[3月8日19:10.天候:雨 東京都墨田区菊川 斉藤絵恋のマンション]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
中央高速の石川パーキングエリアで夕食を取った私達は再び車に乗り、菊川を目指した。
都内に入る頃から曇り出して来たが、都心ほど雨が降りやすいのか、首都高に入ると雨に当たった。
愛原:「雨か。この雨がウィルスを洗い流してくれるといいんだがな」
私はフロントガラスの上を規則正しく動くワイパーを見ながら言った。
車は既に最寄りの首都高出口で降り、都道を走行している。
高野:「実際、洗い流してくれていると思いますよ。だから感染率は屋外よりも屋内の方が高いんです」
愛原:「ま、そりゃそうだ」
映画や何かじゃ、バイオハザードたけなわの夜は雨が降っていることが多い。
ホラー的演出もあるのだろうが、私はウィルスが洗い流されたおかげで、町の外に拡散することは無かったという設定にしたいが為だと思っている。
もっとも、アメリカのルイジアナ州の農場で起きたバイオハザードでは何の意味も無かったようだがな。
あれはウィルスではなく、新種のカビを使った特異菌だそうで、雨が降って湿度が上がることで、余計に活性化されたのだろうと見ている。
愛原:「先に絵恋さんを送って行くから、そっちのマンションに行ってくれ」
高橋:「分かりました」
私は最初、絵恋さんを埼玉の実家に送るべきかどうか悩んだ。
そしたら絵恋さんが東京のマンションがいいと言ったので、そうすることにした。
〔「目的地周辺です。音声案内を終了します」〕
マンションの裏手にある駐車場に車を止める。
高橋:「ここでいいっスか?」
愛原:「いいだろう。絵恋さん、着いたよ」
絵恋:「はーい……」
絵恋さんは眠い目を擦った。
リサと同様、途中で疲れて寝てしまった。
愛原:「学校がいつ再開するのか分からないけど、また遊びに来なよ」
絵恋:「はい。ありがとうございます」
マンションの裏口からメイド服姿のメイドさんが傘を差して出て来た。
さすがにメイド服は目立つな。
もっとも、このマンションの住人達は既に慣れたらしいが。
昨今のサブカルチャーに見られるベタな法則通りのメイド服っぽく見えるところを見ると、どこかのメイドカフェの制服を模したものであろうか。
愛原:「おっ、そうだ。俺も挨拶しないと」
私も車を降りた。
メイド:「…………」
愛原:「絵恋さん、メイドさんの名前、何て言うんだっけ?」
絵恋:「私は『パール』と呼んでます。何か……パールがそう呼んでくださいって……」
愛原:「そうですか。パールさん、お疲れさまです。この通り、御嬢様をお連れしました。なので……」
何か変だな。
さっきから俯いたままだ。
パール:「…………」(←左手をスカートの中に突っ込み、左足にある何かを手にする)
高橋:「先生!!」
高橋はその『何か』を見逃さなかった。
次の瞬間、パールと名乗るメイドは傘を放り投げると、私目掛けてそれを振りかざして来た。
それは大型ナイフ。
高橋が私の前に入り、そのナイフを交わす。
愛原:「な、な、な……!?」
高橋:「どこかで見たことがあるかと思ったら、やっぱテメーか!」
パール:「どこかで見たことがあるかと思ったら、やっぱりアンタか」
え、なに!?
2人は知り合い!?
高橋:「『切り裂きパール』!」
パール:「『マーサー』!」
高橋は『切り裂きパール』の左手を掴んでねじ伏せ、見事にナイフを落とすが、パールもメイド服のポケットに入れていた胡椒を高橋の顔に振り掛ける。
あの高橋が押されているだと?
パールはナイフを拾い上げ、視界を失っている高橋に振り下ろそうとした。
高野:「そこまでだ。ナイフを捨てな」
高野君がパールの頭に銃を突きつけた。
絵恋:「ぱ、パール!やめなさい!」
ようやく絵恋さんがそう言うと、パールはパッとナイフを捨てた。
パール:「かしこまりました。御嬢様」
愛原:「おい、大丈夫か、高橋君!?」
高橋:「く、くそっ……!」
高野:「先を手を出したのはアンタだよ。事情を聞かせてもらおうかしら?言っとくけど、拒否権は無いからね。拒否しようものなら、あなたはこれから塀の中。それすら面倒なら、この引き金を引くまで。政府エージェントには、『メイドがゾンビ化し掛かったので射殺した』とでも言えばいいことになっているから」
ん、んなワケない!
感染したか否かは後で調査するだろうから、それでバレるはずだ。
これは恐らく高野君のハッタリだろう。
パール:「御嬢様が研究所に行ったせいで化け物になったと聞きました。それで責任者に責任を取ってもらおうと思ったのです」
そう言って、『切り裂きパール』は私に冷たい目線を向けた。
マジかよ。
あれは人を殺したことのある目だ。
高橋:「『切り裂きパール』。本名は確か……霧崎真珠って言ったな」
霧崎:「高橋正義。昔の暴走族みたいな字を書く人だよね?『夜露死苦』とか『愛羅武勇』とか。……何か、思ってたのと違う」
一体何なんだ、この2人は?
私が呆気に取られていると、パール……いや、この際本名で呼ばせてもらおう。
霧崎真珠という本名を持つメイドは、私を見た。
霧崎:「御嬢様をお送りして頂けたことを確認しました。後程、旦那様に報告しておきます」
愛原:「あ、ああ。よろしくお願いしますよ」
高橋:「お、お笑いだな。敵を血祭に上げてた奴がメイドだと?」
霧崎:「お笑いだね。『下越のヤンキー』が探偵の助手なんて」
この2人、何か夫婦漫才してる?
霧崎:「御嬢様、早いとこ中へ入りましょう」
絵恋:「う、うん。だ、ダメよ?こんな所でケンカなんて……」
霧崎:「申し訳ございませんでした」
マンションの中に戻って行く2人を見送る私達。
高橋:「あいつ……いつの間に出所してやがったんだ」
高野:「多分向こうもそう思ってるでしょうよ。マサ、先生に隠し立てするのはダメだからね?アンタの昔の残りカスなんだか悪友なんだか元カノなんだか知らないけど、そのせいで先生が危険な目に遭うところだったんだから」
高野君がガシッと高橋の肩を掴む。
高橋:「べ、別に隠し立てしてねーし!元カノなんかじゃねーし!」
高野:「だったら、さっさと帰って先生に説明しな!このバカタレ!」
何気に女性にどつかれることの多い高橋だな~。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
中央高速の石川パーキングエリアで夕食を取った私達は再び車に乗り、菊川を目指した。
都内に入る頃から曇り出して来たが、都心ほど雨が降りやすいのか、首都高に入ると雨に当たった。
愛原:「雨か。この雨がウィルスを洗い流してくれるといいんだがな」
私はフロントガラスの上を規則正しく動くワイパーを見ながら言った。
車は既に最寄りの首都高出口で降り、都道を走行している。
高野:「実際、洗い流してくれていると思いますよ。だから感染率は屋外よりも屋内の方が高いんです」
愛原:「ま、そりゃそうだ」
映画や何かじゃ、バイオハザードたけなわの夜は雨が降っていることが多い。
ホラー的演出もあるのだろうが、私はウィルスが洗い流されたおかげで、町の外に拡散することは無かったという設定にしたいが為だと思っている。
もっとも、アメリカのルイジアナ州の農場で起きたバイオハザードでは何の意味も無かったようだがな。
あれはウィルスではなく、新種のカビを使った特異菌だそうで、雨が降って湿度が上がることで、余計に活性化されたのだろうと見ている。
愛原:「先に絵恋さんを送って行くから、そっちのマンションに行ってくれ」
高橋:「分かりました」
私は最初、絵恋さんを埼玉の実家に送るべきかどうか悩んだ。
そしたら絵恋さんが東京のマンションがいいと言ったので、そうすることにした。
〔「目的地周辺です。音声案内を終了します」〕
マンションの裏手にある駐車場に車を止める。
高橋:「ここでいいっスか?」
愛原:「いいだろう。絵恋さん、着いたよ」
絵恋:「はーい……」
絵恋さんは眠い目を擦った。
リサと同様、途中で疲れて寝てしまった。
愛原:「学校がいつ再開するのか分からないけど、また遊びに来なよ」
絵恋:「はい。ありがとうございます」
マンションの裏口からメイド服姿のメイドさんが傘を差して出て来た。
さすがにメイド服は目立つな。
もっとも、このマンションの住人達は既に慣れたらしいが。
昨今のサブカルチャーに見られるベタな法則通りのメイド服っぽく見えるところを見ると、どこかのメイドカフェの制服を模したものであろうか。
愛原:「おっ、そうだ。俺も挨拶しないと」
私も車を降りた。
メイド:「…………」
愛原:「絵恋さん、メイドさんの名前、何て言うんだっけ?」
絵恋:「私は『パール』と呼んでます。何か……パールがそう呼んでくださいって……」
愛原:「そうですか。パールさん、お疲れさまです。この通り、御嬢様をお連れしました。なので……」
何か変だな。
さっきから俯いたままだ。
パール:「…………」(←左手をスカートの中に突っ込み、左足にある何かを手にする)
高橋:「先生!!」
高橋はその『何か』を見逃さなかった。
次の瞬間、パールと名乗るメイドは傘を放り投げると、私目掛けてそれを振りかざして来た。
それは大型ナイフ。
高橋が私の前に入り、そのナイフを交わす。
愛原:「な、な、な……!?」
高橋:「どこかで見たことがあるかと思ったら、やっぱテメーか!」
パール:「どこかで見たことがあるかと思ったら、やっぱりアンタか」
え、なに!?
2人は知り合い!?
高橋:「『切り裂きパール』!」
パール:「『マーサー』!」
高橋は『切り裂きパール』の左手を掴んでねじ伏せ、見事にナイフを落とすが、パールもメイド服のポケットに入れていた胡椒を高橋の顔に振り掛ける。
あの高橋が押されているだと?
パールはナイフを拾い上げ、視界を失っている高橋に振り下ろそうとした。
高野:「そこまでだ。ナイフを捨てな」
高野君がパールの頭に銃を突きつけた。
絵恋:「ぱ、パール!やめなさい!」
ようやく絵恋さんがそう言うと、パールはパッとナイフを捨てた。
パール:「かしこまりました。御嬢様」
愛原:「おい、大丈夫か、高橋君!?」
高橋:「く、くそっ……!」
高野:「先を手を出したのはアンタだよ。事情を聞かせてもらおうかしら?言っとくけど、拒否権は無いからね。拒否しようものなら、あなたはこれから塀の中。それすら面倒なら、この引き金を引くまで。政府エージェントには、『メイドがゾンビ化し掛かったので射殺した』とでも言えばいいことになっているから」
ん、んなワケない!
感染したか否かは後で調査するだろうから、それでバレるはずだ。
これは恐らく高野君のハッタリだろう。
パール:「御嬢様が研究所に行ったせいで化け物になったと聞きました。それで責任者に責任を取ってもらおうと思ったのです」
そう言って、『切り裂きパール』は私に冷たい目線を向けた。
マジかよ。
あれは人を殺したことのある目だ。
高橋:「『切り裂きパール』。本名は確か……霧崎真珠って言ったな」
霧崎:「高橋正義。昔の暴走族みたいな字を書く人だよね?『夜露死苦』とか『愛羅武勇』とか。……何か、思ってたのと違う」
一体何なんだ、この2人は?
私が呆気に取られていると、パール……いや、この際本名で呼ばせてもらおう。
霧崎真珠という本名を持つメイドは、私を見た。
霧崎:「御嬢様をお送りして頂けたことを確認しました。後程、旦那様に報告しておきます」
愛原:「あ、ああ。よろしくお願いしますよ」
高橋:「お、お笑いだな。敵を血祭に上げてた奴がメイドだと?」
霧崎:「お笑いだね。『下越のヤンキー』が探偵の助手なんて」
この2人、何か夫婦漫才してる?
霧崎:「御嬢様、早いとこ中へ入りましょう」
絵恋:「う、うん。だ、ダメよ?こんな所でケンカなんて……」
霧崎:「申し訳ございませんでした」
マンションの中に戻って行く2人を見送る私達。
高橋:「あいつ……いつの間に出所してやがったんだ」
高野:「多分向こうもそう思ってるでしょうよ。マサ、先生に隠し立てするのはダメだからね?アンタの昔の残りカスなんだか悪友なんだか元カノなんだか知らないけど、そのせいで先生が危険な目に遭うところだったんだから」
高野君がガシッと高橋の肩を掴む。
高橋:「べ、別に隠し立てしてねーし!元カノなんかじゃねーし!」
高野:「だったら、さっさと帰って先生に説明しな!このバカタレ!」
何気に女性にどつかれることの多い高橋だな~。
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