報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「秋葉原散策」

2022-05-16 11:28:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月2日10:58.天候:曇 東京都千代田区神田佐久間町 東京メトロ秋葉原駅→ヨドバシAkiba]

〔足元に、ご注意ください。あきはばら、秋葉原。南千住行きです〕

 稲生達を乗せた日比谷線電車が、秋葉原駅に到着する。
 日比谷線には、まだホームドアは設置されていない。
 電車を降りると、すぐに発車メロディが鳴った。
 AKB48の“恋するフォーチュンクッキー”である。
 秋葉原駅ならではの、ご当地メロディと言えよう。

〔2番線は、発車致します。閉まるドアに、ご注意ください。駆け込み乗車は、おやめください。JR線、つくばエクスプレス線はお乗り換えです〕

 階段を昇っていると、電車が巻き起こした強風で、2人のローブがバタバタと靡く。
 しかし、マリアのスカートはその内側にある為、あまり影響はない。

 稲生:「それじゃ、ヨドバシにでも行くか」

 3番出口から出ると、すぐ目の前にヨドバシカメラとJR秋葉原駅がある。
 当たり前だが、JRの券売機で地下鉄のキップは買えないので念の為(意外とこういう間違いをする上京者は多い)。

〔まあるい緑の山手線♪真ん中通るは中央線♪……〕(都営新宿線も真ん中を通っているのだが、この歌ができた時、まだ都営新宿線は開通していなかった)

 同僚警備員:「あっ、雲羽さん!店内の撮影は禁止ですよ!」
 雲羽:「うぉっ、ヤベッ!」
 警備隊長:「また、オマエか……」
 雲羽:「股尾前科?それはネット界で有名な、よく事故を起こす某JR運転士のことですか!?」
 警備隊長:「オマエ、そんなだから昇格保留食らうんだぞ?せっかく試験に受かったのに……」
 雲羽:「折伏やった結果がこれだよ!」
 警備隊長:「オマエ、また宗教の勧誘に来たのか?」
 雲羽:「宗教の勧誘じゃないです!映画の撮影です!」
 警備隊長:「ゲロったな。ちょっと防災センターまで来い!」

 ガシッ!ズール、ズール……。(警備員数名に連行される雲羽)

 雲羽:「あ~れ~……」
 多摩:「すいません、これください」
 店員:「ありがとうございます」

 尚、多摩準急名誉監督は客のフリして逃げたという。

[同日13:00.天候:晴 東京都千代田区神田花岡町 ヨドバシAkiba8Fレストランフロア→6F]

 午前中は家電関係を購入した2人。
 昼食はレストランフロアで、とんかつ定食を食べた。

 マリア:「日本料理っぽくなっていたけど、ポークカツレツだよな?」
 稲生:「そうです」
 マリア:「ああいうので良かったら、ミカエラ辺りに言えば、屋敷でも作ってもらえるような気がする」
 稲生:「ほんと!?」

 屋敷では日本料理は殆ど出されない。
 ロシア料理かイギリス料理が中心となるが、イギリス料理はバリエーションが少ないので、近隣諸国の料理が出てくることもある。
 さすがに見かねた専属メイド人形のダニエラが、夜食にお握りを作ってくれることはあったが。

 マリア:「ああ。後で言っておこう」
 稲生:「助かるよ!」

 エスカレーターで6階まで降りる。
 尚、家電は大きい物は後で屋敷に配達してもらう形式をとった。
 もっとも、最終的にはエレーナが運ぶことになるだろうが。

 稲生:「あっ、ガチャがある」
 マリア:「Gacha?」
 稲生:「最近のガチャは凝ってるなぁ……。この鉄道信号機なんて、鉄ヲタが買うのかな?」
 マリア:「ワンチャン、ルーシーが欲しがるかもね」

 ダンテ一門の鉄ヲタが稲生なら、鉄子はルーシーである。
 もっとも、稲生が鉄道全般とそれに付随する路線バスが範疇(なので、BRTも乗り鉄の範囲に含める派)なのに対し、ルーシーは高速鉄道(日本で言えば新幹線)や高速列車(日本で言えば新幹線や特急列車)に拘る派である。

 稲生:「あとは、この“光る魔導書”っぽいグッズとか」
 マリア:「魔法陣が超テキトー……」
 稲生:「電気スタンドとか、カンテラのミニチュアとか。一応ちゃんと光る」
 マリア:「……これは欲しいかも」
 稲生:「キャラ系だとペンギンとか、ぐでたまとか……」
 マリア:「この辺、日本ならではか?」
 稲生:「車とかデコトラとか……」
 マリア:「フムフム……」
 稲生:「東京の名所のミニチュアとか……」
 マリア:「スカイツリーと都庁か……」
 稲生:「冷蔵庫と扇風機、石油ファンヒーターやテレビのミニチュア」
 マリア:「もう何でもアリだなw」

 尚、作者はバスの降車ボタンをゲットしましたw

[同日14:31.天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅→京浜東北線1470A電車1号車内]

〔まもなく1番線に、快速、南浦和行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。次は、上野に止まります。御徒町へは、山手線を、ご利用ください〕

 殆どヨドバシAkiba内で過ごした2人。
 そろそろ稲生の実家に行く時間となったので、駅に移動する。

 マリア:「大抵あそこで全部手に入るというのが凄いな」
 稲生:「ヨドバシでも手に入らないモノは、電気街へ行けばいいってことだよ」

 薄い本、エログッズに関しましては【お察しください】。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、上野に止まります〕

 1番後ろの車両に乗り込んだ2人、
 空いているブルーの座席に腰かけた。
 すぐに発車メロディが鳴るが、汎用のもので、こちらは秋葉原ご当地メロディというわけではない。

〔1番線の京浜東北線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 車両とホームドアが閉まってから、電車が走り出す。
 駆け込み乗車があったのか、再開閉が何度かあった。
 発車が遅れた為か、少し急発進気味で発車する。
 その為、稲生の隣に座っているマリアが、やや稲生に寄り掛かる形となった。

〔次は上野、上野。お出口は、右側です。新幹線、高崎線、宇都宮線、常磐線、京成線、地下鉄銀座線と地下鉄日比谷線はお乗り換えです。上野の次は、田端に止まります〕
〔The next station is Ueno.JK30.The doors on the right side will open.Please change here for the Shinkansen,the Takasaki line,the Utsunomiya line,the Joban line,the Keisei line,the Ginza subway line and the Hibiya subway line.The stops after Ueno,will be Tabata.〕

 稲生:「一度家に行って荷物を置いて、そこから母さんとイオンモールに行くことになるだろうね」
 マリア:「なるほど。分かった」

 山手線との並行区間は駅間距離が短く、こうして話している間に、既に御徒町駅を通過していた。
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物語の途中ですが、ここで法華講講習会受講の報告を致します。

2022-05-15 22:24:05 | 日記
 本日の御登山で手に入れた戦利品から、御紹介致します。

 

 まずは毎度お馴染み、添書登山のワッペンです。
 こちらは、特に何の変哲もありませんね。
 法華講講習会・午後の部は、添書登山の後に行われました。

 

 これが本日、講習会で配られたテキストです。
 最後のページには、修了証が入っています。
 主なテーマは、『折伏』と『育成』について。
 『折伏』については顕正会と路線を異にし、『育成』については今の顕正会は耳が痛いんじゃないかな。
 殆ど育成できないままに、折伏に駆り立てようとするきらいがあるからね。
 それとも、今は違うのかな?
 『昔から違う!』という反論は認めませんよ?
 その当時を現役会員として見て来ましたから。
 因みに私、家庭訪問をしたこともないし、されたこともありませんw
 それと、法統相続についてもチラッと書かれていた。
 その一文が、こちら。

 『謗法の妻子眷属をば連々教化すべし』(“化儀抄”)

 以前、んっ?さんからもっと長文の所を紹介されたことがあったが、確かに改めてこの一文を見ても、最初から妻子ありきで語られてるね。
 因みに眷属とは、親兄弟・親族のことを指すのだという。
 謗法の妻子を教化する為に、わざわざ結婚せよとは確かに書いてない。
 しかし日蓮正宗では、『子々孫々に至るまで』と指導する。
 この辺りに矛盾を感じる。
 だからなのか、顕正会では最初から法統相続のことは完全スルーである。
 顕正会の完全スルーも如何なものかと思うが、超少子高齢化の時勢に遅れている感は否めない。
 多分、私の視界はとても狭いのだろう。
 仏様視点で見れば、超少子高齢化社会も、広宣流布の一布石に過ぎないのだと思われる。

 

 とはいうものの、婚活している身としては日蓮正宗の冠婚葬祭、特に『婚』の部分については知っておいた方が良いと、写真の書籍を購入した。
 あ、そうそう。
 『法統相続』だが、『ほうとうそうぞく』ではなく、『ほっとうそうぞく』と読むらしい。
 実はこれ、恥ずかしながら今日の講習会で知った。
 本当に簡単に書かれているが、まあ、キリスト教式を求めている未入信の相手には諦めて頂くことになる。
 どことなく、神前式に似ている部分もあるから、それを求めている人なら説得はしやすかもしれない。

 

 その他、リーフレット。
 ええ、まあ、無宗教の人向けを意識して購入しましたよ。
 裏に連絡先を書き込む欄があったので、所属の坊に行き、御住職にお願いして、坊の連絡先のハンコを押して頂いた。
 今すぐ折伏に奮い立つ為に購入したわけではなく、『まあ、持っていれば何かの役には立つだろう』くらいな気持ちだったのだが、御住職には少し誤解させてしまったようだ。
 確かに、婚活相手に渡せれば良いとは思っているが、ただ単に『大石寺に到着しました』という報告LINEを送っただけで、『宗教の勧誘はダメって言ったよね!?』とのことだったので、多分リーフレットを渡した時点で【お察しください】。
 ガチ勢や顕正会員などは、『目の前でリーフレットを破り捨てられ、顔面ビンタの怨嫉謗法を受けてこそ罪障消滅!行けっ!!』となるのだろうが、傍観勢のエンジョイ勢をナメるなよ!
 なまじアマチュア偽作家やってるせいで、オチという名の予知はできるようになったからな?

 さて、この講習会が、私にとってどれだけの信心の糧になったのかは不明だが、無事に終了して帰宅し、このブログをアップすることで、御報告とさせて頂きます。
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“大魔道師の弟子” 「宗一郎の会社へ」

2022-05-14 19:54:46 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月2日07:00.天候:曇 東京都江東区森下 ワンスターホテル→マジックスター]

 稲生の枕元に置いたスマホが、アラームを鳴らす。

 稲生:「うーん……」

 稲生は手を伸ばして、アラームを止めた。

 稲生:「もう朝かぁ……」

 枕が変わると抵抗無く起きれるものだが、今回は訳の分からぬ夢を見たということもあり、どちらかというと深く眠れた感は無い。
 浅い眠りのまま、朝を迎えたといった感じ。

 稲生:「ううーん……」

 起き上がってカーテンを開く。
 雨は止んでいるようだが、まだ曇っていた。
 欠伸をしながら、バスルームに向かった。
 顔を洗って歯を磨いていると、LINEの着信がある。
 見ると母親の佳子からで、今日は平日の為に、父親の宗一郎は会社に出勤するという。

 稲生:「へえ……」

 そこで稲生は、お使いを頼まれた。
 父親の会社に行き、父親から封筒を受け取って来て欲しいというものだ。
 その中身は、今度行く家族旅行で使う旅行券の引換券が入っているのだそうだ。
 随分まだるっこしいことだが、恐らく優待券とか法人割引の関係とか、その辺りだろう。

 稲生:「本当は秋葉原に行きたかったのに、先に八丁堀に行くハメになりそうです」

 マリアと合流して1階のレストランで朝食を取りながら、稲生は言った。

 マリア:「そう、なんだ。じゃあ、正装した方がいいかな?」
 稲生:「別にいいんじゃない?仕事で行くわけじゃないんだし。それに、ローブは着てるしね」

 帰省なので、稲生も私服である。
 さすがにダンテと会うだとか、魔界の魔王城に行くとあらばスーツくらいは着るが。

 マリア:「それもそうか。……ハッチョーボリってどこにあるの?大手町じゃなかったっけ?」
 稲生:「父さんの会社、移転したからね」

 元々は大手町にあったのだが、それは築年数が古い建物で、東日本大震災の影響もあり、数年前に移転したそうである。

 マリア:「そうなんだ。で、どうやって行く?」
 稲生:「幸い、そこの通りを走るバスが八丁堀地区まで行くから、それに乗って行けばいいと思う。まだ八丁堀で良かったよ」
 マリア:「どうして?」
 稲生:「八丁堀は地下鉄日比谷線が通っててね、それに乗れば秋葉原まで行けるんだ」
 マリア:「そういうことか」
 稲生:「10時半くらいに行けばいいらしいから、時間合わせて行こう」
 マリア:「分かった」

[同日10:09.天候:曇 同地区 森下駅前バス停→都営バス錦11系統車内]

 ホテルをチェックアウトした2人は、その足で最寄りのバス停に向かった。
 ゴールデンウィーク期間中であるが、今日は平日であり、カレンダー通りの企業であれば、出勤日である。
 多くの大企業では有給休暇取得奨励日なるものを設けており、実質10連休にする所が多いが、もちろんそうでないこともある。
 “かりあげクン”の会社は中小企業であるが、有休休暇奨励日が設けられ、多くの社員は喜んで有休を使ったが、遅刻・欠勤・早退の多いかりあげクンだけ出社していたという。

 稲生:「バスが来ました」

 都営バスの特別区内は前乗り。

 前から乗った稲生達は、Suicaで運賃を払う。
 朝ラッシュが終わった後の為か、車内は空いていた。
 空いている2人席に腰かける。

〔発車致します。お掴まりください〕

 バスは稲生達を乗せると、すぐに発車した。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは、浜町中の橋経由、築地駅前行きでございます。次は新大橋、新大橋でございます。……〕

 新大橋バス停を出ると、バスは新大橋を渡る。
 その橋は隅田川に架かる橋なのだが、その橋の上からの眺めは良い。
 何となく東京スカイツリーも見えそうな気がするのだが、川沿いにタワマンが建っているからか、さすがに見ることはできなかった。

[同日10:30.天候:曇 東京都中央区八丁堀 稲生宗一郎の会社]

 バスは渋滞に巻き込まれることなく、順調に運行できたので、ダイヤ通りに走れたのだろう。
 中央道の大渋滞に巻き込まれた高速バスとは、雲泥の差である。
 平日の東京都心は多くの営業車が行き交っているが、さすがに今日は休んでいる者が多いからだろう。
 バス停から徒歩数分の所に、宗一郎の会社があった。
 入ると受付カウンターはあったが、そこに受付係はおらず、代わりにホテルの自動チェックイン機のような機械があった。

 稲生:「えーっと……」

 近づくと画面が変わる。

〔いらしゃいませ。受付方法を選択してください〕

 稲生:「僕の名前でいいのかな……」

 稲生が自分の名前を入力すると、とある社員の名前が出て来た。
 それは宗一郎の秘書の名前であることは知っていた。
 その名前を選択する。

〔この内容でよろしければ、「次へ」を選択してください〕

 それを押す。

〔担当者へ、連絡しました。入館証の発行は、ございません。ロビーのソファにお掛けになって、お待ちください。まもなく、担当者が参ります。お待ちください〕

 稲生:「これでいいのか……!」
 マリア:「ハイテク……!」

 エントランスで立哨している警備員が、何も言ってこないところを見ると、これで良いのだろう。
 しばらくすると、セキュリティゲートの向こうから、稲生と大して歳の変わらぬ男性社員がやってきた。

 社員:「稲生様でいらっしゃいますか?」
 稲生:「あ、はい。そうです」
 社員:「私、秘書部の者ですが、担当が別件対応中でして、代理で参りました」
 稲生:「あ、そうなんですか」
 社員:「こちらが副社長からお預かりした封筒です。御確認ください」

 しばらくの間、専務取締役関東統括エリア本部長だった稲生宗一郎だったが、イリーナの多大なる助力もあり、代表取締役副社長に昇格していた。
 初登場時は、執行役員埼玉支社長だったのだが。
 しかし、これ以上イリーナからの音沙汰が無いということは……。

 稲生:「……あ、はい。大丈夫です。言われた内容通りです」

 稲生は一応封筒を開けてみて、中に引換券が入っているのを確認した。

 社員:「それでは、よろしくお願い致します」
 稲生:「あ、はい。父にも、よろしくお伝えください」
 社員:「承知しました」
 稲生:「それでは失礼致します」
 社員:「失礼致します」

 稲生は封筒を受け取ると、それをローブのポケットの中にしまう。
 ローブのポケットは、まるで四○元ポケ○トのようになっており、スッポリと入っていった。

 稲生:「あー、緊張した」
 マリア:「私の方が緊張したよ。まさか、セレクタリ(秘書)が代理で持ってくるなんて……」
 稲生:「副社長だから、平日はガッツリ忙しいのかもね」

 でも、休日は休む。
 今でも接待ゴルフなんてあるのだろうか。
 あんまり宗一郎がゴルフに行くところは、見たことが無いが……(でも、ゴルフバッグはある)。

 稲生:「それじゃ、今度はアキバに行こう」

 2人は地下鉄八丁堀駅に向かった。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルでの一夜」

2022-05-13 20:22:41 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月1日20:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル・レストラン“マジックスター”]

 夜はホテルに併設されたレストランで懇親会が行われた。

 藤谷:「しゃ、しゃんばん!藤谷春人、歌います!ヒック!」
 稲生:「班長、酔っ払い過ぎですよ!」
 藤谷:「なにおっ!この麒麟送子!」
 稲生:「誰が妖怪大戦争ですか!」

 学生時代における、妖怪達から見た稲生勇太の通り名。
 法華講員2人が言い争っている間、歌い始める魔女2人。

 マリア:「ずっとずっと♪握る手は離れないと♪窓に♪ついた手に♪いつしか伝う♪涙~♪」
 エレーナ:「『上りには偶数の番号を付けるのよ』♪得意気に笑ってる♪キミがただ可愛くて♪」
 藤谷:「うぁ!先越された!」

 レストランを貸し切りにし、カラオケで盛り上がる参加者達。

 藤谷:「めんそーれ沖縄♪ちゅちゅちゅらちゅら沖海♪レッツゴー!」
 エレーナ:「レッツゴー!」
 マリア:「何でエレーナ、この歌知ってるんだよ?」
 稲生:「さてはエレーナも、“海物語”相当やってるな……」
 ウクライナ人:「Japanese casino?」
 稲生:「カジノじゃないです!」
 マリア:「カジノじゃないなら、何なんだ?」

 それから……。

 稲生:「走れ走れ♪ウマ娘♪フッフー!本命、穴ウマかき分けて♪走れ走れ♪ウマ娘♪追い付け追い越せ♪引っこ抜け♪」

 昭和の原曲、『はしれコウタロー』。
 平成のアレンジ、『はしれマキバオー』。
 そして令和のリメイク、稲生の歌っているのは『はしれウマ娘』。

 稲生:「どう!?クールジャパンでしょ!?」
 エレーナ:「稲生氏のはともかく、藤谷さんのパチンコはコリア系だろ?」
 藤谷:「大丈夫だ。俺の行きつけの店は、ちゃんと日本人が経営してるから」
 稲生:「いや、そういう問題じゃないと思います」

 しばらくして、鈴木がやってくる。

 鈴木:「こんばんはー」
 稲生:「鈴木君!」
 鈴木:「おおっ、稲生先輩!こんばんは!」
 稲生:「久しぶりだね!」
 鈴木:「しばらくです!それより、エレーナは?」
 エレーナ:「おう、鈴木!例の物は持って来たか!?」
 鈴木:「OK!アネゴ!」

 鈴木が持って来たキャリーバッグを開けると、そこから出て来たのは……。

 稲生:「PS5にニンテンドースイッチ、PSV……。ありとあらゆる据置型ゲーム機と携帯ゲーム機のオンパレードじゃないか」
 鈴木:「避難民に子供もいるっていうから、ゲーム持ってきたんだけど……」
 エレーナ:「この前、リリィへのプレゼント、ありがとうだぜ!よくPS5手に入ったもんだぜ!・・・・・・!・・・・・・・!」

 エレーナは最後、避難民の子供達に、ウクライナ語で何かを言った。
 日本人の鈴木が、ゲーム機を持って来たことを話したようだ。

 稲生:「この半導体不足の時代に、よくPS5、簡単に手に入るね?」
 鈴木:「功徳です!」
 藤谷:「ああ。出自の福運を駆使した功徳だ」

 鈴木の実家は稲生家よりも更に裕福であり、PS5を簡単に手に入れられるコネがあるのだろう。

 藤谷:「転売ヤーから買ったんじゃないだろうな?」
 鈴木:「違いますよ。ちゃんとした正規の裏ルートから真っ当なお金を払って手に入れましたよ」
 稲生:「正規の裏ルートって日本語自体がおかしくない?」
 鈴木:「そんなことないですよ」
 エレーナ:「リリィも喜んでプレイしているが、おかげで修行サボりが出てくるようになったんで、そろそろ没収しようかと思ってるんだぜ」
 鈴木:「厳しいねぇ。当のリリィは?」
 エレーナ:「魔界の学校だぜ。学校が再開したんで、また寮に戻ったんだぜ」
 鈴木:「そうなのか」

 学校にも持っていたのだろうか?

 エレーナ:「魔界にはテレビが無いから、携帯ゲーム機だけは持たせてやったぜ」
 稲生:「あ、そうか。魔界はラジオまでしかないもんね」
 鈴木:「俺が入学祝いにあげたニンテンドースイッチだな」
 エレーナ:「私に惚れてたくせに、今じゃリリィとイチャイチャだぜ。このロリコン野郎が」
 鈴木:「ちちち、違うよ!」

[同日22:00.天候:雨 同ホテル]

 子供はとっくに寝る時間。
 時短営業の縛りが無くなったマジックスターも、さすがに閉店時間である。
 懇親会はお開きとなり、藤谷と鈴木も帰宅することにした。
 ……のだが。

 鈴木:「すいません。シングル1つ空いてますか?」
 オーナー:「ありがとうございます」
 稲生:「泊まるんかい!」
 エレーナ:「藤谷さん、タクシー来ましたよ」
 藤谷:「ありがとう」

 ホテルの前に横付けされる東京無線タクシー。

 
(藤谷が乗った東京無線タクシーと同型車種。おや?よく見ると、このタクシー会社の名前は……)

 トールワゴンタイプの車種なので、大柄な藤谷が乗っても窮屈ではないだろう。

 藤谷:「今度、提供するマンションの内見を近々行うので楽しみにしててくださいと伝えてくれる?」
 エレーナ:「分かりました。伝えておきます」

 藤谷はタクシーに乗り込んだ。
 そして、タクシーは走り去って行った。
 タクシーを見送って、ホテルに戻る。

 マリア:「私達も寝るか。今日は朝早かったし」
 稲生:「そうだね」
 鈴木:「先輩方は何階に泊まってるんですか?」
 稲生:「5階だよ」
 鈴木:「いいですねぇ。僕は4階です」
 稲生:「そうなのか」

 鈴木は403号室となっていた。
 1階の自販機で水などを購入し、それからエレベーターに乗った。

 鈴木:「それじゃ、おやすみなさー」
 稲生:「おやすみ」

 鈴木は4階で降りて行った。
 3階はウクライナ人避難者達で賑やかだったが、4階は静かなものだった。
 そして、5階もだ。

 マリア:「明日はどうする?」
 稲生:「午後に家に着くような感じでいいと思うから、7時くらいに起きようか」
 マリア:「いつも通りだな。おやすみ」
 稲生:「おやすみ」

 2人の魔道士は、それぞれ自分の部屋に戻って行った。
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“大魔道師の弟子” 「雨のワンスターホテル」

2022-05-13 15:07:05 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月1日15:30.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 森下駅には無事に着いた。
 しかし、駅の外はしとしとと雨が降っている。
 傘を持っていない2人の魔道士は、ローブのフードを被った。
 ただのローブではなく、夏は防暑着になるし、冬は防寒着になる。
 そして、雨の時は完全防水という魔法のローブである。
 新大橋通りから一歩路地に入った所に、ワンスタ―ホテルはあった。
 この辺りの路地は一方通行が多く、タクシーで行こうとすると、なかなか遠回りさせられてしまうような場所だ。

 オーナー:「いらっしゃいませ」

 小さなガラス戸を開けて中に入ると、こぢんまりとしたロビーにフロントがある。
 そのフロントに、オーナーがいた。

 稲生:「オーナーさん、お久しぶりです。今日、お世話になります」
 オーナー:「2名様で御予約の稲生様ですね。お待ちしておりました。それでは、こちらの宿泊者カードに御記入を……」

 稲生がシートに記入していると、マリアが言った。

 マリア:「支払いはアルカディアゴッズで。魔界の店とかは大丈夫でしたか?」
 オーナー:「はい、ありがとうございます。やはり戦禍の影響は受けたそうですが、幸い向こうは停戦状態になりましたので、急ピッチで復興が進められているところだそうです」
 稲生:「向こうはやっと戦争が終わったんですね」
 オーナー:「まあ、終戦ではなく、あくまで『中長期的な停戦』という扱いですが……」

 アルカディアゴッズというのは、魔界王国アルカディアで流通している通貨のことである。
 レートは1ゴッズがおよそ10円。
 如何にアルカディア王国の物価が安いかが分かるだろう。
 RPGをやれば分かると思うが、そういったファンタジー世界を冒険していると、案外金は溜まるものである。
 この2人の魔道士も、魔界王国アルカディアに行って稼いだものだった。

 稲生:「威吹は無事だといいなぁ……」

 早いとこ魔界に行って、威吹の安否を確認したいと思ったが、未だ冥界鉄道公社の魔界行きは運転されていない。

 マリア:「多分、無事だと思うよ。殺しても死なないモンスターだということは、勇太が一番知ってるだろう?あのシルバーフォックス」
 稲生:「ま、まあね」

 宿泊者カードに記入が終わると、オーナーは鍵を2つ持って来た。

 オーナー:「5階の501号室と502号室になります」
 稲生:「ありがとうございます。ウクライナの避難民の方達は、何階に泊まってるんですか?」
 オーナー:「今は3階に泊まってもらっています」
 稲生:「あ、そうですか。取りあえず、荷物置いてきます」

 2人はエレベーターに乗り込んだ。

 稲生:「藤谷さん、まだ来てないみたいだね」
 マリア:「競馬のメインレースが終わってから、こっちに来るんじゃないの?」
 稲生:「あ、なるほど。って、ええっ!?また銀座ウインズで街頭折伏やってるのかなぁ……?」

 5階に辿り着く。
 他の宿泊者がいるのかどうか分からないが、とにかく廊下は静かだ。

 稲生:「それじゃ、僕はこっちで」
 マリア:「ああ。また後で」

 501号室にマリアが、502号室に稲生が入った。
 中に入ると、ごく普通のシングルルームである。

 稲生:「藤谷班長にLINE送っておくか」

 稲生は自分のスマホを取り出すと、それで藤谷にLINEを送った。
 そしたらやはり、マリアの言う通りになった。
 『メインレースが終わったら、そちらに向かう』と。
 どうやら今日は銀座ではなく、錦糸町のウインズにいるらしい。
 当たったらタクシーで向かうが、外れたら都営バスになるとのこと。

 稲生:「案外、当たるんじゃないかな……」

 ふと、稲生はそう思った。

[同日16:30.天候:雨 同ホテル]

 ホテルの前に、1台のタクシーが到着する。
 そこから降りてきたのは、黒いジャケットを羽織った強面の藤谷。

 稲生:「藤谷班長、お久しぶりです」
 藤谷:「おー、稲生君!久しぶり!」
 稲生:「タクシーで来たということは、当たったんですね?」
 藤谷:「おうよ!たまには自分の力で当てるのも、いいもんだな!」
 稲生:「何のレースですか?」
 藤谷:「天皇賞だよ。知ってるか?」
 稲生:「ライスシャワーとメジロマックイーンが出たレースですね!?」
 藤谷:「絶対それ、ウマ娘の知識だろ?」
 エレーナ:「藤谷さん、こんにちは」
 藤谷:「おー、エレーナさん。こんにちは」
 エレーナ:「皆、集まってますよ。早く会議室に」
 藤谷:「そうだった。稲生君達も来るかい?」
 稲生:「いいんですか?」
 エレーナ:「稲生氏とマリアンナも来るんだぜ」
 マリア:「ああ、分かった」

 稲生とマリアも、ホテル1階の貸会議室に向かった。
 会議室内には、ニュースで観たような、ウクライナ人の女性と子供が何人かいた。

 エレーナ:「・・・・・、・・・・・・・」

 エレーナはウクライナ語で、出席者達に何か言った。
 残念ながら、稲生の持っている自動通訳魔法具は、ウクライナ語には対応していないので、何を言ってるか分からなかった(ロシア語には対応している)。
 発音やイントネーションがロシア語っぽいのに、通訳されないということは、ロシア語ではない。
 しかし、ウクライナ人が似たような言語を喋るものといったら何かと言えば、それはもうウクライナ語しかない。
 だから稲生は、エレーナが喋ったのはウクライナ語だと思ったのだ。
 実際、出席しているウクライナ人達は、エレーナの言葉に頷いている。

 藤谷:「エレーナさん、俺は日本語ペラペラで、あとは英語が少々しか話せないんだが……」
 エレーナ:「日本語でいいですよ。あとは私が通訳します」
 稲生:「班長、英語話せるんですか?」
 藤谷:「ちょっとだけな。ほら、うちの業界、ベトナム人とかも働いてるから、日本語よりは公用語の英語の方が通じるんだ」
 稲生:「あ、なるほど。そういえば、法道院さんのベトナム人信徒もそうだった」
 藤谷:「そうだろう?」

 藤谷はホワイトボードに、A1サイズのポスターを掲げた。
 それは藤谷建設が新築し、子会社の藤谷不動産が管理・運営している賃貸マンションだった。
 エレーナがウクライナ人参加者に、ウクライナ語で書かれた資料を配る。
 それが終わると、藤谷はマイクを握った。

 藤谷:「えー、我が藤谷建設並びに関連会社の藤谷不動産では、ウクライナ人避難者の皆様の為、今年4月に入居を開始しましたマンションを無償提供致します」

 間取りは2LDKと3LDK。
 父親や長男などを国内に残して日本に避難してきた母子家族が住むには、十分と言えるだろう。

 藤谷:「また、藤谷建設や藤谷不動産、藤谷管財などのグループ会社において、できる仕事も提供したいと思います」
 稲生:「そういうことでしたか!」

 稲生も藤谷の太っ腹支援に感激して拍手をしたが、マリアだけは冷静だった。
 マリアもウクライナ語で書かれた資料に目を通していた。
 何て書いてあるのかは分からないが、マンションの広告みたいに写真がふんだんに使われている為、取りあえず書いていることは何となく分かった。
 で、気になる写真の部分は自動翻訳メガネを掛ける。
 掛けて文字を見ると、それがマリアの母国語である英語に翻訳されるのだ。

 マリア:(『御本尊様も、これで安心!特大サイズの仏壇が置ける仏間付き!』って、何だよ、これ……。勧誘する気満々じゃん)
 藤谷:「大聖人様は必ず御照覧あそばします!日蓮大聖人様に救いを求めるならば、必ず成仏への道を……」
 エレーナ:「あー、こりゃダメだぜ。宗教勧誘始めやがったぜ」
 稲生:「ご、ゴメン。そこは通訳しなくていいから……」
 エレーナ:「専門用語が多過ぎて、通訳しきれないんだぜ」
 稲生:(藤谷班長、空気読んでー!)
 藤谷:「偏に、ロシア正教会なる邪教は……」
 マリア:「う、うん。まあ、そうだね……」

 自分も人間時代はクリスチャンだったが、結局救われることなく、救ってくれたのは悪魔だったので棄教したマリア。
 因みにロシア正教会ではない。
 さすがに後で、エレーナと稲生に連れ出された藤谷だった。

 藤谷:「な、何だよ、稲生君!?折伏の邪魔をすると、大きな罪障を積むぞ!」
 稲生:「班長、まずは空気を読んでください!」
 エレーナ:「さすがに鈴木でも、こんなことはしないぜ……」
コメント (1)
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