ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

パイオニアとホンダ、プローブ情報を共有

2008年08月30日 | ITS
28日、パイオニアはルート検索情報の精度向上を目的に、自社のプローブである「スマートループ」の車両走行データと、ホンダのそれである「インターナビ」のデータを共有すると発表した。(ホンダのプレス発表)

プローブとは、通信機能をもつ双方向型ナビから車両の走行情報を収集し、渋滞情報をサーバーに蓄積することで渋滞を予測する、もしくはリアルタイムの交通情報をナビに配信する仕組み。
決して新しいものではなく、ホンダは5年まえから、パイオニアも3年ほど前からスタートし、トヨタ・日産も追従しているが、消費者認知はあまり進んでいない。
(大半の消費者がVICSで十分と感じているのがその最大の理由だと思う)

共有するのは区間ごとの走行所要時間情報のみに限定され、すでに蓄積した情報の解析処理ノウハウは各々が開発することで双方の独自性を確保するという。

さて、この提携をどう見るか。

現在の自社システムに問題がなければデータ共有の必要はない。精度に改善の余地があるということだろう。
精度はプローブの台数に依存する。
しかし、ホンダのインターナビはすでに国内最大の72万人の会員を持ち、データ量には不足がないように思える。

カーメーカーとしては、プローブ情報は自社ナビの性能という意味で車両の差別化要素であり、他カーメーカーとの共有はありえない。その意味では提携できる相手の選択肢はパイオニアしかない。

いずれにせよ、精度こそがプローブの商品力である以上は真っ向から競合しない相手との提携は選択肢として正しいのだろう。
今後のトヨタ、日産の出方に注目したい。

それはそうと、VICSプローブ構想はどうなっちゃったんでしょうね。

ETCの街なか利用 つづき

2008年08月23日 | ITS
ETCの街なか利用について、先日書いた。ETCの高速道路料金決済以外への拡大ということだ。いままで散々書いてきたが、改めてその可能性があるといわれているアプリケーションをあげると、次の通りである。

・ガソリンスタンド
・駐車場
・フェリー
・ドライブスルー
・コンビニ

駐車場は10数箇所が稼動している。
フェリーも実用化されている。しかしガソリンスタンドは試験的導入、ドライブスルーやコンビニでの料金決済は始まっていない。

私は、4年前にこのブログをはじめたときから「このビジネスの拡大は無い」と主張しており、実際に4年を経過してたいした進展は無い。

しかし、なぜか関係者はまだまだやる気まんまんなのだ。

既存のETCが使える利用車番号方式についてはORSEが事業を取りまとめ、また専用ETC車載器(多機能ETC)についても今年の秋には試験販売を開始し、来年の春には一般販売を開始するという。
三菱重工も駐車場管理システムを開発した。

このビジネスにかかわる人たちは、市場環境をよく考えたほうがいい。
ガソリンスタンドはどんどんつぶれている。極力コストを削減し薄利で多売する給油所しか生き残れない。そんな中で、設備投資がかかり、決済手数料も余計にかかり、でも集客効果が不透明なETC決済を導入するメリットがあるか?
そもそもセルフのスタンドで、ETC決済にどんな消費者ベネフィットがあるか?

駐車場も利用が減ってきており、経営的には厳しい。さらに、完全ノーストップ利用における買い物割引システムが確立していないので、利用者のベネフィットはいまひとつ。
上記リンクの三菱重工のシステムのような、プライベート駐車場の入退場管理のほうが高級マンションなどでまだ採用の可能性が高いかもしれない。

ドライブスルーにしても、導入メリットは店・消費者とも、さして見出すことができない。
キャッシュレスによる処理力アップはFelicaでやればいい。

コンビニにいたっては、イメージすらわかない。
音楽ソフトの配信などか?
専用車載器の開発と普及が必要になる。これが収益モデルとして成立するとは到底思えない。

これはひどい 東芝は大丈夫か

2008年08月21日 | 雑記

今日、電車の広告でちょっとびっくりするものを発見した。
写真が小さくて見えないかもしれないが、東芝のエアコンのリコール広告。

そもそも、どんな事故が起きるのか書かれていないし、「1998年、1999年製のエアコンを探しています」と大きく書いてある一方で、写真の下には1999年9月~2001年3月製造という記載があり、よくわからない。

しかし、なんといってもこの文章。
そのまま転記すると

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東芝キャリアは、安全・品質・信頼性を最優先にものづくりを行っております。現在、2004年8月20日1998年、1999年製エアコンのリコールを行い以来下記の商品をお使いのお客様を様々な方法で探し改修を続けております。
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この意味不明な日本語を見逃してポスターを印刷し、掲載してしまう企業に「品質を最優先」といわれても、ねぇ。


ガソリン高騰と交通量

2008年08月20日 | 雑記
ガソリンの値段の高騰で盆休みの交通量が減少したという。
でも、ガソリン代の値上がりでそんなに出費に差が出るものなのだろうか?

130円が180円になったとして、リッターあたり50円。遠出ならリッター10kmは走るだろうから、200キロ走っても差は1000円。
宿泊や食事などの総レジャー支出に占める割合でいえば、たいしたことはない。

一部ではガソリンの値上がりで新幹線が混んでいる、というような話もあったが、家族で出かけるならまだ車の方が安いだろう。

今年に限って言えばテレビで五輪を見るという選択肢もあったし、その上ガソリンも高いし、という心理的影響もあって交通量が抑制されたんだろうね。

ETC不正通行が減少

2008年08月18日 | ITS
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引用 8/9付け 47NEWS 

ETC(自動料金収受システム)専用レーンを強行突破するなど、2007年度の高速道路の不正通行は06年度に比べて11%減の計約86万件となり、ETC導入で不正通行が増え始めた01年度以降、初めて減少したことが9日、分かった。

監視カメラ設置などが奏功しているとみられるが、依然として件数は多く、一層の対策が求められそうだ。
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この、「ETCになってから強行突破が増えた」という話はほぼ事実として語られているようだが、どうしても腑に落ちない。
ETCレーンを突破するとバーに当たる。そんな冒険をしてまで突破する連中なら、すでに有人ゲートのころから突破しているんじゃないの?
ETCだから突破するという理由が分からない。

私は理由不明でゲートが反応せず、後続車がいたのでそのまま通過したことがある。友人もそうした経験があるという。
過失による突破のほうがけた違いに多いんじゃないか?
気がつかないうちにカードをイジェクトしていた、というケースも多い。

不正通行の増減を見てみると、ETCゲート設置に比例して拡大しているのではなく、ETC装着率にリニアに比例して拡大し、装着率の飽和により不正通行も頭打ちになっている。

不正通行件数
2002年 28万件
2003年 47万件
2004年 69万件
2005年 95万件
2006年 96万件
2007年 86万件

これはどう考えても、故意の不正通行ではなく一定率で発生するカード入れ忘れや読み取り不良によるものだろう。
不正通行はETC装着の有無にかかわらず可能なのだから、比例する理由がない。
そして、最近減少傾向にあるのはドライバーが慣れてきてカードさし忘れなどの失敗が少なくなってきているというだけのことだと思う。

記事では減少は監視カメラが奏功っていうけど、私は最初から当然カメラ監視をしていると思っていたし、最近それを強化した、というような広報活動もされていないように思う。

別に性善説を唱えるわけではないが、私はいまだに電車の自動改札で故意に突破している人を見たことがない。タッチ不良でゲートが閉まって、結果的に突破してる人はよくいるけどね。ETCも同じじゃないの?
(電車の改札は、追跡されたらつかまっちゃうからちょっと違うかもしれないけど)
ゲートが無人になったからといって、そんなに悪意ある人間が増加するとは思えない。

この件は、1年前に一度書いている

そこでも書いたとおり、悪意ある突破は犯罪ではあるが危険ではない。むしろ、さし忘れなどの過失でバーが閉まるほうが追突事故などを誘発して危険なのだ。
問題にするべきはむしろこちらのほうだと思う。

歩行者感知システムの実現性

2008年08月16日 | 自動運転
前回から引き続き。

来年にかけて実施されるITS-Safety「安全運転支援システム」大規模実験の中の一つに、歩行者感知センサーを設置して横断者がいることを車載モニターもしくはスピーカーに警報を発して右左折時の事故を防ぐ、という項目がある。

こんなことよりも歩車分離信号がより確実でシンプルな解決策だ、と書いた。

センサーで歩行者を検知するというが、そもそも実際の運用としてうまく働くのだろうか。歩行者交通量の多い交差点では必ず警報がでることになる。
交差点進入時にモニターを見ることは危険だから、警報は音声で提供されることになるだろう。これだと、交差点進入時には大抵警報が鳴ることになり、「オオカミ少年」状態になってしまう可能性がある。

しかし、本当に危険なのは視界に入らない後方からくる自転車や、走ってくる子供などだ。こうした「本当に危険な状態」を警報音のレベルを変えるなどで選択的に警報することはある程度まで可能だろう。
でも問題は技術的にどこまでの精度が確保できるかだ。

仮に精度の高いシステムを確立できたとしても、警報は安全サイドにマージンを取ることになるだろう。行政は「警報がならならったから事故が起きた」というような訴訟を避けたい。

結局、交差点進入時には警報が鳴ることが多くなる。
警報がなれば、自分の目では安全が確認できたとしても一時停止や徐行をする。場合によってはこれは歩車分離信号よりも渋滞を引き起こすかもしれない。

やはり、歩車分離信号のほうがはるかに現実的だ。
それも、今すぐできることなのだ。車+通信はそのあとで考えればいい。

ITS-Safetyは世界に先駆けて通信を利用した安全運転支援を実用化するのだ、と言っているが、歩車分離を進めている各国からは逆に笑われるんじゃないかと思う。

DSRC活用の右折支援システムなどは典型だ。ITS世界会議で海外参加者から「なぜ右折矢印信号にしないのか」という単純な質問がでたらどうこたえるのだろうか?
信号機は警察の管轄ですから、とでもいうのかな?

歩車分離信号

2008年08月15日 | 雑記
前回のエントリーで

(左折巻き込みなどを防ぐためには)信号を見直すのが普通だろう。そうしたまず第一に採るべき対策を無視して、「人がいるかどうかをセンサーで察知し、通信で車のディスプレーに表示する」なんてソリューションはどう考えてもジョークとしか思えない。

と書いた。
もう少し説明しておこう。

信号の改善で人・車の混交を防ぐために存在する方法は、大まかに言ってスクランブル化と右左折信号化と時差式がある。どれも事故防止には大きな効果がある。こうした信号を「歩車分離式信号」と呼ぶ。

しかしこのソリューションがあまり積極的に取られない理由は、車側のトラフィック容量が減少するために渋滞が発生する(だろう)ということだ。

しかし、歩道に歩行者が多く左折車両が信号一回待ちで通過できない交差点では逆に渋滞抑制になるだろうし、右折矢印信号はも大抵の場合は渋滞を緩和する。

さすがに最近、トラフィックの多い幹線ではほとんど右折矢印化が進んでいる。
直進車の合間を縫って、なおかつ二輪車に気をつけながら右折し、しかもその先に歩行者が横断しているなんている状況は曲乗りのようなもので、この先運転者が高齢化する状況では絶対に改善しなければならない。

渋滞に関しては実際にスクランブル化や矢印信号化でどの程度渋滞が発生するのか専門的に研究しているわけではないのであまり無責任なことは言えないが、交通が麻痺してしまうような事態でないのなら、人命が優先だろう。
もう少しいえば、ざっとネット上を見た限りでは歩車分離信号で渋滞が悪化したという明確な事例や論文はあまりない。
一方で警察や自治体が設置を見送る理由の中には「渋滞悪化が懸念される」という文章がいくらでも見つかるのだが。
(石川県の議会答弁で「18か所を整備し、2か所で著しい渋滞が発生したので廃止した」という文章があった。それでいいと思う。試行すればいいのだ。)

さらに、ハイテクはどんどん使えばいい。センサー技術で歩行者がいるか否かを探知できるなら、その情報をもとに信号制御をおこなって渋滞を回避すればいい。

ところが、我が国のITSはハイテクの使い方を間違っている。
通信を利用して車載器に表示する、という考えを持った時点で間違ってるのだ。
そもそも、DSRCによる通信ありきでITSがスタートしたことが判断を最初のところで誤らせている。

さっさと車+通信の幻想から目を覚ましてほしい。

ちなみに、歩車分離信号については歩車分離信号普及全国連絡会という団体が普及活動をしている。

追記:

警察庁は平成19年9月に歩車分離信号の設置基準指針を制定していた。行政もちゃんと考えている。
検討するべき交差点は

1.歩者分離制御により防止することができたと考えられる事故が過去2年間で2件以上発生している場合、または、その危険性が高いと見込まれる場合
2.公共施設等付近、または通学路などにおいて児童、高齢者などの交通の安全を特に確保する必要があり、かつ歩車分離制御導入の要望がある場合
3.自動車等の右左折通行量及び歩行者等の通行量が多く、歩車分離制御の導入により歩行者横断時の安全性向上と交差点処理能力の改善を図ることができると認められる場合

でも、ハードルを規定するよりはむしろ設置するべきでない事例を示し、それ以外は原則設置するぐらいでないと交通事故死者は減らないんじゃないのかと思う。

アナログ停波による空き周波数とITS

2008年08月03日 | ITS
アナログ停波により空く周波数の割り当てに「ITS」という項目が入っている。
市場創出とか、交通事故死者削減という謳い文句もあり、また大手カーメーカーの後押しもあって割り当てに入ってきたのだとは思うが、はたして貴重な電波の割り当てをもらうほどのことが出来るのだろうか?

今言われているのは、いわゆるスマートウェイ系の路車間通信や車車間通信などだ。

先日富士通がユビキタス特区での実証実験を発表したが、その内容は

「ITS用に割り当てられた720MHz帯を利用し、道路状況を画像として捉えるインフラセンサーや、画像データを送信する無線システムなどを組み合わせ、自動車のドライバーには直接見えない交差点の状況や自動車の周辺環境を、無線システムを通じてドライバーへ知らせる。」

ということだ。

「自動車のドライバーには直接見えない交差点の状況や自動車の周辺環境を、無線システムを通じてドライバーへ知らせる」って、本当に安全に寄与するのだろうか?
少なくともプラスには働くのだろうが、費用対効果がつりあっているとはとても思えない。
ここで言う費用には、貴重な空き周波数を割り当てるという社会コストも含む。また、すべての車をこれに対応させるコストとそれが完了するまでの時間も、膨大なものだろう。

私は、交差点は信号制御を見直し混交をなくすのが先、近接車両情報は路側表示のほうが車載器表示よりも優れる、と思っている。

たとえば、右左折時に車も人も「どちらも青」、という状況が左折巻き込み事故などを起こしている。
これを防ぐためには信号を見直すのが普通だろう。そうしたまず第一に採るべき対策を無視して、「人がいるかどうかをセンサーで察知し、通信で車のディスプレーに表示する」なんてソリューションはどう考えてもジョークとしか思えない。

「安全に寄与し、交通事故死者を削減するハイテク技術」といわれれば、誰も反対する人はいないだろう。でも、誰も真剣にその実現性の中身まで見ていないように感じる。

ホリデーオート

2008年08月01日 | 雑記
やはり首都高速の距離別料金制度実施は延期になった。半年延期といっているが、この経済状況の中で本当に復活させることができるのだろうか。

それはさておいて。

先日、取引先の待合室で「ホリデーオート」を読んだ。
この雑誌がまだあることすら知らなかったが、30年前のホリデーオートといえば暴走族御用達雑誌で、名物コーナー「Oh!My街道レーサー」には自慢のシャコタン違法改造車が沢山掲載されていた。(Oh!My、って響きに70年代を感じるね。)
普通の青少年はあまり買ってはいけない雑誌だったが、いまや普通の自動車雑誌になっている。

それにしても,現代のホリデーオートに登場する自動車評論家や編集者はみな良いおじさんだ。
車好きは年寄りしかいない、という現在の日本の状況を良く表しているともいえる。

これじゃあ若者の車離れがどんどん加速するわけだ。


第9回 スマートウェイ推進会議 作業部会報告

2008年08月01日 | ITS
国交省のITSホームページに第9回 スマートウェイ推進会議 作業部会報告がアップされている。

PDFファイルでかったるいけど、「資料1 スマートウェイ2007実施結果報告」を読むと、まあなんだか都合のいいレポートになっているのが良くわかる。

これは昨年首都高速の複数個所で実施されたスマートウェイの実証実験の報告書で、ここで言うスマートウェイトとは道路に設置されたセンサー、発信機と車に搭載した車載器をつかって前方渋滞情報提供や合流支援を行うというもの。

まあ、詳細は読んでいただけばいいのだが、実験の結果は「役立つ」「まあ役立つ」あわせて6割だから受け入れられた、みたいなものばかりだ。

これらのシステムはプラスアルファの安全関連情報を提供している。対価の条件がなければ100%近くが肯定して当たり前の話なのだ。まあ、天邪鬼な人は否定的な意見を述べるとしても、90%が肯定しなければ合格とはいえない。
むしろ、6割ってのはかなり問題な結果なんじゃないのか?

これは聞いた話だが、このシステムに対していくらなら対価を支払うか、という調査があり、その結果は「1000円」程度だったという話もある。

こうした、決して有用性が証明されたとは言いがたいシステムに対して、2007年の実験は成功だったと言い張り、2009年にかけて大規模実験を行うというのだ。
大規模というほどの規模でもないようにも見えるが、それでもお金はかかる。

交通事故死減少のためには、もっと先にやるべきことがたくさんあるはずだと思うんだけどね。