[8月6日10:59.天候:晴 千葉県成田市 JR成田空港駅]
成田空港でイリーナを出迎えた稲生とマリアは、成田空港駅へ向かった。
稲生:「ポーリン先生はタクシーですが、本当にいいんですか?」
イリーナ:「いいよ。別に急いでるわけじゃないし」
稲生:「分かりました。でも、夏休みで“成田エクスプレス”は軒並み満席なんですよねぇ……」
イリーナ:「自由席は無いの?」
稲生:「“成田エクスプレス”には、基本的に自由席はありません。快速なら全車自由席ですが……」
イリーナ:「じゃあ、それでいいよ」
稲生:「分かりました。……まあ、一応グリーン車にしておきましょう」
稲生、2階建てグリーン車のグリーン券を購入しておく。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の列車は、10時59分発、快速、逗子行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
他の東京近郊の中距離電車と同じように、4号車と5号車には2階建てグリーン車が連結されている。
5号車に乗り込んだ。
イリーナ:「来る時は何で来たの?」
稲生:「バスです」
イリーナ:「あ、そうか。バスという手もあったね」
稲生:「まあ、バスも道路状況によっては時間が読めませんから……」
イリーナ:「まあ、それもそうだけど」
イリーナは稲生達の前に座ると、お決まりの寝る体勢に入った。
イリーナ:「東京駅に着いたらよろしくね」
稲生:「あ、はい」
〔この電車は成田線、総武快速線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。停車駅は空港第2ビル、成田、酒々井、佐倉、物井、四街道、都賀、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、錦糸町から先の各駅です。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
2階席と1階席には網棚が無いので、人形達はマリアの膝の上に乗っている。
〔「お待たせ致しました。10時59分発、快速、逗子行き、まもなく発車致します」〕
ホームから発車メロディが聞こえて来る。
そして、普通車のドアと同じドアチャイムの音が聞こえてきた。
バンというドアが閉まる音がすると、列車は静かに走り出した。
〔まもなく空港第2ビル、空港第2ビル。お出口は、右側です〕
〔The next station is Narita Airport Terminal 2・3 station.The doors are right side will open.〕
放送が簡易なのは、次の駅まで1キロしか離れていないことと、下車客はまず考えられず、乗車客しかいないであろうという想定によるもの。
そして、乗客が固まってから纏めて詳しい案内をしようということだ。
イリーナは座席を最大限に倒し、ローブのフードを被っていた。
この時、イリーナはフードだけでなく、黒いマスクも着用していた。
飛行機の中では空調によって喉がやられやすい為だとしているが、あまり素顔が有名になってしまったこともあり、顔バレを防ぐというのもあるらしい。
今では仕事の時には、必ずマスクをして顔バレしないようにしているらしい。
稲生:「東京駅までは1時間半以上あります。先生の気持ちも分かるというものです」
マリア:「師匠が電車しか選択をしなかったのも分かるよ。今、高速道路が大渋滞らしいから」
稲生:「そうなんですか。エレーナ達、大変だなぁ……」
マリア:「料金とかはどうなの?」
稲生:「空港定額タクシーに乗るんでしたら、渋滞に巻き込まれても料金が上がることはないですけどね」
マリア:「そうか……」
空港第2ビル駅からも多くの乗客が乗って来た。
グリーン車が満席になって、イリーナの隣にもビジネスマンらしきスーツ姿の乗客が乗って来たくらいだ。
〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は成田線、総武快速線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。【中略】次は、成田です〕
客層はビジネスマンよりも、夏休みの旅行客が多い。
どうしても、2階席から埋まる傾向があるようだ。
稲生:「よほど2階建てグリーン車が珍しいんですかね。海外でもそれくらいの列車、走ってそうな気がしますけど……」
マリア:「アジアでは珍しいんじゃないの?多分、中国の鉄道以外にダブルデッカーを私は知らない」
稲生:「……あ、それもそうか」
今はまだ地下トンネルを走っているが、成田駅の手前で地上に出るので、今はまだ眺望などは望めない。
[同日12:32.天候:不明 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
総武快速線の錦糸町駅を出た電車は、再び地下トンネルへと潜っていく。
その為か、E217系というこの車両は他の中距離電車と違い、非常用貫通扉などが付いた地下鉄対応車となっている。
2020年度にはE235系、つまり現在山手線で運転されている車両に置き換えられるそうだが、貫通扉の付いたバージョンなのだろうか。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。地下総武線ホーム1番線到着、お出口は右側です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。この電車は横須賀線直通、逗子行きです。横須賀線内、逗子まで各駅に停車致します」〕
稲生:「先生、先生。そろそろ降りますよ」
イリーナ:「ん……そうかい」
素直にイリーナは起きた。
起きる時はマスクを取る。
多分、座席に座って寝るという体勢上、エアコンの風などで喉がやられやすいのだろう。
占い師としての仕事の時は顔バレしないように着けているようだが、それまで素顔で活動していた為に、今更感はある。
電車が地下ホームに入線する。
〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、新橋に止まります〕
ここで降りる乗客は多い。
稲生達も電車を降りた。
海外からの来日客がやはり多く見られた。
稲生:「それじゃ、今度は上野東京ラインに乗り換えましょう」
イリーナ:「了解。勇太君のお父さんの病院、面会時間は午後からだっけ?このタイミングで行けば、途中で待ち惚け食らうこともないわけだね」
稲生:「あ、はい。そういうことです。でも、父は昨日手術を終えたばかりで病室が……あっ?」
そこへ稲生のスマホにメールの着信があった。
それは母親の佳子からで、一般の病室へ移ったということだった。
もっとも、なるべく会社と連絡が取りやすいように、個室に入ったとは思うが(個室なら電話やPCが自由に使える為)。
イリーナ:「アタシがこのタイミングで戻って来たのは、そういう運命だってことさ。良かったねぇ」
稲生:「あ、ありがとうございます!」
マリア:(その占いを先にやっておけば良かったのに……って、きっとあれか。昨夜のことで、気でも使ってくれたかな)
イリーナ:「うんうん。『仲良き事は美しき哉』、マリアとも仲良くやれているし、先生として嬉しいことの1つだわ」
マリア:(やっぱりバレてるか……)
地下ホームから、今度は地上ホームへと向かう魔道士達。
成田空港でイリーナを出迎えた稲生とマリアは、成田空港駅へ向かった。
稲生:「ポーリン先生はタクシーですが、本当にいいんですか?」
イリーナ:「いいよ。別に急いでるわけじゃないし」
稲生:「分かりました。でも、夏休みで“成田エクスプレス”は軒並み満席なんですよねぇ……」
イリーナ:「自由席は無いの?」
稲生:「“成田エクスプレス”には、基本的に自由席はありません。快速なら全車自由席ですが……」
イリーナ:「じゃあ、それでいいよ」
稲生:「分かりました。……まあ、一応グリーン車にしておきましょう」
稲生、2階建てグリーン車のグリーン券を購入しておく。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。2番線に停車中の列車は、10時59分発、快速、逗子行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
他の東京近郊の中距離電車と同じように、4号車と5号車には2階建てグリーン車が連結されている。
5号車に乗り込んだ。
イリーナ:「来る時は何で来たの?」
稲生:「バスです」
イリーナ:「あ、そうか。バスという手もあったね」
稲生:「まあ、バスも道路状況によっては時間が読めませんから……」
イリーナ:「まあ、それもそうだけど」
イリーナは稲生達の前に座ると、お決まりの寝る体勢に入った。
イリーナ:「東京駅に着いたらよろしくね」
稲生:「あ、はい」
〔この電車は成田線、総武快速線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。停車駅は空港第2ビル、成田、酒々井、佐倉、物井、四街道、都賀、千葉、稲毛、津田沼、船橋、市川、新小岩、錦糸町、錦糸町から先の各駅です。4号車と5号車は、グリーン車です。車内でグリーン券をお買い求めの場合、駅での発売額と異なりますので、ご了承ください〕
2階席と1階席には網棚が無いので、人形達はマリアの膝の上に乗っている。
〔「お待たせ致しました。10時59分発、快速、逗子行き、まもなく発車致します」〕
ホームから発車メロディが聞こえて来る。
そして、普通車のドアと同じドアチャイムの音が聞こえてきた。
バンというドアが閉まる音がすると、列車は静かに走り出した。
〔まもなく空港第2ビル、空港第2ビル。お出口は、右側です〕
〔The next station is Narita Airport Terminal 2・3 station.The doors are right side will open.〕
放送が簡易なのは、次の駅まで1キロしか離れていないことと、下車客はまず考えられず、乗車客しかいないであろうという想定によるもの。
そして、乗客が固まってから纏めて詳しい案内をしようということだ。
イリーナは座席を最大限に倒し、ローブのフードを被っていた。
この時、イリーナはフードだけでなく、黒いマスクも着用していた。
飛行機の中では空調によって喉がやられやすい為だとしているが、あまり素顔が有名になってしまったこともあり、顔バレを防ぐというのもあるらしい。
今では仕事の時には、必ずマスクをして顔バレしないようにしているらしい。
稲生:「東京駅までは1時間半以上あります。先生の気持ちも分かるというものです」
マリア:「師匠が電車しか選択をしなかったのも分かるよ。今、高速道路が大渋滞らしいから」
稲生:「そうなんですか。エレーナ達、大変だなぁ……」
マリア:「料金とかはどうなの?」
稲生:「空港定額タクシーに乗るんでしたら、渋滞に巻き込まれても料金が上がることはないですけどね」
マリア:「そうか……」
空港第2ビル駅からも多くの乗客が乗って来た。
グリーン車が満席になって、イリーナの隣にもビジネスマンらしきスーツ姿の乗客が乗って来たくらいだ。
〔今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は成田線、総武快速線、横須賀線直通、快速、逗子行きです。【中略】次は、成田です〕
客層はビジネスマンよりも、夏休みの旅行客が多い。
どうしても、2階席から埋まる傾向があるようだ。
稲生:「よほど2階建てグリーン車が珍しいんですかね。海外でもそれくらいの列車、走ってそうな気がしますけど……」
マリア:「アジアでは珍しいんじゃないの?多分、中国の鉄道以外にダブルデッカーを私は知らない」
稲生:「……あ、それもそうか」
今はまだ地下トンネルを走っているが、成田駅の手前で地上に出るので、今はまだ眺望などは望めない。
[同日12:32.天候:不明 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]
総武快速線の錦糸町駅を出た電車は、再び地下トンネルへと潜っていく。
その為か、E217系というこの車両は他の中距離電車と違い、非常用貫通扉などが付いた地下鉄対応車となっている。
2020年度にはE235系、つまり現在山手線で運転されている車両に置き換えられるそうだが、貫通扉の付いたバージョンなのだろうか。
〔「ご乗車ありがとうございました。まもなく東京、東京です。地下総武線ホーム1番線到着、お出口は右側です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。この電車は横須賀線直通、逗子行きです。横須賀線内、逗子まで各駅に停車致します」〕
稲生:「先生、先生。そろそろ降りますよ」
イリーナ:「ん……そうかい」
素直にイリーナは起きた。
起きる時はマスクを取る。
多分、座席に座って寝るという体勢上、エアコンの風などで喉がやられやすいのだろう。
占い師としての仕事の時は顔バレしないように着けているようだが、それまで素顔で活動していた為に、今更感はある。
電車が地下ホームに入線する。
〔とうきょう〜、東京〜。ご乗車、ありがとうございます。次は、新橋に止まります〕
ここで降りる乗客は多い。
稲生達も電車を降りた。
海外からの来日客がやはり多く見られた。
稲生:「それじゃ、今度は上野東京ラインに乗り換えましょう」
イリーナ:「了解。勇太君のお父さんの病院、面会時間は午後からだっけ?このタイミングで行けば、途中で待ち惚け食らうこともないわけだね」
稲生:「あ、はい。そういうことです。でも、父は昨日手術を終えたばかりで病室が……あっ?」
そこへ稲生のスマホにメールの着信があった。
それは母親の佳子からで、一般の病室へ移ったということだった。
もっとも、なるべく会社と連絡が取りやすいように、個室に入ったとは思うが(個室なら電話やPCが自由に使える為)。
イリーナ:「アタシがこのタイミングで戻って来たのは、そういう運命だってことさ。良かったねぇ」
稲生:「あ、ありがとうございます!」
マリア:(その占いを先にやっておけば良かったのに……って、きっとあれか。昨夜のことで、気でも使ってくれたかな)
イリーナ:「うんうん。『仲良き事は美しき哉』、マリアとも仲良くやれているし、先生として嬉しいことの1つだわ」
マリア:(やっぱりバレてるか……)
地下ホームから、今度は地上ホームへと向かう魔道士達。