ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

首都高速道路(株)、15億円つかってETC装着キャンペーン

2019年12月20日 | ITS

10月1日から、首都高速道路(株)によるETC, ETC2.0の助成キャンペーンが始まった。
いままで断続的に行われてきたものだから驚くに値しないと思いながら内容をみたらその規模に驚いた。

なんと、ETC2.0、通常ETCともに10000円の助成金。対象は10万台。
さらに加えて先着5万名には、ETC2.0で10000円、通常ETCでも5000円がクオカードでバックされる。

クオカード対象のETC:ETC2.0比率は不明だが、仮に全部ETC2.0と仮定して予算はなんと15億円、全部通常ETCだとしても12.5億円。

対象は東京、埼玉、神奈川、千葉の首都高速が存在する地域に住んでいる方。かつ、今までETCを付けておらず、初めてつける方が対象なのでETCからETC2.0への付替は適用外だけど、車を買い替え、ETCを移設しない(たいていの人はしないでしょう)場合は対象となる。

このキャンペーン、予算総額にもびっくりだが通常ETCであれば完全無料、ETC2.0でも先着5万人に入れば数千円で装着可能であるということ。

だったらもう首都高速道路(株)は通常ETCを希望者全員に無料で装着したらどうなのか。もしくは全国の高速道路会社で日本中を対象にしてもいい。
未装着車は多分まだ数百万台有ると思うけど、安いETCに限定し数百万台のボリュームをもって相見積もりをし徹底的に安く仕入れればいい。
そのうえで高速道路はETC装着車以外通行出来なくし、料金収受コストをさげてコスト低減すればいい。
そこまでやれば投資の効果が出るけど、このキャンペーンの15億円は無駄金に見える。

 


中国信用スコアに関する誤解

2019年12月18日 | 中国生活

中国は監視社会となり、行動がすべて信用スコア化されて政府によるコントロールが行われている、という論調の記事を国内外でよく見かける。
日本と比較すればここが監視社会であることについて否定するものではないが、それらの記事には誤りに基づいた物が多い。
大まかに言って中国の信用ランクは3種類あるのだが、それらを混同して中国の社会スコアを論じているものが多いのでここにまとめてみる。

なお、本件に関しては中国IT系ライターの山谷剛史氏が多方面に正しい内容の記事を寄稿されている

1.芝麻信用

典型的な例は中国大手IT企業アリババが運営する信用スコア「芝麻信用」(ごま信用、セサミ信用、ジーマ信用等、読み方は定まっていない)に関するもの。

これはアリババの決済プラットフォーム「支付宝」(ALIPAY、アリペイ)を使う人が希望することでスコア付けされるようになる。
実名登録、車所有、クレカ保有、支払い履歴等から判定され、スコアが高いとアリババ系の各種サービスでデポジット免除などの優遇を受けることができる。
一方で、支払い遅延やレンタル返却遅延などがあるとマイナスされるが、特に手数が低い事による罰則はない。

特典もその程度だし、仮に低くても実際に生活に害が及ぶわけではないから、ほとんどの中国人はこのスコアはたいして気にしていない。

2.社会信用体系

これは中国政府が管理する個人情報。ランク付けというよりブラックリストと言ったほうが正しい。
どんな国家であろうと、個人の犯罪歴はデータベース化されている。それに加え中国では税金未納、借金踏み倒し等金銭に関わる問題から、公共交通機関での妨害行為、そしてもちろん反社会的行為をすべて一元管理しようとしている。
これが点数管理されているのかはわからないし、何点以下は飛行機に乗れない等の基準があるのかわからないが、例えば飛行機の中で暴れた前歴が有る人が一年間飛行機に乗れない等の処置は実際に行っている。

いずれにしても借金踏み倒しや税金未納等よほどの金額でなければ生活の制限を受けることはなく、(実際に移動制限が課せられる人はごくわずか)一般人がこれを気にして生活しているということはまったくない。

3.地方政府によるもの

蘇州など全国12都市で試験的に行われている個人ランク付け。納税状況、交通違反、近所とのトラブル、寄付や慈善行為などで個人を評価するもの。高得点者は公共サービスでの優遇があるが、低ランク者へのペナルティは現時点ではない。民度アップが目的だと思われる。

4.まとめ

中国では国家による国民のランク付けが行われており、税金未払いや交通違反等のマイナス行為をすると移動制限等の罰則が課せられる、というのは不正確。
さらにこうした国家による評価付けに対して異議を申し立てないのは儒教による影響であるとした海外記事があったが、それは考えすぎ。
単に現時点の社会スコアは特に気にする必要もない内容である、ということが最大の理由。

それに加え、長く共産党が一党支配している中国においては政府(党)に個人情報を握られていることが当たり前であり、お上に逆らって良いことはないということを誰もがよく知っている。さらに鈍化しつつあるとはいえ未だに経済成長を続けており、国民は国に大きな不満を持っていないことも個人情報を国家に渡すことに抵抗を感じていない理由だとおもう。