[8月11日21:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家]
リサ:「お風呂上がりましたー」
リサは再び体操服とブルマに着替えていた。
愛原の母親:「はい。脱いだ服は洗濯カゴに入れておいてね。洗濯しておくから」
リサ:「ありがとうございます。お義母さま!」
母親:「は?」
愛原:「こら!」
高橋:「おい!」
リサの奴、油断も隙も無い。
愛原:「高橋、次はオマエ、入って来いよ」
高橋:「いいんスか?」
愛原:「オマエも相当汗かいただろ。さっさと洗って来い」
高橋:「そういや、変な汗、かきまくりましたからねぇ……。じゃあ、お先に失礼します」
愛原:「ああ。リサも奥の部屋に行ってろ」
リサ:「はーい」
高橋が風呂に、リサが客間に行くと、リビングには私と両親だけしかいない。
父親:「明日も出掛けるのか?」
愛原:「思いの外、大掛かりな仕事でね。まあ、半分以上は伯父さんのせいなんだけど」
父親:「あの人も困ったものだ。義姉さんの所で、しばらくおとなしくしておいた方がいい」
愛原:「それで、また明日も車を借りられるかな?」
父親:「いや、さすがに明日はダメだ」
愛原:「ダメか……」
父親:「明日は買い物とか、色々出かけないといけないから」
愛原:「そうか……」
それなら明日は、電車などで移動しないとダメか。
父親:「明日は一体、どこへ行くつもりなんだ?」
愛原:「伯父さんが小牛田に住む前に、住んでいた家だよ」
父親:「? 何だって、またそこへ?」
愛原:「俺は子供の頃、その家に連れて行かれたことがある」
父親:「ああ、あれか。だけど、あの家は今、人手に渡ったんじゃなかったか?」
愛原:「その家の鍵が、裏の物置にあったんだよ」
父親:「そうなのか?しかし、勝手に入るのは……」
愛原:「勝手に入って大丈夫さ。家主の人は、もういないことになっているから」
父親:「ん?ん?ん?どういうことだ?」
愛原:「とにかく、お父さんは何も心配しなくていいよ」
父親:「しなくていいよって、オマエ……」
今の家主は五十嵐皓貴。
そう、かつての日本アンブレラの代表取締役社長だった男だ。
息子の元副社長共々逮捕され、今はドロドロの裁判劇を繰り広げている。
確か今は、東京高裁で争っているのではなかったか。
弁護士の見解では、控訴棄却となって、地裁の判決通りの有罪で決まりだろうとのこと。
だがあの2人のことだから、最高裁へ上告するだろう。
これまた何年も掛かるというわけだ。
そして、研究職の最高責任者だった白井伝三郎はとっとと遁走していると。
もちろん五十嵐はあの家に住むつもりは毛頭無く、秘密の研究所として使用するつもりだったのだろう。
愛原:「あの家さ……。この家が建て替えられる前の家と、似たような構造だったんだよな」
父親:「ああ。どういうわけかな」
私の記憶が曖昧だった理由も分かった。
伯父さんが私の前で金庫を開け閉めしていたのは、この家ではなかった。
そして、私にはもう1つ不可解な記憶がある。
愛原:「あの家にいた時、俺は偏頭痛のような症状に襲われたことがある。薬を飲んで寝ていたんだけど、俺が何十時間眠っていたか覚えてる?」
父親:「伯父さん曰く、『脳の病気だが、知り合いの医学者から新しい薬をもらったから、それを飲ませた』と言っている」
その医学者が誰なのかは分からないが、アンブレラの人間だった可能性はある。
そして、私が飲んだ薬というのは……。
愛原:「俺は昼間に眠った。そして目が覚めたら、太陽が西に傾いていた。だから昼から夕方まで眠ったんだろうと思った」
この時、私の頭はスッキリしていた。
偏頭痛が嘘のように。
しかし、あの薬はロキソニンという常識的な薬ではなかっただろう。
とにかく、本来なら脳の病気で死んでいた私は、こうして生きている。
父親:「だが、オマエが起きたのは、その次の日の朝だったんだ」
どうしてそのような事が発生したのか。
私は眠っている間に、伯父さんの家からこの家に戻されただけだったのだ。
家の構造は同じ。
そして、部屋の造りも同じ。
違うのは、家の向きだけ。
2階の部屋を出た私は、太陽が傾いているのを見て、西と東を間違え、それが更なる体内時計に狂いを発生させた。
愛原:「そもそも俺は、どうしてあの家で頭痛を起こしたんだろう?」
父親:「さあな。子供の頃はオマエは、酷い頭痛持ちだった。酷すぎて、何度も吐いたりしただろう?」
愛原:「ああ」
偏頭痛の重い症状の1つ。
吐き気と嘔吐。
今は頭痛など、飲み過ぎた時くらいしか経験していない。
それも、リサと会って以来だ。
恐らく、リサに何か植え付けられたんだと思う。
だが、それ以上リサは何もしてこない。
しようものなら、私に嫌われることを知っているからだ。
そしてそれは、リサにとっては最大の懸念である。
愛原:「その家に、明日行こうと思うんだ」
そして、そこで金庫開けツアーは終わるものと信じている。
父親:「分かった。気をつけて行けよ。……ああ、それと明日からは親戚達がお盆で前泊しに来る。悪いけど、あのコ達は……」
愛原:「分かってるよ。あの2人には、明日はホテルに泊まってもらうから」
父親:「すまんね」
愛原:「いやいや」
[同日23:00.天候:晴 愛原の実家]
私も風呂に入った後は、奥の客間に向かった。
2階には私の自室がある。
恐らくそこに住めば、私も『子供部屋おじさん』になるのだろう。
しかし今夜は、高橋達と寝ることにした。
愛原:「明日は電車で出掛けるが、考えようによってはその方がいいかもしれない」
高橋:「そうですか。そんなに交通の便利な所なんですか?」
愛原:「都会的な考え方ではな」
高橋:「ん?」
愛原:「ま、とにかく寝よう」
高橋:「はい」
1階の奥には仏間と客間がある。
仏間は床の間を兼ねていて、和室8畳である。
その隣には襖を隔てて、6畳間がある。
私と高橋は8畳間に布団を敷き、リサはその隣の部屋で寝てもらっている。
だが……。
愛原:「リサ、覗くな!不気味だぞ!」
リサ:「ちっ……!」
襖の隙間から、赤い瞳を光らせたリサの目が覗いていた。
心霊写真が写る事、請け合いである。
リサ:「先生、わたしの布団に、いつでも来ていいからね?」
高橋:「アホ!さっさと寝ろーっ!」
明日で探索が終わるといいなぁ……。
リサ:「お風呂上がりましたー」
リサは再び体操服とブルマに着替えていた。
愛原の母親:「はい。脱いだ服は洗濯カゴに入れておいてね。洗濯しておくから」
リサ:「ありがとうございます。お義母さま!」
母親:「は?」
愛原:「こら!」
高橋:「おい!」
リサの奴、油断も隙も無い。
愛原:「高橋、次はオマエ、入って来いよ」
高橋:「いいんスか?」
愛原:「オマエも相当汗かいただろ。さっさと洗って来い」
高橋:「そういや、変な汗、かきまくりましたからねぇ……。じゃあ、お先に失礼します」
愛原:「ああ。リサも奥の部屋に行ってろ」
リサ:「はーい」
高橋が風呂に、リサが客間に行くと、リビングには私と両親だけしかいない。
父親:「明日も出掛けるのか?」
愛原:「思いの外、大掛かりな仕事でね。まあ、半分以上は伯父さんのせいなんだけど」
父親:「あの人も困ったものだ。義姉さんの所で、しばらくおとなしくしておいた方がいい」
愛原:「それで、また明日も車を借りられるかな?」
父親:「いや、さすがに明日はダメだ」
愛原:「ダメか……」
父親:「明日は買い物とか、色々出かけないといけないから」
愛原:「そうか……」
それなら明日は、電車などで移動しないとダメか。
父親:「明日は一体、どこへ行くつもりなんだ?」
愛原:「伯父さんが小牛田に住む前に、住んでいた家だよ」
父親:「? 何だって、またそこへ?」
愛原:「俺は子供の頃、その家に連れて行かれたことがある」
父親:「ああ、あれか。だけど、あの家は今、人手に渡ったんじゃなかったか?」
愛原:「その家の鍵が、裏の物置にあったんだよ」
父親:「そうなのか?しかし、勝手に入るのは……」
愛原:「勝手に入って大丈夫さ。家主の人は、もういないことになっているから」
父親:「ん?ん?ん?どういうことだ?」
愛原:「とにかく、お父さんは何も心配しなくていいよ」
父親:「しなくていいよって、オマエ……」
今の家主は五十嵐皓貴。
そう、かつての日本アンブレラの代表取締役社長だった男だ。
息子の元副社長共々逮捕され、今はドロドロの裁判劇を繰り広げている。
確か今は、東京高裁で争っているのではなかったか。
弁護士の見解では、控訴棄却となって、地裁の判決通りの有罪で決まりだろうとのこと。
だがあの2人のことだから、最高裁へ上告するだろう。
これまた何年も掛かるというわけだ。
そして、研究職の最高責任者だった白井伝三郎はとっとと遁走していると。
もちろん五十嵐はあの家に住むつもりは毛頭無く、秘密の研究所として使用するつもりだったのだろう。
愛原:「あの家さ……。この家が建て替えられる前の家と、似たような構造だったんだよな」
父親:「ああ。どういうわけかな」
私の記憶が曖昧だった理由も分かった。
伯父さんが私の前で金庫を開け閉めしていたのは、この家ではなかった。
そして、私にはもう1つ不可解な記憶がある。
愛原:「あの家にいた時、俺は偏頭痛のような症状に襲われたことがある。薬を飲んで寝ていたんだけど、俺が何十時間眠っていたか覚えてる?」
父親:「伯父さん曰く、『脳の病気だが、知り合いの医学者から新しい薬をもらったから、それを飲ませた』と言っている」
その医学者が誰なのかは分からないが、アンブレラの人間だった可能性はある。
そして、私が飲んだ薬というのは……。
愛原:「俺は昼間に眠った。そして目が覚めたら、太陽が西に傾いていた。だから昼から夕方まで眠ったんだろうと思った」
この時、私の頭はスッキリしていた。
偏頭痛が嘘のように。
しかし、あの薬はロキソニンという常識的な薬ではなかっただろう。
とにかく、本来なら脳の病気で死んでいた私は、こうして生きている。
父親:「だが、オマエが起きたのは、その次の日の朝だったんだ」
どうしてそのような事が発生したのか。
私は眠っている間に、伯父さんの家からこの家に戻されただけだったのだ。
家の構造は同じ。
そして、部屋の造りも同じ。
違うのは、家の向きだけ。
2階の部屋を出た私は、太陽が傾いているのを見て、西と東を間違え、それが更なる体内時計に狂いを発生させた。
愛原:「そもそも俺は、どうしてあの家で頭痛を起こしたんだろう?」
父親:「さあな。子供の頃はオマエは、酷い頭痛持ちだった。酷すぎて、何度も吐いたりしただろう?」
愛原:「ああ」
偏頭痛の重い症状の1つ。
吐き気と嘔吐。
今は頭痛など、飲み過ぎた時くらいしか経験していない。
それも、リサと会って以来だ。
恐らく、リサに何か植え付けられたんだと思う。
だが、それ以上リサは何もしてこない。
しようものなら、私に嫌われることを知っているからだ。
そしてそれは、リサにとっては最大の懸念である。
愛原:「その家に、明日行こうと思うんだ」
そして、そこで金庫開けツアーは終わるものと信じている。
父親:「分かった。気をつけて行けよ。……ああ、それと明日からは親戚達がお盆で前泊しに来る。悪いけど、あのコ達は……」
愛原:「分かってるよ。あの2人には、明日はホテルに泊まってもらうから」
父親:「すまんね」
愛原:「いやいや」
[同日23:00.天候:晴 愛原の実家]
私も風呂に入った後は、奥の客間に向かった。
2階には私の自室がある。
恐らくそこに住めば、私も『子供部屋おじさん』になるのだろう。
しかし今夜は、高橋達と寝ることにした。
愛原:「明日は電車で出掛けるが、考えようによってはその方がいいかもしれない」
高橋:「そうですか。そんなに交通の便利な所なんですか?」
愛原:「都会的な考え方ではな」
高橋:「ん?」
愛原:「ま、とにかく寝よう」
高橋:「はい」
1階の奥には仏間と客間がある。
仏間は床の間を兼ねていて、和室8畳である。
その隣には襖を隔てて、6畳間がある。
私と高橋は8畳間に布団を敷き、リサはその隣の部屋で寝てもらっている。
だが……。
愛原:「リサ、覗くな!不気味だぞ!」
リサ:「ちっ……!」
襖の隙間から、赤い瞳を光らせたリサの目が覗いていた。
心霊写真が写る事、請け合いである。
リサ:「先生、わたしの布団に、いつでも来ていいからね?」
高橋:「アホ!さっさと寝ろーっ!」
明日で探索が終わるといいなぁ……。