報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「戦いの後で」

2024-12-06 15:15:13 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日14時30分 天候:曇 静岡県富士宮市某所 国道469号線・林道交差点]

 愛原公一「あー、もしもし。ワシぢゃ。状況を教えてくれ」

 車に戻って、状況を整理していると、公一伯父さんから私のスマホに掛かってきた。

 愛原学「伯父さん……。少しは、甥っ子の心配してくれないの?」
 公一「何を言うとる?主人公のオマエが死ぬわけなかろうw」
 学「主人公って……」
 公一「高野から聞いたぞ。オマエ達も騙されたらしいな?」
 学「どこで間違えたんだろう?高橋が騙すような奴には見えなかったのに……」
 公一「恐らくは、コハクが連絡を取って来た時点で、騙されたということじゃろう」
 学「どういうことだ?」
 公一「こちら側の見立てでは、偽者じゃということじゃよ」
 学「偽者!?じゃあ、本物はどこに!?」
 公一「知らんよ。とはいえ、ワシらの方は大ハズレでも、オマエ達の方は大ハズレというほどでもないじゃろう。何か、収穫はあったかね?」
 学「取りあえず、アンバー……偽者のコハク?から、鍵を分捕ってきた」
 公一「でかした!して、その鍵とやらは?」
 学「あんまり大きくないね。恐らく、どこかのコインロッカーの鍵だと思う」
 公一「フム。タグは見えんのか?」
 学「あ……だいぶ落ちかかってるね。……富士宮駅かな?」
 公一「フム。富士宮駅なら、コインロッカーがあるぞ」
 学「西富士宮駅は?」
 公一「そっちは見たこと無い。いいから、富士宮駅のコインロッカーを見てくるのぢゃ」
 学「分かったよ」

 私は電話を切った。

 愛原「どうもこの鍵は、富士宮駅のコインロッカーの物らしい。ちょっと見てこよう」
 パール「分かりました」

 尚、パールは車から降りてタバコを吸っている。
 車は禁煙車なので、車内で吸えないのだ。

 リサ「でも来た道の方は、通行止めでしょ?どうするの?」
 愛原「迂回すれば大丈夫だろ。通行止めになったのは国道だけ。他の道まで通行止めになったわけじゃない」
 リサ「なるほど」

 幸いこの車にはカーナビがある。
 迂回などの機能もあるので、それを駆使して……と。

〔実際の交通規則に従って、走行してください〕

 愛原「よし。あとはこの通りで頼む」
 パール「かしこまりました」
 愛原「……あっ、待って。その前に、善場係長に電話してみる。ここから離れてもいいかどうか」
 パール「はい」

 私は善場係長に電話を掛けた。

 愛原「ん?」

 だが、何度掛けても係長は出なかった。

 愛原「出ないな……」
 パール「どうされますか?」
 愛原「いいや。取りあえず、ここから離れよう。富士宮駅に向かおう」
 パール「かしこまりました」

 国道は突然発生した土砂崩れによる通行止めで、渋滞が発生している。
 大石寺の方向が通行止めになってしまったわけだが、車がUターンして戻って来ている。
 2車線の比較的広い国道ではあるが、乗用車などは難無くUターンできても、大型トラックなどは難儀している。
 それが渋滞を発生させているのだ。
 私達はそれを横目に、富士サファリパーク方面の道に出た。

 愛原「少し行くと、右に逸れる道がある。そこに入って、県道と合流すればいいようだ」
 パール「分かりました」
 リサ「ねぇ、途中にコンビニとかあるかな?」
 愛原「県道に入れば、あるかもしれないな。うん、途中でコンビニを見つけたら立ち寄ろう」
 リサ「やった!」

 私は途中、何度か善場係長と音声通話を試みたが、どうしても繋がらない。
 メールで報告しようかとも思ったが、揺れる車の中、しかもナビを設定しているとはいえ、パール1人に土地勘の無い所を走らせるのは不安だ。
 取りあえずコンビニか、もしくは富士宮駅まで行ってからもう1度連絡しようと思った。

[同日15時00分 天候:曇 静岡県富士宮市小泉 セブンイレブン富士宮橋戸店]

 県道158号線(大坂富士宮線)を市街地の方に向けて走っていると、ようやく他の県道との交差点の角にコンビニを見つけた。

 リサ「あっ、あった!」

 リアシートに座るリサが、助手席と運転席の間から顔を出す。

 愛原「あそこで一旦、休憩にしよう」
 パール「かしこまりました」

 車はコンビニの駐車場に止まる。

 パール「はい、到着です」
 愛原「ありがとう」
 リサ「トイレトイレ!」

 リサは車から降りると、小走りに店の中に入って行った。

 パール「善場係長から御連絡は?」
 愛原「いや、まだ無いな」

 車の揺れも無くなったことだし、私はスマホでメールを打った。

 パール「私も降りて宜しいですか?」
 愛原「いいよ。俺もメール打ったら降りるから」

 パールは車から降りると、店の前の吸い殻入れに向かう。
 先に一服したいようだ。
 メールで報告すると言っても、長文はあれなので、概要だけ作成し、詳しいことは後ほど報告書を作成して報告するか、あるいは対面で報告したい旨を打った。
 あと、アンバーから奪った鍵は富士宮駅のコインロッカーの物らしいので、それを今、確認に向かっていること、そして今は途中のコンビニで休憩している所まで報告した。
 さすがに、公一伯父さんから連絡があった所は内緒にしておいた。
 送信には成功したが、すぐに返信があったわけではない。
 段々心配になってきた。
 重要な会議や打ち合わせが入って、それで電話できないのだと思っていたのだが……。
 私はスマホを持って、車を降りた。
 私もトイレを借りるついでに、飲み物とかを買うことにした。

 愛原「おっ、リサ」
 リサ「トイレなら空いてるよ」
 愛原「それは良かった」
 リサ「お腹空いたから、食べ物とかも買っていい?」
 愛原「いいよ。昼抜きだったもんな」
 リサ「そうだよ!」

 私もトイレを済ませると、缶コーヒーや水のペットボトルを買い足した。
 既に空になった缶やペットボトルは、ここのゴミ箱に捨てさせてもらう。
 まだ緊張している為か、私自身はそんなに食欲は無かった。
 パンを何個か買うに留まったが、リサは違った。
 レジに陳列されているフライドチキンやフランクフルトなどは、当たり前のように何個も買っている。
 こりゃ、夕食もガッツリ食うだろうなと思った。

 愛原「ただいま。パールも何か食べ物とか買ったら?」
 パール「ありがとうございます」

 買い物を終えて駐車場に出ると、パールが車のボンネットなどを覗き込んでいる。

 愛原「どうした?」
 パール「いえ、アンバーのヤツ、車を傷つけやがりましたね……」

 見ると、ボディにはあちこち、アンバーが付けたと思われる血の跡や引っ掻き傷ができていた。
 血の跡は洗車すれば落とせるだろうが、引っ掻き傷は……誤魔化せないだろうな。
 鋭い爪を生やしていて、それで車にしがみ付いて来たものだから、それで傷が付いたのだろう。

 愛原「しょうがない。『山道を走っていて、野生動物に遭遇した』とでも、言っておくしかないだろう」

 私はスマホで傷を撮影すると、レンタカーショップに連絡した。
 まあ、山道を走っていたのは事実だから。
 店側の回答としては、返却時に直接傷を確認したいとのことだった。

 パール「あ……」
 愛原「どうした?」
 パール「いえ。ドラレコにしっかり映ってるでしょうから、誤魔化せますかね?」
 愛原「あっ、忘れてた!……まあ、いいや。その辺も後で善場係長と相談してみるよ」
 パール「分かりました。私もちょっとお店へ……」
 愛原「ああ、行ってこい。リサは食べるのに夢中だから」

 先に車に乗り込んだリサは、リアシートで肉系をガツガツ食べていた。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「大ボ... | トップ | “私立探偵 愛原学” 「戦い... »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事