ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

ETC2.0可搬型路側機によるエリア観光渋滞対策に向けたデータ取得

2018年03月30日 | ITS
国交省は、全国初の試みとしてETC2.0可搬型路側機によるエリア観光渋滞対策に向けたデータ取得を鎌倉で実施する。
レスポンス記事可搬型ETC2.0で観光地の渋滞データを収集 鎌倉で実施へ

可搬型機器でETC2.0の情報を取得し交通行政に役立てるというのは理にかなっている。まっとうな活用事例だろう。
既存のプローブ情報に対してどれだけ優位性が有るのかはわからないが、まあすでにそれなりの台数が可動してるんだからETC2.0車載器を活用しない手はない。

しかし、この観光地の渋滞対策をプローブ情報から分析するってのは大げさではないか?どこから車両が流入し、なにがボトルネックになって渋滞が発生しているかなんて大体わかってるんじゃないの?

あと、将来的にはエリアプライシングを検討するとされているが本当にできるのだろうか?
ETC100%装着でなければ料金所を作るしかなく渋滞を助長する。かりに非装着車進入禁止にしたとしても、そのための関所が必要となるし、またエリアに侵入できない車両が渋滞を巻き起こすだろう。さらに、観光地って本当にエリアプライシングで渋滞がなくなるのかというのも疑問。
エリアプライシングはビジネス街では有効となる。毎日の出費となるから、公共交通機関へのシフトがおきる。
しかし観光ではエリア入場料は観光費用の一部と考えるだろうから余程の高額出ない限り公共交通機関へのシフトはさほどないと思う。

ETC2.0の問題点 まとめ

2018年03月28日 | ITS

本稿はこれまでのETC2.0批判のまとめですが、かなりの長文です。
なのでETC2.0購入を検討して当ブログにたどり着いた方にかんたんな結論を先に述べます。
ETC2.0は通常のETCに比べ1万円ほど高額ですが、圏央道をよく利用する方を除き一万円に値するメリットはありません。
また、今後サービスが広がるといっていますが、全く広がっていません。
ETC2.0を購入する意味はありません。
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このブログはETCの通信技術「DSRC」を活用した高度交通システムに対する疑問をメインに2004年8月から続いています。
基本的に「ETCは高速道路の料金収受にしか使えない」と約15年間言い続けて来ましたが、未だに国交省は「ETC2.0」という名前でその普及を図ろうとしています。
通信の世界は15年経てば別世界になります。実際、2004年にはスマホも3G通信もありませんでした。

いまや通信は5G,スマホも持っていて当たり前という時代になり、ポスト通過時しか通信できないDSRCに将来などない、ということは誰にでもわかることですが、未だに国交省・高速道路会社は通常ETCより割高なETC2.0を宣伝し、ましてや補助金までつけて普及をさせようとしています。

この状況は歴史的経緯などかなり複雑となっていますが、一度ここでまとめてみたいと思います。
かなりのボリュームになりますが、保存版と思って書きます。

1.そもそものはじまり
1997年にETCの通信規格が定められ、2001年から実際にETCの運用が開始された。
スタート当初からETCの拡大利用についての構想があった。
ひとつは交通安全システムへの応用。事故多発地点の手前にポストを設置し、この先渋滞注意などの警報を車に送るというもの。
もうひとつは民間の力を活用し、ETCを商業利用する考え方。例えば駐車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド。

電技審答申には、2015年までにITS関連の市場規模は60兆円となりその多くはこれら新サービスによってもたらされると書かれており、関係各社やコンサルなどが競ってITS室をつくった。
しかし、私にどうしても商業利用はあり得ない(ノンストップが要求されるサービス以外は単なるキャッシュレスでしかなく、車が支払い装置で有る必要はない)と考え、このブロクを始めた。
結果いまどうなっているかはご存知の通り。当ブログ記事「1998年電気通信技術審議会答申の答え合わせ

2.交通安全システムの欺瞞
商業利用の他、事故多発地点の手前にポストを設置し、この先渋滞注意などの警報を車に送ることで事故防止につなげる、というのがこの施策の重要な柱となっている。
そのため国交省は2005年に首都高速の事故多発カーブ「参宮橋」で実験を行い、事故防止に効果があったという結論を出している。(実際に実験につかったのはDSRCではなくVICSビーコン)
しかし、実際には同カーブには車の挙動が変化するような大きな路面段差があり、実験前に舗装の打ち直しを行っている。そして、事故は実験期間ではなく舗装打ち直しから減少し、実験終了後も増加していない。
当ブログ関連記事
このことは一部自動車評論家も指摘しており、国交省関係者もしらないはずはないのだが、未だにこの実験は有効だったことになっている。
そして、現在全国高速道路には250億円をかけた1600ヶ所のポストが設けられているが、おかしなことにその事故低減効果に関するレポートは見たことがない。

3.仕様を巡るゴタゴタ
(1) 通常ETC
当初のETCには高速道路料金所に限定されたノンストップ料金支払い機能しか付いていなかった。これでは交通安全や商業利用といった利用拡大はできない。この通常ETCは現在も販売されている。
通常ETC車載器の機器固有番号をキーにして、紐付けクレジットカードから支払いをするというビジネスを三菱商事系のITS事業企画という会社が始めたが、成功に至らず現在は事実上消滅している。
(2) ITSスポット対応車載器
そこで、2011年、次世代として通信量を増大させ車載器に画像表示などができるようにした「ITSスポット対応車載器」もしくは「DSRC車載器」と呼ばれる次世代ETCが登場した。この車載器と対応ナビを装着することで全国高速道路に設置した1600ヶ所のITSスポットとの通信が可能となり、安全運転情報を受け取れる事になった。
また、高速道路のSAや道の駅にSAや道の駅の情報が受け取れるITSスポットが設置されたが、全く使われていない。(こんなものが使われると思ったセンスを疑う)
本来の計画ではETCからITSスポット対応車載器への変換が進むはずだったが、価格が高い反面、殆どメリットがないため全く普及しなかった。
(3) ETC2.0
2014年、「ITSスポット対応車載器」の仕切り直しとして、わかりにくい名称を「ETC2.0」に変更。高速道路の割引サービス等に対応するようになった。
但しITSスポット対応車載器はETC2.0のサービスを受けるためには車載器のソフト書換のため再セットアップが必要。
2016年には圏央道での割引がスタート。また、インターチェンジから道の駅に退出した場合の継続扱いもETC2.0向けサービス(後述するが、実際は優遇)として開始される。
現時点ではETC2.0のメリットはこれだけだが、車載器メーカーがETC2.0のラインナップを拡大したことから徐々に普及が始まっており現在販売されているETCのうち15%程度はETC2.0だと思われる。

4.消費者にあまり宣伝されていない追加機能
ETC2.0には実はあまり宣伝されていない機能がある。それが走行経路情報のアップロードだ。
ETC2.0はGPS信号による走行経路情報を50km分程度保持する。プライバシー保護のため、個人情報のアップロードはなく、また出発地・目的地はわからないように電源オンオフ前後のデータは消去される。これだけプライバシーには配慮しているがそれでもプライバシー議論に配慮してか、この機能は積極的には宣伝されていない。さらに、一般道路には推定で2000箇所の「情報吸い上げ専用ポスト」が設置されているが、これについては一般にはまったく公表されていない。
なぜこの機能があるのか。消費者向けには、ETC2.0は走行経路によって割引を行うので走行履歴が必要だとしているが、電源オンオフでデータ消去する仕様なので頻繁に立ち寄りをしたらデータはなくなる。また、GPS経路情報等なくとも経由地に通信ポストがあれば通過情報から経路はわかる。
実際は、走行データのビッグデータ取得が理由だろう。これはすでに民間テレマティックス関連や、Googleがデータをもっているが、官として自前のデータを持ちたいということなのだと思う。

5.ETC2.0のメリットと普及促進策
私の見解では、現時点でのETC2.0のメリットは圏央道の割引だけ。圏央道を使わない人にとっては高い買い物でしかない。
しかし、関係WEBサイトでは圏央道の割引に加え、交通安全、将来の経路による割引、将来の商業利用等が宣伝されている。また自動車関連メディアへのパブリシティ工作も十分行われており、ネットで検索すると概ね好意的な記事がでてくるし、定期的に宣伝的な記事が公開される。
しかし、それでも普及は思うように進まないことから、国交省は各道路会社を通じて割引キャンペーン(1万円)をずっと行っている。

6.なぜそこまでして普及させたいのか?
最大の疑問はなぜ補助金をだしてまで普及させたいのか、ということ。これは正直私もわからない。以下は仮説。
(1) 後に引けない
1600ヶ所のITSスポットに250億円を使っている。それ以外にもETC2.0に関しては割引キャンペーンや宣伝費等を含めかなりのお金を使っている。お金の話だけでなく、様々な官と産学によるプロジェクトも動かしているだろう。もしここでやめたらその責任問題が発生する。民間企業であればマネジメントが不採算事業を切り捨てて失敗が確定するが、このケースはやり続けている限り失敗認定はされない。
(2) 利権
これは非常に話題性がある理由だ。実際ETC利権を言う人は多い。しかし私はそこまでの利権はないと思う。ETCに関わった事業者がボロ儲けしているようには見えないからだ。むしろETC2.0は計画通り売れておらずメーカーは利益が出ていないのではないか。これは外野から憶測でものをいうべき話ではないのでこれ以上は控える。
(3) 走行データ収集
多分、今はこれが目的となっているのではないか。交通安全への寄与は限定的、商業利用もほぼ絶望的であるなか、消去法で残された目的だ。しかし、移動体通信が発達するなかで「車載器に蓄積した走行データを特定のポスト通過時だけ受け取れる」なんて仕組みに将来性があるかは大いに疑問だ。

7.問題点
(1) 消費者への欺瞞
ETC2.0車載器は通常ETCより1万円以上高額だが、それに見合うメリットは圏央道利用者以外にはない。
しかし、あたかもメリットが有ると宣伝する、もしくはメリットを誇大に宣伝するのは消費者に対する欺瞞でしかない。
(2) 人為的につくられたメリット
圏央道の割引にしても、道の駅途中退出にしても、また宣伝されている事故災害時の途中退出にしても、すべて現行ETCで対応可能なことであり、ETC2.0でなければできないことではない。
つまり、それらはETC2.0のメリットではなく、ETC2.0普及のためにつくられた優遇策なのだ。
これらは「渋滞緩和」「過労運転防止」を謳っているが、それを普及目的でETC2.0に限定するのは非常におかしなことではないか。渋滞緩和、安全向上であればすべてのETCを対象にするべきだろう。
(3) 税金・高速道路通行料の無駄使い
殆どメリットのないITSスポット整備費用はもとより、ETC2.0の機器割引キャンペーンや宣伝費等の費用は通行料から賄われている。意味のない施策にこれ以上の浪費はやめるべきだ。
(4) 走行データー収集
ETC2.0による走行データー収集は移動体通信によるそれと比べたら効率が悪い。自前にこだわらず、すでに存在する民間データーを購入するほうが費用対効果は良いのではないか。
(5) 絶対に成功しない商業利用
ドライブスルー、ガソリンスタンドはそもそもノンストップではないので、スイカ等のICカードやおサイフケータイ、ApplePay、クレジットカード等のキャッシュレス決済と利便性に於いて殆ど差がなく、来店客増は期待できない。したがって高額なETC2.0専用ポストの設備投資をする店舗はない。
駐車場はまだノンストップである分目があるが、これも設置費用と来店客増・コスト低減が見合わない。また商業施設利用割引の方法が確立していない。

8.最後に
交通安全、事故防止、渋滞緩和、キャッシュレス決済という非常に耳障りのいいメリットは誰も否定しない。そのせいかETC2.0に疑いを抱く人は少ないが、その実態は以上のようなものなのだ。
これが民間企業であればとっくに撤退、精算しているだろうが、官主導であるがためにいつまでもやめる事ができないのではないか。
私はノンストップ料金収受器としてのETCを否定するものではなく(もっと機器は簡易的なもので良かったし、専用カードではなく一般クレカ紐付けで良かったとは思っているが)、むしろ100%義務化にして完全無人化により収受コストを大幅に下げ、通行料値下げを行うべきだと思っている。そのためにETC機器レンタル制度等、低頻度利用者への救済策等に費用をかけるのは賛成する。
だが意味のないETC2.0普及への出費は今すぐにでもやめるべきだ。


ETC2.0 また1万円助成キャンペーン

2018年03月27日 | 中国生活
NEXCO東日本は外環道の三郷南-高谷の開通を記念して2018年4月1日からETC2.0の助成キャンペーン(1万円)を実施する。

外環道の区間開通とETC2.0の関係はよくわからないが、わかっていることはETC2.0に関してはITS車載器と言われていた頃から一貫して各道路会社によって何からの助成キャンペーンが行われているということ。
そして、よくわからないのは助成金をだしてまで普及させ無くてはならないのか、ということ。

この記事も面白いことが書いてある。
筆者のかたは正直に「圏央道を使う人以外は通常ETCとの価格差は埋められない」とおっしゃっている。これは絶対にそのとおりだ。
その上でモニターキャンペーンを使えばその差がなくなる、とおっしゃっている。

引用
「実のところETC2.0の普及は、それほど伸びていません。高速道路を利用するクルマの16%程度というのが現状です。そのため、普及のための助成キャンペーンが不定期ですが、毎年のように行われています。」

価格に見合う魅力・メリットを消費者が感じないから普及しないのであって、それならもうやめにするのが普通。価格差を補填してまで普及させるという考え方は理解に苦しむ。

この東日本の計画では5000台=5000万円。この費用は通行料から捻出されているということをわすれてはならない。

Uber自動運転車のアリゾナ人身事故は人災では?

2018年03月23日 | 自動運転
Uberの自動運転車がアリゾナで起こした不幸な人身事故について、当初は不可抗力だったのではないか、と思っていた。
しかし、公開されたドライブレコーダーの画像を見る限りそうとも言えないと感じる。

まず、画像からみるにこの女性は決して飛び出していない。40代の女性が自転車を押して道路を横断するというのは普通はかなりゆっくり動いている筈。
どんな安全装置がついていても急な飛び出しには対応できないが、これは当てはまらないと感じた。

また、地元警察は影から急に出てきたから人が運転していても避けられなかった、というコメントをしたが、これには大きな疑問がある。
どうもこの車はロービームで走っているように見える。時速40マイルということだが、40マイルでハイビームなら道路を横断する人間は問題なく事前に確認できるはずだ。
あの道を人間が運転していたら通常はハイビームにすると思うし、であれば間違いなく避けられた事故だと思う。

なぜハイビームでなかったかといえば、自動運転車はレーダーや赤外線感知が装備されていて見えないものも見えるから、ということなのだろうか?
自転車を押す女性という、急な飛び出しではない障害物であればレーダー捕捉による衝突回避は間違いなく可能なはずだ。あれが回避できないのであれば自動運転装置として成立していない。私はレーダー等に不具合があったのではないかと推測する。

また、通常自動運転車はレーダーの他にカメラによる画像認識を行っている。画像認識を行うのであればハイビームでなければおかしいがこれはどうなっていたのか?

いずれにしても、ビデオを見る限り人間運転だったら(ハイビーム走行で)回避できたし、またまっとうに機能している自動運転車であれば当然回避できた事故に見える。

追記
機械任せにして死亡事故が発生した、というとそのリスクに対して過度なバイアスがかかる可能性があるが、この事故をもって自動運転車は危険である、というような論調にはなってほしくない。
本来正しくセンサーが機能していれば人間運転よりも自動運転のほうが事故は少なくなる。自動運転は将来的に交通事故を劇的に減らすことができるテクノロジーなのだ。

久々にみるETC2.0ニュース記事のなんだかなぁ

2018年03月22日 | ITS
東洋経済ONLINEに「ETC、意外と知られていない最新進化と歴史」という記事が掲載された。

自動車ジャーナリストの筆者の方は、今までのETCの歴史について極めて正確な記載をされているのでETCについてはかなりお詳しいと思われる。
しかし、ことETC2.0のサービスのこととなると急に国交省寄りのセールストークのような内容となってしまうのはどうしたことか。

と思って読んでいくと、ITS推進室長とのインタビューが行われており、ETC2.0を活用した自動運転への発展まで話が広がっている。

ここに記載されているETC2.0のサービスは4つ。渋滞、災害の再入場等、いわゆる「一時退出・再進入の料金同一化」、渋滞を避けたルートを走行した場合の割引、駐車場での料金決済、フェリー乗船時の手続き簡素化。フェリーは通常ETCですでに行われているが、事前登録の簡素化の意味だろう。

これらのサービス、本当に魅力的なのか?
そもそもまだ始まっていないし、もっと重要なことはETC2.0でなくとも技術的には通常ETCで実現可能だということ。
「一時退出・再進入の料金同一化」は昨年の中央道土砂崩れで一般ETCに適用されたし、駐車場料金決済も一般ETCで可能。現在行われている実証実験も2.0限定ではない。

また、ITS推進室長との話で出てくる自動運転との関係だが、通信ポストとしか通信できないDSRCが自動運転に寄与できる部分は殆どないのではないか、と私は考える。

大型、乗用、二輪をお持ちの筆者はすでにETC2.0を使われているようで、記事中に「二輪車ではナビゲーション装着へのハードルが高いこともありETC2.0の恩恵を受けにくい」と書かれているが、はたしてご自身が「経済的負担を伴う」とおっしゃるETC2.0からどのような恩恵を受けているとお考えなのだろうか?

最後のセンテンスでETCは「料金自動収受機能から情報提供サービスが受けられるDSRC車載器へ、そしてさまざまなサービスが追加されるETC2.0として出世魚のように進化を遂げた」と書かれているが、なんだかなぁ。

自動運転車の事故責任

2018年03月21日 | 自動運転
国土交通省は自動運転車両の事故とその賠償責任に関して検討してきた有識者研究会の報告書を公表した。
Nifty News 自動運転事故は所有者に責任
これは乗車者が運転に全く関与しない完全自動運転車、いわゆるレベル4のことを言っていると考えられる。レベル3までは運転者の責任であることは明確。

それによれば、事故に対する賠償責任は車両の所有者に有ることを確認し、車のシステムの欠陥により発生した事故である場合は自動車メーカー側が製造責任を負うとしている。
責任は車両の所有者にあり運転者(というより、完全自動運転の場合は乗車者か)ではない、ということ。
まあこれはそうだと思う。自身は運転に関与しなくていい完全自動運転車の場合は乗車者には責任はない。
さらに、将来自動運転車はカーシェアやロボットタクシーになったとしたら、車の中にいる人は乗客であり事故責任を負う理由はなにもない。

では、所有者の責任とはなんなのか?この問題には様々なケースがあり、結構厄介だ。

まず、簡単なケースとして自動運転車自体に問題があり事故になった場合。
必要な整備点検は所有者の責任なので、それを怠ったことに起因するなら所有者の責任。そうした瑕疵が所有者にない車両の欠陥によるものであれば、製造者の責任。
しかし、おそらくは被害者-製造者との間の争いではなく、被害者は所有者に賠償され、その後所有者が製造者と争うことになるのだと思う。

次に、自動運転車であっても避けられない事故が発生した場合。例えば物理的に止まれないタイミングでの飛び出し等。
自賠責では過失割合に関係なく支払われるので問題にならないが、それを越えた補償問題は被害者と所有者との間での争いになる。これは結構厄介なことになるだろう。

自動運転車の事故は所有者の責任ということだけをとると非常に違和感があるが、では誰の責任という話になる。
乗車者は無関係。製造者の責任か否かはその後の調査がなくては断定できない。所有者の責任という結論は妥当だと思う。

自動運転なのに所有者が事故の責任を取らなければならないなんて納得できないかもしれないが、現実的にはさほど問題はないと思う。
自動運転車になれば事故は激減する。仮に1/10になるとすれば、現在の自賠責保険料を据え置けば補償額が10倍になり、交通事故補償としてはおそらく概ね十分な金額になるだろう。また、所有者は任意保険に入ることも可能。その場合、保険料は車両の安全性能によって評価される。保険会社は各社の車両を審査し保険料を決めることになるから製造者にとっても性能向上のインセンティブとなる。

ETC2.0関係者の方に質問

2018年03月19日 | ITS


これは純粋な質問なので、ETC2.0 運営関係の方がご覧になっていたら教えて欲しい。
ETC総合情報ポータルサイト「Go ETC」のなかの、「ETC2.0の新サービス」というページ、今後実施が予定されているサービスとして「一時退出・再進入の料金同一化」がある。(掲載図は同サイトから切り取りました)
給油で何箇所か実験されているのは承知しているが、事故などで実施されたという話はまだまだ聞かない。

一方、昨年夏中央道の土砂崩れによる通行止めの際は、通常ETCであっても退出、再入場料金同一化の処置がされたと聞いている。
NEXCO中日本のホームページをみても一般的に通行止めの場合はそのような処置が取られているようだ。

で、質問はなぜGo ETCのサイトにはそれがETC2.0専用のサービスのように書かれているのか、ということ。ETC2.0でなくてはできない技術的な理由があるのなら教えてほしいが、実際には災害通行止めでは通常ETCでも適用すると言っているのだから、どうも技術的には問題がなさそうに思える。
また、世論を考えると災害通行止めの際に本当にETC2.0だけを割引対象にできるとは、私は到底思えないのだ。
もし実際にはETC2.0だけにそんな特恵を付けることができないとしたら、これを今後予定されている新サービスと称するのは通常ETCより一万円以上高額なETC2.0の誇大広告のようなものではないのか?

退出、再入場料金同一化をETC2.0だけに限定しなくてはならない物理的、技術的な理由があるのか?
もし物理的、技術的な理由がない場合、ETC2.0だけに限定することなんて本当にできるのか?

もし筆者が寡聞にして知りえない理由があるのであれば是非教えて欲しい。

インパクト時の左グリップ

2018年03月10日 | ゴルフ
このエントリーはゴルフに関する個人メモのようなものです。

どんなゴルフ雑誌やレッスン書にも書いてないけど、出玉が右左に安定しない理由として右肘があると思う。
インパクトの瞬間、右肘は曲がっている。インパクトの再現の状態でやや曲がっている右腕を伸ばしたり、更に曲げたりすることでフェースは容易に開閉する。
つまり、右肘がやや曲がった状態でインパクトする場合、右肘の角度を完全にコントロールしなければまっすぐな球は打てない。
ゴルフ雑誌では、インパクト直後に左腕は伸ばす、と書かれていたりするけどこれはかなり難しい。

昨年末くらいから右肘を伸ばしてインパクトすることでそれを防ごうとしていたが、それもタイミングを合わせるのが難しい。

ということで、インパクト時に左グリップを手のひら側、かつ小指側に曲げ、中指、薬指でキュッと握るようにした。
インパクト再現状態で試してみるとわかるが、その状態だと右肘の角度が多少ばらついてもフェースへの影響が少ない。

手のひら側に曲げるということはハンドファーストになるということで、インパクト時のグリップ位置はやや目標方向に出る。
この感覚はかなり打ち込まないと慣れないけど、方向性安定効果はすぐに現れると思う。
特に、インパクトで左グリップを手のひら側に絞り込むイメージで振ると突発的なスライスはまず出なくなる。

絞り込みすぎると極端がフックが出るが、これは腰を十分回し、飛球線に向けてフェースを放り投げていく感覚をもてば大丈夫。

これはドライバーでもアイアンでも同じ。特にアイアンはハンドファーストに当たるから方向性と飛距離双方に効果がある。

追記 この左手グリップはナックルダウンと言うそうですね。最近ダスティン・ジョンソンの打ち方として脚光を浴びてるようです。

NIO(上海蔚来汽車)EVの衝撃

2018年03月07日 | 中国生活
日本では殆ど知られておらず、ニュースにもなっていないが中国のベンチャーEVメーカー上海蔚来汽車(ブランド名NIO)が昨12月に発表した7人乗りSUV「ES8」が凄い。
NIO ES8 企業website
日本語のソースは殆どないが、レスポンスの記事をリンクしておく。

実車を見てきたが、スタイリングに中国車的な破綻はなく、おそらく欧州デザイナーの手によるものだろう。
驚くべき内容はその装備。航続500kmのEVで、0-100km4.4秒、リンク先にあるようにニュルでも速い。自動運転系はレベル2相当。スマートスピーカーのような仕組みで音声で車両のエンタメ、ナビ、空調等をコントロールできる。電動シート、電動テールゲート、感応ポップアップ式ドアハンドル、携帯無線充電、等ハイテク電子装備は思いつくものは全部ついている。助手席がロングスライドしオットマンがついてファーストクラスシートのようになるのも面白い。サスペンションは車高調整可能なエアサス、また電池を3分で交換するステーションも設置されるという。
車両価格は45万元~55万元(7-800万円)と決して安くはないが、テスラXは1000万円超。また中国ではドイツ車のSUVがこの程度の価格なので、高性能EVとしては装備を考えると相当割安な価格だといえる。
中国ではすでに2万台が予約販売されている。
特にEVはナンバー規制対象外なので、上海や北京ですぐ登録可能、加えて10万元近いナンバー取得費用がかからない、ということも大きいのだろうが、それを抜きにしても誰もが欲しくなるような車であることは間違いない。

このメーカー、まだ創業3年ながら世界中から人材を集めドイツ、英国、カリフォルニアにも開発拠点を持っている。どう考えても中国の自動車産業出身者だけの力でこれだけの車を作ることはできないし、3年という短期間で車を商品化できたというのも時間をお金で買った(=経験者を世界中から集めた)からだろう。実際、NIOアメリカのCEOはCISCOのCTOを務めていた女性。

私が中国に来た2012年当時、まだ中国ローカルブランドのスマホは購入対象品ではなく、iPhone、サムソン、ソニー、モトローラ、台湾HTC等が選択肢だった。それが今、Huawei,OPPO,VIVO,小米といったローカルメーカーが性能、品質、商品性において急成長し、iPhoneとギャラクシー以外は駆逐されてしまった。実際私もHuaweiの上級モデルを満足して使っている。

これと同じことがいずれ車にも起きる可能性はあると以前予言した。しかしそれにはまだ相当の時間がかかるので日本メーカーはスマホの二の舞いとならないようにすべきだろうし、日本の自動車産業にはその力があると信じていた。

しかし、今私はNIOで本当に衝撃を受けた。それは中国メーカーのスピードだ。まさかここまで完成度が高い商品を出してくるとは思わなかった。

NIOの品質、信頼性はまだ未知数だ。創業3年ということで彼らには過去の失敗の蓄積がない。商品の信頼性を決めるのは失敗の蓄積によって築かれたスペックなのだ。
NIOは人材引き抜きでカーメーカーのノウハウをかなり手に入れているとは思うが、実際の商品は世に出して見ないとなにが起きるかわからない。そのために事前に耐久試験を行うのだが、創業3年ということは量産相当の試作車両ができてから発売までの間はせいぜい1年程度しかかなっただろう。しかも初めての商品。おそらくはかなりの信頼性に関わる不具合がでるだろう。

しかし、だからといって「ほらみたことか、中国企業なんかダメだ」といって安心してると危ない。これは物理的な時間があればいずれ改善される問題なのだ。

日本では中国製=低品質という既成概念がある。実際まだ多くの商品でそれは事実なのだが、先進企業は相当なレベルになっている事をしっかり認識するべきだ。
スマホや家電の失敗を車で繰り返すことは絶対にあってはならない。

i-dioの近況 インターネットでも聞けるようになりました、だって。

2018年03月03日 | モバイル・ウエアラブル
NoTTVの事業撤退の後という絶妙のタイミングで登場したアナログTV停波跡地VHF-Low帯を利用したデジタル放送サービス「i-dio」。
撤退は時間の問題という辛口の意見も有るようだが、状況はどうなのだろうか?
事業主体のFM東京にとっては重荷になってるのは事実のようで、昨年の決算書類にもi-dioの初期投資で利益が減少した、と書かれている。
しかし、こうしたコンテンツビジネスは初期投資時点で赤字であることは織り込み済みで、そこからどれだけサブスクライバーを増やしていくかが勝負になる。しかし、残念ながらとても普及しているとは思えない状況だ。
この事業を担当する㈱ジャパンマルチメディア放送は昨年7月にBIC株式会社から社名変更したが、同社HPのニュースリリースは17年6月30日の社名変更以降更新されていない。HPのニュースリリース更新状況でその事業の活気というものは大体想像できる。

しかし、i-dioも決して無策でいるわけではないようだ。
車載器向けにハイレゾ音源放送をするという。いわく、EVなど車内の静粛性が向上しており車載器向けにハイレゾ音源の需要が高まっているという。とても信じられない話だが。ごくごく一部のマニアのことだと思う。というか、それ以前にi-dioは普通の車載オーディオでは聴くことができない。専用チューナーボックス(約1万円)をつけてブルートゥースでカーオーディオから出力されるしかない。ハイレゾ音源以前の問題なのだ。
まあ、コンテンツがなければ誰も専用受信機をつくらないだろうから、ハイレゾ対応は局面打開策としては方向として間違っていないのだが、ハイレゾ音源ということだけではどうしようもないだろう。

さらにi-dioのHPで面白い記載を見つけた。スマホ用i-dioアプリのバージョンアップで「専用チューナーがなくても、インターネット経由で同一の放送サービスを利用することができます」とのこと。いったいどこに向かおうとしてるのだろうか。

ETC 駐車場運用の限界

2018年03月01日 | ITS
ETC2.0普及促進研究会は昨年来ETCによる駐車場ノンストップ決済の実験をしている。
ETC2.0普及促進研究会が行っているものの、これはETC2.0限定ではなく通常のETCでも対応可能。

ETC2.0の宣伝文句には様々な決済に使えるようになるとあるが、ドライブスルーとかガソリンスタンドは現実的でない。
しかし駐車場ノンストップ決済は確かに便利なので実現の可能性は十分に有ると思う。
従来ETCカードは高速料金決済にしか使えず、車載機器のID番号とETCカードとは別のクレカをひも付けるというやり方で実験が行われてきたが、これは全く普及しない。
クレカ紐付け申請が必要で、わざわざそこまでして使おうというユーザーがいなかったということだ。

それを受け、ネットワーク型ETC決済という仕組みが開発された。詳細の説明は省くが、従来のETCとETCカードをつかい路側ポストによる課金が可能になったので、ハードルはかなり下がったといえる。

しかし、それでも駐車場での利用が拡大してくという気配はない。なぜか?

まず、当然駐車場側に投資が発生する。ETCでノンストップ決済が可能になるとその投資を回収する売上増もしくはコストダウンが見込めるか?という単純な経済の問題だ。
ノンストップで払えるから遠いけど駐車しよう、という人はいない。2軒並んでいたらノンストップを選ぶ人はいるだろうが、まあその程度の需要増。また完全に無人化できないのでコストダウンもあまり期待できない。

次に問題となるのは商業施設との連携による割引処理。
それをしようとするとノンストップではできない。事前精算機に車両情報(つまりは駐車券)と割引券を入れる等の手間が必要となる。
商業施設のレジと駐車場をオンラインで結び、登録ナンバーやETCカード等の情報を支払い時に伝えて割引処理をする方法もあるが、設置費用がかかりユーザーも面倒。

唯一ノンストップで割引できる方法は、ETCカードの親カードで買い物をし、請求額から割り引くということしかない。
しかし、ETCカードの親カードを通常の決済に使っている人は限られるのでこれもあまり好まれない方法だろう。

ということで、理屈では絶対に普及しそうなETCによるノンストップ支払いもかなりのハードルがある。
駐車場のノンストップに関しては、ナンバー読み取りとスマホ連動による支払い、割引処理のほうが導入コストが安い(実際中国では始まっている)と思われ、ETCの将来はあまり明るいものとは言えないようだ。

とは言え、商業割引等がない空港など公共施設の駐車場ではどんどん採用して欲しいと思う。
また中国を引き合いに出して申し訳ないけど、中国では北京、上海等の空港駐車場はETC決済対応となっている。

いずれにしても、計画からすでに20年。その間にスマホが普及し専用車載器をつかう必要はどんどんなくなってきている。
とくにドライブスルーなど、スマホで十分だろう。
ETCの商業利用は普及する前に新しい技術が出てきてしまったわけで、もうきっぱりと高速道路料金支払専用で生きていく方がいい。