報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「行くぜ東北!」

2019-08-27 14:32:45 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[8月23日09:41.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前停留所]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日はこれから東北地方へ遠征に行く予定だ。
 え?旅行じゃないのかって?あくまでも、クライアントの依頼で向かうので遠征だ。
 そこのところ、間違えないように。

 高橋:「先生、バス来ましたよ」
 愛原:「おう」

〔お待たせ致しました。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。……〕

 前扉からバスに乗り込む。
 朝のラッシュも終わった時間帯、バスの車内は比較的空いていた。
 後ろの空いている席に座る。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは私達乗客を乗せると、すぐに発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕

 高野:「リサちゃん、昨日はちゃんと眠れた?」
 リサ:「あんまり眠れなかった」

 高野君が私達の後ろの2人席に座るリサに話し掛けた。
 リサは寝不足など感じさせないほど朝から元気だった。

 高野:「そう。ずっと前から楽しみにしてたもんね」
 リサ:「うん。サイトーや皆と一緒に行けるの楽しい」
 高野:「学校の行事でも色々な所に行きそうだけど、東北はあまり無いかな?」
 リサ:「秋に野外活動で栃木に行く予定」
 高野:「やっぱりそうなんだ」
 リサ:「3年生になったら修学旅行。京都とか大阪に行く」
 高野:「やっぱり中学校の修学旅行の行き先ベタな法則ね。高校になったら海外かな?」
 リサ:「うん。アメリカのラクーンシティとトールオークス市、もしくは中国の香港」
 愛原:「全部バイオハザードが起こった所じゃねーか。何ちゅう危険地帯に行かせる学校だ」

 個人的にはソウルや平壌にウィルスばら撒いて欲しいところだけど、バイオテロ組織的にもあまり旨味の無い場所らしい。

[同日10:14.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔「ご乗車ありがとうございました。呉服橋です」〕

 バスは終点の1つ手前の呉服橋停留所に停車した。
 大手町の東口たるこのバス停で降りる乗客も多く、私達は後から続いた。
 もちろん、需要はそれだけではない。
 数ある東京駅の出入口の1つである日本橋口が目の前だからだ。
 新幹線(特に東海道新幹線)に乗るなら、このバス停で降りた方が良い。

 
(東京駅日本橋口外観。ロータリーはJRバスの到着場になっている。上部にそびえるビルは丸の内中央ビル。JR東海のオフィスビルであり、いわゆるステーションデパートではない)

 さっきから登場する面々がうちの事務所だけであるが、それもそのはず。
 この旅行では主役を張る斉藤絵恋さんが、大宮駅から乗って来ることになったからだ。
 夏休みはさいたま市の実家で過ごすことになっている為、そうなった。

 リサ:「さっきからサイトーのLINEが凄い」
 高橋:「既読スルーしちまえよ。ウゼェな」
 リサ:「そうしたら、後でもっと面倒なことになる。顔中くしゃくしゃに泣いて大騒ぎ」
 高橋:「面倒な女と付き合ってんじゃねー!」
 愛原:「まあまあ。斉藤さんも、やっと親友ができて嬉しいんだよ」
 高橋:「親友だからこそ、もっと相手を信用してLINEの数は少なくなるものです」
 愛原:「おっ、いいこと言うな!お前、たまにはいいこと言うな!」
 高橋:「マジっすか!?あざーっす!!」(∀`*ゞ)

 高橋は私に褒められて有頂天になった。
 その直後、到着する高速バスがクラクションを鳴らしたのは高橋がヒャッハー!状態で車道に飛び出したからだ。

 誘導員:「ちょっとちょっと!危ないからバスの前に出ないでください!」
 愛原:「あ、すいません!」
 高野:「何やってんのよ、もう!」
 高橋:「いででででで!?」

 高橋は私と高野君に引きずられて、そのまま一緒に日本橋口の中に入った。

 リサ:「兄ちゃん、愚か」
 高橋:「あぁっ!?」
 愛原:「いや、リサの言う通りだ!」
 高野:「旅の序盤からいきなりスリリングなことはやめてよね!」
 高橋:「さ、サーセン……」

 私は気を取り直した。

 愛原:「自動改札口を通るから、キップは1人ずつ持とう」
 高橋:「あざーっす!」
 愛原:「リサはサイトーさんと隣同士がいいだろ?」
 リサ:「もちろん!でも、愛原さんと隣もいいかも……」
 高橋:「くぉらっ!そこは俺の席だ!」
 高野:「まあ、先生が3人席の真ん中に座れば両隣同士になれるんだけど、そうすると今度は斉藤さんがハブられるっていうね……」
 高橋:「3人席の真ん中か……。思い出しますよ」
 愛原:「何が?」
 高橋:「少年刑務所に入る時、新幹線で護送されたんですが、必ず3人席の真ん中に座らされるもんで」
 愛原:「ああ!」
 高橋:「てかさっき、入口ら辺に止まっていたハイエース、間違いなく護送車ですよ?」
 愛原:「オマエの知識って、だいたい体験から来てるよな」

 私達は日本橋口改札から新幹線のコンコースに入った。
 東京駅JR東日本新幹線改札口の中で、唯一在来線コンコースを通らずに直に新幹線コンコースに入れる改札口である。
 欠点なのはホームに上がるまで階段しか無いのと、必ずしも始発から終電まで開いているわけではないということである。
 しかも、それは東海道新幹線も同じことなのだが、ホームの北端にある為、後ろの車両に乗ることになっていると、ホーム上を延々歩かされる羽目になるということだ。

 高野:「あ、先生。もう電車来てますよ」
 愛原:「あんまりこの暑い中、ホームでの待ち時間は減らしたいからな」

 それでも10両編成の“やまびこ”ということもあってか、結構向こうの方に停車しているのだった。
 山形新幹線や秋田新幹線を連結している列車だったら、もう目の前にそれが止まっているのだろうが。

 愛原:「高橋、一服するなら今のうちだぞ?」
 高橋:「あざーっす!吸い溜めしておきます!」
 愛原:「俺達は先に行ってるから。いいか?あの列車の8号車だぞ?分かったな?」
 高橋:「了解っす!」

 私達は高橋を喫煙所に置いて行くと、その先に停車している東北新幹線の車両に向かった。

〔20番線に停車中の電車は、10時36分発、“やまびこ”47号、盛岡行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕

 8号車から後ろは普通車。
 私達は特急券に書かれた座席番号を確認して、座席に座った。
 私がA席、高橋君がB席、高野君がC席、リサがD席、斉藤さんがE席である。

 愛原:「斉藤さんが乗ってくるまで、ちょっとした一人旅だな」
 リサ:「何だかちょっと寂しい」
 高野:「通路を挟んでいるだけだから大丈夫よ」

 その後高橋が乗り込んで来て、列車は定刻通りに発車したのだが、果たしてこの先、何が待ち受けていることやら……。
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“大魔道師の弟子” 「さいたま最後の日」

2019-08-25 15:58:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月7日10:00.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 稲生宗一郎:「すいません。わざわざ来て頂いちゃって……」
 マリア:「とンでもないでス。むしろ、あれだけ心配していた師匠が、家でグースカ寝ていてすいませン」

 マリアは流暢な日本語で答えた。

 マリア:「師匠は『あと5分』ヲ1時間以上繰り返してやがりましたのデ、放っておきましタ」
 宗一郎:「我が家で寛いで頂けて何よりです」
 稲生佳子:「あなた、荷物はこれだけでいいの?」
 宗一郎:「そうだな。緊急入院だから、そんなに荷物も持ち込んでいないはずだ」
 佳子:「勇太は荷物持って。マリアさんに持たせないように」
 稲生勇太:「マリアさんには持たせないよ。というか、父さんのPCとか、仕事道具すら持たせてもらえないし」
 宗一郎:「当たり前だ。大事なデータが入ってるんだぞ」
 勇太:「正面入口のタクシーに乗るの?」
 宗一郎:「お前達はそうしろ。父さんは会社の車で帰る」
 勇太:「ええっ!?まさか、もう出社?」
 宗一郎:「イリーナ先生に御礼の昼食会はやるけど、その後で会社に行く。いつまでも休んでられんよ」
 勇太:「重役なのに?」
 宗一郎:「重役だからだよ。『重役出勤』っていつの時代の役員をイメージしてるんだ?」
 マリア:「多分師匠はその時でモ起きないと思うのデ、別にいいデスよ?」
 宗一郎:「いえいえ、そこはケジメをつけさせて頂きます」
 勇太:「先生はお腹が空いたらすぐに起きますよ?」
 マリア:「齢1000年以上の『魔法使いの婆さん』がねぇ……」

 佳子が入院代を精算している間に、秘書の友部が迎えに来た。

 友部:「専務!退院おめでとうございます!」
 宗一郎:「ああ。社長には午後から出勤すると伝えておいて」
 友部:「はい!奥様と御子息は乗られますか?」
 宗一郎:「それだと息子の彼女が乗れないだろう。勇太、お前はマリアさんと一緒にタクシーで帰ってきなさい」

 車には友部の他、運転手が別にいる為。

 勇太:「あ、はい」

 勇太は宗一郎から5000円札を受け取った。
 明らかに余る額である。
 お釣りは小遣いとして取っておけという事だ。

 宗一郎:「今日は家で昼食を取るから、12時までには帰ってくるように」
 勇太:「もちろん」

 精算を終えた佳子がエントランスにやってくる。

 宗一郎:「領収証は取っといて。後で保険会社に請求するから」
 佳子:「はいはい」
 友部:「それでは御自宅まで参りましょう」

 勇太の両親は先に黒塗りの高級車に乗って帰って行った。
 この時点で既に宗一郎は手持ちのスマホでどこかに電話していたから、会社かどこかと連絡をしていたと思われる。

 勇太:「慌ただしいなぁ。あれじゃ“魔の者”じゃなくても、また倒れそうだよ」
 マリア:「日本人は『働き方』を知らないんじゃなく、『休み方』を知らないんじゃないかな。だから、『働き方改革』よりも『休み方改革』をした方がいいような気がする」
 勇太:「それ、先生から自民党に圧掛けてくれることは?」
 マリア:「あの師匠が自分の得にならないことをすると思う?誰かが金払って頼んでくるならやると思うけど?」
 勇太:「あちゃあ……」

[同日17:30.天候:晴 JR大宮駅]

 大宮駅西口に1台のタクシーが到着する。
 そこから降りて来るのはイリーナ組の面々。

 勇太:「ここから予約した新幹線に乗って長野に行けば、白馬行きの最終バスに乗れます」
 イリーナ:「今回はそのルートなのね」
 勇太:「白馬のバスターミナルに迎えを頼んでありますので、それで帰れます」
 イリーナ:「分かったわ。取りあえず、ディナーは駅弁ね」
 勇太:「す、すいません」
 イリーナ:「いいのよ。日本ならではだし」
 マリア:「確かに。この国の駅弁は美味しい。というか多分、イギリスには無い」

 欧米では本当の長距離列車が多いので、一食だけ確保しておけば良い駅弁文化が成り立たなかったのだろう。
 列車内で何食もしなければならない為、食堂車が今でも元気に営業している。

 エスカレーターを上がって、夕方ラッシュたけなわの駅構内に入る。
 大宮駅には新幹線コンコースに直に入れる改札口が無い。
 一度在来線の改札口に入って、それから新幹線の改札口に入る必要がある。

 勇太:「先生、駅弁買って来ますよ。どれがいいですか?」
 イリーナ:「車内販売はあるの?」
 勇太:「いえ、恐らく“あさま”号には無いと思います」
 イリーナ:「そう。それじゃ肉関係の物にしてもらって、ついでに赤ワインも買って来てもらえる?」
 勇太:「分かりました」
 マリア:「私も行く」

 2人で駅弁を買いに行く。

 勇太:「まあ、東京駅や上野駅と売っているものは大体同じなんですがね」
 マリア:「ワインは?」
 勇太:「缶入りのヤツが売っていたりします。ま、僕はお茶でいいですけどね」
 マリア:「私も紅茶でいい。さすがに移動中、アルコールはね」

 駅弁と飲み物を買うと、その足でホームへと向かった。

[同日17:57.天候:晴 JR大宮駅・新幹線ホーム→北陸新幹線623E列車11号車内]

〔18番線に、17時58分発、“あさま”623号、長野行きが12両編成で参ります。この電車は熊谷、高崎、安中榛名、軽井沢、佐久平、上田、終点長野に止まります。グランクラスは12号車、グリーン車は11号車、自由席は1号車から5号車です。まもなく18番線に、“あさま”623号、長野行きが参ります。黄色いブロックまで、お下がりください〕

 列車を待っていると、ようやく接近放送が響いて来た。

〔「18番線、ご注意ください。17時58分発、北陸新幹線“あさま”623号、長野行きが到着致します。お下がりください」〕

 E7系と呼ばれる北陸新幹線用の車両が入線してくる。
 尚、北陸新幹線専用車両として運転はされているが、東北新幹線内でも試験運用で入線の実績はある。

〔「大宮、大宮です。18番線に到着の電車は北陸新幹線“あさま”623号、長野行きです。金沢までは参りませんのでご注意ください。自由席は1号車から5号車です」〕

 3人は11号車に乗り込んだ。
 東北新幹線のE5系と違い、青を基調した座席が目に映る。

 勇太:「ここですね」
 イリーナ:「あいよ」

 イリーナはマリアと勇太の前の席に座った。
 予約した当初はまだ窓側席も空いていたのだが、現段階では通路側しか空いていないようである。
 これが金沢行きだったら、例えグリーン車でも繁忙期の今は満席になっていたのだろう。
 マリアが人形達を入れたバッグを網棚に置き、勇太が弁当を置く為にテーブルを出したりしているうちに、外から発車ベルの音が聞こえてきた。
 大宮駅で唯一、新幹線ホームだけが発車ベルである。

〔18番線から、“あさま”623号、長野行きが発車致します。次は、熊谷に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 微かに客終合図の甲高いブザーも聞こえて来た。
 それほどまでに、グリーン車内は静かということだ。
 勇太が弁当に箸を付ける前に、列車が走り出した。

 勇太:「ダイヤ通りですね。屋敷には夜に着くことになります」
 マリア:「日付さえ変わらなければいいよ。しかも、公共交通機関の遅れなんて、普通に理由になるし」
 勇太:「はは、そうですか」
 マリア:「勇太のダディが無事で良かったよ」
 勇太:「退院後はあっけらかんとしていて、何だかウソみたいでしたね」
 マリア:「それでいいんだよ」

 そんな他愛も無い話をしながら、駅弁を楽しむ魔道士達。
 夕日が雲間から顔を出す中、列車はグングン加速していった。
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“大魔道師の弟子” 「さいたま市内で過ごす」

2019-08-25 10:23:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月6日13:30.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 稲生佳子:「まさか先生にお見舞い頂けるなんて、思いもしませんでしたわ」
 イリーナ:「いいんですのよ。私も気になっておりましたし、お元気そうで良かったですわ。あとは主治医に任せておけば大丈夫です」
 佳子:「ありがとうございます。それじゃ勇太、私は先に帰るから、先生に失礼の無いようにね」
 稲生勇太:「分かってるよ」

 佳子は正面入口前のタクシー乗り場からタクシーに乗って帰った。
 因みに今は宗一郎の見舞いが終わった後である。
 3人の魔道士は館内のレストランに入った。
 そこでティータイムを取ることにする。

 勇太:「明日には退院できるなんて凄いですね」
 イリーナ:「そういうものよ。今の医療技術はね。段々と魔法が必要とされなくなっている時代になりつつある」
 勇太:「そんなことは……」
 イリーナ:「だからこそ、まだ科学が追い付いていない分野で稼いでやる必要があるわけよ」
 勇太:「はあ……そういうものですか」
 マリア:「師匠は勇太のダディを看て、どう思いましたか?」
 イリーナ:「“魔の者”の単なる嫌がらせね。今、勇太君のお父さんにはその影は無い」
 勇太:「そうでしたか……」
 イリーナ:「明日には退院できるのなら、勇太君の帰省も頃合いね。私達も明日、引き上げましょう」
 勇太:「分かりました」
 イリーナ:「ところで、昨夜はお楽しみだったの?」
 勇太:「え、えっと……」
 マリア:「師匠!」
 イリーナ:「いいのよいいのよ。これも『仲良き事は美しき哉』の1つだから」

 イリーナは相変わらず目を細めていることから、本当に良いのだろう。

 勇太:「明日の準備をしたいので、僕もそろそろいいですか?」
 イリーナ:「ええ、分かったわ。カード渡しておくわね」

 勇太はイリーナからゴールドカードを預かった。
 暗証番号なら既に知っている。
 このカードでイリーナからよくお使いを頼まれたからだ。
 師匠の使い走りをするのも弟子の務め。
 昔はマリアがよくやっていた(が、多くは使役人形にブン投げていた)が、今は稲生勇太という下っ端が入門してきたので。

 イリーナ:「それじゃ、ケーキとコーヒーを食べたら出発しましょう」
 勇太:「先生も来られるんですか?」
 イリーナ:「私は買いたいものがあるだけよ」

 イリーナはニヤリと笑うと、自分専用のプラチナカードを取り出した。
 プラチナカードといい、ゴールドカードといい、イリーナの人脈で手に入れたものである。
 ティータイムが終わると、3人もまたエントランス前からタクシーに乗り、大宮駅に向かった。

[同日14:00.天候:晴 JR大宮駅]

 タクシーで大宮駅までやってきた。
 イリーナは高島屋のバス降車場で降りた。
 どうやら買いたい物というのは、高島屋の中にあるらしい。
 勇太とマリアは更にその先、大宮駅東口のロータリーの中でタクシーを降りた。
 このタクシー代もイリーナから預かったゴールドカード払う。
 今度のタクシーはクレカの使える会社だったので。

 駅構内に入り、まずは“みどりの窓口”に向かった。

 勇太:「何しろ夏休みの時期ですからねぇ、直前で取ろうと思っても難しいかもしれませんね」
 マリア:「師匠はファーストクラスでいいんじゃない?」
 勇太:「グランクラスですか?どうですかねぇ……」
 マリア:「帰りは師匠のお供として乗るんだから、師匠と同じ車両でいいよ」
 勇太:「何か前、1期生達は大師匠様に遠慮してファーストクラスには乗らないなんて聞いた気が……」

 1期生とはイリーナ達のことである。

 勇太:「なるべく遠くまで行かない新幹線で、尚且つ非速達タイプの……あ、あった」
 マリア:「空いてた?」
 勇太:「グランクラスでなくても、グリーン車が空いてましたよ。普通車は歯抜け状態でしか空いていませんが」

 勇太は慣れた手つきで指定席券売機を操作する。

 勇太:「あとは支払いを……」
 マリア:「はいよ」

 マリアはイリーナから預かったゴールドカードを機械に突っ込んだ。
 あとはテンキーで暗証番号を入力する。

 勇太:「あ、買えた」
 マリア:「無くさないようにね」
 勇太:「任せてください。“あさま”号の長野行きなら空いてるだろうと思ったら、その通りでしたね」

 ここ最近は中央本線回りで帰ることはない。
 実は結構遠回りだったことに気づいた為(特に大宮から出発する場合)。

 勇太:「それじゃこれでミッションは終わりましたけど、どこか寄って行きます?」
 マリア:「うーん……。いや、いいや。今日はこれで」
 勇太:「そうですか。それじゃ、帰りましょう」

 2人は今度は西口に移動した。

[同日14:15.天候:晴 丸建自動車“けんちゃんバス”大宮駅西口バス停→バス車内]

 最高気温35度超えの炎天下の中、駅の外からバス停に移動する。
 コミュニティバスではよく使用されるタイプの小型バスに乗り込むと、さすがにそこはクーラーが入っていて別世界のようだった。
 電車の方は弱冷房車があっても、路線バスの方は概して強冷房であることが多い。
 1番後ろの座席に座る。

 マリア:「今日はさすがにもう勇太のママがいるからできないか」
 勇太:「今はね。でも夜なら……」
 マリア:「師匠が泊まるからムリw」
 勇太:「あちゃー……」

〔「お待たせ致しました。時間になりましたので発車致します」〕

 ドアブザーを鳴らしながら、乗車口の後ろ扉が閉まった。
 そして、バスがゆっくり発車する。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは与野本町先回り、大宮西口循環線でございます。次はあおぞら保育園、あおぞら保育園でございます〕

 マリア:「結局、“魔の者”は何がしたかったんだろう?本当にただの嫌がらせだったんだろうか?」
 勇太:「本当に悪魔のやることは分かりませんねぇ……」

 緑色一色に塗られた小型バス。
 その屋根の上には、マリアの契約悪魔ベルファゴールが座っていた。
 もちろん、他の普通の人間には見えない。

 ベルフェゴール:「悪魔とは、常に謎多き存在……フフフ……」
 アスモデウス:「なーに気取ってんの」(←突然現れた、勇太と契約が内定している“色欲の悪魔”アスモデウス)
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“大魔道師の弟子” 「ダラダラ長く続いてスマソ」

2019-08-24 23:21:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[8月6日12:50.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔まもなく7番線に、普通、小金井行きが参ります。危ないですから、黄色いブロックまでお下がりください。この列車は、15両です。グリーン車が付いております。……〕

 地下総武線ホームから地上の上野東京ラインホームまで移動した魔道士達。

 イリーナ:「このキップで、またグリーン車に乗れるの?」
 稲生:「そうです」

 紙のキップなので、グリーンアテンダントからの改札はある。
 イリーナはICカードを持っていない為。
 基本的にイリーナは、紙のキップは必要な時(改札口を出入りする時)だけ持っていて、あとは弟子に持たせる。

 イリーナ:「それはいいわね。ダンテ先生よりは立場は弁えられるけど、ビジネスクラスに乗れるなんてね」
 稲生:「はい」

 グリーン車と言っても、中距離電車のそれは同線区を走る特急列車の普通車の座席と大してグレードは変わらない。
 だからグリーン料金も、その特急の自由席特急料金とほぼ同水準なのである。

〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕

 東海道本線から快速列車として運転してきた列車が到着する。
 だいぶ車内は賑わっていたが、東京駅でぞろぞろと降りてきた。

 稲生:「また2階行けるかな……」

 5号車に乗り込む。
 またもやイリーナは空いている席に座ると、寝入る体勢に入った。

〔この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、小金井行きです。4号車と5号車はグリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
〔「宇都宮線の普通列車、小金井行きです。東海道線内、快速“アクティー”で参りましたが、東京駅より先は普通列車となります。終点小金井まで各駅に停車致します。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 停車時間は1分ほど。
 外から発車メロディの音色が聞こえて来る。
 総武快速線の車両と同じ音色のドアチャイムが聞こえて来て、ガチャンとドアの閉まる音がする。
 そして、スーッと電車が走り出した。

〔この電車は上野東京ライン、宇都宮線直通、普通、小金井行きです。4号車と5号車はグリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください。次は、上野です〕

 因みに稲生とマリアは、東京駅で購入した駅弁を昼食としている。
 イリーナは要らないようだ。
 飛行機の長旅で疲れているとのことだが、それで宗一郎の病院まで来るつもりだろうか。
 いや、恐らくそうなのだろう。
 先ほどホームで電車を待っている時も、宗一郎の容態を詳しく効いていたくらいだ。

 マリア:「勇太のダディは師匠にとっても、『協力者』の1人だから気になるわけよ。もしかしたら、魔法で一気に治してくれるかもよ?」
 稲生:「えっ、本当ですか?」
 イリーナ:「クカー……
 稲生:「って、寝てる!?」
 マリア:「本当に寝入るのは早いな……」

 それとも、稲生の期待をやんわり否定する為の狸寝入りであろうか。

[同日13:21.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

 列車は定刻通りに大宮駅に接近した。

〔まもなく大宮、大宮です。新幹線、高崎線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください〕

 稲生:「先生、先生。そろそろ降りますよ」
 イリーナ:「ん……。今度は所要時間が短いねぇ……」
 稲生:「東京〜大宮間、上野東京ラインで約30分くらいですから」

 列車が減速してポイントを通過する。
 高崎線より後から開通した宇都宮線は副線ホームに入ると決まっており、有効長を稼ぐ為に高崎線より比較的前の位置に停車する。

〔「ご乗車ありがとうございました。おおみや〜、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。9番線の電車は、宇都宮線の普通列車、小金井行きです」〕

 列車を降りると、グリーン車のすぐ近くにはエスカレーターがある。
 これでコンコースに上がる。

 稲生:「先生、駅から病院までは……」
 イリーナ:「ああ、タクシーにしてちょうだい。さすがにここまで来れば、大渋滞も無いでしょ」
 稲生:「はい」

 どちらかというと、郊外から駅の方に向かう方の道路が渋滞が発生しやすい傾向がある。
 改札口を出て東口に向かった。

 稲生:「それじゃあ、タクシーに乗ります」

 階段を下りて、すぐ目の前にあるタクシー乗り場からタクシーに乗り込んだ。

 稲生:「自治医大医療センターまでお願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」

 助手席に座った稲生が行き先を告げた。
 そして、タクシーは東口のロータリーを出発した。

 稲生:「先生、父の容態は……」

 稲生が後ろを振り向いた。
 運転席の後ろにイリーナが座っているのだが、イリーナはフードを被って黒いマスクをしていた。

 イリーナ:「…………」
 マリア:「どうやら、何も心配要らないらしい」
 稲生:「わ、分かりました」

 マリアの解説に頷くイリーナ。

 イリーナ:(さっきの電車のエアコンに喉やられたわ。少し喉を保護しておこうかね……)

 どうやら大した理由ではないようである。

[同日13:40.天候:晴 さいたま市大宮区 自治医科大学附属さいたま医療センター]

 タクシーが正面エントランス前に到着する。

 運転手:「はい、ありがとうございます。ちょうど1000円です」
 稲生:「カードは使えないようなので、ここは僕が出しておきます」

 タクシー会社によって未だにクレカが使えない所もある。
 なので大宮駅でタクシーの順番待ちをしていても、すぐ前の客が順番を入れ替わって欲しいと依頼してくることがある。
 これはチケットの関係やカードが使えるかどうかであることが多い。
 大抵は自分を先にし、依頼者が後になる場合が殆ど。
 見ると大抵、現金やチケットしか使えないタクシーであったりする。
 自分の後に来る車が、クレカやデビッドカードの利用OKのタクシーであったりする。
 それでそのタイミングで乗る為に、順番を入れ替えて欲しいと来るわけだ。

 運転手:「こちら領収証です。ありがとうございました」

 タクシーを降りると、すぐにセンターの中に入った。

 稲生:「父の病室は母から聞いています。行きましょう」
 マリア:「何か買って行かなくて大丈夫かな?」
 稲生:「母が『それはいい』と言ってましたから大丈夫でしょう」
 マリア:「分かった」

 入院病棟へ向かう。
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私もたまには映画を観る。作中内では監督である為。

2019-08-24 10:33:04 | 日記
 22日、映画を観に行ったことはこのコメント欄で呟いた。
 何を観たのかというと、“ドラゴンクエスト ユア・ストーリー”である。
 プロフィールの趣味の欄に「映画」と書く人だったら、もうこの時点で私のセンスに溜め息を吐かれることだろう。
 いや、言い訳ではないが、DQ5は私も子供の頃、オリジナルのSFC版を何周もしたほどやり込んだものだ。
 そういった記憶があった為、それが映画化されるとなったら、興味の1つでも湧くというもの。
 少なくとも予告編を観る限りでは、あのドット絵がこんなにも綺麗な3DCGアニメになるのかと驚いたものだ。
 ただ、いかんせんあのゲームをやったことのある人なら分かると思うが、物語の時系列が12年くらい流れるゲームだぞ?
 普通にプレイしていても、クリアまで1日掛かりのゲームだ。
 さすがに何周も回った時には、私も半日で済んでいたものだが、何周もしてやり込んだプレイヤーですらエンディングを迎えるのに半日掛かるゲームだ。
 それを僅か100分くらいの映画に収めようってんだから、そもそも無理のある企画だったと思う。

 それでも、やり込んだ側としてはニヤッと笑える設定や童心に返れる部分があったりはした。
 何しろ、それが目的で映画館に足を運んだんだからね。
 100分に凝縮しなければならない事情を汲めば、まあそこはしょうがないという部分もあった。
 一応、やはりこの映画は一度プレイしないとニヤッとは笑えないだろうね。
 物語初期、つまり主人公幼少期の頃はダイジェストで流されているから。
 まさかこのままずっとダイジェストで流して行くんじゃなかろうな、という不安はあったが。

 私ならこうするという展開もあったりして、ニヤッと笑えた。
 そう、終盤までは。
 私もアマチュアだから偉そうなことは言えないのだが、もしあんな展開をプロが考えるのだとしたら、私はアマチュアのままでいいなと思った。

 “天気の子”の興行収入が100億円を超えたそうな。
 ほぼ同時期に公開が開始された当該作品の興行収入は10億円にも満たないそうな。
 せっかくアイディアとクオリティは良かったのに、アンサイクロペディア辺りでは黒歴史として笑いものにされることであろう。
 いや、記事にすらならないか?
 尚、ニコニコ大百科では記事になっているが、そこのコメント欄が大変な酷評になっていることをご報告しておく。
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