[8月11日10:00.天候:晴 福島県伊達郡国見町 東北自動車道上り線・国見サービスエリア]
仙台の実家を出てから、およそ1時間後。
私達は国見サービスエリアで休憩することにした。
高橋:「ここでいいっスか?」
愛原:「ありがとう。取りあえず、ここで休憩にしよう」
高橋:「はい」
サービスエリアというだけあって、敷地は広く、ガソリンスタンドもある。
その為か、比較的賑わっていた。
東名高速の足柄や海老名と比べてはいけない。
空いている駐車スペースに車を止めると、私達はまずトイレに行った。
高橋:「先生、一服いいっスか?」
愛原:「もちろん」
うちの父親はタバコをやめたので、車は禁煙である。
その為、喫煙者の高橋は喫煙所でしかタバコを吸えなかった。
それを踏まえての休憩でもある。
トイレを済ませた後は……。
リサ:「先生、おやつおやつ!」
愛原:「ああ、分かった」
高橋が一服している間、私はリサと一緒にフードコートへ。
リサが欲しがったのは、国産牛串。
あれだ。
確か、足柄サービスエリアでも売ってたぞ。
愛原:「これ、おやつかよ!?」
リサ:「うん、おやつ!」
食事にしてはボリュームは小さいが、おやつにしてはボリュームは大きい。
コンビニのレジに、ホットメニューがあるだろう?
あの中に、焼き鳥などが売られている。
その焼き鳥くらいのボリュームはあった。
愛原:「しょうがないなぁ……」
ここでリサの腹を満たしておかないと、後で大変なことになるかもしれない。
そして、その判断は正しかったのである。
店員:「700円になります」
愛原:「はい」
リサ:「ありがとう!」
リサは喜んで、竹串に突き刺さった牛肉を頬張った。
愛原:「全く……」
あとは自販機コーナーに行って、お茶のペットボトルを購入した。
高橋:「そろそろ行きますか?」
愛原:「そうだな」
私達は車に戻り、再び目的地を目指した。
リサ:「ちょっと車から離れただけなのに、もう暑いね」
愛原:「真夏だからな。福島県は、どこにいても暑いぞ」
海水浴シーズン真っ只中の浜通りは言わずもがな。
山の方なら涼しいかと思うが、会津地方は盆地でやっぱり暑い。
愛原:「熱中症に注意しなきゃな」
高橋:「はい」
[同日11:00.天候:晴 福島県福島市飯坂町 日本アンブレラ専用保養施設“雨傘園”]
大きな渋滞に巻き込まれることもなく、私達は無事に東北自動車道を福島飯坂インターで降りた。
そこから国道13号線を北上する。
この辺りの13号線は、やや珍しい物がある。
珍しいというか、ボトルネックというか……。
幹線国道でありながら、福島交通飯坂線の踏切があるのである。
都内でも第一京浜の京浜急行の踏切が有名だったが、今はもう高架化されている。
しかし、ここではまだ高架化されていない。
しかも、県道との交差点の所に踏切があるのだ。
この時点で、既に【お察しください】。
電車の本数は、昼間は20分に1本くらいである。
私達がこの交差点に差し掛かる際にも、踏切の警報機が鳴った。
高橋は舌打ちをしていたが、鉄ヲタの私には御褒美である。
単線の線路を2両編成の電車が通過して行った。
東急電鉄1000系の中古車である。
かつて、東横線と東京メトロ日比谷線とを相互乗り入れしていた車両である。
今はもう東横線が日比谷線に乗り入れることは無いが、その時に活躍していた車両がここを走っている。
ようやく踏切と県道との交差点を越えて、国道399号線に入る。
この399号線、福島県の山奥に向かって行くのだが、山奥に入ると酷道となる。
何しろ、日本の国道で今や唯一となった“洗い越し”があるのである。
“洗い越し”とは、小さな沢を、橋を架けずにそのまま通過することである。
小さな沢ならまだ良いのだが、天候が悪化しようものなら、その沢はたちまち濁流となるだろう。
もちろん、今回はそんな所まで行かない。
あくまで温泉街の外れにある、日本アンブレラの保養施設だった所だ。
愛原:「うーむ……程よい廃墟感w」
高橋:「ですね」
飯坂温泉や隣接する穴原温泉(別称、奥飯坂温泉)は、他の地方の温泉街と同様、荒廃が目立っている。
直近……というか、現在進行形の話で言うと、コロナ禍による利用者の大激減により、宿泊施設の廃業が目立っているのだ。
もちろん、まだまだ元気に営業している施設は存在する。
だが、ここに来るまでに、いくつも廃墟化したホテルや旅館を見て来ただけに、日本アンブレラの保養所の廃墟は見慣れたものだったのだ。
簡単なバリケードで駐車場の入口は塞がれていたが、私が車を降りて、それを退かした。
高橋が車を駐車場に乗り入れさせる。
愛原:「よし、廃墟探索の準備だ!」
高橋:「はい!」
リサ:「おー!」
私達は準備をすると、廃墟に近づいた。
正面エントランスはシャッターが下りて、入れないようになっている。
高橋:「シャッターぶち破りますか?」
愛原:「いや、他に入れる場所を探そう」
廃墟なだけあって、駐車場の時点で、既に雑草があちこちから生えていたほどだ。
ましてや、建物の周辺なんか草ボーボーである。
そんな草を掻き分けて、建物の周りを探索してみる。
すると……。
愛原:「あれは……!」
掠れた文字で、『関係者通用口』と書かれたドアを見つけた。
このドアは施錠されていたが、横を見ると、カードリーダーがあった。
愛原:「お、おい、これは……!」
廃墟なのだから、普通は停電していると思うだろう?
驚くべきことに、カードリーダーには赤色のランプが点いていた。
愛原:「電源か生きているのか?」
高橋:「ということは、廃墟じゃないんですかね?」
愛原:「うーむ……」
確かに、廃墟にして比較的きれいである。
シャッターも変な落書きがされているわけではないし、窓ガラスも割れていたりしているわけではない。
ただ単に、閉業しているだけという感じだ。
愛原:「伯父さんの言ってた、『忘れてはいけないカードキー』とは、ここで使うんだろう。リサ」
リサ:「オッケー」
リサは金ピカのカードを取り出して、それを非接触式カードリーダーに当てた。
すると、ピッピッ♪と鳴って、ランプが緑色に変わった。
そして、オートロックが解錠される音がした。
高橋:「先生」
愛原:「どうやら、やっぱりここは日本アンブレラの施設で間違いないようだな」
私はドアノブを握った。
愛原:「準備はいいか?行くぞ」
高橋:「はい!」
私はドアを開けた。
いきなりそこから化け物が飛び出して来るというようなことは無かったが、しかし黴臭い臭いとかはした。
案の定、閉め切っている上に消灯していることもあってか、昼間でも館内は薄暗い。
日の当たらない所にあっては、ライトを点灯させて探索を開始した。
目指すは、113号室。
仙台の実家を出てから、およそ1時間後。
私達は国見サービスエリアで休憩することにした。
高橋:「ここでいいっスか?」
愛原:「ありがとう。取りあえず、ここで休憩にしよう」
高橋:「はい」
サービスエリアというだけあって、敷地は広く、ガソリンスタンドもある。
その為か、比較的賑わっていた。
東名高速の足柄や海老名と比べてはいけない。
空いている駐車スペースに車を止めると、私達はまずトイレに行った。
高橋:「先生、一服いいっスか?」
愛原:「もちろん」
うちの父親はタバコをやめたので、車は禁煙である。
その為、喫煙者の高橋は喫煙所でしかタバコを吸えなかった。
それを踏まえての休憩でもある。
トイレを済ませた後は……。
リサ:「先生、おやつおやつ!」
愛原:「ああ、分かった」
高橋が一服している間、私はリサと一緒にフードコートへ。
リサが欲しがったのは、国産牛串。
あれだ。
確か、足柄サービスエリアでも売ってたぞ。
愛原:「これ、おやつかよ!?」
リサ:「うん、おやつ!」
食事にしてはボリュームは小さいが、おやつにしてはボリュームは大きい。
コンビニのレジに、ホットメニューがあるだろう?
あの中に、焼き鳥などが売られている。
その焼き鳥くらいのボリュームはあった。
愛原:「しょうがないなぁ……」
ここでリサの腹を満たしておかないと、後で大変なことになるかもしれない。
そして、その判断は正しかったのである。
店員:「700円になります」
愛原:「はい」
リサ:「ありがとう!」
リサは喜んで、竹串に突き刺さった牛肉を頬張った。
愛原:「全く……」
あとは自販機コーナーに行って、お茶のペットボトルを購入した。
高橋:「そろそろ行きますか?」
愛原:「そうだな」
私達は車に戻り、再び目的地を目指した。
リサ:「ちょっと車から離れただけなのに、もう暑いね」
愛原:「真夏だからな。福島県は、どこにいても暑いぞ」
海水浴シーズン真っ只中の浜通りは言わずもがな。
山の方なら涼しいかと思うが、会津地方は盆地でやっぱり暑い。
愛原:「熱中症に注意しなきゃな」
高橋:「はい」
[同日11:00.天候:晴 福島県福島市飯坂町 日本アンブレラ専用保養施設“雨傘園”]
大きな渋滞に巻き込まれることもなく、私達は無事に東北自動車道を福島飯坂インターで降りた。
そこから国道13号線を北上する。
この辺りの13号線は、やや珍しい物がある。
珍しいというか、ボトルネックというか……。
幹線国道でありながら、福島交通飯坂線の踏切があるのである。
都内でも第一京浜の京浜急行の踏切が有名だったが、今はもう高架化されている。
しかし、ここではまだ高架化されていない。
しかも、県道との交差点の所に踏切があるのだ。
この時点で、既に【お察しください】。
電車の本数は、昼間は20分に1本くらいである。
私達がこの交差点に差し掛かる際にも、踏切の警報機が鳴った。
高橋は舌打ちをしていたが、鉄ヲタの私には御褒美である。
単線の線路を2両編成の電車が通過して行った。
東急電鉄1000系の中古車である。
かつて、東横線と東京メトロ日比谷線とを相互乗り入れしていた車両である。
今はもう東横線が日比谷線に乗り入れることは無いが、その時に活躍していた車両がここを走っている。
ようやく踏切と県道との交差点を越えて、国道399号線に入る。
この399号線、福島県の山奥に向かって行くのだが、山奥に入ると酷道となる。
何しろ、日本の国道で今や唯一となった“洗い越し”があるのである。
“洗い越し”とは、小さな沢を、橋を架けずにそのまま通過することである。
小さな沢ならまだ良いのだが、天候が悪化しようものなら、その沢はたちまち濁流となるだろう。
もちろん、今回はそんな所まで行かない。
あくまで温泉街の外れにある、日本アンブレラの保養施設だった所だ。
愛原:「うーむ……程よい廃墟感w」
高橋:「ですね」
飯坂温泉や隣接する穴原温泉(別称、奥飯坂温泉)は、他の地方の温泉街と同様、荒廃が目立っている。
直近……というか、現在進行形の話で言うと、コロナ禍による利用者の大激減により、宿泊施設の廃業が目立っているのだ。
もちろん、まだまだ元気に営業している施設は存在する。
だが、ここに来るまでに、いくつも廃墟化したホテルや旅館を見て来ただけに、日本アンブレラの保養所の廃墟は見慣れたものだったのだ。
簡単なバリケードで駐車場の入口は塞がれていたが、私が車を降りて、それを退かした。
高橋が車を駐車場に乗り入れさせる。
愛原:「よし、廃墟探索の準備だ!」
高橋:「はい!」
リサ:「おー!」
私達は準備をすると、廃墟に近づいた。
正面エントランスはシャッターが下りて、入れないようになっている。
高橋:「シャッターぶち破りますか?」
愛原:「いや、他に入れる場所を探そう」
廃墟なだけあって、駐車場の時点で、既に雑草があちこちから生えていたほどだ。
ましてや、建物の周辺なんか草ボーボーである。
そんな草を掻き分けて、建物の周りを探索してみる。
すると……。
愛原:「あれは……!」
掠れた文字で、『関係者通用口』と書かれたドアを見つけた。
このドアは施錠されていたが、横を見ると、カードリーダーがあった。
愛原:「お、おい、これは……!」
廃墟なのだから、普通は停電していると思うだろう?
驚くべきことに、カードリーダーには赤色のランプが点いていた。
愛原:「電源か生きているのか?」
高橋:「ということは、廃墟じゃないんですかね?」
愛原:「うーむ……」
確かに、廃墟にして比較的きれいである。
シャッターも変な落書きがされているわけではないし、窓ガラスも割れていたりしているわけではない。
ただ単に、閉業しているだけという感じだ。
愛原:「伯父さんの言ってた、『忘れてはいけないカードキー』とは、ここで使うんだろう。リサ」
リサ:「オッケー」
リサは金ピカのカードを取り出して、それを非接触式カードリーダーに当てた。
すると、ピッピッ♪と鳴って、ランプが緑色に変わった。
そして、オートロックが解錠される音がした。
高橋:「先生」
愛原:「どうやら、やっぱりここは日本アンブレラの施設で間違いないようだな」
私はドアノブを握った。
愛原:「準備はいいか?行くぞ」
高橋:「はい!」
私はドアを開けた。
いきなりそこから化け物が飛び出して来るというようなことは無かったが、しかし黴臭い臭いとかはした。
案の定、閉め切っている上に消灯していることもあってか、昼間でも館内は薄暗い。
日の当たらない所にあっては、ライトを点灯させて探索を開始した。
目指すは、113号室。