報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「夜の逃走劇」

2024-12-15 16:10:27 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[6月14日21時30分 天候:曇 埼玉県さいたま市中央区上落合某所 斉藤家]

 私は何度か善場係長のスマホに掛けてみたが繋がらなかった。
 コールはしているが、出ない状態である。
 よほど何か忙しいのだろうか?
 静岡で、新たな何かが見つかったのかもしれない。

 愛原「電話に出ない。しょうがないから、また後で掛ける。取りあえず一旦、ここを出よう」
 パール「はい」

 ところがだ。
 家の前を車が止まる音がした。
 それも普通乗用車の類ではなく、大型車の類。
 それも、何台もだ。

 愛原「ん?」

 私がカーテンの隙間から外を覗くと、家の前の細い道を何台もの装甲車が占拠している。
 その車体には、BSAAの表記が見て取れた。

 愛原「BSAAだ!……そうか!彼らも、斉藤社長の足跡を嗅ぎ付けて来たんだ!」

 と、この時はそう思っていた。
 なので私は、ここで手に入れた情報をBSAAに提供してあげようと思った。
 ……のだが!

 BSAA隊長「開けろ!BSAAだ!ここにいることは分かっている!無駄な抵抗はやめて出て来い!従わない場合は、安全の保障はできかねる!」
 愛原「んん!?」

 まるでここに、BSAA手配犯がいるかのような言動だ。
 まさか、この家の中に誰か隠れているのか!?
 だが、どうやら違うようだ。

 BSAA隊長「探偵の愛原学!オマエにはバイオテロ加担の容疑が掛かっている!!ここに潜伏していることは分かっている!無駄な抵抗はやめて……」
 愛原「はいーっ!?」

 な、何の事だ!?

 リサ「せ、先生!?これってどういうこと!?」
 愛原「わ、分からん!」

 私はもう1度、善場係長に電話を掛けた。
 だが、やはり繋がらない。

 パール「もしかしたら、ハメられたのかもしれませんね」
 愛原「ハメられた!?誰に!?」
 パール「それは分かりませんが、このままだと、何の言い分も聞かれずに逮捕されてしまいます。デイライトの人達と連絡が取れるまでは、何とか逃げた方がいいかもしれません」
 愛原「ま、マジか……。でも、どうする?1階は包囲されてるぞ?」
 パール「大丈夫です。秘密の地下通路を知っています。そこからなら脱出可能かと」
 愛原「そ、そんなものがあったのか!」
 パール「御主人様は、いずれ逮捕されることを覚悟されておられたのかもしれません。急ぎましょう。こっちです」

 私達が書斎を出た時だった。
 上空からサーチライトを照らしたヘリコプターまで現れた。

 レイチェル「リサの裏切り者ーっ!!」

 ズコーッ!!

 リサ「わ、わたしまで!?」

 ヘリにはレイチェルも乗っているのか、そこのスピーカーからレイチェルの叫び声がした。

 パール「すると、私も指名手配ということですね?上等です!」
 愛原「ぱ、パール!『切り裂きパール』の目付きに戻ってるぞ!?」

 幸いなのは、廊下は真っ暗なこと。
 おかげで、外側から私達がどこにいるか分からないということだ。
 それにしても不思議だ。
 いきなりBSAAが捕まえに来るなんて、一体どういう情報が飛んでいるのだろう?
 リサが暴走したというわけではない。
 もしそうなら、とっくにアプリがアラームを鳴らしている。
 大体、善場係長が電話に出ないなんて……。

 パール「このエレベーターで地下まで下ります」
 愛原「分かった」

 私達は先ほどのホームエレベーターに乗り込んだ。
 廊下が真っ暗なだけに、エレベーターの籠内の照明がとても眩しい。
 パールはポケットの中から小さな鍵を取り出すと、それでエレベーターのスイッチボックスの蓋を開けた。
 それで何かボタンを操作すると、地下1階のボタンの横に、地下2階のボタンが現れる。
 パールはそのボタンを押した。
 エレベーターのドアが閉まり、ゆっくりと下に下りて行く。

 愛原「地下2階なんてあるのか!?」
 パール「表向きは倉庫ということになっていますが」

 因みに地下1階はガレージと使用人控室(メイドが泊まり込む部屋と、お抱え運転手が泊まり込む部屋)、そして小さなジムやプールがある。
 真っ暗な2階を通過すると、たまたまヘリから照射されたライトが窓を通して直撃した。
 そして、上昇して行った。
 この家にも屋上があり、そこにヘリ隊員がロープか何かで降下するのかもしれない。
 そして、1階を通過した時、ついに玄関が破られて、地上部隊が突入してきた。

 BSAA隊長「いたぞーっ!!エレベーターだ!!」
 愛原「うわ、バレた!!」

 隊員達がエレベーターに駆け寄って来てエレベーターのボタンを押すが、既にエレベーターは1階を通過した後だった。
 上からドアをドンドン叩いたり蹴ったりする音が聞こえる。
 そして地下1階を通過するが、頑丈なシャッターを何とか破ろうと、向こう側で努力している音が聞こえるだけだった。

〔地下2階です〕

 そして、エレベーターは地下2階に到着する。
 そこも真っ暗だった。
 人の出入りが無いのか、黴臭い。
 エレベーターを降りると、パールは籠内にあるエレベーターの操作盤を何やら触っていた。

 パール「これで、上でボタンを押していても、しばらくエレベーターは動きません」
 愛原「そ、そうか!」
 リサ「で、でも階段で追って来たりしたら……」
 パール「大丈夫です。こちら側に階段はありません」
 愛原「そういうことか……。で、秘密の通路はどこだ?」
 パール「こちらです」

 倉庫の照明を着けて奥へ進むと、壁の下に通気口のような物があった。
 屈めばようやく通れる大きさだ。
 パールはそのグレーチングを外した。

 パール「こちらです」
 愛原「通気口に擬態しているとはね……」
 リサ「BOWになった気分……」
 愛原「いや、BOWだろ」
 リサ「おっと!」

 私達は通気口の中に入った。
 狭いのは入口だけで、あとは私の身長なら、何とか立って進める程度の高さになる。
 幅も大人1人分の幅といった感じだった。
 照明も所々に工事現場で使われる『チューリップ』が点灯している。

 愛原「どこまで続いてるんだ?」
 パール「上落合公園の公衆トイレです」
 愛原「おいおい!公園は公共設備だぞ?よくそんな勝手なことできたな!?」
 パール「御主人様は地域の名士でしたから、公園整備の費用も自治体に寄付していたそうです。公衆トイレの整備費用も私費で御寄附されていたとのことで、それである程度『お好き』にできたのではないでしょうか?」
 愛原「はー……さすがだな」

 そんなことを話しているうちに、上に上がる梯子を見つける。

 パール「私が様子を見て来ます」
 愛原「ああ」

 パールが先に梯子を上がり、マンホールに模した蓋を開けた。

 パール「……大丈夫です。公園にまでは、彼らは展開していないようです」
 愛原「よし!」

 私とリサは急いで地上に出た。
 公園越しに、住宅街側の道路を見ると、大騒ぎになっているのが見えた。

 パール「これから、どうされますか?」
 愛原「この様子では、北与野駅に向かうのは危険だろう。この近くに、イオンモールがあったな。取りあえず、そこに逃げ込もう」
 パール「かしこまりました」

 イオンモールなら、斉藤家とは反対方向だ。
 私達はそこに向かった。

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