fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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「箪笥」-2005年わらべ賞大賞作品

2012年08月15日 | 俳句

2005年には、わらべ賞大賞をいただきました。

「箪笥」

 霾(つちふる)や空ろな家に鍵をかけ

 麗らかや絵だけで食うてゆけぬちふ

 引越しの荷にものの芽のふたつみつ

 たんぽぽに箪笥二棹捨てにけり

 まつさきに祠参りや花馬酔木(はなあしび)

 東(ひんがし)に鳥居傾ぎて暖かし

 武蔵野の山の名残りも笑ひけり

 山吹に一吠えだけや裏の犬

 春暑し錆てんてんと移植鏝

 くたぶれて囀りに身をまかせけり

 朝粥の匙の中なる朧かな

 蕗味噌にけふ何曜日なりしかと

 つばくらめ合鍵三つ拵へし

 蓬(よもぎ)摘む大字小字つくところ

 蝌蚪(かと)の紐池半分を覆ひけり

 いつまでも岸を離れず花筏(はないかだ)

 茎立(くくだち)や砥石はなだらかに凹み

 椿落ち長き雌蕊の残りけり

 まだだれも遊びに来ない蝶々かな

 つぎつぎと春の灯を点けにけり

              

  今の家に引っ越してきたときのことを作った一連の句です。こうして読むと甘さがかいま見えますが、主宰、副主宰、編集長の3者による総合点で大賞をいただきました。

 考えてみると、《大賞》というのは、児童文学も合わせても、これだけです。大賞を取ることの大変さを思うと、かけがいのない受賞でした。写真はうちの南側にある鎮守の森(?)と祠の後ろ姿。     こんなのも玄関に(これは今年現れた〈かぶとむし〉……いちおう東京です。)