今「童子」では過去の大賞受賞者は「わらべ賞」へはもう応募ができないことになっていますが、当時はそういったこともなく、続けて応募しました。明彦賞(編集長賞)受賞作です。
「七七忌」
本家からお呼びかかるや涅槃雪(ねはんゆき)
お勝手の上がりの高き鶯菜
雪割や従姉は行方知れずにて
農作業日記欠かさず種袋
凍解(いてど)けの包丁塚に詣でけり
湯上がりの足が真赤やお中日
笹起きて小学校の立派なる
ぎしぎしにおはやうございますといふ
白鳥のまだ帰らざる日照雨(そばえ)かな
たらの芽の天麩羅しなと七七忌
目貼剥ぐ背戸の畑がすぐそこに
黄水仙小さいはうが小屋の鍵
とりどりの和菓子も獺の祭(おそのまつり)かな
振り袖のだらりと重き小町の忌
龍天に昇る土壁ほろほろと
薄氷(うすらひ)を草に落とすや猫車
耕耘機(こううんき)山に向かってて進みけり
神の山ちふバス停も雪濁
苗代や石に荒縄巻きて神
永き日の味噌汁に麩の膨れたる
耕耘機と猫車。後ろは農作業小屋です。
明彦編集長からは「『白鳥』の背に『日照雨』が当たる写実。『薄氷』と『猫車』の取り合わせの滑稽感。「獺祭』の句の虚に遊ぶ心。『虚実皮膜』の間にある詩の落としどころをさらにせめていきたい」との評。……これは、ファンタジーを書いているものとして、今読むと感じるところ大です。実際「神の山」というバス停。石に縄を巻いて神とする。土壁がほろほろと落ちる。この岩手の世界を物語に描くことで、児童文学でも評価をいただいているのでした。
こうして書くと、3年連続受賞は一見華やかっぽいですが、入会したのが1994年ですから、10年かかっています。巻頭(その号のトップになること)も、この時期ですから。それまでの間、あとから入った方が華やかに脚光を浴びたり、でもすぐに止めていったり、そんな中で途中少し休んだりもしつつ、ずっと地味でした。受賞後もひとつの句会で全無選(5句出しで、並選すらひとつもないこと)も経験して涙したり。ただ止めてしまうと、それで終わり。やっていたらいいことばかりじゃないと言い聞かせて続けています。でも基本的に俳句は楽しいです。児童文学も同様ですが、やはり違いはあります。(どう違うかは、またいずれ)
《神の山》というバス停を見たことがあったのですが、今どこをさがしてもありません。あれは幻だったのかなあ。 さてこのバス停はうちの近くとかではありません。どこにあるかわかった人はすごいです。答えは明日。(またかい)