ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

私が思う、日本でキャッシュレスが進まない理由

2018年10月08日 | モバイル・ウエアラブル
海外、特に中国などのキャッシュレス決済普及に伴って、わが国でキャッシュレスが進まないことが話題になっている。その理由がいろいろ挙げられているが、どうも私にはピンとこない。
以下によく言われる理由とそれに対する反論を挙げてみる。

1.日本は偽札がなく現金の信頼性が高い。
これは多くのマスコミを含む日本人が誤解しているが、偽札が多い中国でもそれはキャッシュレス普及の理由ではない。また、特に偽札問題のない北欧などで普及がすすんでいることの説明になっていない。
2.ATMがどこにでもあり、現金で不便を感じない
キャッシュレスが急速に進んだ中国でも、都市部であればATMはどこにでもある。
3.日本はクレカの審査が緩くだれでもクレカを持っているので、新たなキャッシュレスプラットフォームの普及を妨げている。
これも中国の状況を説明できていない。中国では銀行口座を作れば誰でも銀行カード(デビットカード)を持つことができ、それはクレカのようにどこでも使える。その状況下でもQRコードスマホ決済が急速に普及した。
4.日本人はキャッシュレスは使い過ぎやセキュリティが心配と考える人が多い。
たしかにいま使っていない人に理由を聞けばたいていその手の回答が返ってくるだろう。しかし中国在住邦人はみなキャッシュレスを使っている。使い過ぎやセキュリティへの懸念は人種を問わずあるはずで、国民性の問題ではないと思う。

では、真の理由は何なのだろうか?私の考えでは以下の通り。

1.鉄道系Felicaが先行したこと
都市在住の勤め人は大抵の場合定期券と合体したFelicaを使っていて、それは主に交通カードとして使われている。鉄道系クレカをつくりオートチャージにするか、スマホと合体させる等の手間をかけない限り、現金をつかって機械でチャージする手間がかかる。改札通過時にチャージ不足だと面倒なので、オートチャージでない人は一般の買い物には積極的には使わないだろう。
結果、キオスクやコンビニ以外へのレジ導入があまり進んでいない。いや、全く進んでいないのならまだいいのだが、鉄道決済以外に中途半端に普及していることが新しいプラットフォームの参入を妨げている。

2.デビットカードが一般的でないこと
キャッシュレスは使い過ぎが心配というが、デビットカードであればその心配はない。残高がなければ使えない。
中国のスマホ決済は多くの場合デビットカードに紐付けがされており、利用額が銀行の普通預金口座からリアルタイムで引き落とされるため、チャージの必要がない。

3.エコシステムが確立していないこと
中国ではITの巨人テンセントとアリババがWechatPay,AliPayで張り合い、飲食店割引、通販、出前、タクシー、旅行、駐車場、各種シェアリング等様々な生活分野の決済に入り込み、さらにはポイントや優遇をつけて競い合っているため急速に発達した。
多くのキャッシュレスプラットフォームが市場を席捲することなく乱立している状況ではこうしたエコシステムが確立されない。結果、現金で特段の不便がない日本ではキャッシュレスの普及はないだろう。

ますます便利にはなりそうもうないETC2.0

2018年10月03日 | ITS
前回のエントリーで中国のナンバー読み取り式ノンストップ駐車場について書いたら、日本人さん(ハンドルネーム)より情報を頂いた。

ETC2.0はユーザーにとっての利便性向上という謳い文句に、各種料金支払いのキャッシュレス、ノンストップ化というのがある。
曰く、駐車場、ガソリンスタンド、ドライブスルー、フェリー等。
しかし、これは実は2.0に限ったことではなく、ETC出現時からすでに15年以上言われ続けていることなのだ。

それがフェリーを除いては未だに実現していないというのは、何らか問題があると考えるべきだろう。

ガソリンスタンド、ドライブスルーはいずれにしてもノンストップにはならないから現実的にさほどのメリットがない。
唯一確実に便利になるのは駐車場だ。

それもあって、通信設備等の関係業界が「ETC2.0普及促進研究会」を作って駐車場のETC利用(2.0普及といいながら、通常ETCで対応可能)の実験を全国3箇所で進めていた。
その実験は今年の3月末で終了
そして、この研究会のウェブサイトのNEWSはこの半年前の記事以降、更新がない。
記事には「結果を国土交通省へ報告し、駐車場などにおけるETCの多目的な活用ができるまで、お待ちください」と書かれている。
そもそもETCは高速道路料金収受専用なので法改正が必要らしいが、それにしてもあまり進展がないと見るのが妥当だろう。

ユーザーからみれば間違いなく便利な駐車場のETC利用だが、なぜ普及が進まないのか?

以下は以前にも指摘しているが、実情はこのようなものだろう。

1.費用対効果
ETC決済をするためには駐車場にポストを設置し、それをオンラインで繋げる必要がある。その費用についてはネット上にあまり情報がないのでわからないが、古い情報では1基800万円。
では、その費用を回収できるか?答えはNO。駐車場の料金収受は自動精算機の活用などで今でも最低の人数で運営している。ETC専用にして現金車お断りにしない限り収受員は必要であり、結果人件費削減は望めない。
一方、投資に見合う収入増となるかというとそれも怪しい。駐車場はまずロケーションと料金で選ぶ。ノンストップだからといって大幅に入場車が増えるとは思えない。

2.割引処理
商業施設利用による駐車料金割引はたいていの駐車場で行っている。これをノンストップ退場時に反映することが難しい。
今考えられている方法は、ETCカードと同じ発行会社(イシュアー)のクレカで買い物をしてもらい、発行会社側でカード料金請求時に割引するという方法しかないようだ。
そのほかにも、ETCカードを抜き取り持参し、買い物時にレジで情報インプットしてもらいオンラインで割引情報をサーバーに送る等の方法があるだろうが、結構煩わしい。

法改正がされたとしても、上記二点が解決されない限り急速な普及はないだろう。


追記
上記の制約がない公共駐車場、例えば空港などはさっさと導入するべきだろう。ETC普及が日本ほどではない中国でも、筆者の知る限りでは上海虹橋、北京首都空港の駐車場で使われている。