報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“魔女エレーナの日常” 「鈴木が見た悪夢」

2018-08-20 19:03:26 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月12日02:00.天候:(都合良く)雷雨 東京都墨田区菊川 鈴木のマンション]

 鈴木はエレーナの拠点であるワンスターホテルの近くいたい為、わざわざ首都圏内にある実家を出て一人暮らしをしている。
 エレーナにコミケのサークル運営を手伝ってもらったのはいいのだが、肝心の報酬を渡すのを忘れてしまった。
 次の日に渡せば良いと高を括り、この日は眠ってしまった。
 しかし、それが鈴木にとってバッドエンドにも等しい悪夢の始まりだった。

 鈴木:「うう……ん……」

 ……ふと寝苦しくて鈴木は目が覚めた。
 胸が重い。
 胸をグッと押されているような感じがする。
 何か、いる。
 鈴木の部屋に、誰かがいる。
 しかし、鈴木は怖くて目が開けられなかった。
 と、鈴木の顔に生暖かい息が吹き掛けられる。
 何だか酒の臭いがする。
 誰だ?
 誰が、鈴木の胸に乗っかっている?
 体が動かない。
 金縛りである!
 まるで蛇の舌が稲生の顔をなめるように、生暖かい息が万遍なく鈴木の顔に吹きかけられる。
 その息は、鈴木の耳元で動きが止まった。
 何か、呟いている。
 ぼそぼそとよく聞き取れない声が、鈴木の耳に忍び込んでくる。
 その声は、次第に大きくなっていった。

 ???:「殺してやる……殺してやる……!」

 生暖かく、酒の臭いの混じった息が吐かれるたびに、呪いの言葉が鈴木の耳をなでまわす。

 鈴木:「うわあっ!」

 鈴木は、あまりの怖さに目を見開いた。
 そこに、彼女はいた。
 ナイフを手にしたリリアンヌが、鈴木の胸の上に乗っていた。
 その姿は覚醒している時のものだ。
 稲生を見据える目の瞳孔は収縮し、瞳全体が灰色で中央に黒い点が入っている。

 リリアンヌ:「フヒヒヒヒヒヒ……ヒック!お、お前は……エレーナ先輩をタダ働きさせた……!これは大きな罪だ……!」
 鈴木:「せ、先輩!?き、キミはエレーナの後輩なのか!?」
 リリアンヌ:「エレーナ先輩が大嫌いなタダ働きさせる男なんて大嫌い……!だ、だから、お、おおオマエを殺す……!」
 鈴木:「ま、待ってくれ!俺はタダ働きさせるつもりなんて無い!ただ、渡すのを忘れてしまったんだ!明日、渡しに行くはずだったんだよ!」

 小柄な魔女っ娘とも言えるリリアンヌ。
 だから力任せに跳ね除ければ、そうできそうなものだ。
 だが、何故ができなかった。
 まるでリリアンヌが巨漢のように重く感じられた。

 リリアンヌ:「ヒャーッハッハッハッハッハー!死ねぇぇぇぇぇっ!!」

 リリアンヌは手持ちのウィスキーボトルを一気飲みすると、高笑いして大型ナイフを鈴木の胸や喉に何度も突き刺した。

[同日同時刻 天候:曇 同じく鈴木の部屋]

 鈴木:「わあーっ!」

 鈴木は絶叫を上げて飛び起きた。

 鈴木:「ゆ、夢……!?」

 鈴木は自分が悪夢を見ていたことに気づいた。
 試しにリリアンヌに刺された額や首、胸を触ってみるが、傷痕1つ無かったし、血の一滴も出た痕跡も無い。

 鈴木:「はぁ……!びっくりした……!」

 鈴木はホッとすると同時に、言い知れぬ不安に襲われた。

 鈴木:(でも何であんな夢を見たんだろう?あれはもしかして、報酬を受け取っていないことに気づいたエレーナが怒ってるってことなんだろうか?やっぱり明日は朝一で報酬を持って行こう)

 鈴木はそう自分に言い聞かせると、再び布団を頭から被って寝入ろうとした。
 が、そこでまた何か違和感を覚える。
 何だろうと思って布団から顔を出して部屋を見回してみると、窓が開いていたことに気づいた。

 鈴木:「?」

 いつの間に窓を開けたのだろうか?
 確か部屋はエアコンを入れているから、窓など開けないのに……。
 いや、もしかしたら空気の入れ替えで開けたのかもしれない。
 なるほど。
 その時の記憶が頭の片隅に残って、リリアンヌという最凶魔女の侵入を許してしまったのか。
 鈴木はそう考えて、窓を閉めようと起き上がろうとした。

 鈴木:「!?」

 だがその時、部屋の中に誰かがいることに気づいた。
 机の上に座り、足を組んでこちらを見ている者がいた。
 それは……。

 エレーナ:「お目覚めだね」
 鈴木:「え、エレーナ!?どうして!?」
 エレーナ:「あら?あなたがこのマンションに住んでると教えたんじゃない」
 鈴木:「そ、そりゃそうだけど……」

 それにしても様子がおかしいと鈴木は思った。
 報酬の取り立てに来たのだろうか。

 エレーナ:「それにしてもいくらマンションの5階だからって、鍵を掛けないなんて油断し過ぎるわね」

 エレーナは闇に光る目を更に光らせながら、クスクスと笑った。
 そして、黒いスカートのポケットの中に手を突っ込む。
 そこから出て来たのは折り畳み式のナイフ!
 近眼の鈴木の夜目にも、キラリと光る刃が目に入る。

 エレーナ:「あなたは約束を破ったね。魔女というものはね、契約や約束を破られるのが大嫌いなの」
 鈴木:「ほ、報酬のことなら謝る!あれは踏み倒そうとしたんじゃない!キミに渡すのを忘れただけなんだ!」
 エレーナ:「もう日付が変わってるわ。あなたは契約を守らなかった。私も魔道師の端くれ。悪いけど死んでもらうよ。私は契約を守らないヤツを許さない」

 エレーナは不気味な笑みを浮かべたままナイフを振り上げた。
 鈴木は一か八か、枕元に置いたスマホをエレーナに投げつけた。
 それはエレーナの顔面に飛んで行く。

 エレーナ:「きゃっ!?」

 鈴木はエレーナの横をすり抜け、部屋から飛び出そうとした。
 しかしその時、首に熱い衝撃が走った。
 鈴木は目だけで見下ろす。
 彼の首に突き立っている、折り畳みナイフ。

 エレーナ:「危ないところだったわ。でも、私の勝ちだね……」

 嬉しそうなエレーナの声が聞こえる。
 鈴木は血をまき散らし、冷たい床に転がった。

[同日05:02.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 ガーッという音がして、正面エントランスの自動ドアが開く。

 オーナー:「いらっしゃ……おや?あなたは……」

 そこには、まるで戦場などから九死に一生を得た生還者のように疲弊した鈴木の姿があった。

 鈴木:「す……すいません……こんな朝早くに……。エレーナと、会えませんでしょうか?」
 オーナー:「あ、ああ……そうですね……。エレーナから話は聞いております。エレーナに何か渡す物はお持ちでしょうか?」
 鈴木:「これです……」

 鈴木はエレーナに昨日渡すはずだった報酬の入った封筒をオーナーに差し出した。

 オーナー:「これはお預かりしておきます。必ずエレーナにお渡ししておきますので……」
 鈴木:「よ、よろしくお願いします……」
 オーナー:「ああ、あとこれを……」

 オーナーは鈴木に手紙の入った封筒を渡した。

 オーナー:「エレーナから預かったものです」
 鈴木:「はあ……」

 鈴木はエレーナからの手紙を受け取ると、中を開けた。
 すると、『魔道師をナメるな』とか、『報酬支払遅延は、契約不履行以外の何物でもない』とか、『今回は悪夢を見せさせてやるだけで勘弁してやるが、実際はこれがリアルに行われるものと思え』とか、『これに懲りたら2度と魔女に纏わりつくことの無いように』という警告文が書かれていた。

 鈴木:「ふ……ふふ……うふふふふふふふ……」
 オーナー:「エレーナの機嫌を損ねるようなことをなさったのでしょうが、今後はお気をつけて。他の魔女さんは本当に首を狙って来るそうです」
 鈴木:「とんでもない、オーナー……。エレーナに、今後ともよろしくとお伝えください。それじゃ……」

 鈴木も鈴木で不気味な笑みを浮かべながら、ふらつく足取りでホテルをあとにしたのだった。
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“魔女エレーナの日常” 「強欲の悪魔と契約した魔女にタダ働きさせてはならない」

2018-08-20 10:19:57 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日21:30.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 森下駅で電車を降りた鈴木とエレーナは、途中まで一緒に帰った。
 そして、ホテルの入口で別れたのだった。

 エレーナ:「た、だいまぁ……ヒック!」
 オーナー:「お帰り。だいぶ盛り上がったみたいだな」
 エレーナ:「おかげさまで……」
 オーナー:「あ、そうそう。キミの後輩さんが来てるよ」
 エレーナ:「リリアンヌが?そうですか」
 オーナー:「キミの部屋に通しておいたよ」
 エレーナ:「あ、どうもです。じゃ私、早めに休ませてもらいます」
 オーナー:「ああ、お疲れ」

 エレーナは鍵を差し込んで、エレベーターを地下1階まで行けるようにした。
 これは表向き、地下1階は機械室や倉庫があるフロアということになっており、一般客が下りないようにする為、普段はボタンを押しても反応しないようになっている。
 その地下室の一画に、エレーナの部屋がある。
 元々はボイラー技士が泊まり込んでいた部屋だったらしいが、今はもうボイラーなんかも自動化されてその必要も無くなり、空き部屋となっていた。
 そこを改築して、今はエレーナが泊まり込んでいる。
 “魔女の宅急便”の主人公が屋根裏部屋住まいだったのに対し、こちらは地下室住まいである。
 魔女っ娘は日の当たる所でOKなのに対し、魔道師は日の当たらない所というわけか。

 エレーナ:「お、まだ起きてる」

 エレベーターを降りると、無機質な機械室の光景が目に入る。
 部屋のドアには小窓が付いていて、そこから室内の明かりが漏れ出していた。

 エレーナ:「よっス」

 エレーナがいきなりドアを開けるのと、リリアンヌがシャワー室から真っ裸で出て来たのは同時だった。

 リリアンヌ:「は、はわわわ!え、え、エレーナ先輩!いい、いきなり開けないでくださいぃぃ」
 エレーナ:「ここ、私の部屋!オマエこそバスタオルくらい巻いて出てこい!」
 リリアンヌ:「は、はいぃぃぃ」

 まだ15歳になったかなってないかの年齢なので、体付きはまだ幼い所が散見される。

 エレーナ:「疲れたから、私はさっさと寝させてもらうよ。シャワー浴びてからな」
 リリアンヌ:「わ、私もそうします……」
 エレーナ:「何の用で来たんだ?」

 エレーナもまた着ていた服を脱ぎながらエレーナに話し掛けた。
 反対にリリアンヌは、バッグの中から替えの下着やらパジャマやらを着込んでいる。

 エレーナ:「リリアンヌみたいな見習(と書いて、『ヒヨッ子』と読む)は、夏休みナシだろ?」

 その為稲生も、鈴木にコミケ参戦に誘われたものの、断らざるを得なかったようだ。
 てか、ダンテ一門の見習達、何かあったのか?
 この作品は本編ではなく、スピンオフであるので、詳細の描写に関しては【お察しください】。

 リリアンヌ:「ぽ、ポーリン先生が……忙しい……エレーナ先輩が忙しいので、ホテルの仕事……私もホテルの仕事を手伝えないかって……」
 エレーナ:「いや、別にいいよ。コミケはあくまでも1日だけだし」

 コミケは3日間開催されるのだが、同じサークルが3日間通して参加するわけではない。

 エレーナ:「そんなにポーリン先生に御心配お掛けしちゃったかなぁ……?」
 リリアンヌ:「せ、先輩、これを……」

 リリアンヌは水晶球に手を翳した。

 エレーナ:「ん?」

 するとそこにはコミケ会場にて、カメラ小僧達に囲まれるエレーナの姿があった。
 最初は困惑していたエレーナだったが、次第にノリノリで撮影に応じていた。

 リリアンヌ:「ご、ごご、御心配お掛けしたよう……です……」
 エレーナ:「あっちゃー……!見られたか……!」
 リリアンヌ:「ど、どど、どうしましょう……?」
 エレーナ:「うーむ……。これは何とも、申し開きのしようがない。幸い明日は夜勤だから、昼のうちにポーリン先生の所に行って弁明してこよう……」

 申し開きのしようがないと言っておきながら、弁明に行こうするエレーナ。
 そして、全裸になるとタオルを持ってシャワールームに入った。

 リリアンヌ:「フフフ……」

 先輩たるエレーナの脱いだ服を畳む後輩のリリアンヌ。

 リリアンヌ:「下着はネットに入れて洗う……」

 と、そこへエレーナの机の上の水晶球が光った。

 リリアンヌ:「フヒッ!?……ど、どど、どちら様で……?」
 横田:「ハァハァ……(*´Д`) ち、違いますよ、リリアンヌさん。使用済みの下着はネットに入れて洗うのではなく、ネットに出して売るのです。……も、もしよろしければ……あなたの……JCたるあなたの下着も売って下さいませんか?(*´Д`) た、高く買いますよ……ハァハァ……」

 リリアンヌ、水晶球に手を翳して通信を強制的に切断した。

 リリアンヌ:「これは先輩のブラウス。白い物と柄物は分けて洗う……」

 掃除や洗濯の仕方から教わる魔女の見習。
 幼少の頃は不幸な生い立ちをした者がこの一門には多く、その為、一般常識が全くと言って良いほど身に付いていない状態で入門してくる者も多いのだ。
 その為、稲生のような者が『新卒採用』と揶揄されるのである。
 リリアンヌが先輩の服を畳み、洗い物は部屋の外にある洗濯機に持って行った。
 洗濯機と乾燥機があるのだが、これはエレーナ専用。
 このホテルには長期宿泊客用にコインランドリーがあるのだが、そこで使っていたものを流用した中古品である。
 すると、エレーナが慌ててシャワー室から出て来た。
 後輩に注意しておきながら、自分も真っ裸である。

 エレーナ:「リリィ!」
 リリアンヌ:「フヒッ!?どうしました、先輩!?」
 エレーナ:「私は大変なことを忘れていた!」
 リリアンヌ:「な、何ですか!?」
 エレーナ:「鈴木から報酬をまだもらってない!タダ働きさせられた!」
 リリアンヌ:「フヒッ!?な……そそ、それは何という侮辱!?エレーナ先輩をタダ働きさせるなんてっ!」

[同日23:00.天候:曇 東京都墨田区菊川 鈴木のマンション]

 鈴木:「あちゃー、しまった……」

 鈴木は寝る前に鞄の中を整理していた。
 すると、その中からエレーナに渡すはずの報酬が出てきたのだ。

 鈴木:「エレーナに渡すの忘れてた……。今からだと……もう遅いもんな。明日、夜勤だって言ってたな。明日、渡しに行こう」

 特盛とエリちゃんには報酬前払いだった為、後払いのエレーナにも渡したものとすっかり勘違いしていたのだ。

 鈴木:「さて、今日はもう寝るか……」

 鈴木はベッドに入ると眼鏡を外し、リモコンで照明を消灯したのだった。
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“魔女エレーナの日常” 「月島での打ち上げ」

2018-08-19 19:29:18 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日 天候:晴 東京都中央区月島 某もんじゃ焼き店]

 特盛:「うーん!ビールともんじゃが止まらなーい!」
 エリ:「今食ってんの、お好み焼きだよな?」

 コミケの打ち上げで盛り上がっている鈴木達。

 鈴木:「それにしても、エリちゃんもよく食べるようになったなぁ。実は特盛の子供でも中にいるんじゃねーの?」

 鈴木はビールジョッキ片手に、エリちゃんのお腹を指さした。

 エリ:「さあ、どうだかねぇ……」
 鈴木:「お、その反応、もうしかして?」
 エリ:「いやいや。種馬がこんなんじゃねぇ……」
 特盛:「エリちゃぁん、ヒドぉーい!」
 エリ:「種馬は種馬らしく、ヒヒーンと鳴いてみろ、オラ!」
 特盛:「ひひーん!」
 鈴木:「本当にやるな、特盛!……てかお前ら、そろそろ帰んねぇとヤバいんじゃね?」
 エリ:「マジでそんな時間?」
 鈴木:「お前ら今、埼玉暮らしだろ?」
 エリ:「それもそうか」
 特盛:「だーいじょーぶだよぉ〜、エリちゃ〜ん!もっと飲みた〜い!エリちゃんの膝の上で」
 エリ:「アホか!すいませーん、お会計!支払いはこの人持ちで」
 鈴木:「ういっス」

 鈴木、財布の中からクレカを取り出す。
 実家がセレブらしく、アメリカンエクスプレスを取り出すが、一般用のグリーンカードである。
 エレーナの師匠ポーリンを始めとするグランドマスターが持っているようなプラチナカードではない。
 もっとも、アメリカンエクスプレスの中では最低クラスのグリーンカードでさえ、他のクレカと比べれば、そのレベルはゴールドカード並みであるという。

 特盛:「鈴木ぃ〜、ゴチになりまーす!」
 エリ:「ゴチっス!」
 エレーナ:「ご、ゴチ?……御馳走様」
 鈴木:「いいよいいよ。これも報酬の1つだ」

 鈴木がレジに行って会計をする。
 その間、座敷から靴を履く他の3人。

 特盛:「エリちゃ〜ん、靴履かせて〜?」
 エリ:「アホか!自分で履け!」

 エレーナが新婚夫婦のやり取りをクスッと笑いながら、自分はもちろん自分で自分の靴を履いた。

 エリ:「エレーナさん、スカート気をつけて。今の足の開き方で見えちゃったよ?」
 エレーナ:「ああ、でも、中にスパッツはいてるんで」
 エリ:「そういう問題じゃないの。それでもガン見してくるゲス野郎はいるからね?」
 鈴木:「……!!」(←首をほぼ360度近く回転させてエレーナのスカートの中を見ようとする)
 エレーナ:「おい、コラ!」

 人間技とは思えない鈴木の動作に、エレーナはさすがに突っ込んだ。

 特盛:「さすがは鈴木。見たい時には人外化する特殊能力が止まらなぁーい!」
 エリ:「んなワケねーだろ!」
 鈴木:「首が痛ェ……」
 エリ:「ほら!……鈴木もいくら見たいからって、首痛めるほど捻らない!」
 鈴木:「さ、サーセン……」

 こうして鈴木の会計も終わり、4人は店の外に出た。

 鈴木:「こんな時間になってもまだ暑いな」
 エリ:「ほんと。いつになったら涼しくなるのかね」
 特盛:「あ、汗が止まらなぁーい……」
 エリ:「オマエは冬でも汗が止まんねーだろ」
 鈴木:「それより、早いとこ駅へ向かおう。エレーナ、大丈夫か?」
 エレーナ:「ああ。さすがにタダ酒ってことで、少し飲み過ぎたかも……」
 エリ:「ちょっと、大丈夫なの?」
 エレーナ:「ええ、大丈夫ですよ」

 4人は月島駅に向かって歩いた。

[同日20:45.天候:晴 地下鉄月島駅]

 鈴木:「20時50分発、小手指行き。これでブクロ乗り換えか?」
 エリ:「そうね。そういうことになるわ。……こいつが途中で酔い潰れなければね!」
 特盛:「ヒック!……吐き気が止まらなーい……!ヒック!」
 鈴木:「おい、ホント大丈夫か?いい加減にしないと、エリに愛想尽かされるぜ?」
 特盛:「だ、大丈夫で……」
 エリ:「ま、いざとなったら担いで帰るから」
 鈴木:「ああ。気をつけてな。じゃ、今日はありがとう」
 エリ:「こちらこそ、御馳走様ね。それじゃ」

 特盛とエリちゃんは有楽町線の改札口を入って行った。

 鈴木:「それじゃ、俺達は都営大江戸線だな」
 エレーナ:「ああ」

 2人は都営大江戸線の改札口を入った。

 鈴木:「こっちも50分発だ。特盛達と同時出発だな」
 エレーナ:「ああ。……ック!」
 鈴木:「エレーナ、本当に大丈夫か?」
 エレーナ:「あの女の人……」
 鈴木:「エリがどうした?」
 エレーナ:「この中で1番飲める人だな。あれだけ飲んで、全然平気だ」
 鈴木:「エリは昔、キャバ嬢だったからな。そのせいもあるんだろう」

 そしてホームへと降りて行く。

〔まもなく1番ホームに、両国、春日経由、都庁前行き電車が到着します。……〕

 鈴木:「特盛達と違って、俺達はほんの数駅だ。これだから都内暮らしはやめられないんだよな」
 エレーナ:「まあ、確かに近くて便利だけどねぇ……」

 最新型の電車が入線してくる。

〔月島、月島。東京メトロ有楽町線は、お乗り換えです。1番線は両国、春日経由、都庁前行きです〕

 ホームドアが開いて、それから電車のドアが開く。
 休日の夜の電車ということもあってか、車内は空いていた。
 マゼンタ色の座席に腰掛ける。
 クッションは少し硬めである。
 もっとも、外国の地下鉄ではプラスチックや金属が剥き出しのベンチシートも珍しくないから、クッションがあるだけマシなのかもしれない。
 短い発車メロディが流れて、開くのとは逆の順番でホームドアと電車のドアが閉まった。
 駆け込み乗車も無かったのか、すぐに電車が走り出す。

〔次は門前仲町、門前仲町。東京メトロ東西線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Monzen-nakacho.Please change here for the Tozai line.〕

 鈴木:「エレーナは明日、仕事?」
 エレーナ:「夜勤が入ってる」
 鈴木:「ホテル業務は大変だなー」
 エレーナ:「これも修行の一環だからねぇ……」

 エレーナはそう言って大きな欠伸をした。

 鈴木:「修行。パン屋に住み込むか、ホテルに住み込むかの違いだけで、“魔女の宅急便”みたいだな」
 エレーナ:「ま、私が入門したのも13歳くらいだったかな……」
 鈴木:「その時の話聞かせて!」
 エレーナ:「そんな無闇にベラベラ喋るものじゃないよ。特に魔女の入門秘話なんて、とてもとても……」
 鈴木:「それでも聞きたい!」
 エレーナ:「私ともう少し仲良くなれたら、話してあげないこともないよ?」

 エレーナはニヤッと笑った。
 それの意味するところは……。
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“魔女エレーナの日常” 「魔道師とコミケ」 3

2018-08-18 21:19:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日16:00.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]

〔「……只今を持ちまして、コミックマーケット94、2日目を終了致します。皆さん、今日も1日お疲れ様でした。また、冬にお会いましょう」〕

 終了放送が流れ、参加者達から拍手が沸き起こる。

 特盛:「ヒーハー!」
 エリ:「意味不明の叫び声上げんな!」

 そこへ疲弊した様子のエレーナが戻ってきた。

 エレーナ:「た、ただいまぁ……」
 エリ:「お帰り、エレーナさん。後半は列整理無くても大丈夫だったよ」
 エレーナ:「すいません。ちょっとトラブルがあって……」
 エリ:「いいよいいよ」
 特盛:「その魔女コスで、カメコ達に囲まれたんだって?凄いねぇ!スカート短いけど大丈夫だった?」
 エリ:「オメ、変態なことサラッと言ってんじゃねーよ!」
 エレーナ:「大丈夫です。下はスパッツはいてるんで」
 特盛:「何だぁ……」
 エリ:「なにガッカリしてんだ、コラ!」
 特盛:「いででででで!」

 エリちゃん、旦那たる特盛くんの頬っぺたをつねった。

 鈴木:「いやー、みんな!大変助かったでヤンス!大感謝でヤンス!是非ともまた次の冬コミも手伝いを……」
 エレーナ:「いや、もう勘弁だよ!」
 特盛:「ボク達も御山に行かないとダメだしなぁ……」
 エリ:「そうだよ。鈴木こそ何言ってんの。年末は末寺で身の供養(大掃除)でしょ?」
 鈴木:「えー?」
 エリ:「えーじゃない!」
 鈴木:「でもォ……」
 エリ:「でもじゃない!」
 鈴木:「だってぇ……」
 エリ:「だってじゃない!」
 エレーナ:「なるほど。鈴木にはそういう対応でいいのか」
 エリ:「そうだよ。男の扱いなんて、こんなもんでいいの」
 特盛:「エリちゃん、ヒドーイ!」

 新婚夫婦のイチャつきを見ながら、エレーナは溜め息をついた。

 エレーナ:「それで鈴木、売り上げのほどは如何に?」
 鈴木:「おかげさまで完売でヤンス!」

 鈴木は『完売御礼』の札を両手に掲げながら答えた。

 エレーナ:「おお〜!」
 特盛:「よっし!これで帰りの荷物は軽くていいね!」
 鈴木:「片付けの手伝いも、是非よろしくオナシャス!」
 エリ:「しょうがないね」

[同日17:11.天候:晴 東京ビッグサイトバス停→都営バス東16系統車内]

 鈴木:「3日目だと撤収作業とかあるんだが、2日目まではまだ無いからな」
 エレーナ:「撤収作業?」
 特盛:「あれでしょ?机とか椅子とかを片付けるヤツでしょ?」
 鈴木:「そう。あれはまた明日も使うからな、俺達は椅子を机の上に上げるだけでいい。……はずだ」
 エリちゃん:「……はずだってw」

 4人はやってきた都営バスに乗り込んだ。

 鈴木:「大人4人お願いします」
 運転手:「大人4名ですね」
 特盛:「さすが鈴木、太っ腹〜」
 エレーナ:「交通費は支給だからね」
 鈴木:「そうそう」

 キャリーバッグを持った鈴木は、折り畳み式の1人席に座った。
 エレーナはその後ろに座る。
 特盛くんとエリちゃんは後ろの2人席に座った。

 特盛:「エリちゃんと密着できて、功徳が止まらなぁーい!」
 エリ:「特盛、もう少し痩せろ!」
 特盛:「えー?」
 エリ:「えーじゃない!」
 特盛:「でもォ……」
 エリ:「でもじゃない!」
 特盛:「だってぇ……」
 エリ:「だってじゃない!」
 エレーナ:「鈴木と同じこと言ってら」
 鈴木:「あいつとは顕正会からの長い付き合いだったからな」

 発車の時間になり、バスにエンジンが掛かる。
 まだ終了後の余波が残っており、バスは立ち客を何人も乗せて発車した。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは二次元から三次元の世界へと戻り行く。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。このバスは有明一丁目、豊洲駅前、月島駅前経由、東京駅八重洲口行きでございます。次は国際展示場正門駅前、国際展示場正門駅前でございます〕

 エレーナ:「このまま真っ直ぐ帰るのか?」
 鈴木:「いや。途中で降りて、皆に夕飯を奢るよ」
 エレーナ:「おお〜!さすがは鈴木!」
 鈴木:「今日は手伝ってくれた御礼だからな。エレーナにジャパニーズ・フードをご馳走するよ」
 エレーナ:「そいつは楽しみだな」

 バスが大通りを疾走する頃、歩道上を歩く人外3人組がいた。

 ゴブリン:「次の薄い本、何にする?」
 ミイラ男:「“魔女の華麗なる日常”でどうだろう?」
 サキュバス:「いいね〜!」

 どうやらエレーナ、薄い本にされそうな予感が……。

[同日17:36.天候:晴 東京都中央区月島]

〔ピンポーン♪ 次は月島駅前、月島駅前でございます。都営地下鉄大江戸線、東京メトロ有楽町線をご利用のお客様は、お乗り換えでございます。次は、月島駅前でございます〕

 鈴木:「今日は東京スカイツリーがよく見えるな」

 鈴木は後ろを振り向いて言った。

 エレーナ:「……あっ、なに!?」

 エレーナはうとうとしていたが、鈴木の話し掛けにハッと意識を戻した。

 鈴木:「あ、ゴメン。次で降りようと思って……」
 エレーナ:「ああ、そう」

 新月島公園バス停付近からは、バスの中からも東京スカイツリーが見える。

 鈴木:「スカイツリーが見えたんだけどな……」
 エレーナ:「ああ、そう。地上から見るスカイツリーもいいかもね
 鈴木:「ん?」

 鈴木は首を傾げたが、エレーナは既にホウキで上空からスカイツリーに接近したことがあるらしい。

〔「ご乗車ありがとうございました。月島駅前です」〕

 バスが駅前の交差点を右折すると、その先にあるバス停に停車した。

 鈴木:「ほい、降りるぞ」

 鈴木は特盛達を促した。

 エリ:「ああ、やっぱここで降りるんだ」
 鈴木:「もち」

 ここで降りる乗客は多い。
 その代わり、乗って来る乗客も多いのだが。
 その為か、ここで余裕時分が取られていることもある。

 特盛:「ふわああ……!ちょっと寝落ちしちゃったよォ……!」
 鈴木:「大丈夫だった、エリちゃん?特盛に寄り掛かられたら潰れるんじゃないか?」
 エリ:「なーに。こっちはもう慣れっこだから」
 エレーナ:「で、なに奢ってくれるんだ?」
 鈴木:「そりゃあ、月島で降りたからには、アレしかないだろう?」
 エリ:「アレしかないか」

 エリちゃんは大きく頷く。

 特盛:「あれぇ?俺達が有楽町線に乗り換える為に降りたんじゃないの?」
 鈴木:「だったら“ゆりかもめ”で豊洲まで行けばいいだろ。そうじゃないんだな。ま、とにかく俺に任せろ」

 鈴木は歩き始めた。
 その後ろをついて歩く3人。
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“魔女エレーナの日常” 「魔道師とコミケ」 2

2018-08-17 19:56:47 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月11日13:00.天候:晴 東京都江東区有明 東京ビッグサイト]

 この頃になると、長蛇の列ができている鈴木のサークル。
 その名も『顕正堂』。
 何でも元顕正会員のみで構成された同人ゲーム制作のサークルで、元顕時代に受けた害毒を忘れ得ぬようにとの意味を込めて付けたのだという。
 だからけして、顕正会や浅井会長を持ち上げるサークルではない。
 むしろ、ゲーム内容を見るや、悪の新興宗教教祖に立ち向かう青少年みたいなものになっている。

 エレーナ:「顕正堂の最後尾はこちらになりまーす」

 エレーナは『最後尾』と書かれたプラカードを持って列整理をしていた。

 エレーナ:「顕正堂の最後尾はこちらでーす!すいません、もう一歩詰めてもらえますか?」

 なかなか板に付いていたりする。

 エレーナ:(それにしても鈴木のサークル……閑古鳥が鳴いてどうせヒマだろうと思っていたのに、何て人気なんだ……。もしかして、ここの客達も元顕正会員だったりするんじゃないのか?)

 エレーナがそんなことを勘繰っていた時だった。

 一般参加者C:「すいませーん」

 と、一般参加者の青年に話し掛けられた。

 エレーナ:「はい、何ですか?」
 一般参加者C:「コスプレ参加者の方ですか?」
 エレーナ:「えっ?いや、違いますよ。私はサークルの列整理をしているだけで……」
 一般参加者C:「ああ、サークル参加者の方でしたか。失礼しました。つい、海外のレイヤーさんかと……。ここのサークルは、魔法使いモノを扱ってるんですか?」
 エレーナ:「いえ、そういうわけじゃないんです。悪の新興宗教に立ち向かう内容のアクションRPGです」
 一般参加者C:「それじゃ、どうして魔法使いのコスプレを?」
 エレーナ:「コスプレじゃなくて、本物だからです。私は本物の魔法使いなので」
 一般参加者C:「ああ、成り切りですね。分かります」
 エレーナ:「いえ、ですから、そうじゃなく……」
 一般参加者C:「よく見ると、東方Projectの霧雨魔理沙に似ていますが、それ関係ですか?」
 エレーナ:「いえ、ですから違いますよ。本物ですって!」
 一般参加者C:「そのポリシー、素敵です。良かったら後で写真撮らせてください」
 エレーナ:「いや、だから、その……!」

 しかし、一般参加者の青年は立ち去って行った。

 エレーナ:「うう……!本物だと分かってくれない……!こうなりゃ一発、モノホンの魔法ブチかまして……!」

 と、そこへエリちゃんがやってきた。

 エリ:「どうしたの、エレーナさん?疲れちゃった?交替の時間よ」

 エリちゃんはコミケ会場限定のスポーツドリンクを持って来た。
 ラベルが萌えキャラである点が特徴。

 エレーナ:「待ってました!」

 エレーナはエリちゃんからペットボトルを受け取ると、それを半分ほど一気飲みした。

 エレーナ:「プハハーッ!ヾ(≧▽≦)ノ」

 それからエレーナは鈴木と合流し、会場内を散策してみることにした。

 鈴木:「ははははっ(笑)!なに、魔法使いのコスプレだと思われたの!?」
 エレーナ:「笑い事じゃないよ!こうなったら、ここでイオナズンでもブチかましてやろうかしら?」
 鈴木:「『魔法使いのコスプレをしたテロリストが爆弾テロ起こしやがった』ってことになるだけだからやめなさい」
 エレーナ:「くそっ!」
 鈴木:「でもまあ、そんなことが起こるのも、コスプレのレベルも人口も回数を追うごとに高くなっていってるからだね。何しろ商業誌では、そんなレイヤーにスポットを当てたマンガ作品も出たくらいだからね」
 エレーナ:「ほんと、マジで多い。何でこんなに多いの?」
 鈴木:「好きな作品の好きなキャラになりきって、普段のストレスを解消しているのさ」
 エレーナ:「つまりは現実逃避か」
 鈴木:「そういうこと言わない。でもほんとマジで、クォリティ高いんだよ。……ほら!あれなんかエレーナそっくり!」
 エレーナ:「全然似てないよ!アタシの方がキレイだし!?」
 鈴木:「そんなことは分かってる!」
 エレーナ:「……えっ?」
 鈴木:「エレーナは本物の魔法使いなんだから、それに成り切ろうとしている普通の人間達を温かい目で見てくれればいいんだよ」
 エレーナ:「な、なるほど……。そうだな……」

 その時、エレーナはあるキャラクター達に気がついた。

 エレーナ:「おや?あそこにゴブリンとサキュバスとミイラ男がいる」
 鈴木:「本当だ。何の作品だろう?ドラクエとかじゃないよなぁ……」
 エレーナ:「ありゃ本物だわ」
 鈴木:「は!?」
 エレーナ:「ありゃ、魔界の住人だよ。何やってるんだ、あんな所で?」
 鈴木:「ま、まさかヤバいんじゃ……?」
 エレーナ:「ちょっと行ってくるわ」
 鈴木:「だ、大丈夫か?」

 エレーナはトラックヤードでたむろする人型のモンスター達に近づいた。

 エレーナ:「ちーっス!魔界の住人さん達ですよね?」
 ミイラ男:「おや?もしかして、あなたも?」
 サキュバス:「あら、魔法使いさんですわね」
 エレーナ:「さすがは魔界の住人。ここの人間達は私をコスプレ扱いしやがるんだよ」
 ゴブリン:「クフフフフ……。正に、我々にとっては好都合。計画通り」
 エレーナ:「何やってるんだ、こんな所で?」
 サキュバス:「羽を伸ばしに来ています」
 ゴブリン:「普段はこの世界で人間に化けて暮らしていますが、時々こういうイベントにやってきて、ストレス解消してるんだぜ」
 エレーナ:「なるほど。今はこっちに住んでるってわけか」
 ミイラ男:「せっかくの機会なのですし、あなたも正体を曝け出してみては?」
 エレーナ:「私の場合、この姿がもう既に正体だからなぁ……。元・人間の多いのがダンテ一門ってもんでねぇ……」
 サキュバス:「ダンテ一門!?」
 エレーナ:「そうだよ」
 ミイラ男:「大魔王バァル様ですら潰せなかった、あの!?」
 エレーナ:「は?」
 ゴブリン:「俺らなんて、奴隷扱いの!?」

 恐怖が頂点に達したモンスター3人組。
 慌てて逃げ出してしまった。

 コミケスタッフ:「走らないでください!」

 という注意も聞かずに……。

 エレーナ:Orz
 鈴木:「キミの組織って、相当に恐れられてるんだねぇ……。イルミナティとかフリーメイソン並み?いや、それ以上?」
 エレーナ:「ち、違うんだ……」
 鈴木:「え?」
 エレーナ:「私達だって生きていく以上はお金は必要なんだ!で、やっぱり欲があるもんだから、ちょっと贅沢しちゃったりとかしてるだけで!所詮この世界も向こうの世界も利権第一主義というか……!」
 鈴木:「否定はしないんだね」

 鈴木は呆れた。

 一般参加者C:「すいませーん!」
 エレーナ:「あ、あなた、さっきの……」
 一般参加者C:「約束通り、写真撮りに来ました」
 鈴木:「おい。俺に断りも無くそんな約束を……!」

 鈴木は嫉妬に塗れた視線でエレーナを見た。

 エレーナ:「じゃ、あんたも撮れもいいじゃない」
 鈴木:「えっ、いいの!?」
 エレーナ:「それで文句は無いでしょう。で、どんな感じに行けばいいの?」
 一般参加者C:「ああ……じゃ、まずこっちに目線を……。すいません、彼氏さん」
 鈴木:「全くだ」
 エレーナ:「いや、彼氏じゃないし!」

 魔道師のコミケは、まだもう少し続く。
コメント (1)
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