コメント欄で情報いただいたので、国交省が6月28日にリリースした報道発表資料(PFDへのリンク)を貼っておく。
高速道路からの一時退出を可能とする「賢い料金」の実施について
高速道路にはSA,PAの間隔が25キロ以上離れている箇所が約100区間存在し、国交省では過労運転防止や給油の利便性向上の観点から追加料金なしに道の駅への一時退出を可能とする施策を進めている。その試行の検証報告だ。
さて、これだけ読むと大変結構な話に見える。しかし、何故かこの施策の恩恵にあずかれるのはETC2.0装着車に限定されているのだ。
SA,PAの間隔が25キロ以上離れているのは道路会社の責任であり、それが「良好な運転環境の実現(資料からの抜粋)を阻害」するのであれば、当然すべての車両を対象とするべきではないのか。この報道発表資料には、ETC2.0に限定する理由はどこにも書かれていない。
ETC2.0は通常ETCより1-2万円高額だ。最近はメーカー標準装備が2.0になりつつあることから徐々に増えてはいるが、それでもまだ圧倒的に通常ETC装着車が多い。大型車(トラック)においては、ETC2.0に対して料金優遇(大口割引率関連の優遇)を行ったことから買い替えが進みかなりの装着率になっているが、乗用車ではおそらく10%程度だろう。
資料を見ても、平日の利用は圧倒的に大型車が多い。まあ、多いと言ってももっとも利用が多い道の駅で日当たり38.9台(大型+小型)。時間あたりすれば3台程度でとても活発に利用されているとは思えない。休日は観光の乗用車が多くなるが、一部を除けばそれでも日当たり10台程度。
対象をETC2.0に限定しているから利用が拡大しないのは明らかだろう。とても「賢い料金」となのるようなものではない。
ETC2.0の当初の触れ込みでは、2.0は通行経路が記録されるからこうしたことが実現できるのだ、といっていたが、それは実は嘘。ETC2.0は個人情報保護の観点からエンジンを切るとその前後の位置情報は破棄される。だから道の駅に立ち寄ったという情報は残らない。実際は道の駅にポストを設置し、それで判定している。このポストは通常ETCでも通過情報を判定できるから、単に「わざとETC2.0に限定している」だけなのだ。
なぜ国交省はそんな事をするのか?
ETC2.0は国交省が鳴り物入りで推進してきた「ITS施策」の目玉だが、なかなか普及しない。実際に価格が高いだけで利用者にはほとんどメリットが無いので普及しないのも当然なのだ。しかしETC2.0は走行経路の情報が手に入るため、国交省としては普及させることで交通ビッグデータを収集したい。その中で考え出されたのが、この優遇策なのだ。
報道資料にふくまれるアンケートもこの設問でネガティブな回答になるわけはない。便利だと思って利用したユーザーは便利だと言うに決まってる。典型的な手前味噌アンケートだ。アンケートをとるべきは通常ETC装着ユーザーへの利用意向だろう。
繰り返すが、目的が「良好な運転環境の実現」であるならすべての利用者に開放するべし。
ETC2.0限定よりも、こっちの方がわけ分からん。