ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0 そろそろ付けとくキャンペーン

2017年10月27日 | ITS
首都高速道路株式会社は9月末で終了した首都圏ETCキャンペーンに引き続き新たにETC2.0そろそろ付けとくキャンペーンを実施中。
指定場所(池袋サンシャインシティ)に出向けば、ETC2.0が本体(機種は発話型限定)、取付費、セットアップ手数料全部込みで10000円。
ETC2.0は最廉価機種でも1万円は超えているので、これはお買い得。

しかし、よくわからないの
1.ETC未装着ユーザー限定
2.装着するのはETC2.0
というあたり。

今に至るまでETCを付けていない人って(新規に車を買った人を除けば)殆ど高速道路を使わない人だと思う。

首都高速道路(株)の目的がETC通行比率の向上であるなら、むしろ最廉価の通常ETC(実売6000円以下)を無料で付けるキャンペーンでもしたら良い。おそらく費用的にはあまり変わらない。
もしくは、最廉価の通常ETCを5000円程度の保証金をとって貸与するでも良い。その上でETC装着車以外走行禁止にしてしまったほうが余程合理的だと思う。

このやり方でズルズルやってても有人収受ゲートを廃止することはできないし、今まで付けていない人にわざわざ高い2.0を付けさせる意味もわからない。

完全自動運転車はだれにでも作れる

2017年10月24日 | 自動運転
前回のエントリーで、EVはだれにでも作れるというのは幻想だと書いた。
一方で、今話題の自動運転車は自動運転が出来るようになれば逆にだれにでも作れるようになる。まあ、誰でもというのは誇張だが。
これはいままで何回か書いてきたが、改めてここでまとめてみる。

まず自動運転自体についてはここでは深く触れないが、高速道路のような自動車専用道を前提にすればすでに完全自動運転は完成している。一般道路の場合、想定外の対応をいかに限りなく100%にするかが課題であり、これも99.99%位で良ければもう完成している。でもここからが遠いのだ。

さて、完全自動運転(人間が運転しない)車が完成すると、そのハードウェアは現在の車とは全く異なるものになる。
まず、法定速度以上は出さないし、想定外のスピードでカーブを曲がったりすることもないので操縦安定性の要求値が格段に低くなる。さらに人間が操縦する装置は不要となり、また走行、操縦フィーリングの評価も不要になる。基本的に衝突しないので、衝突安全性の考慮(これは現在の車の設計でかなり厄介な部分)が不要となる。極論すれば、乗り心地の良いサスペンションとシート、空調、室内エンターテイメントぐらいしか差別化要素がなくなる。

これであればカーメーカのノウハウも限定的な部分でしか発揮できないし、少なくとも走行性能面では他社との差別化ができなくなる。
むしろ、シーメンスや日立といった運輸機器メーカーの出番かもしれないし、自動運転のプログラムと運営システムを構築した企業は車をそうしたメーカーに外注することも可能となる。

さらに、完全自動運転となると自分の車を保有するという欲求が消滅する可能性が高い。呼べば来る、降りれば自分で駐車場に入る車であれば、私物、例えば仕事道具やゴルフバックなど趣味の道具、をいつも積んでいたいというようなケースを除いて所有することにあまり意味がなくなる。
となると、当然カーシェアリングがメインになり、だれも車のブランドを気にしなくなる。
メーカーは自動運転オペレーターからの発注により指定の仕様の車を作ることになり、徹底的なコスト勝負にさらされるだろう。

カーメーカーが自らの地位を奪われる可能性が高いのはEVではなく、自動運転車なのだ。

EVは誰にでも作れるという誤解

2017年10月12日 | ITS
いままで何回も書いてきたことだが、最近メディアで「車がEV化すると誰にでも作れるようになり、異業種が参入し既存の自動車メーカーは危機的状況をむかえる」という論調の記事を良く目にするので、その大きな誤解についてまとめておく。

こうした論調はIT系ライターの方などに多い。おそらくはパソコンやスマホなどのイメージでモジュール化されれば、作る気になれば誰にでも作れる、ということを念頭におっしゃっているのだと思う。
よく引き合いに出される数字として、エンジンからモーターに変われば車の部品は40%減る、というもの。エンジン自体沢山の部品から構成されているしトランスミッションも非常に多くの部品が使われているから部品点数で言えばそうなる。さらにエンジンの設計、開発、生産は長い経験と多大な費用、生産設備がいるが、電池、モーター、インバーターならば買ってくれば良い、なので新規参入のメーカーが既存の自動車メーカーに打ち勝つ製品を作ることだってできる、ということだろう。

スマホで例えれば、各部品はモジュール化しており、アップルのように自社生産設備を持たないメーカーがその設計、デザイン、ソフトウェア、ブランド力で市場を席巻した。同じことが自動車で起きるのだろうか?

ギャラクシーの電池問題は記憶に新しい。おそらくスマホでリコールを出すとしたら、こうした電池の爆発とか、感電とか、ある程度限られる。しかし車のリコール内容は多岐にわたる。たとえばなにか運転操作に支障があることが発生したら、もうリコールなのだ。これらは単なる生産不良で起きるわけではない。想定外の使用、想定外の環境で発生する不具合で発生する。そしてそれらを何十年も蓄積して改善してきている。このノウハウは簡単に盗めるものではない。

エンジンがなくなっても、車を作るためには剛性と十分な乗員安全を確保したモノコックボディを設計し、それに乗り心地と操縦安定性を両立させるサスペンションとステアリング機構を取り付け、重要保安部品であるブレーキ機構を装備する。その結果出来上がった車はドライバーの意思通りに曲がり止まるか、乗り心地や安定性はどうか、衝突時の安全性はどうかを評価しなければならない。
それらに加えて、シートや内装パネル、各種装備についてもすべてのマッチングが求められる。それらはすべて意匠デザインがあるため、出来合いのモジュール部品を買ってきて組み込めばいいという話ではない。さらに空調、電装、セーフティ装備といった、気が遠くなるような設計が求められる。これらの信頼性を確保するスペックをどこに設定するか、またそのスペックを満足していることを確認する試験にも膨大な時間と費用がかかる。
モジュール化された部品をケースに収納するだけの製品とは全く違うのだ。

ざっと設計関係だけ書いたが、これだけでもエンジンがなくなるから誰にでも車が作れる、なんて生易しいものではないことが理解いただけただろう。ゴルフカートに毛が生えたような電動車ならすぐできるかもしれないが、現在のカーメーカーの車に匹敵するようなものは簡単に作れるものではない。

だから私は異業種が簡単に参入するとは全く思っていないが(テスラのように多大の資金を投入し大規模な引き抜きでカーメーカーから人員を集めれば別だが)、中国のローカルカーメーカーは話が違う。彼らはすでに日欧カーメーカーから車作りのノウハウを吸収して来ているし、車を作り始めてから20年近くが経過し経験をつんで来ている。
日本の皆さんは中国のローカルブランド自動車というと衝突試験で★一つしか取れないとか、劣悪な品質とかを思い浮かべるかも知れないが、ここ5年ほどで大きな進歩を遂げている。

中国のカーメーカーは皆新興メーカーなので、自社でエンジンを最初から開発するノウハウはない。だから日系エンジン工場から購入したり、日独のエンジンをリバースエンジニアリングでコピーしたりしている。この制約から解かれるメリットは大きい。

中国は国をあげてEV産業を支援してくるだろう。自国の膨大な市場で生産台数が増えれば規模の経済により価格競争力がついてくる。
中国がOEMを含め日欧米に輸出できていない商品は車だけ。その念願の自動車輸出国になるためにはエンジン開発の束縛がないEVだ、と考えているのだ。優遇策や充電インフラと行った支援策は、中国では中央が決めればすぐに実行に移される。
また、中国は巧みに自国の非常に大きな自動車マーケットを餌に日欧企業を誘致し、その技術を活用することになるだろう。EV関連部品が現地化されれば、部品メーカーがそのノウハウを身につける。

EV化で我が国の自動車メーカーが危機的な状況になるかどうかは中国次第といえるかもしれない。

ブリスベンのレンタカーはETCに戸惑った

2017年10月06日 | ITS
中国国慶節の休暇は航空チケットが高い日本には帰らず、また殺人的混雑となる中国国内観光地もさけて海外へ脱出することにしてる。ことしはオーストラリアのブリスベン。
サンシャインコースト2泊、ゴールドコーストもみたい、ブリスベン市内にも泊まりたいということで、レンタカーを空港で借りることにした。トヨタ・カムリ、5泊6日で4万円ほどと割とリーズナブル。
車自体は何の問題もなく、またハーツの手続きは非常に簡単、車置き場も空港出口の目の前ととても便利だったのだが、高速道路で問題が発生した。

ブリスベン近郊を走行していると、この先有料区間(TOLL)との表示が出てきた。しかし、料金所はない。そのうちに、未払いの場合は3日以内にWEBサイトで支払え、それを超えるとペナルティ加算する、という表示が現れた。要するに全車ETC装備が原則で、ETC(電池式のタグプレート)未装着車はカメラでライセンスプレートを読み取り持ち主に請求が行くらしい。3日以内に支払えば追加料金は発生しない。
借りた車にはどこにもタグがついていないので、どうしたものかとホテルに帰ってからネットで検索したら後からペナルティ付きで請求された、さらにレンタカー会社の処理手数料もかかり、数百円の通行料に何千円もかかった、という経験談が出てきてびっくり。
さらにハーツのサイトでは「お客様がWEBで支払ってください」という記載が出てきて、(結果的にこれは古い情報だった)、慌ててVIAという交通局のサイトに行ってみたら、支払いはアカウント作る必要が有ることが判明。
さらに、このアカウントにはオーストラリアの住所、電話番号しかインプットできず、仕方なくホテルの住所で登録。

これでクレカから引き落とされるのだろうと思ったが、アカウント情報のページに行っても課金は発生していない。
そこでさらに調べたら、VIAのサイトのWhat’s New 欄に「ハーツと特別契約、ナンバー読み取りで利用者のクレカへ直接請求することになった」とある。

結論からいえば、これで問題なく支払いが済んでいた。返却時に高速料金はどうなってるときいたら、もうクレカから引き落とされてるから何もしなくていい、と言われた。
借りるときにデポジット用でクレジットカードを出してくれと言われ、それは単に車両のデポジットかと思いよく聞いていなかったのかもしれない。その時に説明されたのかもしれないが、少なくともよく分かるような説明はなかった。

なお、エイビスなどハーツ以外の会社の車はタグがついていて返却時に精算することになっているようだ。

ここまではブリスベンに行かれる方への情報提供。

ここからはITSを疑うとしての記事

日本ではハイスペックなETCが採用されたが、海外ではこのようなどちらかというとこうした簡易式のETCが多い。機器も貸出で装着にあたっての費用はないケースがほとんどだ。というか、料金支払い機なんだから日本のようにETCを車両用品として有料販売するというのがそもそもおかしかったのではないか。

それと、首都高はETC未装着車は一律高額料金を有人収受所で集金している。これを回避するため、いっときは首都高Xというコードネームの簡易ETCが考案されたが実現には至っていない。
今の首都高の仕組みはETCなし車は高額の一定料金を払わなくてはならず、またそのために有人集金をやめられない。
いっそブリスベンのように未装着車はナンバー読み取りで後日請求、支払い遅延は罰金制度にすればよかったのではないか?
今のままでは未来永劫有人料金ブースは廃止できない。

日本のETCはセキュリティーやエラー防止に完璧を求めるあまり複雑で高額なものになっているように感じる。さらに輪をかけて高額な、それでいてユーザーメリットがほとんどないETC2.0への転換を進めている。
日本は行政の効率化ということが本当に苦手な国だとおもう。