[8月14日18:00.天候:雨 宮城県仙台市若林区 愛原の実家]
夕食はしゃぶしゃぶ鍋が出た。
当然の如く、リサはガツガツ食べていたが、おかげで完全に機嫌が直ったようだ。
愛原:「明日は俺が温泉に連れて行くよ」
父親:「それは楽しみだ。だけど、宿泊じゃないだろ?」
愛原:「明日の夕方、帰るからなぁ……」
父親:「まあ、いいや。宜しくな」
高橋:「先生。まさか、今日行ったのは、明日の予行演習でしたか?」
愛原:「違う。ちゃんと、温泉街のあるホテルに行くよ。そこの日帰りプランを利用するんだ」
高橋:「あ、そうでしたか」
愛原:「リサ、水着は持って来たな?」
リサ:「持って来た」
愛原:「明日はホテルのプール、入れるから」
リサ:「! おー!」
やっぱり、水着着たかったんだな。
[同日23:00.天候:晴 愛原の実家2F 愛原の自室]
今夜は客間ではなく、2階の自分の部屋で寝る。
昼寝をガッツリしてしまったので、あんまり眠くない。
それをいいことに、持って来たノートPCで、報告書を記載している。
やっぱり、お盆明けの朝一に届くようにして欲しいということだった。
愛原:「あれ、この写真……」
報告書に載せる写真をデータの中から選ぶ。
さすがに全部は載せられないからだ。
何枚か選んでいると、少女達が入ったカプセルを写したものがあった。
机の上に何枚もの書類が散乱している。
だが、その中に、どう見ても撮影した記憶の無い物が写っていた。
無意識のうちに撮影した物も確かにある。
だが、これはさすがに撮ってないだろうというものだった。
それは書類そのものを撮影した写真。
しかもその書類というのが、やっぱり見たことの無いものなのだ。
拡大すればハッキリと読めるほど、しっかり撮っている。
愛原:「??? こんなの撮ったっけ???」
カメラは常に自分が持っていた。
だから、高橋やリサが勝手に撮ったということは無い。
ただ、たまに彼らが手持ちのスマホで撮影した画像が役に立つことがあり、それを報告書に使わせてもらうことも稀にある。
しかし、この画像は私のデジカメに入っていたもの。
なので、彼らが撮影したものではないというのは分かる。
それにしてもだ。
愛原:「何が書いてあるんだろう?」
拡大してみると、目を丸くした。
それは、私のことだったからだ。
作成者は白井伝三郎だということは、冒頭の名前で分かった。
どうやら白井の奴、私の脳の病気を親切心から治したわけではなかった。
やはり、自分の開発した新薬の実験台にしようと思ったようである。
確かに、この新薬のおかげで、私は元気にここにいる。
その薬を脳の病気の特効薬として売り出せば良かったのに、何故そうしなかったのだろうか?
その理由が、この書類に書かれていた。
以下、抜粋する。
『……被験者の脳に強い衝撃が起こると、変異することが予想される。その衝撃がどの程度の物からなのかは不明であるし、どのように変異するのかもまだ実験していないので不明である。しかしながら、この問題をクリアすることは非常に難しい。知り合いの脳科学者も、この新薬には否定的な考えである。よって、商品化するのは困難と思われる』
愛原:「……脳に衝撃……?」
私の脳裏に、フラッシュバックが起きる。
直近で私が頭を強く打ったのは、豪華客船・顕正号での事件の時だ。
ゾンビの大群から逃げる最中、転んで頭を強く打った。
思えば、あの頃から、高橋と再会するまでの間の記憶が無い。
高橋の話では、私はずっと入院中だったそうだが、ある時、その病院から抜け出してしまい、行方不明になっていたと。
行方不明になっていたのは、半年間。
私の記憶が再開するのは、東京の豊洲にある寿司屋で飲んだくれになっていた時だった。
そこに高橋が現れ、私の記憶を呼び戻そうと色々と話してくれたんだっけ。
記憶が無かった頃の私は、何をしていたんだろう?
リサだって人間だった頃の記憶は殆ど無いに等しいが、私だって、顕正号から高橋との再会の時までの記憶が全く無いのだ。
この書類によると、特に『記憶障害が発生する』とは書かれていない。
もっとも、どんな影響があるかは不明ということなので、記憶障害も想定内なのかもしれない。
愛原:「高橋に聞いた方がいいのか?」
そういえば高橋は、私が記憶を失っていた頃の話は全くしてくれなかった。
私が聞かなかったからというのもあるが、それにしてもこれだけ親しい間柄なのだから、話してくれてもいいだろうに……。
夜も遅いから、また後で話を聞くとするか。
報告書を作成している間は眠くなかったのに、作成が終わったら、急に眠くなってきた。
愛原:「印刷は明日にしよう」
私はUSBメモリーに報告書を保存した。
そして、就寝することにした。
[8月15日07:00.天候:晴 愛原の実家2F・愛原の自室]
枕元のスマホがアラームを鳴らす。
今頃、1階で寝ている2人のスマホも鳴動していることだろう。
私は手を伸ばして、スマホのアラームを止めた。
愛原:「ううーん……」
アラフォーのオッサンの寝起きシーンなんて見たくもないだろうが、一応私が主人公なので、1つ宜しく。
愛原:「ん?」
起き上がってまずはトイレに行き、再び部屋に戻る。
ドアを開けると前方に机があるので、そこに置いたノートPCが目に付くのだ。
それはいいのだが……ん?私、PCをシャットダウンしたかな?
いや……したよな。
首を傾げるのは、私は就寝前、PCをシャットダウンした後、モニタを閉じたはずなのだ。
はず、というのは、無意識にやった行為なので、はっきりと覚えているわけではないということだ。
私が首を傾げたのは、モニタが開かれている状態だったのだ。
で、マウスに触ってみると、何やら画面が出た。
愛原:「うわっ!?」
びっくりしたのは、黒いモニタに、リサの白い仮面を着けたセーラー服の少女が現れたからだ。
日本版リサ・トレヴァーが着ていた物である(『6番』の吉田美亜と『10番』の日野貞夫は除く)。
その姿が消えると、画面に血文字で、『思い出すな』『忘れろ』という文字が浮かんだのだった。
愛原:「な、何だこりゃあ!?」
その時、部屋のドアがノックされた。
高橋:「先生!先生!どうかなさいましたか!?」
外から高橋の声が聞こえた。
私は立ち上がって、ドアを開けた。
愛原:「高橋!」
高橋:「せ、先生!?何かありましたか!?今、先生の大きな声が聞こえたもんで……」
愛原:「ぴ、PC……俺のPCが何か変なんだ!」
高橋:「えっ!?」
高橋が部屋に入り、私もPCに向き直ると、また変なことが起きていた。
高橋は私の部屋に入ると、机のノートPCのモニタを開いた。
そう。
いつの間にか、閉じていたのだ。
そして、高橋は電源を入れた。
そう。
PCはスリープモードではなく、ちゃんとシャットダウンされていた。
その証拠に、シャットダウンからの立ち上げの時にモニタに映し出されるPCのシリーズ名が浮かんだのだ。
それから、やっとホーム画面が映る。
いや、これでいいのだ。
これでいいのだが……。
高橋:「……? どこも、おかしい所は無いみたいですが?何か操作した時に、おかしくなるってことですか?」
愛原:「ち、違うんだ。違うんだよ」
私は先ほどの出来事を高橋に話した。
高橋も目を見開いたが……。
高橋:「で、でも、何も無い……みたいですけど?」
愛原:「今は、な。これは一体、どういうことなんだろう?」
高橋:「変な夢でも見られた……とか?」
愛原:「いや、夢じゃないだろ、これは!」
私は試しに自分の頬をつねってみた。
ベタ過ぎるやり方だが、ちゃんと痛みを感じた上に、もちろんこれで目が覚めるということもなかった。
愛原:「い、いや、しかし……」
高橋:「先生、取りあえず、下に下りましょう。顔を洗って、朝飯食べて落ち着けば、いいんじゃないでしょうか?」
愛原:「…………」
こうして待ってみても、PCには何も起こらない。
ついにスリープモードに入って画面が真っ暗になったが、何かが浮かび上がるということもなかった。
夕食はしゃぶしゃぶ鍋が出た。
当然の如く、リサはガツガツ食べていたが、おかげで完全に機嫌が直ったようだ。
愛原:「明日は俺が温泉に連れて行くよ」
父親:「それは楽しみだ。だけど、宿泊じゃないだろ?」
愛原:「明日の夕方、帰るからなぁ……」
父親:「まあ、いいや。宜しくな」
高橋:「先生。まさか、今日行ったのは、明日の予行演習でしたか?」
愛原:「違う。ちゃんと、温泉街のあるホテルに行くよ。そこの日帰りプランを利用するんだ」
高橋:「あ、そうでしたか」
愛原:「リサ、水着は持って来たな?」
リサ:「持って来た」
愛原:「明日はホテルのプール、入れるから」
リサ:「! おー!」
やっぱり、水着着たかったんだな。
[同日23:00.天候:晴 愛原の実家2F 愛原の自室]
今夜は客間ではなく、2階の自分の部屋で寝る。
昼寝をガッツリしてしまったので、あんまり眠くない。
それをいいことに、持って来たノートPCで、報告書を記載している。
やっぱり、お盆明けの朝一に届くようにして欲しいということだった。
愛原:「あれ、この写真……」
報告書に載せる写真をデータの中から選ぶ。
さすがに全部は載せられないからだ。
何枚か選んでいると、少女達が入ったカプセルを写したものがあった。
机の上に何枚もの書類が散乱している。
だが、その中に、どう見ても撮影した記憶の無い物が写っていた。
無意識のうちに撮影した物も確かにある。
だが、これはさすがに撮ってないだろうというものだった。
それは書類そのものを撮影した写真。
しかもその書類というのが、やっぱり見たことの無いものなのだ。
拡大すればハッキリと読めるほど、しっかり撮っている。
愛原:「??? こんなの撮ったっけ???」
カメラは常に自分が持っていた。
だから、高橋やリサが勝手に撮ったということは無い。
ただ、たまに彼らが手持ちのスマホで撮影した画像が役に立つことがあり、それを報告書に使わせてもらうことも稀にある。
しかし、この画像は私のデジカメに入っていたもの。
なので、彼らが撮影したものではないというのは分かる。
それにしてもだ。
愛原:「何が書いてあるんだろう?」
拡大してみると、目を丸くした。
それは、私のことだったからだ。
作成者は白井伝三郎だということは、冒頭の名前で分かった。
どうやら白井の奴、私の脳の病気を親切心から治したわけではなかった。
やはり、自分の開発した新薬の実験台にしようと思ったようである。
確かに、この新薬のおかげで、私は元気にここにいる。
その薬を脳の病気の特効薬として売り出せば良かったのに、何故そうしなかったのだろうか?
その理由が、この書類に書かれていた。
以下、抜粋する。
『……被験者の脳に強い衝撃が起こると、変異することが予想される。その衝撃がどの程度の物からなのかは不明であるし、どのように変異するのかもまだ実験していないので不明である。しかしながら、この問題をクリアすることは非常に難しい。知り合いの脳科学者も、この新薬には否定的な考えである。よって、商品化するのは困難と思われる』
愛原:「……脳に衝撃……?」
私の脳裏に、フラッシュバックが起きる。
直近で私が頭を強く打ったのは、豪華客船・顕正号での事件の時だ。
ゾンビの大群から逃げる最中、転んで頭を強く打った。
思えば、あの頃から、高橋と再会するまでの間の記憶が無い。
高橋の話では、私はずっと入院中だったそうだが、ある時、その病院から抜け出してしまい、行方不明になっていたと。
行方不明になっていたのは、半年間。
私の記憶が再開するのは、東京の豊洲にある寿司屋で飲んだくれになっていた時だった。
そこに高橋が現れ、私の記憶を呼び戻そうと色々と話してくれたんだっけ。
記憶が無かった頃の私は、何をしていたんだろう?
リサだって人間だった頃の記憶は殆ど無いに等しいが、私だって、顕正号から高橋との再会の時までの記憶が全く無いのだ。
この書類によると、特に『記憶障害が発生する』とは書かれていない。
もっとも、どんな影響があるかは不明ということなので、記憶障害も想定内なのかもしれない。
愛原:「高橋に聞いた方がいいのか?」
そういえば高橋は、私が記憶を失っていた頃の話は全くしてくれなかった。
私が聞かなかったからというのもあるが、それにしてもこれだけ親しい間柄なのだから、話してくれてもいいだろうに……。
夜も遅いから、また後で話を聞くとするか。
報告書を作成している間は眠くなかったのに、作成が終わったら、急に眠くなってきた。
愛原:「印刷は明日にしよう」
私はUSBメモリーに報告書を保存した。
そして、就寝することにした。
[8月15日07:00.天候:晴 愛原の実家2F・愛原の自室]
枕元のスマホがアラームを鳴らす。
今頃、1階で寝ている2人のスマホも鳴動していることだろう。
私は手を伸ばして、スマホのアラームを止めた。
愛原:「ううーん……」
アラフォーのオッサンの寝起きシーンなんて見たくもないだろうが、一応私が主人公なので、1つ宜しく。
愛原:「ん?」
起き上がってまずはトイレに行き、再び部屋に戻る。
ドアを開けると前方に机があるので、そこに置いたノートPCが目に付くのだ。
それはいいのだが……ん?私、PCをシャットダウンしたかな?
いや……したよな。
首を傾げるのは、私は就寝前、PCをシャットダウンした後、モニタを閉じたはずなのだ。
はず、というのは、無意識にやった行為なので、はっきりと覚えているわけではないということだ。
私が首を傾げたのは、モニタが開かれている状態だったのだ。
で、マウスに触ってみると、何やら画面が出た。
愛原:「うわっ!?」
びっくりしたのは、黒いモニタに、リサの白い仮面を着けたセーラー服の少女が現れたからだ。
日本版リサ・トレヴァーが着ていた物である(『6番』の吉田美亜と『10番』の日野貞夫は除く)。
その姿が消えると、画面に血文字で、『思い出すな』『忘れろ』という文字が浮かんだのだった。
愛原:「な、何だこりゃあ!?」
その時、部屋のドアがノックされた。
高橋:「先生!先生!どうかなさいましたか!?」
外から高橋の声が聞こえた。
私は立ち上がって、ドアを開けた。
愛原:「高橋!」
高橋:「せ、先生!?何かありましたか!?今、先生の大きな声が聞こえたもんで……」
愛原:「ぴ、PC……俺のPCが何か変なんだ!」
高橋:「えっ!?」
高橋が部屋に入り、私もPCに向き直ると、また変なことが起きていた。
高橋は私の部屋に入ると、机のノートPCのモニタを開いた。
そう。
いつの間にか、閉じていたのだ。
そして、高橋は電源を入れた。
そう。
PCはスリープモードではなく、ちゃんとシャットダウンされていた。
その証拠に、シャットダウンからの立ち上げの時にモニタに映し出されるPCのシリーズ名が浮かんだのだ。
それから、やっとホーム画面が映る。
いや、これでいいのだ。
これでいいのだが……。
高橋:「……? どこも、おかしい所は無いみたいですが?何か操作した時に、おかしくなるってことですか?」
愛原:「ち、違うんだ。違うんだよ」
私は先ほどの出来事を高橋に話した。
高橋も目を見開いたが……。
高橋:「で、でも、何も無い……みたいですけど?」
愛原:「今は、な。これは一体、どういうことなんだろう?」
高橋:「変な夢でも見られた……とか?」
愛原:「いや、夢じゃないだろ、これは!」
私は試しに自分の頬をつねってみた。
ベタ過ぎるやり方だが、ちゃんと痛みを感じた上に、もちろんこれで目が覚めるということもなかった。
愛原:「い、いや、しかし……」
高橋:「先生、取りあえず、下に下りましょう。顔を洗って、朝飯食べて落ち着けば、いいんじゃないでしょうか?」
愛原:「…………」
こうして待ってみても、PCには何も起こらない。
ついにスリープモードに入って画面が真っ暗になったが、何かが浮かび上がるということもなかった。