[5月3日11:07.天候:晴 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅・新幹線ホーム→東北新幹線307B列車17号車内]
〔♪♪♪♪。17番線に、11時9分発、“はやぶさ”307号、仙台行きが7両編成で参ります。……〕
新幹線下りホームに行くと、GWたけなわということもあり、多くの行楽客が行き交っていた。
何しろ、久しぶりの何のコロナ規制も無い(マスク着用などの自主規制はあるが)GWなので、必然的にそうなるであろう。
マリアのような外国人旅行客もいないわけではないが、さすがにまだ少ない(そもそもマリアは稲生家に連れられているだけで、自身は永住者である)。
〔「17番線、ご注意ください。11時9分発、“はやぶさ”307号、仙台行きの到着です。黄色い線まで、お下がりください。次は終点、仙台に止まります。停車駅にご注意ください。また、全車両指定席で自由席はございませんので、ご注意ください」〕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/70/3fc54f19c4fa2d579742c260f1da05ea.jpg)
東京方面から赤い塗装が目立つE6系車両がやってきた。
編成はそれだけ。
“はやぶさ”なのに、肝心の“はやぶさ”車両E5系は連結されていない。
これでは、“スーパーこまち”である。
稲生勇太:「父さん、鉄ヲタの僕が驚くって……」
稲生宗一郎:「どうだ?こういう列車も珍しいだろう?」
勇太:「た、確かにそうだけど、よく見つけたね?こんなマニアック運用……」
附属編成たるE6系“こまち”車両が単独で運用されるのは、1往復のみ。
それも、地震復旧中の暫定ダイヤだからではない。
今年の3月にダイヤ改正した際に現れた運用だ。
通常ダイヤでは、“こまち”6号が秋田~東京間を単独で運行する。
その折り返しで仙台の車両基地に回送される際の間合い運用が、これだ。
列車番号こそ暫定ダイヤの為に異なっているが、運用は同じである。
〔「大宮ぁ、大宮です。17番線の電車は、“はやぶさ”307号、仙台行きです。次は、終点の仙台に止まります。停車駅にご注意ください」〕
こういう列車では、下車客はまずいない。
稲生家の面々は先頭車に乗り込んだ。
グリーン車ではないのは、あくまでも今はプライベートの家族旅行なので、宗一郎も倹約したか、或いは息子が鉄ヲタなので先頭車を狙ったのかのいずれかだろう。
少なくとも、鉄道趣味を持つのはここでは勇太だけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/e7/3c212c461db2ae5bb02629e26f31ed44.jpg)
シートピッチこそ普通車であるが、シート形状はまるでグリーン車のよう。
3人席が無いのは、E6系は在来線特急の規格で製造されているからである。
指定されている席に、前後して座った。
進行方向左側だが、別に座席は向かい合わせにはしない。
まだコロナ禍による自粛呼びかけがある為。
勇太はもちろんマリアと一緒に座った。
マリアが荷棚に人形の入ったバッグを置くと、そこから自主的に出てくる人形。
ホームからは、発車ベルが聞こえてくる。
〔17番線から、“はやぶさ”307号、仙台行きが発車致します。次は、終点仙台に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
車内は、ほぼ満席状態。
空いている席は本当に売れなかった席か、あるいはキャンセルされた席か、はたまた調整席か……。
発車時刻通りに、列車はインバータの音を響かせて発車した。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、仙台行きです。全車両指定席で、自由席はございません。次は終点、仙台に止まります〕
マリア:「この列車、写真に撮ってルーシーに送ってあげると喜ぶかな?」
勇太:「あー、そうだね。仙台に着いたら、外観の写真を撮って送ってあげよう」
マリア:「さっき撮ってたのは?」
勇太:「発車標と駅名看板と、この車両の行き先表示板?」
マリア:「これも送ってあげなよ」
勇太:「こういうの、喜ぶかなぁ……」
マリア:「喜ぶだろう、きっと。地下鉄の写真は嫌がらせだと思うだろうが、新幹線はそれに関係する写真なら何でも喜ぶと思うよ」
勇太:「そうか。じゃあ、そうしよう」
ルーシーが地下鉄の写真を嫌がるのは、人間だった頃、地下鉄職員だった父親をテロで亡くし、自身もそれに巻き込まれて生死の境をさまよったからである。
表向きにはそこで死亡したことになり、師匠に拾われて魔道士となっている。
その為、心に傷は負ってはいるものの、テロの巻き添えが原因であり、マリアや他の魔女みたいな性犯罪の被害歴は無い。
尚、逆に暗闇が大好きなリリアンヌは地下鉄の移動を好む(が、別に鉄ヲタってわけではないので、地下鉄の写真を送っても心霊写真と疑うだけである)。
勇太:「僕は乗り鉄だから、車両だけじゃなく、駅の写真とかもよく撮るんだよね」
撮り鉄が車両の写真しか撮らないのとは、少し違う。
車両も確かに被写体の対象だが、鉄旅を楽しむ乗り鉄はそれに付随する写真も撮りたがる。
但し、移動の邪魔になるので、撮り鉄が持っているような一眼レフなどの大型カメラは基本持ち歩かない。
せいぜいがスマホかデジカメ。
マリア:「それでいいと思う。他の魔女が日本に興味を持つのは、勇太の写真がきっかけであることも多い」
勇太:「そうなの!?」
マリア:「勇太、Twitterやインスタグラムに写真をUPするだろう?」
勇太:「うん、するね」
マリア:「あれ、他の魔女も観てるよ」
勇太:「そうなの!?」
マリア:「前に、大宮のスイーツバイキングに行った時の写真があったでしょ?」
勇太:「うん。確かにあれもUPした」
マリア:「パスポート偽造してまで、日本に行こうとした輩がいたらしい」
勇太:「あの程度のスイーツ、他の国にもあるでしょ!?」
マリア:「で、たまに私に嫉妬のコメントが来る」
勇太:「えっ?」
マリア:「『マリアンナ、てめぇ男嫌いの魔女だったくせにフザケんな!』『ビッチに転向した魔女さんはいいですねwww』とか色々……」
勇太:「そんなコメントあったの!?」
マリア:「即座に削除して、後で呪術を……」
勇太:「確かマリア、呪術は禁止って先生に言われてなかった?」
マリア:「聞こえませーん」
もちろん、殆どの魔道士達は勇太とマリアの仲を好意的に見ている。
〔♪♪♪♪。17番線に、11時9分発、“はやぶさ”307号、仙台行きが7両編成で参ります。……〕
新幹線下りホームに行くと、GWたけなわということもあり、多くの行楽客が行き交っていた。
何しろ、久しぶりの何のコロナ規制も無い(マスク着用などの自主規制はあるが)GWなので、必然的にそうなるであろう。
マリアのような外国人旅行客もいないわけではないが、さすがにまだ少ない(そもそもマリアは稲生家に連れられているだけで、自身は永住者である)。
〔「17番線、ご注意ください。11時9分発、“はやぶさ”307号、仙台行きの到着です。黄色い線まで、お下がりください。次は終点、仙台に止まります。停車駅にご注意ください。また、全車両指定席で自由席はございませんので、ご注意ください」〕
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/70/3fc54f19c4fa2d579742c260f1da05ea.jpg)
東京方面から赤い塗装が目立つE6系車両がやってきた。
編成はそれだけ。
“はやぶさ”なのに、肝心の“はやぶさ”車両E5系は連結されていない。
これでは、“スーパーこまち”である。
稲生勇太:「父さん、鉄ヲタの僕が驚くって……」
稲生宗一郎:「どうだ?こういう列車も珍しいだろう?」
勇太:「た、確かにそうだけど、よく見つけたね?こんなマニアック運用……」
附属編成たるE6系“こまち”車両が単独で運用されるのは、1往復のみ。
それも、地震復旧中の暫定ダイヤだからではない。
今年の3月にダイヤ改正した際に現れた運用だ。
通常ダイヤでは、“こまち”6号が秋田~東京間を単独で運行する。
その折り返しで仙台の車両基地に回送される際の間合い運用が、これだ。
列車番号こそ暫定ダイヤの為に異なっているが、運用は同じである。
〔「大宮ぁ、大宮です。17番線の電車は、“はやぶさ”307号、仙台行きです。次は、終点の仙台に止まります。停車駅にご注意ください」〕
こういう列車では、下車客はまずいない。
稲生家の面々は先頭車に乗り込んだ。
グリーン車ではないのは、あくまでも今はプライベートの家族旅行なので、宗一郎も倹約したか、或いは息子が鉄ヲタなので先頭車を狙ったのかのいずれかだろう。
少なくとも、鉄道趣味を持つのはここでは勇太だけだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/e7/3c212c461db2ae5bb02629e26f31ed44.jpg)
シートピッチこそ普通車であるが、シート形状はまるでグリーン車のよう。
3人席が無いのは、E6系は在来線特急の規格で製造されているからである。
指定されている席に、前後して座った。
進行方向左側だが、別に座席は向かい合わせにはしない。
まだコロナ禍による自粛呼びかけがある為。
勇太はもちろんマリアと一緒に座った。
マリアが荷棚に人形の入ったバッグを置くと、そこから自主的に出てくる人形。
ホームからは、発車ベルが聞こえてくる。
〔17番線から、“はやぶさ”307号、仙台行きが発車致します。次は、終点仙台に止まります。黄色い点字ブロックまで、お下がりください〕
車内は、ほぼ満席状態。
空いている席は本当に売れなかった席か、あるいはキャンセルされた席か、はたまた調整席か……。
発車時刻通りに、列車はインバータの音を響かせて発車した。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日も東北新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は、“はやぶさ”号、仙台行きです。全車両指定席で、自由席はございません。次は終点、仙台に止まります〕
マリア:「この列車、写真に撮ってルーシーに送ってあげると喜ぶかな?」
勇太:「あー、そうだね。仙台に着いたら、外観の写真を撮って送ってあげよう」
マリア:「さっき撮ってたのは?」
勇太:「発車標と駅名看板と、この車両の行き先表示板?」
マリア:「これも送ってあげなよ」
勇太:「こういうの、喜ぶかなぁ……」
マリア:「喜ぶだろう、きっと。地下鉄の写真は嫌がらせだと思うだろうが、新幹線はそれに関係する写真なら何でも喜ぶと思うよ」
勇太:「そうか。じゃあ、そうしよう」
ルーシーが地下鉄の写真を嫌がるのは、人間だった頃、地下鉄職員だった父親をテロで亡くし、自身もそれに巻き込まれて生死の境をさまよったからである。
表向きにはそこで死亡したことになり、師匠に拾われて魔道士となっている。
その為、心に傷は負ってはいるものの、テロの巻き添えが原因であり、マリアや他の魔女みたいな性犯罪の被害歴は無い。
尚、逆に暗闇が大好きなリリアンヌは地下鉄の移動を好む(が、別に鉄ヲタってわけではないので、地下鉄の写真を送っても心霊写真と疑うだけである)。
勇太:「僕は乗り鉄だから、車両だけじゃなく、駅の写真とかもよく撮るんだよね」
撮り鉄が車両の写真しか撮らないのとは、少し違う。
車両も確かに被写体の対象だが、鉄旅を楽しむ乗り鉄はそれに付随する写真も撮りたがる。
但し、移動の邪魔になるので、撮り鉄が持っているような一眼レフなどの大型カメラは基本持ち歩かない。
せいぜいがスマホかデジカメ。
マリア:「それでいいと思う。他の魔女が日本に興味を持つのは、勇太の写真がきっかけであることも多い」
勇太:「そうなの!?」
マリア:「勇太、Twitterやインスタグラムに写真をUPするだろう?」
勇太:「うん、するね」
マリア:「あれ、他の魔女も観てるよ」
勇太:「そうなの!?」
マリア:「前に、大宮のスイーツバイキングに行った時の写真があったでしょ?」
勇太:「うん。確かにあれもUPした」
マリア:「パスポート偽造してまで、日本に行こうとした輩がいたらしい」
勇太:「あの程度のスイーツ、他の国にもあるでしょ!?」
マリア:「で、たまに私に嫉妬のコメントが来る」
勇太:「えっ?」
マリア:「『マリアンナ、てめぇ男嫌いの魔女だったくせにフザケんな!』『ビッチに転向した魔女さんはいいですねwww』とか色々……」
勇太:「そんなコメントあったの!?」
マリア:「即座に削除して、後で呪術を……」
勇太:「確かマリア、呪術は禁止って先生に言われてなかった?」
マリア:「聞こえませーん」
もちろん、殆どの魔道士達は勇太とマリアの仲を好意的に見ている。