トヨタは2019年以降、DA(ディスプレイオーディオ)の標準装備化を進めている。
DAとは定義としては液晶画面が付いたカーオーディオをさすが、一般的にはスマホ連動機能をもち、CD.DVDプレーヤーが付属せず自身の音源はラジオだけ、というものが多い。
トヨタが標準装備しているDAはそれに加えてDCMが標準でついている。DCMは車載の通信機器で、トヨタのサービスに特化して通信が可能。
DAとスマホの連携にはアップルのCarplayやアンドロイドスマホのAndroid Autoが必要となるが、そのサービスを受けるためには別途33000円が必要だった。さすがにこれは評判が悪く、現在は標準装備となっている。
このトヨタのDA標準装備化は極めて評判が悪かったようだ。
中高年にはスマホ連動のハードルが高いし、スマホを使いこなしている人にとってもいちいちスマホを接続する面倒がある。スマホナビの地図案内には問題も多い。Googleはすれ違い出来ない対面通行路を平気で指定する。さらに車速連動しない等、やはり車載ナビよりは劣る。
筆者もandroid Auto対応の車にのっているので使ったことがあるが、やはり使い勝手はよくないとおもう。
さらにいえば、AndroidoAutoもCarPlayも、スマホと車で何か特別なことができる仕組みではなく、逆に安全のために車内でスマホを使えなくようにするデバイスであり、使えるアプリはほんの一握りだ。
しかしトヨタはこのDA標準装備を強気で進め、従来あった「オーディオレス」仕様をなくしてしまった。オーディオレス仕様とは、市販のナビを装着するユーザー向けのものだが、オーディオレスがないことに加え、このDAは外して市販ナビに交換することもできない。
市販ナビは実はディーラーにとっても大事な収益源であったことから、ディーラーからもかなり反発があったようだ。
車載ナビを求める人用に純正ナビユニットが別売されていて、どうやらこのDAには純正ナビユニットを付けたほうが良いらしい。まあ、液晶画面が最初からついている車だ、と思えばそれはそれで納得できる話かもしれない。
さて、トヨタはなぜDAの標準装備を強行したのだろうか?
一つには、純正のアドオンナビしかつかない=利益が社外に流出しない、という囲い込み。
そしてもう一つは冒頭にかいたDCMにある。DCM付き車=コネクテッドカー、といってもいいだろう。世の中では今後車はすべてコネクテッドになる、といわれている。
DCMがついているとトヨタは車両情報を受け取ることができる。車両の状況をメーカーが把握し、必要なサービスをご案内する、といえば聞こえはいいけどこれは完全なアフターセールス囲い込み策。結局のところ狙いはそこなのだ。
ではDCM付き車両、いわゆるコネクテッドカーのユーザーにとってのメリットとは何なのだろうか?
実はここがコネクテッドカーの弱点なのだ。リモートでドアロック解除とか、盗難時の追跡、事故発生時の自動通報等のメリットがあげられるが、正直どれもないと困るようなキラーコンテンツではない。なぜなら、どれ一つとっても日常使う機能ではないからだ。万が一に対する出費は相当な説得力がないとなかなかむずかしい。
要するに、ユーザーに対価を払ってもらうのは厳しいのならば標準でつけてしまえ、ということなのだ。コネクテッドに関するサービスは3年間無料、それ以降は年間使用料がかかる。