃にギャル化した姉ちゃんだったが……」
 母親:「あら?何か紙が入ってるわ」
 愛原:「何だ?」

 私はメモ書きを取り出した。

 愛原:「俺へのプレゼントらしいぞ?」

 すると背後に突き刺さる、鋭い視線。
 リサが赤い瞳を鈍く光らせて、覗き込んでいた。

 リサ:「……誰?」

 しかし、リサの化け物じみた視線でさえも、うちの母親は軽く受け流す。

 母親:「学の1つ年上の従姉よ」
 学:「10代の頃には、もうギャル化していたな。高校の時に妊娠して退学し、その後更に子供3人くらい作った、正にDQN」
 母親:「こっちには結婚すらしていない親不孝者がいるけどね」
 学:「真に申し訳ございません!」
 リサ:「安心してください!ここに第一候補がいますよ!?……と、それはそれとして……。そのパンツ、貸して」
 学:「な、何をする気だ!?」
 リサ:「早く!」

 リサは私から黒いシルクのパンティを奪い取ると、手から何の呪文を唱えることも無く、炎を出してパンティを焼却処分した。

 学:「うわなにをするやめr」
 母親:「家の中で燃やしちゃダメでしょ!?」
 高橋:「なに『血鬼術 爆血』のパクリみてーなことしてんだ、オメェ!さっさとこっち手伝え!」

 高橋がリサの首根っこを掴んで、ズルズルと引っ張って行く。
 何気に私、リサの初めての異能見たんじゃないか?

 高橋:「あ、そうだ、先生。布団の下にガキが穿いてるようなパンツが何枚か見つかって、『学おじさんへ』っていうメモがありましたけど、どうします?」
 リサ:「……それは使用済み?」
 高橋:「ん?ああ、そうな感じだったな」
 リサ:
 学:「待ちなさい、リサ!」
 リサ:「血気術、爆血ーっ!」
 高橋:「だからパクリはやめろって!」
 学:「リサ、誤解すんな!」
 母親:「家の中で燃やしちゃダメーっ!」
 父親:「おい、学!オマエの部屋に、ミキちゃん(学の従妹)のパンティがベッドの上にあったぞ!どういうことだ!?」
 リサ:「先生の部屋も爆血ーっ!」
 学:「うわなにをするやめr」

 ……これ、昼までに掃除終わらないパターン?

[同日12:00.天候:晴 愛原の実家]

 寿司屋:「毎度どうも!」

 ……そうでもなかった。
 お昼は両親が寿司を出前してくれたのだが、それまでに何とかギリギリ終わらせることができた。

 母親:「はいはい、ご苦労さま」

 リサ:「先生に用意されたパンツは、全部で5人分。何がどうしてそうなったのか、5分以内に答えないと、この町にゾンビウィルスばら撒く!」
 高橋:「霧生市の再来になりますよ、先生!?どうしてくれるんですか!?」
 父親:「学。変態行為もいい加減にしろよ?」
 学:「ち、違うんだって……」
 母親:「さぁさぁ、お寿司が届いたから、これでも食べて元気出してー」
 学:「そ、そういうことだぞ。まずは食べよう」

 寿司を食べて空腹を満たしたことで、リサの機嫌も少しは直った。

 リサ:「……それなら、わたしは10枚の使用済みパンツを用意すればいいんだ」
 父親:「……普段、どういう生活を向こうではしているのかね?」
 学:「普通だよ!普通の同居生活!なあ!?」
 高橋:「え、ええ……」

 高橋は空気を読んでくれた。

 愛原:「掃除で体も疲れたし、食べ終わったら、ちょっと出かけて来ようか?」
 高橋:「あ、はい。そうっスね」
 リサ:「…………」
 愛原:「リサもいいな?」

 リサは不機嫌ながらも、無言で頷いた。

[同日13:00.天候:晴 同区内 仙台市地下鉄薬師堂駅→東西線電車(列番不明)先頭車]

 昼食を食べ終わると、早速外出した。
 このまま家に居させたら、リサが暴走してしまうという懸念であった。
 それに、久しぶりの重労働で体が痛い。
 この痛み、少し癒やして来なければ……。

〔1番線、2番線に、電車が到着します〕

 いつもなら市街地方面の電車に乗るが、今回は逆方向、更に郊外へ向かう電車に乗り込んだ。
 更に郊外に向かう方向は空いている。
 先頭車に乗り込むと、ブルーの座席に腰かけた。

〔1番線、2番線の電車が、発車します〕

 短い発車サインの後で、電車のドアとホームドアが閉まる。
 荒井行きの電車の方は、特に駆け込み乗車は無く、スムーズに発車した。

〔次は卸町、卸町。仙台卸商センター前です〕

 高橋:「先生、どこまで行くんですか?」
 愛原:「六丁の目だよ、六丁の目」

 その駅の近くにはフィットネスクラブがあるのだが、日帰り温泉施設も併設されている。
 そこに入って、疲れた体を癒やそうというのが目的だ。

 高橋:「明日も温泉に行くのに、ですか?」
 愛原:「今日は臨時だ、臨時。まさか、あそこまで疲れるとは思わなかったよ」
 高橋:「おい、リサ!半分はオマエのせいだぞ!」
 リサ:

 リサはプイッとそっぽを向いた。
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