報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアー」 1

2022-10-14 20:54:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月11日10:00.天候:晴 福島県伊達郡国見町 東北自動車道上り線・国見サービスエリア]

 仙台の実家を出てから、およそ1時間後。
 私達は国見サービスエリアで休憩することにした。

 高橋:「ここでいいっスか?」
 愛原:「ありがとう。取りあえず、ここで休憩にしよう」
 高橋:「はい」

 サービスエリアというだけあって、敷地は広く、ガソリンスタンドもある。
 その為か、比較的賑わっていた。
 東名高速の足柄や海老名と比べてはいけない。
 空いている駐車スペースに車を止めると、私達はまずトイレに行った。

 高橋:「先生、一服いいっスか?」
 愛原:「もちろん」

 うちの父親はタバコをやめたので、車は禁煙である。
 その為、喫煙者の高橋は喫煙所でしかタバコを吸えなかった。
 それを踏まえての休憩でもある。
 トイレを済ませた後は……。

 リサ:「先生、おやつおやつ!」
 愛原:「ああ、分かった」

 高橋が一服している間、私はリサと一緒にフードコートへ。
 リサが欲しがったのは、国産牛串。
 あれだ。
 確か、足柄サービスエリアでも売ってたぞ。

 愛原:「これ、おやつかよ!?」
 リサ:「うん、おやつ!」

 食事にしてはボリュームは小さいが、おやつにしてはボリュームは大きい。
 コンビニのレジに、ホットメニューがあるだろう?
 あの中に、焼き鳥などが売られている。
 その焼き鳥くらいのボリュームはあった。

 愛原:「しょうがないなぁ……」

 ここでリサの腹を満たしておかないと、後で大変なことになるかもしれない。
 そして、その判断は正しかったのである。

 店員:「700円になります」
 愛原:「はい」
 リサ:「ありがとう!」

 リサは喜んで、竹串に突き刺さった牛肉を頬張った。

 愛原:「全く……」

 あとは自販機コーナーに行って、お茶のペットボトルを購入した。

 高橋:「そろそろ行きますか?」
 愛原:「そうだな」

 私達は車に戻り、再び目的地を目指した。

 リサ:「ちょっと車から離れただけなのに、もう暑いね」
 愛原:「真夏だからな。福島県は、どこにいても暑いぞ」

 海水浴シーズン真っ只中の浜通りは言わずもがな。
 山の方なら涼しいかと思うが、会津地方は盆地でやっぱり暑い。

 愛原:「熱中症に注意しなきゃな」
 高橋:「はい」

[同日11:00.天候:晴 福島県福島市飯坂町 日本アンブレラ専用保養施設“雨傘園”]

 大きな渋滞に巻き込まれることもなく、私達は無事に東北自動車道を福島飯坂インターで降りた。
 そこから国道13号線を北上する。
 この辺りの13号線は、やや珍しい物がある。
 珍しいというか、ボトルネックというか……。
 幹線国道でありながら、福島交通飯坂線の踏切があるのである。
 都内でも第一京浜の京浜急行の踏切が有名だったが、今はもう高架化されている。
 しかし、ここではまだ高架化されていない。
 しかも、県道との交差点の所に踏切があるのだ。
 この時点で、既に【お察しください】。
 電車の本数は、昼間は20分に1本くらいである。
 私達がこの交差点に差し掛かる際にも、踏切の警報機が鳴った。
 高橋は舌打ちをしていたが、鉄ヲタの私には御褒美である。
 単線の線路を2両編成の電車が通過して行った。
 東急電鉄1000系の中古車である。
 かつて、東横線と東京メトロ日比谷線とを相互乗り入れしていた車両である。
 今はもう東横線が日比谷線に乗り入れることは無いが、その時に活躍していた車両がここを走っている。
 ようやく踏切と県道との交差点を越えて、国道399号線に入る。
 この399号線、福島県の山奥に向かって行くのだが、山奥に入ると酷道となる。
 何しろ、日本の国道で今や唯一となった“洗い越し”があるのである。
 “洗い越し”とは、小さな沢を、橋を架けずにそのまま通過することである。
 小さな沢ならまだ良いのだが、天候が悪化しようものなら、その沢はたちまち濁流となるだろう。
 もちろん、今回はそんな所まで行かない。
 あくまで温泉街の外れにある、日本アンブレラの保養施設だった所だ。

 愛原:「うーむ……程よい廃墟感w」
 高橋:「ですね」

 飯坂温泉や隣接する穴原温泉(別称、奥飯坂温泉)は、他の地方の温泉街と同様、荒廃が目立っている。
 直近……というか、現在進行形の話で言うと、コロナ禍による利用者の大激減により、宿泊施設の廃業が目立っているのだ。
 もちろん、まだまだ元気に営業している施設は存在する。
 だが、ここに来るまでに、いくつも廃墟化したホテルや旅館を見て来ただけに、日本アンブレラの保養所の廃墟は見慣れたものだったのだ。
 簡単なバリケードで駐車場の入口は塞がれていたが、私が車を降りて、それを退かした。
 高橋が車を駐車場に乗り入れさせる。

 愛原:「よし、廃墟探索の準備だ!」
 高橋:「はい!」
 リサ:「おー!」

 私達は準備をすると、廃墟に近づいた。
 正面エントランスはシャッターが下りて、入れないようになっている。

 高橋:「シャッターぶち破りますか?」
 愛原:「いや、他に入れる場所を探そう」

 廃墟なだけあって、駐車場の時点で、既に雑草があちこちから生えていたほどだ。
 ましてや、建物の周辺なんか草ボーボーである。
 そんな草を掻き分けて、建物の周りを探索してみる。
 すると……。

 愛原:「あれは……!」

 掠れた文字で、『関係者通用口』と書かれたドアを見つけた。
 このドアは施錠されていたが、横を見ると、カードリーダーがあった。

 愛原:「お、おい、これは……!」

 廃墟なのだから、普通は停電していると思うだろう?
 驚くべきことに、カードリーダーには赤色のランプが点いていた。

 愛原:「電源か生きているのか?」
 高橋:「ということは、廃墟じゃないんですかね?」
 愛原:「うーむ……」

 確かに、廃墟にして比較的きれいである。
 シャッターも変な落書きがされているわけではないし、窓ガラスも割れていたりしているわけではない。
 ただ単に、閉業しているだけという感じだ。

 愛原:「伯父さんの言ってた、『忘れてはいけないカードキー』とは、ここで使うんだろう。リサ」
 リサ:「オッケー」

 リサは金ピカのカードを取り出して、それを非接触式カードリーダーに当てた。
 すると、ピッピッ♪と鳴って、ランプが緑色に変わった。
 そして、オートロックが解錠される音がした。

 高橋:「先生」
 愛原:「どうやら、やっぱりここは日本アンブレラの施設で間違いないようだな」

 私はドアノブを握った。

 愛原:「準備はいいか?行くぞ」
 高橋:「はい!」

 私はドアを開けた。
 いきなりそこから化け物が飛び出して来るというようなことは無かったが、しかし黴臭い臭いとかはした。
 案の定、閉め切っている上に消灯していることもあってか、昼間でも館内は薄暗い。
 日の当たらない所にあっては、ライトを点灯させて探索を開始した。
 目指すは、113号室。
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“私立探偵 愛原学” 「金庫開けツアー開始」 3

2022-10-14 15:37:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月10日21:00.天候:晴 宮城県仙台市若林区某所 愛原の実家]

 リサ:「お風呂いただきました~」

 リサが風呂から出ると、彼女は家にいる感覚なのか、体操服にブルマー姿だった。
 白い体操服に緑色のブルマーである。

 愛原の母親:「あら、懐かしい!リサちゃんの学校は、まだブルマなの?」
 リサ:「いいえ。短パンですけど、愛原先生が大好きな……フガーッ!」

 リサは最後まで話すことができなかった。
 私に口を塞がれたからである。

 愛原:「ち、違うんだ!これはこのコの趣味で……!」
 リサ:「先生のパソコンの中に、『秘蔵動画』として……フガガーッ!」
 愛原:「リサは最近、コスプレにハマってるんだ。これはその一環だよ」
 リサ:「わたしは先生の為に、JKイメクラ……フガガガ!」
 愛原:「高橋!リサを奥の部屋に連れて行け!」
 高橋:「了解っス!」

 高橋はリサを奥の客間に連行していった。

 リサ:「先生、『ハミパン最高!』って言ってたじゃん!」
 高橋:「いいから、オメーは黙ってろ!!」

 愛原の父親:「何だかよく知らんが、警察の世話にだけはならないようにな?」
 愛原:「わ、分かってるよ!」
 父親:「警察の御厄介になるのは兄貴……オマエの伯父さんだけで十分だ」
 愛原:「わ、分かってるって」
 母親:「お祖父ちゃんも、警察とモメたことがあるそうだから、気つけてね」
 愛原:「うちの祖父ちゃん、何したの!?」
 父親:「あれは戦後の混乱期だったんだから、しょうがないんだ。今なら問題だが、戦後の混乱期なら致し方ないことだ」
 愛原:「ふーん……?」

 父方の祖父は陸軍二等兵として召集された後、満州に送られたと聞いている。
 そこではそれなりに昇級して、終戦時は兵長だか伍長だかになっていたらしい。
 物資を管理する班だか部署だかに所属していたからなのか、復員時は上等の毛布を背中いっぱいに背負い、両手に缶詰のいっぱい入った荷物を持っていたので、仙台駅まで迎えに行った奥さん(祖母)がびっくりしたという。
 南方戦線では補給が追い付かず、日本兵達は飢餓などに悩まされたが、満州ではそんなことは無かったということだ。
 その物資を汽車に持ち込むか否かで、警察とモメたらしいのだが、『袖の下』で許されたとのこと。
 うん……今なら大問題だな。

 愛原:「今は政府機関から仕事をもらってるんだ。大丈夫だよ」

 強いて言うならば、高橋が警察の御厄介になったりしないか心配だがな。

[8月11日08:00.天候:晴 愛原の実家1Fダイニング]

 ……というような事があったのが、昨夜。
 朝食を食べているリサは、いつもの通りの食欲だった。
 今朝はアジの開きに卵焼きが出たが、ペロリと平らげてしまった。
 特に、リサが骨すら残さずアジの開きを完食する様は、両親にとっては見ものだったという。

 愛原:「9時になったら出発するぞ」
 高橋:「はい」

 因みにリサは体操服から、私服に着替えている。
 黒いノースリーブのTシャツに、下はデニムのショートパンツを穿いていた。
 尚、出掛ける際はピンク色のキャップを被っている。
 他の季節ならともかく、夏はパーカーは暑いのか、フード代わりに被る物としてキャップを選んだようだ。
 目的は、第1形態復帰による角隠しである。

[同日09:00.天候:晴 愛原家→車内]

 予定通り、9時には実家を出発した。
 車は日産・ノートである。
 老夫婦が買い物や通院くらいにしか使わないので、コンパクトカーに買い替えたのである。
 父親は昔は、ハイエースとかもっと大きな車に乗っていたのだが。
 さすがに軽自動車は選択しなかったようだ。
 運転は高橋に任せ、私は助手席に乗る。
 リサはリアシートに乗ってもらった。

 愛原:「よし、行こう」
 高橋:「はい」

 私はナビに住所を入力すると、高橋に出発するように言った。

 高橋:「高速使っていいんスね?」
 愛原:「もちろん」

 ETCカードは、事務所から持って来た。
 ナビの通りに行くと、車はまず国道4号線(仙台バイパス)に向かうことになる。
 そこの上り線に入り、少し南下すると、仙台南部道路の長町インターに向かう道路に入るよう誘導される。
 仙台南部道路はかつて宮城県道路公社が管理する有料道路(県道)だったが、今はネクスコ東日本が管理する高速自動車国道になっている。
 番号も、山形自動車道との通し番号であるE48が付番されている。
 但し、対面通行区間もあり、そこでは制限速度70キロになっていたりと、高速道路としては高規格とは言えない。
 そこを西に進むと、途中に仙台市地下鉄南北線の富沢車両基地の横を通る。
 留置線に留置された1000形電車が見られるので、鉄ヲタ垂涎の区間である。
 更に西に進むと、東北自動車道の仙台南ジャンクションに突き当たる。
 そこから、東北道の上り線に合流する。

〔しばらく、道なりです〕

 降りるインター名が『福島飯坂』だと案内されると、ナビのアナウンスはしばらく止まる。

 愛原:「よし。安全運転で頼むぞ」
 高橋:「はいっ!」

 私が改めて言ったのは、東北道の仙台市内区間は線形が悪く、常に80キロ規制がされている場所だったからだ。
 元々排気量の少ないコンバクトカーなので、高橋にとっては物足りない部分もあるだろうが。

 愛原:「作戦の確認の為、1回休憩を取ろう。福島飯坂インター直前の所がいい」
 高橋:「分かりました」

 今日は祝日である。
 明日は平日だが、そこを休めれば、連休となる。
 お盆休みがしっかり取れるような職場で、尚且つ有給休暇取得率も高い所なら可能なのではないだろうか。
 逆に何が何でもカレンダー通りの所だったりすると、明日は有休でも取らない限りは休み無しということになるだろう。
 私が昔所属していた警備会社がそうだったな。

 リサ:「先生、直前だと『国見サービスエリア』みたいだよ」

 リサがスマホ片手にそう言った。

 愛原:「そうか。調べてくれてありがとう」
 リサ:「エヘヘ……。というわけで、何か食べさせて?」

 と、リサはおやつをねだった。

 高橋:「オマエ、それが目的か!」
 愛原:「分かったよ。軽くおやつな?」
 リサ:「おー!」

 というような取り決めを交わし、私達の車は福島県へと向かった。
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