[11月25日21:08.天候:晴 東京都荒川区町屋 都営バス町屋駅前停留所]
夕食も終わり、稲生達は浅草のホテルに戻ることにした。
幸いレストランの最寄り駅から浅草まで、路線バスが出ている。
稲生:「いやー、今日はいっぱい歩いたなぁ……」
ルーシー:「温泉が良かったね。お土産もあるし」
ルーシーとマリアは両手にペーパーバッグを抱えている。
1つは箱根湯本で買った土産、もう1つは原宿で買ったブレザーやスカートなどだ。
エレーナ:「お、バス来たぜ。あれか?」
稲生:「草41系統……で、間違いない」
エレーナ:「浅草って書いてあるからガチだろ?」
稲生:「まあ、そうなんだけど……」
前扉が開く。
反対側の足立梅田町行きは賑わっていたが、浅草方面は空いていた。
稲生:「ここに運賃を……入れなくてもいいか」
今やルーシーですらSuicaで乗っている。
前回来日した時に、お土産代わりに買ったものだ。
今はチャージして乗っている。
後ろの2人席に座った。
もちろん、稲生はマリアと一緒に座る。
〔発車致します。お掴まり下さい〕
バスはドアを閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。この都営バスは三河島駅前、鶯谷駅前経由、浅草寿町行きでございます。次は荒川五丁目、荒川五丁目でございます〕
マリア:「! そういえば、明日は成田空港までバスで行くんだって?」
稲生:「そうです。もうバス会社に貸切バス1台手配してますよ」
マリア:「大師匠様のフライトに合わせてチェックアウトでしょ?行き先が変わって、時間は……」
稲生:「ああ、それは大丈夫です。本来の予定ですと、成田空港で時間を潰すことになっていたんですよ。ほら、ローマ教皇も明日は羽田空港から離日しますから、僕達はそれに巻き込まれないように、都内を脱出するということなんです」
モスクワ行きは午前中に離陸するのだが、元々の出発予定の変更をする必要は無いという。
稲生:「そういうことなんで」
マリア:「それならいいんだけど……。今バスに乗ってみて、ふと気づいた」
稲生:「飛行機のチケットはアナスタシア先生が取ってくれたみたいですし、僕達は新幹線のキップだけ確保していればいいんですよ」
マリア:「なるほど」
エレーナ:「電車のキップはいいのか?」
後ろに座っているエレーナがヒョイと顔を出す。
稲生:「ん?」
エレーナ:「成田空港で大師匠様を見送った後は、電車で東京駅だろ?」
稲生:「それについては何の指示も無いから、何もしなかったけど……」
マリア:「ベイカー大先生と御一緒でしょ?ハイヤーを手配するとかになるんじゃないの?」
稲生:「成田空港でハイヤーの手配は可能ですけどね。ちょっとそういうのは現地に行って確認してみないと……」
エレーナ:「イリーナ組とは別行動になるかもしれないぜ?」
稲生:「いや、それはないだろう。新幹線を一緒に乗るってことは、東京駅までも一緒になるってことさ」
ルーシー:「私からもベイカー先生に確認してみるよ」
ルーシーは水晶球を取り出した。
[同日21:30.天候:晴 台東区花川戸 浅草ビューホテル]
最寄りのバス停でバスを降りた稲生達は、その足で宿泊先のホテルに戻った。
ロビーにはイリーナが座っていた。
稲生:「あっ、先生」
イリーナ:「やあやあ、仲良くやってるねぇ」
マリア:「師匠、これお土産です」
稲生:「箱根の温泉に行って来たんです」
イリーナ:「おや、まあ……。美味しそうな饅頭だねぇ」
稲生:「入浴剤もありますので、帰った時に温泉気分が味わえますよ」
イリーナ:「それは素晴らしい。というか、今夜から使わせてもらうわよ」
稲生:「おっ、そうでした」
エレーナ:「イリーナ先生が自らここにいらっしゃるというのは……」
イリーナ:「ああ。私はこのコ達に用があるだけだから、あなた達はそれぞれの先生にお土産渡して来なさい。皆、部屋にいるから」
ルーシー:「大師匠様の御相手で忙しいのでは?」
イリーナ:「それは大丈夫。ダンテ先生はVIPとの会合で忙しく、皆して手持無沙汰だから。私はボランティアで占いやってるだけ」
マリア:(カネを請求しないだけで、客から出してくるチップは受け取ってるな……)
ルーシー:「それじゃ、私はこれで失礼します。マリアンナ、明日その服ね」
マリア:「ああ、分かった」
エレーナ:「じゃ、失礼しまっす」
ルーシーとエレーナは先にエレベーターに乗って行った。
イリーナ:「何だい?マリアも新しい服を買ったのかい?」
マリア:「ルーシーが欲しい服があるっていうんで一緒に付き合ったんですけど、私も欲しくなっちゃって……」
イリーナ:「新しいブレザーとスカートか。ま、いくら制服代わりとはいえ、いつも同じ服だと飽きるでしょうから、たまには違う服を着てもいいんじゃない」
マリア:「はい。こっちのは少し生地が厚いので、冬用に着れそうです」
イリーナ:「ふむふむ」
今着ているマリアのブレザーが少し生地が薄めのモスグリーンのダブルだが、今度買ったブレザーは生地が厚めのダークグリーンのダブルである。
ルーシーがシングルを着ているのとは対照的だ。
マリアとしては、シングルよりもダブルの方が大人っぽく見えることを期待して着ているようなのだが、実際は大して変わらない。
まあ、そりゃそうだ。
男は女性と対面した時、顔と胸を見るのだから。
稲生:「それで先生、何かあったんですか?」
イリーナ:「実は言うの忘れてたんだけど、成田空港から東京駅までのベイカー組の分のチケットの購入を頼んでなかったわね」
稲生:「あ、やっぱそうですか」
イリーナ:「ええ。で、そこにポーリン組も乗っかるってよ」
稲生:「エレーナ達も」
イリーナ:「もっとも、ポーリン組は東京駅で降りるだろうけどね」
稲生:「エレーナが、ワンスターホテル経由で魔界へ行くとか言ってましたからね。分かりました。それじゃ、大師匠様をお見送りした後、東京駅に行く“成田エクスプレス”のキップを買ってくればいいんですね」
イリーナ:「そう。これがカード。駅までタクシー使っていいから」
稲生:「ありがとうございます」
稲生はイリーナからプラチナカードを預かった。
稲生:「“みどりの窓口”は上野駅が近いと思うので、そこまで行って来ます」
マリア:「私も行く。荷物を置いて来るから」
稲生:「分かりました。じゃあ、僕も部屋に荷物置いてきます」
イリーナ:「慌てなくていいよ。タクシーなら、ホテルの前から乗れるから」
稲生:「はい」
アテンド役の仕事は、ダンテが離日した後も続く。
夕食も終わり、稲生達は浅草のホテルに戻ることにした。
幸いレストランの最寄り駅から浅草まで、路線バスが出ている。
稲生:「いやー、今日はいっぱい歩いたなぁ……」
ルーシー:「温泉が良かったね。お土産もあるし」
ルーシーとマリアは両手にペーパーバッグを抱えている。
1つは箱根湯本で買った土産、もう1つは原宿で買ったブレザーやスカートなどだ。
エレーナ:「お、バス来たぜ。あれか?」
稲生:「草41系統……で、間違いない」
エレーナ:「浅草って書いてあるからガチだろ?」
稲生:「まあ、そうなんだけど……」
前扉が開く。
反対側の足立梅田町行きは賑わっていたが、浅草方面は空いていた。
稲生:「ここに運賃を……入れなくてもいいか」
今やルーシーですらSuicaで乗っている。
前回来日した時に、お土産代わりに買ったものだ。
今はチャージして乗っている。
後ろの2人席に座った。
もちろん、稲生はマリアと一緒に座る。
〔発車致します。お掴まり下さい〕
バスはドアを閉めて発車した。
〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。この都営バスは三河島駅前、鶯谷駅前経由、浅草寿町行きでございます。次は荒川五丁目、荒川五丁目でございます〕
マリア:「! そういえば、明日は成田空港までバスで行くんだって?」
稲生:「そうです。もうバス会社に貸切バス1台手配してますよ」
マリア:「大師匠様のフライトに合わせてチェックアウトでしょ?行き先が変わって、時間は……」
稲生:「ああ、それは大丈夫です。本来の予定ですと、成田空港で時間を潰すことになっていたんですよ。ほら、ローマ教皇も明日は羽田空港から離日しますから、僕達はそれに巻き込まれないように、都内を脱出するということなんです」
モスクワ行きは午前中に離陸するのだが、元々の出発予定の変更をする必要は無いという。
稲生:「そういうことなんで」
マリア:「それならいいんだけど……。今バスに乗ってみて、ふと気づいた」
稲生:「飛行機のチケットはアナスタシア先生が取ってくれたみたいですし、僕達は新幹線のキップだけ確保していればいいんですよ」
マリア:「なるほど」
エレーナ:「電車のキップはいいのか?」
後ろに座っているエレーナがヒョイと顔を出す。
稲生:「ん?」
エレーナ:「成田空港で大師匠様を見送った後は、電車で東京駅だろ?」
稲生:「それについては何の指示も無いから、何もしなかったけど……」
マリア:「ベイカー大先生と御一緒でしょ?ハイヤーを手配するとかになるんじゃないの?」
稲生:「成田空港でハイヤーの手配は可能ですけどね。ちょっとそういうのは現地に行って確認してみないと……」
エレーナ:「イリーナ組とは別行動になるかもしれないぜ?」
稲生:「いや、それはないだろう。新幹線を一緒に乗るってことは、東京駅までも一緒になるってことさ」
ルーシー:「私からもベイカー先生に確認してみるよ」
ルーシーは水晶球を取り出した。
[同日21:30.天候:晴 台東区花川戸 浅草ビューホテル]
最寄りのバス停でバスを降りた稲生達は、その足で宿泊先のホテルに戻った。
ロビーにはイリーナが座っていた。
稲生:「あっ、先生」
イリーナ:「やあやあ、仲良くやってるねぇ」
マリア:「師匠、これお土産です」
稲生:「箱根の温泉に行って来たんです」
イリーナ:「おや、まあ……。美味しそうな饅頭だねぇ」
稲生:「入浴剤もありますので、帰った時に温泉気分が味わえますよ」
イリーナ:「それは素晴らしい。というか、今夜から使わせてもらうわよ」
稲生:「おっ、そうでした」
エレーナ:「イリーナ先生が自らここにいらっしゃるというのは……」
イリーナ:「ああ。私はこのコ達に用があるだけだから、あなた達はそれぞれの先生にお土産渡して来なさい。皆、部屋にいるから」
ルーシー:「大師匠様の御相手で忙しいのでは?」
イリーナ:「それは大丈夫。ダンテ先生はVIPとの会合で忙しく、皆して手持無沙汰だから。私はボランティアで占いやってるだけ」
マリア:(カネを請求しないだけで、客から出してくるチップは受け取ってるな……)
ルーシー:「それじゃ、私はこれで失礼します。マリアンナ、明日その服ね」
マリア:「ああ、分かった」
エレーナ:「じゃ、失礼しまっす」
ルーシーとエレーナは先にエレベーターに乗って行った。
イリーナ:「何だい?マリアも新しい服を買ったのかい?」
マリア:「ルーシーが欲しい服があるっていうんで一緒に付き合ったんですけど、私も欲しくなっちゃって……」
イリーナ:「新しいブレザーとスカートか。ま、いくら制服代わりとはいえ、いつも同じ服だと飽きるでしょうから、たまには違う服を着てもいいんじゃない」
マリア:「はい。こっちのは少し生地が厚いので、冬用に着れそうです」
イリーナ:「ふむふむ」
今着ているマリアのブレザーが少し生地が薄めのモスグリーンのダブルだが、今度買ったブレザーは生地が厚めのダークグリーンのダブルである。
ルーシーがシングルを着ているのとは対照的だ。
マリアとしては、シングルよりもダブルの方が大人っぽく見えることを期待して着ているようなのだが、実際は大して変わらない。
まあ、そりゃそうだ。
男は女性と対面した時、顔と胸を見るのだから。
稲生:「それで先生、何かあったんですか?」
イリーナ:「実は言うの忘れてたんだけど、成田空港から東京駅までのベイカー組の分のチケットの購入を頼んでなかったわね」
稲生:「あ、やっぱそうですか」
イリーナ:「ええ。で、そこにポーリン組も乗っかるってよ」
稲生:「エレーナ達も」
イリーナ:「もっとも、ポーリン組は東京駅で降りるだろうけどね」
稲生:「エレーナが、ワンスターホテル経由で魔界へ行くとか言ってましたからね。分かりました。それじゃ、大師匠様をお見送りした後、東京駅に行く“成田エクスプレス”のキップを買ってくればいいんですね」
イリーナ:「そう。これがカード。駅までタクシー使っていいから」
稲生:「ありがとうございます」
稲生はイリーナからプラチナカードを預かった。
稲生:「“みどりの窓口”は上野駅が近いと思うので、そこまで行って来ます」
マリア:「私も行く。荷物を置いて来るから」
稲生:「分かりました。じゃあ、僕も部屋に荷物置いてきます」
イリーナ:「慌てなくていいよ。タクシーなら、ホテルの前から乗れるから」
稲生:「はい」
アテンド役の仕事は、ダンテが離日した後も続く。