[8月23日09:41.天候:曇 東京都墨田区菊川 都営バス菊川駅前停留所]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから東北地方へ遠征に行く予定だ。
え?旅行じゃないのかって?あくまでも、クライアントの依頼で向かうので遠征だ。
そこのところ、間違えないように。
高橋:「先生、バス来ましたよ」
愛原:「おう」
〔お待たせ致しました。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。……〕
前扉からバスに乗り込む。
朝のラッシュも終わった時間帯、バスの車内は比較的空いていた。
後ろの空いている席に座る。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは私達乗客を乗せると、すぐに発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
高野:「リサちゃん、昨日はちゃんと眠れた?」
リサ:「あんまり眠れなかった」
高野君が私達の後ろの2人席に座るリサに話し掛けた。
リサは寝不足など感じさせないほど朝から元気だった。
高野:「そう。ずっと前から楽しみにしてたもんね」
リサ:「うん。サイトーや皆と一緒に行けるの楽しい」
高野:「学校の行事でも色々な所に行きそうだけど、東北はあまり無いかな?」
リサ:「秋に野外活動で栃木に行く予定」
高野:「やっぱりそうなんだ」
リサ:「3年生になったら修学旅行。京都とか大阪に行く」
高野:「やっぱり中学校の修学旅行の行き先ベタな法則ね。高校になったら海外かな?」
リサ:「うん。アメリカのラクーンシティとトールオークス市、もしくは中国の香港」
愛原:「全部バイオハザードが起こった所じゃねーか。何ちゅう危険地帯に行かせる学校だ」
個人的にはソウルや平壌にウィルスばら撒いて欲しいところだけど、バイオテロ組織的にもあまり旨味の無い場所らしい。
[同日10:14.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔「ご乗車ありがとうございました。呉服橋です」〕
バスは終点の1つ手前の呉服橋停留所に停車した。
大手町の東口たるこのバス停で降りる乗客も多く、私達は後から続いた。
もちろん、需要はそれだけではない。
数ある東京駅の出入口の1つである日本橋口が目の前だからだ。
新幹線(特に東海道新幹線)に乗るなら、このバス停で降りた方が良い。
(東京駅日本橋口外観。ロータリーはJRバスの到着場になっている。上部にそびえるビルは丸の内中央ビル。JR東海のオフィスビルであり、いわゆるステーションデパートではない)
さっきから登場する面々がうちの事務所だけであるが、それもそのはず。
この旅行では主役を張る斉藤絵恋さんが、大宮駅から乗って来ることになったからだ。
夏休みはさいたま市の実家で過ごすことになっている為、そうなった。
リサ:「さっきからサイトーのLINEが凄い」
高橋:「既読スルーしちまえよ。ウゼェな」
リサ:「そうしたら、後でもっと面倒なことになる。顔中くしゃくしゃに泣いて大騒ぎ」
高橋:「面倒な女と付き合ってんじゃねー!」
愛原:「まあまあ。斉藤さんも、やっと親友ができて嬉しいんだよ」
高橋:「親友だからこそ、もっと相手を信用してLINEの数は少なくなるものです」
愛原:「おっ、いいこと言うな!お前、たまにはいいこと言うな!」
高橋:「マジっすか!?あざーっす!!」(∀`*ゞ)
高橋は私に褒められて有頂天になった。
その直後、到着する高速バスがクラクションを鳴らしたのは高橋がヒャッハー!状態で車道に飛び出したからだ。
誘導員:「ちょっとちょっと!危ないからバスの前に出ないでください!」
愛原:「あ、すいません!」
高野:「何やってんのよ、もう!」
高橋:「いででででで!?」
高橋は私と高野君に引きずられて、そのまま一緒に日本橋口の中に入った。
リサ:「兄ちゃん、愚か」
高橋:「あぁっ!?」
愛原:「いや、リサの言う通りだ!」
高野:「旅の序盤からいきなりスリリングなことはやめてよね!」
高橋:「さ、サーセン……」
私は気を取り直した。
愛原:「自動改札口を通るから、キップは1人ずつ持とう」
高橋:「あざーっす!」
愛原:「リサはサイトーさんと隣同士がいいだろ?」
リサ:「もちろん!でも、愛原さんと隣もいいかも……」
高橋:「くぉらっ!そこは俺の席だ!」
高野:「まあ、先生が3人席の真ん中に座れば両隣同士になれるんだけど、そうすると今度は斉藤さんがハブられるっていうね……」
高橋:「3人席の真ん中か……。思い出しますよ」
愛原:「何が?」
高橋:「少年刑務所に入る時、新幹線で護送されたんですが、必ず3人席の真ん中に座らされるもんで」
愛原:「ああ!」
高橋:「てかさっき、入口ら辺に止まっていたハイエース、間違いなく護送車ですよ?」
愛原:「オマエの知識って、だいたい体験から来てるよな」
私達は日本橋口改札から新幹線のコンコースに入った。
東京駅JR東日本新幹線改札口の中で、唯一在来線コンコースを通らずに直に新幹線コンコースに入れる改札口である。
欠点なのはホームに上がるまで階段しか無いのと、必ずしも始発から終電まで開いているわけではないということである。
しかも、それは東海道新幹線も同じことなのだが、ホームの北端にある為、後ろの車両に乗ることになっていると、ホーム上を延々歩かされる羽目になるということだ。
高野:「あ、先生。もう電車来てますよ」
愛原:「あんまりこの暑い中、ホームでの待ち時間は減らしたいからな」
それでも10両編成の“やまびこ”ということもあってか、結構向こうの方に停車しているのだった。
山形新幹線や秋田新幹線を連結している列車だったら、もう目の前にそれが止まっているのだろうが。
愛原:「高橋、一服するなら今のうちだぞ?」
高橋:「あざーっす!吸い溜めしておきます!」
愛原:「俺達は先に行ってるから。いいか?あの列車の8号車だぞ?分かったな?」
高橋:「了解っす!」
私達は高橋を喫煙所に置いて行くと、その先に停車している東北新幹線の車両に向かった。
〔20番線に停車中の電車は、10時36分発、“やまびこ”47号、盛岡行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕
8号車から後ろは普通車。
私達は特急券に書かれた座席番号を確認して、座席に座った。
私がA席、高橋君がB席、高野君がC席、リサがD席、斉藤さんがE席である。
愛原:「斉藤さんが乗ってくるまで、ちょっとした一人旅だな」
リサ:「何だかちょっと寂しい」
高野:「通路を挟んでいるだけだから大丈夫よ」
その後高橋が乗り込んで来て、列車は定刻通りに発車したのだが、果たしてこの先、何が待ち受けていることやら……。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
今日はこれから東北地方へ遠征に行く予定だ。
え?旅行じゃないのかって?あくまでも、クライアントの依頼で向かうので遠征だ。
そこのところ、間違えないように。
高橋:「先生、バス来ましたよ」
愛原:「おう」
〔お待たせ致しました。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。……〕
前扉からバスに乗り込む。
朝のラッシュも終わった時間帯、バスの車内は比較的空いていた。
後ろの空いている席に座る。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは私達乗客を乗せると、すぐに発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用くださいまして、ありがとうございます。この都営バスは東京都現代美術館前、門前仲町経由、東京駅丸の内北口行きでございます。次は森下五丁目、森下五丁目でございます。……〕
高野:「リサちゃん、昨日はちゃんと眠れた?」
リサ:「あんまり眠れなかった」
高野君が私達の後ろの2人席に座るリサに話し掛けた。
リサは寝不足など感じさせないほど朝から元気だった。
高野:「そう。ずっと前から楽しみにしてたもんね」
リサ:「うん。サイトーや皆と一緒に行けるの楽しい」
高野:「学校の行事でも色々な所に行きそうだけど、東北はあまり無いかな?」
リサ:「秋に野外活動で栃木に行く予定」
高野:「やっぱりそうなんだ」
リサ:「3年生になったら修学旅行。京都とか大阪に行く」
高野:「やっぱり中学校の修学旅行の行き先ベタな法則ね。高校になったら海外かな?」
リサ:「うん。アメリカのラクーンシティとトールオークス市、もしくは中国の香港」
愛原:「全部バイオハザードが起こった所じゃねーか。何ちゅう危険地帯に行かせる学校だ」
個人的にはソウルや平壌にウィルスばら撒いて欲しいところだけど、バイオテロ組織的にもあまり旨味の無い場所らしい。
[同日10:14.天候:曇 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
〔「ご乗車ありがとうございました。呉服橋です」〕
バスは終点の1つ手前の呉服橋停留所に停車した。
大手町の東口たるこのバス停で降りる乗客も多く、私達は後から続いた。
もちろん、需要はそれだけではない。
数ある東京駅の出入口の1つである日本橋口が目の前だからだ。
新幹線(特に東海道新幹線)に乗るなら、このバス停で降りた方が良い。
(東京駅日本橋口外観。ロータリーはJRバスの到着場になっている。上部にそびえるビルは丸の内中央ビル。JR東海のオフィスビルであり、いわゆるステーションデパートではない)
さっきから登場する面々がうちの事務所だけであるが、それもそのはず。
この旅行では主役を張る斉藤絵恋さんが、大宮駅から乗って来ることになったからだ。
夏休みはさいたま市の実家で過ごすことになっている為、そうなった。
リサ:「さっきからサイトーのLINEが凄い」
高橋:「既読スルーしちまえよ。ウゼェな」
リサ:「そうしたら、後でもっと面倒なことになる。顔中くしゃくしゃに泣いて大騒ぎ」
高橋:「面倒な女と付き合ってんじゃねー!」
愛原:「まあまあ。斉藤さんも、やっと親友ができて嬉しいんだよ」
高橋:「親友だからこそ、もっと相手を信用してLINEの数は少なくなるものです」
愛原:「おっ、いいこと言うな!お前、たまにはいいこと言うな!」
高橋:「マジっすか!?あざーっす!!」(∀`*ゞ)
高橋は私に褒められて有頂天になった。
その直後、到着する高速バスがクラクションを鳴らしたのは高橋がヒャッハー!状態で車道に飛び出したからだ。
誘導員:「ちょっとちょっと!危ないからバスの前に出ないでください!」
愛原:「あ、すいません!」
高野:「何やってんのよ、もう!」
高橋:「いででででで!?」
高橋は私と高野君に引きずられて、そのまま一緒に日本橋口の中に入った。
リサ:「兄ちゃん、愚か」
高橋:「あぁっ!?」
愛原:「いや、リサの言う通りだ!」
高野:「旅の序盤からいきなりスリリングなことはやめてよね!」
高橋:「さ、サーセン……」
私は気を取り直した。
愛原:「自動改札口を通るから、キップは1人ずつ持とう」
高橋:「あざーっす!」
愛原:「リサはサイトーさんと隣同士がいいだろ?」
リサ:「もちろん!でも、愛原さんと隣もいいかも……」
高橋:「くぉらっ!そこは俺の席だ!」
高野:「まあ、先生が3人席の真ん中に座れば両隣同士になれるんだけど、そうすると今度は斉藤さんがハブられるっていうね……」
高橋:「3人席の真ん中か……。思い出しますよ」
愛原:「何が?」
高橋:「少年刑務所に入る時、新幹線で護送されたんですが、必ず3人席の真ん中に座らされるもんで」
愛原:「ああ!」
高橋:「てかさっき、入口ら辺に止まっていたハイエース、間違いなく護送車ですよ?」
愛原:「オマエの知識って、だいたい体験から来てるよな」
私達は日本橋口改札から新幹線のコンコースに入った。
東京駅JR東日本新幹線改札口の中で、唯一在来線コンコースを通らずに直に新幹線コンコースに入れる改札口である。
欠点なのはホームに上がるまで階段しか無いのと、必ずしも始発から終電まで開いているわけではないということである。
しかも、それは東海道新幹線も同じことなのだが、ホームの北端にある為、後ろの車両に乗ることになっていると、ホーム上を延々歩かされる羽目になるということだ。
高野:「あ、先生。もう電車来てますよ」
愛原:「あんまりこの暑い中、ホームでの待ち時間は減らしたいからな」
それでも10両編成の“やまびこ”ということもあってか、結構向こうの方に停車しているのだった。
山形新幹線や秋田新幹線を連結している列車だったら、もう目の前にそれが止まっているのだろうが。
愛原:「高橋、一服するなら今のうちだぞ?」
高橋:「あざーっす!吸い溜めしておきます!」
愛原:「俺達は先に行ってるから。いいか?あの列車の8号車だぞ?分かったな?」
高橋:「了解っす!」
私達は高橋を喫煙所に置いて行くと、その先に停車している東北新幹線の車両に向かった。
〔20番線に停車中の電車は、10時36分発、“やまびこ”47号、盛岡行きです。グランクラスは10号車、グリーン車は9号車、自由席は1号車から5号車です。尚、全車両禁煙です。……〕
8号車から後ろは普通車。
私達は特急券に書かれた座席番号を確認して、座席に座った。
私がA席、高橋君がB席、高野君がC席、リサがD席、斉藤さんがE席である。
愛原:「斉藤さんが乗ってくるまで、ちょっとした一人旅だな」
リサ:「何だかちょっと寂しい」
高野:「通路を挟んでいるだけだから大丈夫よ」
その後高橋が乗り込んで来て、列車は定刻通りに発車したのだが、果たしてこの先、何が待ち受けていることやら……。