ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

テレマティクス・バブル

2004年08月31日 | ITS
次のテーマはテレマティクス。
私はこれは近年の自動車業界最大のバブルなんじゃないか、と思っている。

まずはテレマティクスとは何かを説明しておこう。

テレマティクスとは,通信(テレコミュニケーション)と情報処理(インフォマティクス)からなる造語で,自動車向けの情報通信提供サービスを意味する。
ITSは車と道路、交通全体のインテリジェント化であるが、テレマティクスは車における情報通信に特定されるサービスやその技術を指していることが多い。

カーメーカー主導で始まったサービスであり、GMが北米で始めた「オンスター」が始まりである。国内でもトヨタがG-BOOK、日産はCARWINGSというサービスを行っている。

その他、カーメーカー以外にもモバイルキャスト等が市場を獲得するべく事業を展開している。

みんないつかはプロフィットモデルになると信じて投資を続ける訳だが、肝心の消費者ニーズがいつまでたっても見えて来ない。

市場規模の検証(まとめ)

2004年08月31日 | ITS
2010単年度のITS関連市場規模をまとめてみよう。

まず情報サービスの市場規模だが、これは通信機能付きナビゲーションに左右される。
通信機能付きナビゲーションが2005年から等比級数的に普及し2010年には新車販売台数の50%に装着されると仮定した場合、2010年時点で保有台数の20%、約1500万台に装着されていると考えられる。
但しこれはかなり楽観的である。通信ナビが本当に離陸するか、まだ不透明だ。

現在の携帯電話情報サービス市場(8300万台で、市場規模は2200億円。客単価2650円)と比較してユーザー数は1/5以下。利用客単価はわからないが、地図ダウンロードなどの需要があることを考慮して若干多めの年間3000円としても450億円。

車載機器はナビゲーション本体を中心に1兆円程度。

情報通信インフラは駐車場で200億、道路公共投資で200億。

合計で1兆1千億程度となる。そしてそのうちの8割近くはナビゲーション本体の売上。
さらに、そのうち半分以上はカーメーカーによる標準装備。

つまり、カーメーカーとナビゲーション本体を作っている電機メーカー以外にとってはITSは決して何兆円というような巨大市場ではないということになる。

あくまで試算であり、前提の甘さなどあると思うが、それほど多く狂うことはない見積もりだろう。

市場規模の検証(5)

2004年08月30日 | ITS
ITS情報通信システム(インフラ関連)市場規模の試算についての続き。

公共投資としてのインフラ関連市場について考えよう。

路側機からの道路安全情報発信については可能性がある。カーブやトンネルを見通すカメラを設置し、停車車両や事故があれば「警告を車載機にとばす仕組み」は確かに安全に寄与するだろう。
しかし、カメラで異常を検知したら「赤信号を点滅させる仕組み」のほうが安くて確実かつ十分なのではないのだろうか。それが実現していないのに、なぜ一足飛びに通信にいくのか?これは単純な疑問である。

そうはいっても、ETC車載機の装着率が70%程度まで上がってくるのなら、それを活用した何かをすることになるのだろう。しなければ、オーバースペックと批判もあるDSRCを採用したメンツが立たない。

道路整備関連予算は2004年度で2兆円。安全情報発信にどれだけ国が投資するかはわからないが、せいぜい総予算の1パーセントが上限なのではないか。参考として、昨年度のETC設備費が600億円である。これより多いことはないだろう。

まあ、1%として200億円。この程度ではないか。

市場規模の検証(4)

2004年08月27日 | ITS
最後に情報通信インフラ7千5百億円であるが、このインフラ市場は、センター、路側機、情報提供ネットワークの3分類の情報通信システムにより構成され、公共事業に係るものと民間事業に係るものが含まれるとのこと。
公共事業がどのくらいを占めるかはなんとも予測しがたい。安全運転支援に関して国がどこまで公共投資をするかにかかっている。
しかし2004年度の国の道路関連予算総額2兆円と比較すればいかに7500億円という数値が大きいものかがわかり、大半を民間事業に期待していることは明らかである。

まずその民間需要を追ってみよう。

DSRC(ETC技術)を商業利用する場合の路側機市場がある。
駐車場への応用はありそうだ。少なくとも消費者としてノンストップゲート通過は便利である。
一方、事業者としてのメリットはあるのだろうか?既に多くの駐車場が料金収受を無人化している。従ってコスト低減効果はさほど大きくない。集客効果はあるか?ないとは言えないが、消費者にとっての駐車場の選択基準はロケーションと料金であり、支払いの容易さというセールスポイントがそれほど集客効果を生むとは思えない。

しかし、駐車場管理設備をリニューアルする際にDSRC対応とする業者や大規模商業施設などが出てくるだろう。そこで、全国でリニューアルする駐車場を年間1000カ所、1カ所の設備投資が1千万円として100億円。プライベート敷地の入場管理なども需要がありそうなので、仮に倍にふれても200億円規模の市場が精一杯であろう。

ガソリンスタンド、ドライブスルー、コンビニなどは市場が成立しそうにない。

路側機からの情報広告発信も厳しい。安全運転の妨げになるという議論には当然なるだろうし、消費者にとっては一歩間違えれば迷惑メールと変わらない。多分実現しないと思う。

市場規模の検証(3)

2004年08月26日 | ITS
次は車載機である。
2010年単年度で1兆5千億円といっているが、どうか。

答申では
「ITSに係る車載機等の端末機器は、将来、サービスの高度化が進展し、また、端末機器を装備する車内空間はもともと限られたものである等の理由から、高機能化・多機能化が進展するものと予想される。高機能化・多機能化の具体例として、カーナビゲーション車載機はその機能の高度化に伴い、パソコン機能やインターネット接続機能、データベース機能、車両制御機能等を備えた高機能車載機へと移行するものと予想される。」

といっている。車載機といっても、ナビゲーションを意味していると考えて良いだろう。この先5年でいきなり自動車PCの様な新商品が出てきて、ナビはそのアプリケーションの一つになるとは考えにくい。

ワープロ専用機がPCに駆逐された歴史から、将来はナビも自動車PCのような形になっていくという考え方もある。しかし、自動車の中でユーザーがしたいことは基本的には移動・運転であり、それほど汎用性のあるハードが求められるとも思えない。

2010年時点でのナビゲーション車載機の市場を予想してみよう。
年間新車販売台数の4割に装着(含むメーカー標準)として年間販売数量400万台、単価20万円として8000億円となる。
4割という数字は大衆車などに標準装備となることでもっと上がる可能性を持っている。しかし、その場合は単価も下がる。まあ、この程度だろう。

次にETC車載機。新車の7割に装着で、700万台。単価は1万5千円。1050億円。

合計1兆円強といったところである。

市場規模の検証(2)

2004年08月25日 | ITS
まず、情報サービス 2兆5千億円から見ていこう。
このうち最大のものはETCサービスで、7500億円、次がガソリンスタンド(DSRC支払い)の4600億円である。ちょっと待って欲しい。これは市場規模と言っていいのか?スイカで支払われた鉄道運賃をもってスイカの市場規模というのか?
期待される市場規模と言うからには、新たに創造される市場だと考えるのが普通である。
そういった目で見てみると、駐車場、ドライブスルー、サービスエリア、フェリー自動チェックインのDSRC支払いも同じで、カウント外とするべきだろう。

そもそも、カウントの問題はよしとしても私はDSRCの商業決済に対するオポチュニティーを信じていない。薄利商売にあえぐガソリンスタンドが、その設備投資をするだろか?今でもセルフではクレジットカードをさっと通すだけで給油できる。DSRCでノンストップ給油ができるならともかく、単にキャッシュレスというだけではユーザー吸引力はほとんどない。

残るは、有料情報提供の約4000億円、車上オンラインショッピングの2500億円、歩行者経路誘導の1200億円等である。

有料情報提供はちょっと前に書いたとおり、現在の携帯サイトですら2200億円のマーケットであり、4000億円は到底むりだろう。

また、車上オンラインショッピングなどというものが活性化するとはとても思えない。
どういう理由で車の中からインターネットショッピングをするのだろうか?
音楽・映像データのダウンロードはあり得るだろうが、情報提供の4000億円にカウントされていると思っている。

携帯からのインターネットショッピングが増えていると言われているが、その大半はヤフオクの入札だそうである。こればかりは時間が勝負だから、出先からやらざるを得ない。

運転中にはオークションして欲しくないな。

市場規模の検証(1)

2004年08月24日 | ITS
さて、市場規模に話が及んだので、しばらく時間をかけて、実際の市場規模はどのくらいになるかを考えていきたい。

まずは、いま国交省などが使っている1998年の電気通信技術審議会資料から、2010年単年度の市場規模を拾ってみると4兆7千5百億円という数字がでてくる。
どうも2010年11兆円というのは、2010年までの累計市場規模のようだ。

4兆7千5百億円という数字は以下のように分解される。

情報サービス 2兆5千億円
車載機等の端末機器 1兆5千億円
情報通信インフラ  7千5百億円

これらについて、順番に内容を詳しく見ていきたい。

携帯サイトの市場規模から思うこと

2004年08月23日 | ITS
昨夜のフジテレビ EZ-TVで携帯電話サイトの熾烈な戦いが紹介されていた。
現在携帯電話の普及台数は8300万台で、携帯サイトの市場規模は2200億円という。

一方、電気通信技術審議会諮問によれば、2010年にITSに関係する「道路交通情報提供サービス+カーマルチメディアサービス」の市場規模は3938億円となっている。

この市場規模をどう見るか。携帯サイト有料コンテンツ御三家は「着メロ」「待ち受け画面」「ゲーム」といわれている。もちろん、携帯とカーマルチメディアは単純には比較できない。着メロに近い音楽ダウンロード市場は確実に存在すると思うが、車の中ではゲームは(少なくとも運転者は)しない。それに対して携帯にはない地図、道路情報の有料情報提供といった、有望なコンテンツもある。

しかし、そうはいっても現在の携帯サイトですら、2200億円である。
単純に電話機1台あたりで年間2650円。中年以降は携帯電話を通話機としてしか使わないことを考えると、これでも結構な金額である。
それに対し、カーマルチメディアの場合は稼働台数7300万台に対してマルチメディア機器装着を50%と仮定して3650万台。顧客一人あたり平均で年間一万円以上を情報料として支払うという意味である。
この数字が現実的であるとは、とても思えない。

そもそも、ITS関連の市場規模といえば全てこの電気通信技術審議会資料を基にしているが、これが発表されたのは1998年の4月であり、ドッグイヤーと言われるITの世界でなぜ6年も前の数字がいまでも通用しているのかが不思議なところである。
そして、その数字をベースに蜃気楼のようなマーケットが語られている。
すでにローランドベルガーレポートでは、2010年のテレマティクス市場は日欧米あわせて2.6兆円と、より現実的な数字がしめされている。早急に見直すべきだろう。

国交省のETC促進策ぞくぞく

2004年08月21日 | ITS
国土交通省はさる10日に、年内追加で330万台のETC車載機に対して購入補助・割引を行うと発表した。
また、20日の読売によれば来年度600億円の高速料金値下げを実施し、それはETC装着車に限定することで普及促進をねらうらしい。さらに、スマートインターチェンジ(サービスエリアに設けるETC専用の省コストインターチェンジ)に関しても来年度で75億円の予算を投入するという報道もあった。

最終的にETCが100%普及しなければ料金収受完全無人化はありえない訳で、なにやら強引だなあ、とは思うがある程度の強制力をもって進めるということ自体は間違ってないのだろう。

しかし、疑問が残る。

第一に100%普及を目指すのであれば、もっと簡易な方式にしておけば良かったのではないか。一般商取引や情報提供機能を視野に入れたが為に、高速道路料金収受という機能からはオーバースペックであるという話を良く聞く。
まあ、これはいまから後戻り出来ることではないので致し方ない。

次に、本当にスマートインターチェンジという発想はETC無くしては成立しないものなのか?
利用者の利便を考えれば、有人・無人に関わらず実現するべきものであると思うのだが。

さらに、100%ETCの世界では、クレジットカードをもてない人間は高速道路を使えなくなってしまう。

結局当面は何かの代替え案を持っておく必要があるもかもしれない。

一回整理してみよう

2004年08月20日 | ITS
ここで一度私の論旨を整理しておきます。

間違いなく、ITSは近未来の自動車産業を支えるコンポーネントだと思う。
特に安全運転支援、高速道路での自動運転といった分野は交通事故死者を激減させる訳で、政府、カーメーカーが真剣に考えるべきテーマであるし、最終的には実現されると信じている。

しかし、日本のITS政策には疑問がある。一番の問題は、あまりに民間による市場活性化に頼りすぎていることだ。

車がネットワークに繋がることによって生じると言われているコンシューマーマーケットに過大な期待をかけている。
車内からのインターネットショッピングや、有料情報、ETCによる自動決済の商業利用といったビジネスチャンスといわれているものが大げさに扱われている。そして、ビジネスモデルが成立してみんながハッピーになると言う絵空事のシナリオが本気でまかり通っている。また、その市場規模として、全く現実性のない11兆円とか60兆円などという数字が発表され、一人歩きしている。

それが危惧である。
私は車をネットワークに接続することはビジネスチャンスではなく、公共インフラとしてのコストファクターだと思っている。

むしろ、政府は社会インフラ整備と割り切らなくてはいけないし、カーメーカーは装備を開発し、車の商品力を向上することで売上を伸ばし利益を得る。それが健全な方向である。

三菱電機DSRC応用システムを開発

2004年08月19日 | ITS
さる7月15日、三菱電機は音声ガイダンス機能を実現したDSRC応用システムの開発を 公表した。
リンクからプレゼン資料のPDFが見れます。

内容としては、ETC技術であるDSRCのその他利用拡大であり、私が繰り返し「あり得ない」とこのブログで主張しているものである。

資料の中の適用例として上げられている事例は相変わらず大きくいって以下の3点である。

・路側機による道路状況の提供
 →「この先通学路注意」って、何で標識じゃいけなんだ?
・その人だけに特別な情報提供
 →「XXスーパーでは鮮魚の特価サービス」なんて、受信したい?
・駐車場、ガソリンスタンド、ドライブスルー決済システム
 →駐車場以外、そんなに便利とは思えないけど?

まあ、それよりも驚いたのはDSRCサービスの市場規模で、この資料は三菱電機が作ったものではなく、電気技術審議会ITS情報通信システム委員会のものだが、その内容は以下の通りである。

2000年~2015年までの累計ITS市場規模 60.3兆円
うち、情報通信サービス市場規模         30.0兆円
うち、DSRCサービス関連(除くETC)    11.6兆円

この11.6兆円の内訳として、ガソリンスタンドで5.9兆円、駐車場料金徴収1.7兆円等となっている。

ガソリンスタンドの5.9兆円の意味は何だろうか?ガソリンスタンドに設置されるDSRC機器の市場だろうか?そうでもなさそうだ。
ガソリンスタンドは全国に5万カ所。一店舗当たり1億円になってしまう。

ということは、DSRCで決済されるガソリンの売上ということか?
つまり、11.8兆円といっているのは、DSRCを使って決済される金額の事なのか?それって、市場規模というのか?

通常、「市場規模がある」といえば、新たなマーケットが形成されることを意味する。だからこそ、経済活性化策として期待されているのではないか。

しかしガソリンはDSRCあろうと、現金であろうと消費される量は変わらない。「便利だから沢山買う」ものではない。

この金額は非常にミスリーディングだと言わざる得ない。

ホンダ インターナビは正しい

2004年08月18日 | ITS
自動車情報サイトレスポンスで、神尾 寿氏のインタビューに答えて、ホンダ技研工業インターナビ推進室長 今井 武氏は同社のテレマティクスのスタンスについて明確に語っている。(記事)
ここに示されている考え方は極めて正しいと思う。

消費者が求めていることと、(ホンダ以外の)カーメーカーや通信キャリア、コンテンツサービス業者がビジネスチャンスだと思っていることが乖離している。

消費者は車を使う上での基本的な利便性を向上させたいのであって、車の中でe-コマースがしたい訳ではないし、ゲームをしたいわけでもない。それは携帯や家庭のPCでやる事である。

車を使う上での基本的利便性とは、正確な渋滞情報に基づく経路誘導であり、最新地図情報であり、緊急時レスキューであり、本当に価値のある(宣伝ではない)観光・レストランガイドである。
それをきっちり押さえていくことで車の装備としての価値が上がり、結果車の価値が上がる。消費者から見ればテレマティクスなどという難しい話ではなく、単純にナビゲーションの機能アップなのである。
選択肢として有料情報があっても構わないが、テレマティクスそれ自身をビジネスモデルにするという考え方には無理がある。

また、こうした利便性をきちんと提供することで車自身の差別化をはかり、その結果として消費者を囲い込むべきであり、車をネットに繋いで手許に情報を集めてCRMを行い、消費者を囲い込むというアプローチは成立しないと思う。

ETC利用者84%が「次の車にも装着」

2004年08月18日 | ITS
ガリバー自動車流通研究所はETC利用者の意識調査結果を発表した。

ETC利用者がETCを使ってみて良かったことの第1位は、「スムーズな料金所の通過」で過半数の55%。第2位が「割引制度」、第3位が「渋滞での優越感」。まあ、当然と思える結果である。

最も興味深い調査結果は、84%のユーザーが「次に乗り換えるときもETCをつけたい」と回答しており、逆に「つけない」と完全に否定しているユーザーは4%にとどまっている点で、全体的に見てかなり高い満足度だと言えよう。

また、新車乗り換えをきっかけにETCを装着したというユーザーが増加してきている。
ETC出現時には、関心の高いユーザー(業務ユーザー、高頻度ユーザー、マニア)が専門店やカーショップで装着していたが、だんだんと一般認知が進行し、普通のユーザーが新車購入をきっかけに装着し始めている、と考えられる。実際、同レポートにはホンダディーラのインタビューが載っているが、新車の1/3に装着されているとのこと。

オプション選択比率1/3というのは自動車用品の世界では非常に高い数値であり、ここまで装着率が上がるとカーメーカーは標準装備を考えるものだ。

ETC装着率は更に上昇し、最終的にはカーメーカーの標準装備になっていくと思われる。

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一方で、これはETCにしか使えないDSRC車載機がどんどん普及するという事でもあり、DSRC商業決済利用を本気でやるなら早急に相互接続等の標準化問題をクリアし、車載機を対応させる必要がある。新車に装着したユーザーは7年後でなければ買い換えない。
このままでは2010年の11兆円は絵に描いた餅になる恐れがある。

盗難車追跡

2004年08月17日 | ITS
テレマティクス普及にとって、盗難車追跡サービスがキラーコンテンツなるのではないか、という見方もある。
事実、トヨタのG-BOOK契約動機では、盗難防止がナンバーワンらしい。

実際、職業窃盗団によるセルシオやランクルといった人気高級車の盗難リスクはかなり高くなっており、世界一安全だった我が国でも自動車盗難は身近な問題となりつつある。

盗難については、「防止」と「追跡」があり、防止には異常通報発信器、追跡はGPS連動の位置情報発信器と、車に埋め込み(エンベッデト)の通信デバイスが必要となる。
まさに、全ての車をネットに繋ぐというITS構想に打ってつけのサービスなのである。

しかし、これについてもハードルは高い。

第一に、国内7000万台の稼働車両全てが対象とはならない。大衆車や古い車のオーナーは、あまり関心を示さないだろう。

第二に、セコムが既にココセコムというサービスを行っている。月々900円からと、極めてリーズナブルで、かつセコムのガードマンが現場に急行してくれる。昨年9月時点で自動車の契約が10万件に達しており、もはや生半可なサービスでは太刀打ちできないだろう。

消費者の関心が盗難防止だけなら、それに特化したサービスの方が選ばれることになる。

ハンズフリーはテレマティクスのキラーコンテンツとなるか?

2004年08月16日 | ITS
BT対応のヘッドセットが当面の定番とは言ったが、全てのドライバーがこれを装備するとは思えない。
たいていのドライバーは車中携帯自粛か、イヤフォンマイクで対応することになる。
少なくとも携帯を買い換えるまでは動かないだろうし、BT搭載携帯の今後にかかっている。今現在のBT対応ヘッドセット需要は、せいぜい10万台といった所だろう。

さらに、こうした機器がヘビーユーザーの定番になるとしても、残念ながらそれはテレマティクスやITSへの広がりを意味しない。なぜなら車の機器との連動が不要なスタンドアロンタイプだからである。

ハンズフリーはBTの救世主になるかもしれないが、テレマティクスのキラーコンテンツには成り得ないのである。

残された可能性は発信機能である。スタンドアロン型の場合、運転中に発信をする場合は、結局電話機の操作が必要となる。
もう一歩進めるのであれば、車載の画面に大きく電話帳が表示されワンタッチで発信ができるか、あるいはローカルで音声認識による自動発信ができるようにしたいところである。
ここにいたれば、車との連携の可能性が残されているのかもしれない。
しかし、遠い。