ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

X01HT

2007年10月31日 | モバイル・ウエアラブル
フルキーボードつきのスマートフォンX01HTにしてから、モバイルでブログをアップするようになった。
この電話機、すぐ勝手にソフトバンクの3Gでインターネットにつなぎに行こうとする。モバイルインターネットに一万円(SBのつなぎ放題料金)を払う気がない私にとっては油断がならない。

なので、勝手に3Gにいかない設定にして、インターネットはYAHOOの無線LANホットスポットを利用することにしたのだが、結局やっぱりそんなに使うわけでもない。
どうしても屋外でインターネットに接続したい、という状況がないのだ。

これはもちろん、個人差があることだとおもうが、いつも言うように自宅と職場でつなぎっぱなしなら、モバイルの需要なんてそんなにないんじゃないか?

結局アイピーモバイルは事業をスタートできずに撤退したが、同社の事業計画にあった5年後の加入者1000万人がいかに非現実か。国民の10人に一人が月に3000円なりを払ってモバイルデータ通信契約するだろうか?
もっとも、無事に事業を立ち上げたイーモバイルも総務省に提出した計画書では5年で500万人としている。今のところ半年で13万人。

と、ここまでモバイルについて否定的な意見を書いてきたが、実はWIMAXには期待している。
今回のアイピー撤退で帯域に空きができて、WIMAXも2社参入となりそうだ。(これは業界では織り込み済みだった?)
健全な競争で安く使い勝手の良いシステムができるといいと思う。

首都高X もう少し

2007年10月30日 | 高速道路
首都高Xだが、やっぱりおかしいと思う。
物事を複雑にしているのだ。

ETCは初期導入費用が高いとか、装着が面倒とかいう理由で装着率が伸びない、しかしそれでは距離別料金の実現ができない。まして、出口には料金所をつくれない。

ここで新しい仕組みに手を出した時点で泥沼にはまっているのだ。多分、やっている人は気がついていないだろうが、ビジネススクールのいろはで習う「コンプレキシティ」と言う状態だ。

答えは、ETCの仕組みをもっとシンプルに、かつ消費者フレンドリーにすることだったはずだ。

首都高Xはもうほとんど出来上がっちゃっているらしいから、いまさら後戻りはできないんだろうけど、こうした新しいシステムへの投資や維持費は結局道路会社=利用者に降りかかってくる。

さらに言えば、いまさら収受員を前提とした新システムを導入することで将来に余計な重荷を背負うことになるのではないか。


若者と環境性能

2007年10月29日 | 雑記
東京モーターショーの入場者がどの程度となるのか、興味深い。
国内市場は冷え切り、若者は車に興味を持っていないという悪条件のなか、前回なみ(150万人)を目標にしているそうだが、最初の週末の結果は約20万人ということで、これは前年並み、もしくは若干良い数字らしい。

しかし、今回一般公開早々に駆けつけた人のなかには、日産GT-Rが目当てというコアな人が結構いるはずで、この入場者がどこまで続くかがポイントだろう。
きっと伸び悩むと思うのだが。

若者が顕著に車離れを起こしたのはここ5-6年というところだろうか。
結果として、今の10代、20代は総じてあまり車に興味を持っていない。

車に興味があろうがなかろうが、家庭をもって子供が出来ると車が必要になる。
ただし、車に興味を失った若者はまだそのライフステージに到達していないだろう。
特に晩婚、少子化が進んでおり、子供を持つのは30歳を過ぎてからというケースが多そうだ。

そのときに彼らがどんな車を選ぶのか。

子供の頃から環境問題が空気のように存在し、繰り返しその教育をうけている彼らの選択に「環境性能」はかなりのウェイトを占めることになると思う。

キープコンセプト

2007年10月26日 | 雑記
クルマが売れない、若者がクルマに興味を示さないと書いた。

そんな市場環境の元、東京モーターショーを前に日産とホンダが国内で比較的好調な車種のモデルチェンジを行った。
エクストレイルとフィットだ。
どちらも日本車には珍しく、一見して新型と判らないようなキープコンセプトのフルモデルチェンジとなっている。

しかしこの両者のキープコンセプトは、それぞれ微妙に意味が異なる。

エクストレイルは、唯一、車離れした若者が指名買いするモデルだ。
その理由は、いってみれば「素うどん」とか、「ジーンズにTシャツ」みたいな車だからだろう。
今、大多数の若者は車に性能やスポーツカーのようなかっこよさを求めない。
むしろ、最低限の機能を有し、道具に徹したような商品の選択が好まれる。
その辺にエクストレイルはうまくはまっているのだ。

だから、本当はモデルチェンジだってしなくて良い。というか、日産にとっては出来ればしたくない位の気持ちだろう。
価格を上げることは出来ない。しかしフルモデルチェンジは確実にコストアップに繋がる。特に旧エクストレイルのようにすっかり枯れた車は、相当利益率がいいはずだ。

ということで、日産はコストダウンを一番のテーマにエクストレイルをモデルチェンジした。スタイルはキープコンセプトでかまわないのだ。

一方のフィットは、いまやホンダの国内販売をなんとか食いつながせている車種だ。若者のクルマ離れによる影響を一番こうむっているのがホンダなのだ。

失敗できないクルマなのでキープコンセプトになった、と見るのが正解だろう。そこに弱気が見える。
しかし、キープコンセプトが通用するのはその商品のブランドパワーが十分に強い場合だけだ。果たしてフィットがそこまでブランドとして成立しているのだろうか。
大衆車のキープコンセプト型モデルチェンジは失敗の可能性が高いし、ホンダがキープコンセプトで成功したためしがない。

しかし、もしかしたらホンダは国内マーケットのプライオリティを下げているのかもしれない。
JAZZの名前で販売されている海外市場をメインに考えれば、キープコンセプトはありだ。

国内の自動車販売に短期的な回復はありえない。
そんな中で日本の自動車メーカーが足元のマーケットのプライオリティを下げたとしても、まったく不思議ではない。

東京モーターショー 続き

2007年10月25日 | 雑記
昨日の日経夕刊のモーターショー開幕を告げる記事に、「若者のクルマ離れを阻止するために各社スポーツカーを展示」と言うようなことが書いてあった。
相変わらずピントがずれている。国内のカーメーカーがスポーツカーをつくらなくなったのは若者が買わなくなったからで、原因と結果が逆転している。

いまの若者はクルマに全然興味がない。この話は一年半くらいまえにこのブログで紹介しているので、左の検索ウインドウでチェックしてみてください。
もしくはこれとか、これ

こういうと必ず「興味がないのではなく格差が広がったり、ニートが増えたりして買えないのでは?」という意見をもらう。

はっきりいってそれは違うと思う。

1970年代の有職少年を中心とした暴走族ブーム。若い男は誰だってクルマがほしかったし、だから働いて手に入れた。
このころの彼らの給与とクルマの価格を考えれば、現在よりもクルマははるかに高嶺の花だった。
今ちょっとバイトすれば、中古車ぐらい買える。

昔はクルマを持ってなければ仲間内で一人前と認められなかったし、まともに彼女を作ることもできなかった。今は違う。
携帯があればコミュニケーションに不自由はない。

働かないからクルマが買えないのではなく、クルマをほしいと思わないから働かないのだ。

若者のクルマ離れについてはどうも正確なマーケット分析ができていない。

結局のところ「女の子にもてるかどうか」ってのが若い男の行動の大部分を規定する。でも、市場調査ではみんなカッコつけてそれを認めないから、マーケットリサーチ結果がぶれるんだよね。

東京モーターショー

2007年10月24日 | 雑記
年の功による役得で、初日のプレスデーに東京モーターショーにいってきた。
やっぱり幕張はコタエル。

日産のGTRはワールドプレミアで、一番人だかりが多かった。
フラッグシップなんだろうが、今、あんなにでかい車が本当に必要なのだろうか。大いに疑問。
なんかスタイルも重い。20世紀の悪夢というような感じがする。

会場には外国人非常に多く、特に欧州の人たちは軽自動車をはじめとするスモールカーに関心が集まっていたように思う。

やはり、この先の自動車業界で最も重要なキーワードは環境だということは間違いないだろう。

スマートウェイ2007 その5

2007年10月23日 | ITS
スマートウェイ2007ではETC製造各社がITS車載器に関して展示を行っていた。

私が一番驚いたのは、全社、それなりに力をいれて試作機を作っていたことだ。
7社(だったか?)が一斉に試作機を展示するその光景からは、商品化前提としか思えない。
しかし、付加価値の金額評価は1000円以下、といわれてしまっているこの装置をどうやって売るつもりなのだろうか。

たしかに、車載器が普及しなければ路側機を設置する意味がない、路側機がなければだれも車載器をつけないというチキンエッグだから、将来インフラ協調の運転支援を実現するためには多少強引でも官が介入する必要があるのだ、という意見もあるだろう。

そのために、車載器は無償で配布するとか、メーカーの努力と補助金を活用して追加費用無しでETCに機能追加をすべきだ、といった意見もシンポジウム参加者からはだされていた。

しかし、本当にそこまで-多かれ少なかれ税金を投入して-してDSRC活用によるITS車載器を普及させることが正しいのか、一度原点に戻ってきちんと評価をしなおすべきだと思う。

駐車場や給油所といったDSRC商業利用によるドライブは期待できない。もう2-3年やってこの程度しか普及しないのはIBAさんの努力不足ってことじゃなく、そもそも商品力に無理があるということだろう。

今回の安全運転支援にしても、「あればあったでいいな」レベルのベネフィットだ、と調査結果は示している。これは今後のチューニングでなんとかなるようなレベルではないように感じる。

VICSのビーコンは光と電波をあわせて4万近く設置されている。
しかし、光・電波ビーコンに対応したナビは全体のわずか1割程度。増加傾向にもない。
理由は簡単。ナビ・FMVICSと電光掲示板で提供される情報ですでに十分で、ビーコンはまさに「あればあったでいいな」レベルのサービスなのだ。

4万のビーコンというインフラ投資は果たして費用対効果に見合う正しい出費だったのか?これについての振り返りはされているのか?

DSRCも同じ轍をふむのではないか?

JAFのアンケート

2007年10月22日 | ITS
J-Safety普及促進分科会はJAFと連携し予防安全システムインフラ協調システムのニーズ調査をWEBサイトで実施している。
目的は大規模実証実験前に一般ユーザニーズを把握し、ユーザ便益の観点から普及シナリオ検討の基礎データを収集する、ということだが....。

アンケート1 と アンケート2

特にアンケート1は何なんでしょう。
日常運転していて出くわすヒヤリハットを提示し、「これを防ごうとする技術があります。これについて、あなたのお考えに合致するものにチェックを入れてください」と言う聞き方。
こんなの、「欲しいと思う」以外の答えが出るほうがおかしい。

意図的ににポジティブな結果をとるアンケートの典型だ。

アンケート2の方が意見を集めるという意味ではまだまともだけど、設問が酷いね。

「単体買切りの装置で、追加料金が発生しないものがよい」とか、「安全のための装置は必要であるが、他の機能と共通できるようにすべき」なんて、普通の人には言葉が理解できない。
問8の「1項から7項のような機能が全て含まれた装置」なんて、一体何を意味しているのかまったく理解不能。

あ~、この結果もまた恣意的に活用されるんだろうな。

皆さん、よろしければアンケートにご協力ください。

ITS車載器の問題点 なぜ通信にこだわるのか

2007年10月21日 | ITS
さて、決定的なことを言おう。

どうやら、国交省とそれに絡む特定の人たちは「世界で一番進んでいるITS」を実現し、大々的にぶちあげたいらしい。
そのためにはなんとしても路車間通信・インフラ協調安全運転支援というハイテク活用によるITSを世界で初めて実用化する必要があるのだ。

さらに、実現すると路側機ビジネスの展開が望める大手電機メーカーも、それを望んでいる。

だから、実用性・実効性があろうがなかろうが、ビジネスモデル構築が危うかろうか、安全情報が特定のドライバーにしか届かないというような、どう考えてもおかしい状況であろうが、関係ない。
もはや、路車間通信で安全運転支援をやることそれ自体が目的なのだ。

そのために、実験やモニターによる評価結果を恣意的に解釈したり、バイアスをかけたりしている。
そして、2009年春にはお台場で大々的に宣伝する、というようなプランも出てくる。

私は路車間通信による安全運転支援の可能性を否定しない。
でも、真に交通安全の向上、事故死者削減を考えたら、そのプライオリティは決して高くないはずだ。

安全運転支援情報を効果的に路側機で表示する、危険なカーブの路面表示を工夫する、住宅地の裏道における最高速規制を行う、大型トラックの追突防止装置を法制化する、など、もっと先にやるべきことがたくさんあると思う。
それらの改善のために、ローテク、レガシーデバイス、センサー、通信などをもっとも効果的に組み合わせることが必要だ。
そこまでして初めて「インテリジェント」だろう。

日本のITSは特定の人間の功名心に振り回されているのではないか、といったら言い過ぎだろうか。

ITS車載器の問題点 続き

2007年10月20日 | ITS
ITS車載器によるインフラ協調安全運転支援システムについては、実際に試乗で体験をさせてもらった。

前方障害警告システムは、ある程度の有用性は認める。
カーブ先の渋滞情報が事前に知らされることは有用に決まっている。但し、路側表示でいい。

合流支援は使い物になるとは思えない。私の車のナビには合流の音声警告機能があるが、うるさいので切ってある。
前方合流なんて必ずそれに対応する運転をしているものだ。合流車があります、なんていわれなくてもいい。

前方静止画表示は全然だめ。静止画を見て判断する、なんてことを運転者にさせてはいけない。

大黒パーキングを想定した駐車場でのインターネット接続デモは、ナビ画面にPAのレストランのメニューが表示されるというものであったが、そんなことする時間があるならさっさと店内に入ったほうがいい。

以上のように、私が実際体験した感想もアンケート結果の
「現在のナビにただで付いてくるなら、まあいいんじゃないの?」
というレベルだ。

私の一番の疑問は「なぜ路側表示ではなく、車載器表示にこだわるのか」である。
今回のスマートウェイ2007はQ&Aというコーナーがないので聞けなかったが、これに対する正式見解は、
「運転者の認知度は、路側表示の50%に対して車載器表示では90%に跳ね上がる」という調査結果らしい。
実験の条件などがまったく明かされていないので、詳細は不明。

私がこの結果から思うのは、単に路側表示は長年「狼少年」を演じてきたのだ、ということだ。
センサー連動の表示はスピードや車間で存在するが、「この先渋滞注意」とか、「カーブスピード注意」という表示は通常は出っ放しだろう。
運転者にとっても、センサー連動のリアルタイム路側表示という概念がない。
路側表示板というデバイスが悪いのではなく、ドライバー側の既成概念が認知を低くしている。

一方の車載器表示は目新しい分、認知度は高くて当然だ。
しかし、これも慣れたらどうなるか。

さらに、参宮橋の実験結果からは、路車間通信ではなく道路の改善で事故が減ることが証明されているとしか私には思えない。
(事前警報と関係ないはずの「速度超過に起因する事故」も大幅に減少しているのだ)

真剣な検討なしに、「路側表示はだめでこれからは車載器表示だ」と決め付けていないか?

運転者の視線移動や混乱という観点からは路側表示のほうが優れているように感じるが、検討されているのか?

そして何より、センサー連動の安全表示は、二輪車を含めすべてのドライバーが公平に見ることができる「路側表示」を優先して整備するのが、どう考えても常識だと思うが。

なにかがおかしくないか?

ITS車載器の問題点

2007年10月20日 | ITS
今回のスマートウェイ2007は、DSRC路側機とITS車載器によるインフラ協調の安全運転支援システムがすべてだ、といってもおかしくないような内容だった。

首都高速に路側機を設置し、ETC関連機器メーカーとカーメーカーの協賛を得てモニター車に試作のITS車載器を搭載し、今年5月から60台のモニター走行が続けられた。

安全運転支援システムとは、カーブ先の渋滞を知らせるもの、合流地点で合流車が来ることを知らせるもの、前方の交通状況を静止画で知らせるもの、などだ。
この実験の詳細のPDFはここに。

このモニター走行、当然モニターにアンケートをとっている。アンケートの内容は上のPDFファイルに記載されている。
その結果が今回発表された。

いわく、60%の人がこのシステムを利用したいと回答し、肯定的な意見が過半をしめた、としている。

ちょっと待って欲しい。

今回のシステムは車の安全性を向上させるものだ。
安全の向上という課題にネガティブ意見を出す人はとても少ないのが普通だ。
しかも、アンケートにあるとおり「トレードオフ条件」(機器の利用料、価格、装着することでのデメリット)を示していない。

こうした条件のアンケートでは通常100%肯定が「合格点」であり、60%はとても低い数字と考えなければいけない。
しかも、内容を詳しく見ると「利用したい」は15%、「どちらかといえば利用したい」が45%。

これはネガティブな結果が出た、と判断するべきだ。

さらに、昨日のエントリーで書いたとおりこれを裏付けるようなアンケート結果が出ているのだが、こちらについてはどうも積極的に発表されていないように感じる。
それは、「このシステムの対価」である。
私も資料がないのだが、どうも多くの被験者が「1000円以下」と回答しているらしい。

つまり
「現在のナビにただで付いてくるなら、まあいいんじゃないの?」
程度の評価しか取れていないのだ。

ところがこのシステム、ETCとナビを買い換えなければ完全には使えない。
1000円以下どころか数十万円かかるのだ。

さらに事態を絶望的にしているは、ETCの普及率。ETC車載器はまだ右肩上がりで伸びているが、飽和は近い。
ETCのコアバリューはノンストップ料金支払いなので(注)、DSRCサービスが始まったからといって新しい機械に買い換えるユーザーはきわめて限られるだろう。

以上のようにITS車載器構想はきわめてハードルが高いと見るべきなのだが、どうも都合の悪いところは皆さん恣意的に無視をしているように感じる。

この項、もう少し続けよう。

(注)こう書くと、携帯電話のコアバリューは最初は通話だった、というような反論をする人もいるだろうな。でも、DSRCサービスに携帯メールのような潜在的な大市場はないと思う。

スマートウェイ2007 その4

2007年10月19日 | ITS
スマートウェイ2007のシンポジウム、午前の部の最後はパネルディスカッションだった。参加者はITSジャパン天野氏、モータージャーナリスト岩貞氏、首都大学大口教授、レーシングチーム監督中嶋悟氏。司会はJAFmate編集長の鳥塚氏。

まず、各人からはじめの言葉があったのだが、ここでいきなり推進側のITSジャパン天野氏から衝撃発言が飛び出した。衝撃発言といっても、静かな語り口だったのでそれとはわからない方も多かったと思う。

ご発言の趣旨は
ETCが普及した、それ(DSRC)を他へ応用したいということで、その為の検討をすすめて技術の標準化は完了し、2年前に実用フェーズに入った。
ITS世界会議でもデモを行った。
今回は首都高速でインフラ協調大掛かりな実験をし、60%強の被験者からポジティブな評価をもらった。
(このアンケート結果もかなり恣意的なのだが)
と、ここまでは成果について語られた。

ここからがポイント。
天野氏はここで話を切ることも出来たはずだが、敢えてこの先をお話しされたのだと思う。

この首都高スマートウェイサービス実験のアンケートでは、付加価値とそれに見合う対価を聞いているのだが、ほとんどの被験者が「1000円以下」と答えている。
これは、現実的にはこのサービスを付与しても機器の価格を上げることが出来ないことを意味している、と天野氏は指摘する。

その通りだろう。

したがって、現在既に普及している機器でそれが実現するような仕組みを考えなくてはいけないのかもしれない、と氏は言う。

そして、話はここで終わってしまう。
これ以上の結論が現時点では用意できないのかもしれない。
あるいは、各方面への配慮からこれ以上の意見はあえて抑えたのかもしれない。

つまり、こういうことだ。

今回の構想、国交省が相当に力を入れている。
e-Japanから繋がる国のIT戦略にITSは名を連ねている。そのITS政策の中で、何とか物になりそうなのがこの通信を活用した安全技術なのだ。
今回スマートウェイ2007の目玉、というか唯一の成果物として紹介されているDSRC・ITS車載器によるインフラ協調システムは、ITS-Safety2010という名前で来年の大規模実験を経て、2009年春にはお台場をモデル地区として大々的に展開する計画になっているらしい。

そのためにはITS車載器と呼ばれる多機能ETCの商品化、普及が不可欠になる。

今回のスマートウェイ2007でもETCメーカーは全社、実験に協力するために試作・製造したITS車載器の展示を行っていた。

しかし、その付加価値を消費者は金銭的に評価しない、というのだ。

メーカーは売れないものを作るわけには行かない。
というか、付加価値分を評価されないとなると、コストアップ分を吐き出して販売をしなければならなくなる可能性もある。
しかも、これが国の要請ということになると、断れない。

この政策を展開することで路側機ビジネスの展開も望める大手数社は別にして、その他の会社ははっきり言って冷めていると思う。

自動車メーカーも同じだ。国の政策として標準装備のナビゲーションにITS車載器を搭載せよ、と指導された場合、ユーザーからお金を取れないコンポの装備となり、ビジネスを圧迫する。

そもそも、ユーザーからお金を取れないという時点でサステイナブルなビジネスモデルが破綻しているのだ。

天野氏はトヨタの人間である。
そうした立場で、現状の根幹にかかわる大問題を控えめに指摘されたのだと思う。

次回はこの「根幹にかかわる大問題」をもう少し掘り下げてみたい。

スマートウェイ2007 その3

2007年10月18日 | ITS
引き続きスマートウェイ2007シンポジウムの報告。
3番目のスピーカーはEUが共同出資しているCOMeSefetyでアーキテクチャWGのチェアをしているBMWのDr.T.Kosch.
ドイツ流のブツ切れ発音でちょっと聞き取りにくかったので、以下の内容は多少間違っているかもしれない。

ドイツではこの50年間、車の総走行距離は13倍に伸びた。
一方で事故件数は4倍、事故死者数は横ばい~やや減少となっている。この主たる要因はエアバッグ等、車両のパッシブセーフティ装備による。
現在、ドイツでの交通事故は86%が運転者に起因し、その多くがスピードの出しすぎや車間距離不足など、運転者のWrong behaviorに因るものだそうだ。

今回紹介されたのは交差点での事故防止システム。
信号機等の路側インフラから信号や周囲交通情報を車両におくり、車両のヘッドアップディスプレイに表示することで信号無視や左直(日本で言う右直)事故防止をねらう。
さらに車対車のアドホックネットワークも検討されているようだが、これの仕組みは今ひとつ理解できなかった。

今回はスマートウェイ2007の趣旨がインフラ協調なので、COMeSafetyとしてもそれに沿ったプレゼントなったのだろうが、本来欧州におけるITSはレーダ・センサーによる追突、車線逸脱、側方衝突などの自律系ASV検討が主体であり、路車間、車車間などの通信利用に対する検討はまだこれから、という感じである。

これをして「日本の方が進んでいる」というわが国のITS関係者は多いが、私には欧州のほうがよほど「地に足が着いている」ように感じる。

また高速走行比率の高い欧州はドライビングディストラクションに敏感なのでHMIへの関心も高い。
少なくともわが国のITS車載器のようなナビ画面への警告表示は視線移動が大きく、欧州では批判されるだろう。

東名集中工事と死亡事故

2007年10月17日 | 高速道路
スマートウェイ2007の記事の間に挟まってしまうが、どうしても言っておきたい。

恒例の東名高速道路集中工事が始まって、恒例の追突死亡事故が発生した。

勿論、渋滞の最後尾の表示やパトカー配備など、道路会社、所轄警察はできる限りのことをしているのだろうが、それでも2日連続で大きな事故が発生しているというのが現実なのだ。

渋滞末尾へ突っ込む理由は、わき見、居眠り等の理由はあるがいずれもヒューマンエラーだ。
一方、スタンドアロンのレーダによる追突防止技術はすでに確立している。

高速道路で大型トラックにノーブレーキで突っ込まれたら、まず死亡事故になる。
大型トラックの追突防止装置装着義務化を検討する余地はないのだろうか?

いつ実現するかわからないDSRC路側機+ITS車載器によるインフラ協調ITSよりも、まずはすでに存在し、明日から導入できる対策を優先するべきではないのか。

防止できるヒューマンエラーで命を落とす人がいる、というのはなんともやりきれない。

スマートウェイ2007 その2

2007年10月17日 | ITS
スマートウェイ2007の続き。

昨日の講演には午前の部しか出席しなかったが、午後の千葉工業大学 赤羽弘和教授による基調演説でこのブログが紹介されたそうだ。

申し込み時の勘違いで午後のセッションには参加が出来なかったが、とても残念。
いずれにしても光栄の至りです。
(ぼーずさん、ryokrtさん、情報提供有難うございました)

さて、昨日の午前の部、二人目のスピーカーは米国交通省(DOT)のMs.S.J.Row.
女史はDOTでITSの統括責任者を務めている。

DOTでは、わが国でいう「インフラ協調ITS」をVII(Vehicle Infrastructure Integration)と呼んでいる。

VIIの実現はまさにDOTの決定にかかっており、DOTは今後その実現性の検討をすすめているということだ。
実現のためには、路側インフラ、車載インフラのクリティカルマスが必要であり、また持続可能なビジネスモデルやそのための有益なアプリケーションが不可欠、という、まあ当然といえば当然の話があった。

路側機、車載器インフラについては北米はまだこれからであり、日本の状況がうらやましいとのこと。

とはいっても、数量的にはクリティカルマスに達しているわが国のインフラ(VICSビーコンやETC車載器)がインフラ協調ITSにそのままの形では活用できない、というのが歯がゆいが。

北米の路側インフラについては、その整備を誰(官?民?)がやるか、どのレベルまで整備するか等課題があり、広大な土地と道路延長を考えれば、いずれにしても相当な時間がかかる。

車載機器についても、今後相当強いマーケットサイドからの圧力がかかるか、若しくは法規による強制がない限りカーメーカーが搭載することはなく、これもハードルは高そうだ。

さらに、継続的なビジネスモデル構築の重要性についても言及されている一方、それが明確に何であるかについては現時点では不透明であるように感じた。

ということで、DOTはVIIの可能性について継続検討し、2010年までには展開するか否かの結論を出す、といっている。
筆者の感じでは、あまり積極的な拡大を前提にしている話ではないように思えた。