[9月14日09:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
この日は臨時の休校日となった。
飛び降り自殺者が出たということで、学校側が対応に追われているからである。
愛原もまたPTA会長代行ということで、学校に行っており、事務所には高橋が残された。
学校が休みになったことで、リサも事務所にいるが、他にも桜谷が画材道具を持って訪ねて来た。
桜谷:「しばらく絵の続きが描けなかったので、何とか今日もお願いします」
リサ:「分かってる。愛原先生には許可を取った」
桜谷:「ありがとうございます!」
高橋:「ったくよー。ここはアトリエじゃねぇってんだ」
リサ:「愛原先生には許可を取ってある。今日は来客の予定は無いから、そっちの応接室を使っていいって」
高橋:「……ちっ、先生の御命令ならしょうがねぇ」
リサ:「そういうこと」
桜谷:「リサ様、早速準備をお願いします」
リサ:「分かった。衣装は持って来ている」
桜谷:「私も着替えます」
高橋:「来客の予定は無いが、善場のねーちゃんがひょっこり来るかもしれねーぞ?」
リサ:「その時はすぐ退ける」
リサと桜谷は、応接室に入って行った。
リサ:「ちょっと、ソファとテーブルを退かそうか」
桜谷:「はい」
リサ:「よいしょっと」
リサ、カウチソファをひょいと持ち上げた。
桜谷:「さ、さすがは魔王様……」
リサ:「これくらい、軽い軽い。オリジナルの大先輩なんか、手枷付きの状態で、石像を叩き壊すくらいだから」
桜谷:「さ、さすがです……」
制作スペースを確保した後、2人は体操服とブルマに着替える。
桜谷は学校指定の緑ブルマであるが、リサは紺色のブルマであった。
リサの愛読マンガ“ドキュンサーガ”の魔王の衣装をモチーフにしているものだが、魔王らしくするということで、リサの場合は上に黒マントを羽織り、右手にはゴツい意匠の付いた杖を持っている。
桜谷は体操服の上から、エプロンを着用した。
リサ:「だいぶ描けてるんじゃない?」
桜谷:「そうですね。おかげさまで、今月中には描き終われそうです」
リサ:「わたしの血入り絵具と、寄生虫をすり潰して抽出した体液を混ぜた絵具を使えば、最優秀賞間違いナシだよ」
桜谷:「さ、さすがは魔王様……。け、血気術か何かですか?」
リサ:「そうとも言う!……あんまり力を使い過ぎると、鬼斬りセンパイに斬られるから程々にしておこう」
桜谷:「あの栗原先輩、そんなに凄い方なんですか。確かに、左足が義足ながら、女子剣道部の中では1番強いという噂ですが……」
リサ:「西日本の方では、わたしの同族をぶった斬ったって話だよ」
桜谷:「そんなに!?」
リサ:「まあ、わたしに言わせれば、そいつらが弱かっただけだと思うけどね」
桜谷:「その、魔王様と同族の話なのですが……」
リサ:「ん?」
桜谷:「聖クラリス学院のことは御存知ですよね?」
リサ:「ああ、あの女子校。あそこも、わたしの同族が支配しようとしたらしいんだけど、失敗したね。ざまぁみろ」
桜谷:「そのやり方なんですが……」
リサ:「ん?」
桜谷:「生徒会長ではないですが、魔王様の同族の不興を買ったコが、うん○をお漏らしさせられたそうです」
リサ:「ほお……?寄生虫を使役できるのは、わたしだけのはずだけど?」
桜谷:「どうやったのかは知りませんが、相当のイジメっ子だったようです」
リサ:「ん、だろうね。わたしに限らず、日本版リサ・トレヴァー全員がSだから」
嗜虐性に富んだ生物兵器同士、仲良くできるのは上辺だけ。
ちょっとでもそのバランスが崩れようものなら、流血の惨を見る事、必至である。
リサ:「……準備できた。同じポーズでいい?」
桜谷:「もちろんです。よろしくお願いします」
リサ:「可愛く描いてくれてる?」
桜谷:「魔王様らしく、凛々しく描かせて頂いております」
リサ:「凛々しく……。まあ、“ドキュンサーガ”の魔王様のように描いてくれればいいや」
桜谷:「お任せください」
[同日15:00.天候:雷雨 同事務所]
愛原:「ふぅーっ!参った参った!まさか、このタイミングでゲリラ豪雨とは……」
愛原が事務所に帰所してくる。
高橋:「お帰りなさい、先生。まさか、駅からずっと走って?言ってくれれば俺、迎えに行きましたのに……」
愛原:「いや、秋葉原駅からタクシーに乗ったから、それはいいよ。秋葉原駅から岩本町駅に行こうとした時、さすがに降りそうだったから、タクシーにした。事務所の前で降りたから、そんなに濡れてない」
高橋:「そうでしたか」
愛原:「リサはどうした?」
高橋:「そっちで絵のモデルやってます」
愛原:「そうか……」
愛原は応接室のドアをノックした。
リサ:「はーい!」
愛原:「俺だ。ちょっと今、いいか?」
リサ:「先生!……今行く!」
リサはすぐに応接室から出た。
さすがに黒マントは脱いで、杖も室内に置いている。
愛原:「制作の邪魔だったかな?」
桜谷:「いいえ。ちょうど、休憩を挟もうとしていたところでしたので」
愛原:「そうか。話があるから、ちょっと来てくれないかな」
リサ:「分かった」
桜谷:「分かりました」
体操服にブルマ姿の少女2人は、応接室から出た。
そして、応接室とは別の打ち合わせコーナーに向かった。
愛原:「まず、明日は普通に学校が始まる」
桜谷:「そうですか」
愛原:「当然ながら、臨時の全体朝礼が行われることになっていて、そこで校長先生などから説明がある。その後で、黙祷などを捧げることになるだろう」
そう言って、愛原はリサをチラッと見た。
愛原:「日本版リサ・トレヴァーの習性で、『“武士の情け”などクソ食らえ』『敵と見做した者は、例え死者となっても鞭をガッツリ打て』という日本人の美学に反した物を持っているのは知っている。恐らくリサ、オマエもそうなんだろう?」
リサ:「そうだね。『敵には容赦無く』『完膚なきまでに叩き潰す』『武士の情け”なんて必要ない』『敵が死んだら鞭打つどころか、墓石を蹴り倒しても構わない』くらいの勢いだけど?」
万が一、死者が怨霊として化けて出て来て祟られた時のことなど全く考えない“鬼”そのものであった。
愛原:「そ、そうか」
その為、リサは霧生市で初めて愛原と会った時、最初から敵とは見做していなかったのではないかと思われる。
そしてそんな愛原も、リサを化け物だとは思わなかった。
それが引いては、今のような関係に発展したわけである。
愛原:「一度敵と見做した者に黙祷とは苦痛だと思うけど、これも日本の学校だ。そこに通っている以上は、オマエも一緒に黙祷しなければならない。いいか?」
リサ:「……愛原先生の命令なら従う」
愛原:「そうだ。俺の命令だ」
高橋:「リサ。先生の御命令は絶対だぞ?」
リサ:「分かってるよ」
桜谷:「それで、その……。会長の告別式とかは、どうなるんですか?」
桜谷が遠慮がちに挙手しながら質問した。
愛原:「まだ、警察の司法解剖の最中だから。それが終わってからだな。ただ……リサ、その会長に、だいぶGウィルスを送り込みやがったか?」
リサ:「えっ?えっと……それは……」
すると高橋、手持ちのライトニング・ホークをリサのこめかみに突き付けた。
悲鳴を上げる桜谷。
高橋:「やったのかよ?先生の尋問に答えなきゃ、引き金を引くぞ?」
リサ:「ただの脅し。わたしはそんなもので死なない。……まあ、さすがに痛いけど」
高橋:「だったら答えろや!!」
愛原:「まあまあ、高橋。リサはともかく、桜谷さんが怖がってるだろうが」
高橋:「は、はあ……」
愛原:「銃を下ろせ」
高橋:「は、はい」
愛原:「それで、どうなんだ?」
リサ:「わたしの寄生虫を送り込んだ。先生も知ってると思うけど、わたしの寄生虫はGウィルスとTウィルスに感染している」
愛原:「やっぱりなぁ……」
高橋:「やっぱりって何なんスか?」
愛原:「リサの寄生虫は宿主が死ぬと、自動的に死滅するようにはなっているんだけど、GウィルスやTウィルスまでは消えない」
高橋:「それってつまり……」
愛原:「死んだ会長は、その2つのウィルスに感染しているということだよ。今、BSAAが解剖先の病院に向かって、遺体を回収しに行くところだ」
高橋:「大ごとっスねぇ。どっかの誰かさんのせいで?」
高橋はわざとらしく、リサをチラ見した。
愛原:「あれでは告別式どころの騒ぎじゃないだろう?」
桜谷:「あの、結局どういうことなんですか?告別式とかは……」
愛原:「桜谷さんは、コロナ禍第1波辺りの騒ぎは覚えてるだろう?」
桜谷:「え、ええ。マスクが思いっ切り不足したり、トイレットペーパーが不足したりしましたね」
愛原:「まあ、そうなんだが、今はそこじゃない。あの時期に亡くなった、志村けんのことは知ってるだろう?」
桜谷:「そうですね」
愛原:「志村けんはコロナに感染して死んだことになってる。だが、遺族は遺体と対面できなかったそうだ」
高橋:「有名な話ですね」
愛原:「コロナ感染死に限らず、伝染病などで死んだ人間は、遺体と会わせられないそうだ。もちろん、伝染病の内容にもよるだろうが」
桜谷:「今回の場合は……」
愛原:「BSAAとWHOの見解では、生物兵器ウィルスに感染して死んだ人間は、速やかに火葬することが望ましいとしている。当然、日本政府もそうしている。霧生市でゾンビ化した市民に対し、遺族は2度と対面できなかったそうだ。そういうことだよ」
桜谷:「すると告別式は無し……」
愛原:「お別れ会はするだろうな」
それだけ恐ろしいウィルスを、リサは保有しているのである。
リサ自身が生物兵器(BOW)と呼ばれる所以である。
この日は臨時の休校日となった。
飛び降り自殺者が出たということで、学校側が対応に追われているからである。
愛原もまたPTA会長代行ということで、学校に行っており、事務所には高橋が残された。
学校が休みになったことで、リサも事務所にいるが、他にも桜谷が画材道具を持って訪ねて来た。
桜谷:「しばらく絵の続きが描けなかったので、何とか今日もお願いします」
リサ:「分かってる。愛原先生には許可を取った」
桜谷:「ありがとうございます!」
高橋:「ったくよー。ここはアトリエじゃねぇってんだ」
リサ:「愛原先生には許可を取ってある。今日は来客の予定は無いから、そっちの応接室を使っていいって」
高橋:「……ちっ、先生の御命令ならしょうがねぇ」
リサ:「そういうこと」
桜谷:「リサ様、早速準備をお願いします」
リサ:「分かった。衣装は持って来ている」
桜谷:「私も着替えます」
高橋:「来客の予定は無いが、善場のねーちゃんがひょっこり来るかもしれねーぞ?」
リサ:「その時はすぐ退ける」
リサと桜谷は、応接室に入って行った。
リサ:「ちょっと、ソファとテーブルを退かそうか」
桜谷:「はい」
リサ:「よいしょっと」
リサ、カウチソファをひょいと持ち上げた。
桜谷:「さ、さすがは魔王様……」
リサ:「これくらい、軽い軽い。オリジナルの大先輩なんか、手枷付きの状態で、石像を叩き壊すくらいだから」
桜谷:「さ、さすがです……」
制作スペースを確保した後、2人は体操服とブルマに着替える。
桜谷は学校指定の緑ブルマであるが、リサは紺色のブルマであった。
リサの愛読マンガ“ドキュンサーガ”の魔王の衣装をモチーフにしているものだが、魔王らしくするということで、リサの場合は上に黒マントを羽織り、右手にはゴツい意匠の付いた杖を持っている。
桜谷は体操服の上から、エプロンを着用した。
リサ:「だいぶ描けてるんじゃない?」
桜谷:「そうですね。おかげさまで、今月中には描き終われそうです」
リサ:「わたしの血入り絵具と、寄生虫をすり潰して抽出した体液を混ぜた絵具を使えば、最優秀賞間違いナシだよ」
桜谷:「さ、さすがは魔王様……。け、血気術か何かですか?」
リサ:「そうとも言う!……あんまり力を使い過ぎると、鬼斬りセンパイに斬られるから程々にしておこう」
桜谷:「あの栗原先輩、そんなに凄い方なんですか。確かに、左足が義足ながら、女子剣道部の中では1番強いという噂ですが……」
リサ:「西日本の方では、わたしの同族をぶった斬ったって話だよ」
桜谷:「そんなに!?」
リサ:「まあ、わたしに言わせれば、そいつらが弱かっただけだと思うけどね」
桜谷:「その、魔王様と同族の話なのですが……」
リサ:「ん?」
桜谷:「聖クラリス学院のことは御存知ですよね?」
リサ:「ああ、あの女子校。あそこも、わたしの同族が支配しようとしたらしいんだけど、失敗したね。ざまぁみろ」
桜谷:「そのやり方なんですが……」
リサ:「ん?」
桜谷:「生徒会長ではないですが、魔王様の同族の不興を買ったコが、うん○をお漏らしさせられたそうです」
リサ:「ほお……?寄生虫を使役できるのは、わたしだけのはずだけど?」
桜谷:「どうやったのかは知りませんが、相当のイジメっ子だったようです」
リサ:「ん、だろうね。わたしに限らず、日本版リサ・トレヴァー全員がSだから」
嗜虐性に富んだ生物兵器同士、仲良くできるのは上辺だけ。
ちょっとでもそのバランスが崩れようものなら、流血の惨を見る事、必至である。
リサ:「……準備できた。同じポーズでいい?」
桜谷:「もちろんです。よろしくお願いします」
リサ:「可愛く描いてくれてる?」
桜谷:「魔王様らしく、凛々しく描かせて頂いております」
リサ:「凛々しく……。まあ、“ドキュンサーガ”の魔王様のように描いてくれればいいや」
桜谷:「お任せください」
[同日15:00.天候:雷雨 同事務所]
愛原:「ふぅーっ!参った参った!まさか、このタイミングでゲリラ豪雨とは……」
愛原が事務所に帰所してくる。
高橋:「お帰りなさい、先生。まさか、駅からずっと走って?言ってくれれば俺、迎えに行きましたのに……」
愛原:「いや、秋葉原駅からタクシーに乗ったから、それはいいよ。秋葉原駅から岩本町駅に行こうとした時、さすがに降りそうだったから、タクシーにした。事務所の前で降りたから、そんなに濡れてない」
高橋:「そうでしたか」
愛原:「リサはどうした?」
高橋:「そっちで絵のモデルやってます」
愛原:「そうか……」
愛原は応接室のドアをノックした。
リサ:「はーい!」
愛原:「俺だ。ちょっと今、いいか?」
リサ:「先生!……今行く!」
リサはすぐに応接室から出た。
さすがに黒マントは脱いで、杖も室内に置いている。
愛原:「制作の邪魔だったかな?」
桜谷:「いいえ。ちょうど、休憩を挟もうとしていたところでしたので」
愛原:「そうか。話があるから、ちょっと来てくれないかな」
リサ:「分かった」
桜谷:「分かりました」
体操服にブルマ姿の少女2人は、応接室から出た。
そして、応接室とは別の打ち合わせコーナーに向かった。
愛原:「まず、明日は普通に学校が始まる」
桜谷:「そうですか」
愛原:「当然ながら、臨時の全体朝礼が行われることになっていて、そこで校長先生などから説明がある。その後で、黙祷などを捧げることになるだろう」
そう言って、愛原はリサをチラッと見た。
愛原:「日本版リサ・トレヴァーの習性で、『“武士の情け”などクソ食らえ』『敵と見做した者は、例え死者となっても鞭をガッツリ打て』という日本人の美学に反した物を持っているのは知っている。恐らくリサ、オマエもそうなんだろう?」
リサ:「そうだね。『敵には容赦無く』『完膚なきまでに叩き潰す』『武士の情け”なんて必要ない』『敵が死んだら鞭打つどころか、墓石を蹴り倒しても構わない』くらいの勢いだけど?」
万が一、死者が怨霊として化けて出て来て祟られた時のことなど全く考えない“鬼”そのものであった。
愛原:「そ、そうか」
その為、リサは霧生市で初めて愛原と会った時、最初から敵とは見做していなかったのではないかと思われる。
そしてそんな愛原も、リサを化け物だとは思わなかった。
それが引いては、今のような関係に発展したわけである。
愛原:「一度敵と見做した者に黙祷とは苦痛だと思うけど、これも日本の学校だ。そこに通っている以上は、オマエも一緒に黙祷しなければならない。いいか?」
リサ:「……愛原先生の命令なら従う」
愛原:「そうだ。俺の命令だ」
高橋:「リサ。先生の御命令は絶対だぞ?」
リサ:「分かってるよ」
桜谷:「それで、その……。会長の告別式とかは、どうなるんですか?」
桜谷が遠慮がちに挙手しながら質問した。
愛原:「まだ、警察の司法解剖の最中だから。それが終わってからだな。ただ……リサ、その会長に、だいぶGウィルスを送り込みやがったか?」
リサ:「えっ?えっと……それは……」
すると高橋、手持ちのライトニング・ホークをリサのこめかみに突き付けた。
悲鳴を上げる桜谷。
高橋:「やったのかよ?先生の尋問に答えなきゃ、引き金を引くぞ?」
リサ:「ただの脅し。わたしはそんなもので死なない。……まあ、さすがに痛いけど」
高橋:「だったら答えろや!!」
愛原:「まあまあ、高橋。リサはともかく、桜谷さんが怖がってるだろうが」
高橋:「は、はあ……」
愛原:「銃を下ろせ」
高橋:「は、はい」
愛原:「それで、どうなんだ?」
リサ:「わたしの寄生虫を送り込んだ。先生も知ってると思うけど、わたしの寄生虫はGウィルスとTウィルスに感染している」
愛原:「やっぱりなぁ……」
高橋:「やっぱりって何なんスか?」
愛原:「リサの寄生虫は宿主が死ぬと、自動的に死滅するようにはなっているんだけど、GウィルスやTウィルスまでは消えない」
高橋:「それってつまり……」
愛原:「死んだ会長は、その2つのウィルスに感染しているということだよ。今、BSAAが解剖先の病院に向かって、遺体を回収しに行くところだ」
高橋:「大ごとっスねぇ。どっかの誰かさんのせいで?」
高橋はわざとらしく、リサをチラ見した。
愛原:「あれでは告別式どころの騒ぎじゃないだろう?」
桜谷:「あの、結局どういうことなんですか?告別式とかは……」
愛原:「桜谷さんは、コロナ禍第1波辺りの騒ぎは覚えてるだろう?」
桜谷:「え、ええ。マスクが思いっ切り不足したり、トイレットペーパーが不足したりしましたね」
愛原:「まあ、そうなんだが、今はそこじゃない。あの時期に亡くなった、志村けんのことは知ってるだろう?」
桜谷:「そうですね」
愛原:「志村けんはコロナに感染して死んだことになってる。だが、遺族は遺体と対面できなかったそうだ」
高橋:「有名な話ですね」
愛原:「コロナ感染死に限らず、伝染病などで死んだ人間は、遺体と会わせられないそうだ。もちろん、伝染病の内容にもよるだろうが」
桜谷:「今回の場合は……」
愛原:「BSAAとWHOの見解では、生物兵器ウィルスに感染して死んだ人間は、速やかに火葬することが望ましいとしている。当然、日本政府もそうしている。霧生市でゾンビ化した市民に対し、遺族は2度と対面できなかったそうだ。そういうことだよ」
桜谷:「すると告別式は無し……」
愛原:「お別れ会はするだろうな」
それだけ恐ろしいウィルスを、リサは保有しているのである。
リサ自身が生物兵器(BOW)と呼ばれる所以である。
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