ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

スマートウェイ公開実験

2006年02月28日 | ITS
去る24日、つくばにある国交省の国土技術政策総合研究所でスマートウェイの公開実験が行われた。
内容は主にDSRCの応用による路車間通信で、おなじみの「カーブ先情報提供」「道の駅駐車場情報提供」「公共駐車場ノンストップ通過」などだったようだ。

昨年7月に(社)土木学会・実践的ITS研究特別委員会がまとめた

「道を使いこなすITSへ(中間レポート)」

が配布されたようだ。
これについては、当時このブログでも言及している。

このレポートは改めて読み返しても総論としては的を射ているとおもう。
ハイテクで何が出来るか、というシーズ発想をもとに消費者ニーズの確認を怠ってきたツケが、「ITSの停滞」などという表現に代表される現状を招いている。

消費者ニーズに対する掘り下げが足りない、という叱責もあるが、私はそうは思わない。
もともとビジネスとして成立するような消費者ニーズはないのだ。
わが国以外のすべての国において、ITSはビジネスではなく公益事業だ。
そして、どう考えてもそっちのほうが自然なのだ。

走行中の車に宣伝を配信する等という、欧米の関係者が聞いたら殆ど冗談としか思えないビジネスモデルが真剣にまな板の上に乗せられていたのだ。ITSが交通安全を阻害してしまったら、それこそ本末転倒だろう。

レポートに戻るが、そういった意味で公益にフォーカスしよう、という提案は極めて正しい。しかし、その各論としての内容は、緊急災害対策とか、地方の過疎対策とか、モーダルシフトといった、読みつづけるのが退屈になってしまうものばかりとなってしまっている。

こうした対策が不要だというつもりはない。しかし、時代の寵児のごとく華々しく語られてきたITSの具体的なアプリケーションとしてはどうにも地味だし、局地的だ。

結局、そういった地道な改良の積み重ねが社会にとって必要であり、ITと通信がすべてを魔法のように解決する、というような夢をみてしまったことが間違いなのだろう。

P-DRGS ビジネスモデル化の課題

2006年02月27日 | ITS
P-DRGSがいかにビジネスモデルとして立ち上がるか、を語る前に、もういちどプローブについて考えよう。

一般にプローブカーというと、車両の情報を常時接続のような形でデータセンターに流しつづけるようなイメージを持つ。

速度情報のほかによく言われるのが「ワイパーの作動で降雨情報がわかる」「エアバック展開情報で事故発生が即座にわかる」「急ブレーキ(ABS作動など)で事故もしくは事故発生に近い情報がわかる」などだ。

エアバック展開については否定しないし、急ブレーキ情報が後続車に伝わることも安全向上に有効だろうが、いつも出てくるワイパーの話は、よくわからない。一体誰がそんな超局地的な降雨情報を必要とするのか。
路面状況を把握し交通安全に寄与する、という人もいるが、雨が降ってきたら速度を落とせばいいだけのことで、事前に知っておく必要は全くない。
「何がニーズか」ではなく、単に「何が出来るか」というだけのことだ。こうしたシーズ発想からくる思い入れの積み上げがITSを実体のない化け物にしてしまったのだと思う。

まあ、それはさておき、速度情報である。

実際のリアルタイムな速度情報を取るまでもなく、100メートルごとにセンサーを設置し、通過する車両のIDを取るだけで交通の流れはほぼ把握できる。
常時接続が不要なら、車側のインフラはすでに装備されているETCで賄えるはずだ。

となると、解決するべき問題は

1.ID情報を料金所以外で提供することへの抵抗をどうするか?
2.路側インフラ整備の費用負担をどうするか?
3.渋滞情報の提供メディアを何にするのか?
4.そして、ビジネスモデルを考える上での根幹であるが、その課金はどうするか?

である。

ITSビジネスモデル化 残された一縷の望み(2)

2006年02月26日 | ITS
ITSを「ビジネスモデル」として成立させるための最後の望みはP-DRGSだ、と書いた。

ドライバーがカーナビに求めるものは、目的地に迷わず早く到着することである。
極めてあたりまえの話だが、これには強いユーザーニーズがある。

それ以外のカーナビ機能はすべて付帯機能であり、差別化競争でエスカレートしているがそれらは決してキラーコンテンツではない。結局基本性能が勝負を決めることになる。

たまたま今日の「鉄腕ダッシュ」で、カーナビとタクシー運転手の渋滞回避競争が放送されていた。トヨタがスポンサーであることもあり、G-BOOKの宣伝も怠りなくされていたが、長瀬がトイレに行きたくなりオペレーターから近くの公園を聞く、という場面には無理があった。普通は聞くまでもなくナビ画面ですぐ見つかる。

いずれにしても、この番組でも焦点は「いかに渋滞を回避するか」、ということだ。

そういう意味で、P-DRGSはITSにまつわる夢物語の中で唯一「ユーザーが対価を支払う価値のある」コンポーネントになる可能性を持っている。

現在のVICSの精度が満足する域に達していないことは、誰もが感じている。タイムラグと、対応地域の問題だ。

P-DRGS(Dynamic Route Guidance System:頭のPはプローブ?)はP-DRGSコンソーシアムという産学連携団体(トヨタ系、といえそうだが)が研究を進めている「車から情報を集め、その情報をセンターで処理し、予測を含めて車に提供する」システム。

プローブによる情報収集はすでにホンダのインターナビで実施されているが、P-DRGSでは(WEBサイトにも明記はされていないが)DSRCによる情報収集を視野に入れている。ID情報を含めた車両情報を読み取る路側機を数百メートルおきに設置すれば、車の流れに関しては十分な情報が取得できるようだ。
この情報と、既存のVICS情報などを組み合わせて処理し、蓄積データからの予測を含めて渋滞情報を車に流す、というもので、現在のVICSに比べて渋滞回避性能が格段にアップすることは間違いないだろう。

問題は、これをいかにビジネスモデルに組み立てていくか、である。

ITSビジネスモデル化 残された一縷の望み

2006年02月25日 | ITS
ITSが「ビジネス」として成立しなさそうだ、ということはすでに官民の関係者にはうすうすわかってきていることだろう。
そのなかで、最後の望みとも言えるものがDSRCサービス利用と動的経路案内システム「P-DRGS」だ。

実際、ITS情報通信システム推進会議はその年一回のシンポジウムで一昨年はDSRC,昨年はP-DRGSをメインテーマに据えている。

この二つのビジネスのについて考えよう。

このブログで一貫して指摘してきたことだが、DSRCサービス利用は絶対に開花しないだろう。

ひとつ例をあげよう。
上記シンポジウムで女性モータージャーナリストの岩永るみ子氏が
「女性は便利に敏感でおっくうはいや。特に駐車場の料金所など苦手でおっくう、といった意識を持つので、女性へのアプローチとしては有効と思われる。」
と発言されている。これを聞いて心強くした関係者もいるかもしれない。

しかし、車で仕事をしている一部の方を除いて、女性ドライバーが頻繁に有料駐車場を利用するケースは少ない。ロードサイドのショッピングセンター等は基本的に無料だ。
そして、それ以上に重要なことは車載器の価格だ。
一般に女性は「ハレ」の出費に対しては男性よりも財布の紐がゆるい。しかし日常的な出来事に関しては「便利」よりも「価格」に敏感だ。
パソコンの多少の不便を解消すために男共が買ってくる5千円程度のガラクタは、必ず無駄使いといって責められることになる。

一縷の望みはP-DRGSだ。
しかし、これについてはそのビジネスモデルを相当慎重に進めていく必要があるだろう。

首都高へのDRSC路側機設置

2006年02月20日 | ITS
DSRCサービスの促進のため、国交省は首都高速に路側機の設置を進めるらしい。
路側機が発信する内容は不明だが、いままでの流れから見て参宮橋実験のような安全走行情報だろう。

参宮橋実験はDSRCサービス対応のETCが存在していないため、ビーコンナビで行われた。そういう意味では、別にDSRCなんかにいかなくてもビーコンナビで良いじゃないか、という見方もある
まあこれは「ビーコン対応ナビのこれ以上の普及は難しい」というのが答えかもしれない。

しかし、ここではっきりさせておかなければならないのは、なぜビーコンが普及しなかったのか、ということだろう。
やはり、路側表示と大差ない内容をナビ画面に映し出されてもあまり価値がない、ということに他ならないと思う。
まさにこれが参宮橋実験の矛盾点なのだ。

なぜ路側表示では駄目なのか、ということに対する回答がない。

パタヤとロシア人

2006年02月17日 | ITS
先週末からタイのパタヤにいた。
近郊の工業団地に仕事があり、せっかくなのでリゾートホテルに滞在していた。

驚いたことに、いまパタヤはロシア人に占領されている。
ベトナム戦争の保養地としてアメリカ人が作り、その後を日本人とドイツ人が引き継いできた。
最近はもっぱら欧州系ファラン(白人)の歓楽地となり、あまり日本人観光客は訪れない。
そして今、ロシア人の避寒地となっているのだ。

食堂にはロシア語メニューがあり、ホテルにはロシア語の表示と衛星放送、最新ショッピングセンターのフードコートにはロシア料理の屋台まである。

残念なことに、ロシアの人たちにその他の欧州人のようなポライトネスはあまり期待的出来ない。
プールサイドのベッドを取ったといって大声で怒るばあさんや、白人価格を拒否しタイ人タクシードライバーと10バーツ(30円)のことで喧嘩、というような光景をしばしば目にした。

もちろん全員がそうだと言うつもりはないが、そういった揉め事があったときに聞こえてくるのが常にロシア語だったのは事実だ。

物価の安いアジアのリゾートは今後ますますロシア人であふれていくのだろう。

神戸空港開港 なぜ止められないのか?

2006年02月16日 | ITS
北東25キロに伊丹空港、南24キロに関西空港という立地に神戸空港が開港した。
市民の過半数が不要だといい、殆どのマスコミがその採算に疑問を呈してきた問題プロジェクトが実現してしまった。
田中康夫氏によるキャンペーンなどで一時はかなり世論も騒がせたが、結局はできてしまう。
市営空港ということで、破綻した場合は市の財政で面倒を見なくてはならないらしいが、推進派市長を当選させてしまったわけだから、これは仕方がないのだろう。

これほどその「あやうさ」がわかりやすい話でも、官が主導し、税金で作るプロジェクトは止めることができない。
「市民の所得増大効果は3000億円で、建設費に匹敵する」「建設費は空港周辺の土地の売却で賄う」などということで進めたらしいが、空港周辺の土地は全く売れていないらしい。空港周辺は便利だから企業を誘致できる、というような話らしいが、それが事実なら東京でも大企業が蒲田あたりに引っ越しているはずだろう。

経済波及効果や、民活に頼ることでの税負担なし、という青写真を提示するあたりはITSプロジェクトに似ている。ITSのようにその実体が今ひとつわかりづらく、かつ交通安全のような誰もが否定できない旗印があるプロジェクトは、表立った反対運動も起こらない。困ったものだと思う。

多機能ETCのサクセスストーリー

2006年02月10日 | ITS
多機能ETCについて色々とネガティブな意見を述べてきた。

一方で、仮にそれが成功するとすれば、以下のようなシナリオしかないのだろう。

ナビメーカー主導で、市販の高機能ナビの付加機能として導入。コストアップ分は、そもそも高価な高機能ナビのなかに埋め込んでしまう。
付加価値に決定的なキラーコンテンツはないが、「あったらいいな」レベルの機能をいろいろ並べ立てて訴求する。
それが成功すれば、ある程度の市場普及はあるかもしれない。それに伴って、ゆっくりと事業者側の設備設置がすすんでいくとともに、普及タイプナビにも装備が進む。

官も路側サービスで道路情報などの支援をし、カーメーカーに対しても非公式に装備採用を依頼する。

ゆっくりとではあるが、DSRCサービスが普及していき、最終的にそれ自身がキラーコンテンツではないにしてもETCの付加機能として不可欠なものと消費者に認識される。

次世代車載器と4Mbps

2006年02月09日 | ITS
さて、次世代のETC(DSRC)車載器は4Mbpsの通信速度をもつらしい。
車両のID情報をやり取りするようなアプリケーションや、簡単な画面を表示するようなアプリケーションなら、現行ETC専用機の1Mbpsで十分だ。

4Mbpsで何が出来るのか?

真っ先に上げられているのは、動画や音楽データ配信である。
たとえばコンビニの駐車場や高速道路のサービスエリアで動画や音楽をダウンロードし、ドライブ中に楽しむ、といった使い方だ。

ありえないことではないと思う。

しかし、おそらくこれ自身が多機能ETCのキラーコンテンツになることはないだろう。
レンタルDVDもあるし、多少手間をかければPCでダウンロードしDVDに焼いて車で観ることがすでにできる訳だからだ。
また、音楽に関してはHDDナビのサーバー機能のほうが安くあがり、都度有料のコンテンツは厳しいかもしれない。さらに携帯もコンペティターだ。

まあ「ETCに機能としてついていたら使うかな」という感じだろう。

しかし、これとて無線LANの動向如何でまったく不透明だ。
更に言えば、地デジでクリアな画像が走行中も提供されるとすれば、有料コンテンツの可能性は低くなる。

ITSスマートモールって何だ?

2006年02月08日 | ITS
ITSスマートモール検討会が地デジの双方向機能を活用した地域情報、駐車場情報配信の社会実験を実施している。

ITSスマートモールについては、リンク先に説明があるが、あまりピンとこない。

要は、商店街を歩くときに商品の特売情報をなんらかの手段で携帯端末に送る、ということのようだが、なぜそれがITSなのか、さっぱり理解できない。駐車場がからんでいるからなのだろうか。

地上デジタル放送、DSRC、携帯電話、MCAシステム、電子タグ、無線LANなどを有機的に組み合わせた実験システムを構築するということだが、生活者にとって必要なサービスなのか、というのが良くわからない。

生活するなかで、商店街でプッシュ型の情報が必要な場面ってどれほどあるのだろう。
大抵は勝手知ったる街での買い物だろうし、それ以前の問題として最近は商店街というよりは大型商業施設だろう。

駅前ビラ配りのハイテク化ってこと?

給油所におけるサービス

2006年02月07日 | ITS
給油所でのサービスについて、もう少し。

DSRCでCRMをし、来場した車のコンディションに応じたサービスを提案できれば、顧客満足にもつながるし収益増にもなる、という主張がある。

しかし、最近の車は言うほどメンテナンスなんて必要ないのだ。
わが国は走行距離が短く、車検制度が完備しているため、大概のメンテナンスは車検時でまかなえる。

車検よりも頻度が高いのはオイル交換ぐらいだろう。
しかし、そもそもオイル交換にしたって、さほど頻繁に行う必要はないものなのだ。
極論すれば、オイルが入っていればエンジンは回る。その証拠に、オイル交換をサボったから車が壊れた、という話は聞いたことがない。
確かに古いオイルはピストンの消耗を早くするが、通常の自家用使用では全く問題ない。また、オイルの新旧でピストンの摩擦係数がちがう、などといっても、ベンチで計れば数馬力という違いで普通のドライバーには殆どわからない。「いや、確実に良くなった」というのは、いわゆるブラシ-ボ効果だ。
価格の高いオイルほど、その効果は高い。

「オイル交換は5000キロごと」と、カーメーカー、石油会社、給油所など業界が一丸となって消費者に呪文をかけてきた。その呪文はもはやカーメーカーにも解くことは出来ないようだ。
最近のBMWなどは組み立て工場で合成油が入っている。これは2万キロ無交換の高級オイルである。しかし、インターネットをみていると「やはり初期は金属カスが発生するから」といって、メーカーのいう2万キロを信じないで1000キロで交換しちゃう人がいる。
しかも、工場で充填された合成油よりも性能の劣る鉱物油に替えていたりするから面白い。
部品の精度がでなかった大昔は別にして、「初期の金属カス」は迷信だ。

話が横道にそれてしまったが、いずれにしてももはや車は頻繁にメンテナンスを必要とするものではないのだ。

給油所における来店客へのメンテナンス提案というビジネスを否定するつもりはないが、DSRCサービスを導入してまで割にあるのか、ということは大いに疑問である。

そもそも多機能ETCとは?

2006年02月07日 | ITS
ここしばらく、次世代のETCについて書いているが、そもそも多機能ETC、DSRC車載器等、その定義は実はあいまいである。

DSRCを活用したサービスを利用できる車載器をDRSC車載器と呼ぶなら、ETCもDSRC車載器である。
しかし、通常DSRC車載器というとETC以外のDSRCサービスを可能にする機器を指している言い方であろう。

また、高速道路料金決済以外のサービス機能をもつETCを多機能ETCと呼ぶようだ。

これら、高速道路決済以外のサービス機能をもつETCを次世代といっているのか、というと、ちょっと難しい。
現在のETCは伝送速度が1Mbpsだが、本来は4Mbps対応機を次世代と称するのだろう。

しかし、いま具体的に語られているアプリケーションで現実的なもの、たとえば駐車場利用などに関しては、4Mbpsという速度は不要だ。

私には走行中の車に対して動画を配信できるようなスピードの通信が必要だとは思えないのだが。

CRMを疑う

2006年02月05日 | ITS
IBA(ITS事業企画)小池社長はそのインタビューで、DSRC車載器のCRM活用の可能性について言及している。

特に給油所の顧客囲い込みに有効、ということであるが、本当だろうか?

顧客が給油所を選択するポイントは立地と価格だ。
そのバランスから、通常使う給油所を選定する。

果たして、その給油所に顧客管理をしてもらう必要はあるのだろうか?
「最近ご来店が少ないですが、いかがしました?」といわれても、燃料計がEに近づかなければ給油所へいく必要はない。

洗車や整備という、業界用語でいう「油外収入」の獲得には顧客管理が重要だ、というが、どうも最近の給油所は油外収入を獲得するよりも、セルフ化でいかに効率よく油のお客さんを処理するかに主眼が移っているように感じる。

大体、CRM(顧客管理)というのはITと同義語ではないのだ。
台帳と手紙でもCRMは出来る。ITでやれば、楽にモレなく出来る、というだけだ。
もともと顧客を管理する意思のない事業者は、ITを導入したってCRMなんかしないものだ。
CRMを導入して失敗するケースはすべてこれである。

もうひとつ。給油所に入ると車載器が「オイル交換の時期です」とか、「車検は当店で」とか表示されるとしたら、それは「広告」であり、だれも「便利なサービス」とは思わない。この機能がついているからといって、割高な車載器を買ってくれたり、会費を払ってくれる消費者はそれほどいないだろう。
費用は事業者側負担となるが、果たしてそれに見合う収益があるのか、ということだ。

IBA社長のインタビュー

2006年02月04日 | ITS
レスポンスにIBA(ITS事業企画小池社長のインタビューが掲載されている。

苦しい答弁、と感じるのは私だけであろうか?

IBAサービスのチャンスとして紹介されているロードサイド店の無料駐車場の管理であるとか、来店したお客様の携帯に広告メールを自動発信するとか、給油所のCRMだとかいった内容は消費者、事業者双方にとって投資に値するほど魅力的なサービスだとはとても思えない。

また、ユーザーがETC専用機から多機能ETCに買い換えるのか?という問いには

「IT技術は単機能から多機能・高性能に流れるのが常です。世界的にも単機能から多機能化に進む傾向が見られますし、今後、普及していくと思います。白黒テレビがカラーテレビになっていくようなものですね。」(引用)

という、説得力のない回答となってしまっている。
はからずも氏はテレビを引き合いに出したが、今までいろいろなことが言われながらも未だにテレビは「番組を見る機械」以外の機能を必要としていない。

ITは必ず多機能になる、などという消費者ニーズを無視したような物事の考え方はもうそろそろやめたほうがいい。

迷走するDSRC

2006年02月03日 | ITS
正月の日経では、松下、三菱電機が夏には多機能ETCを発売、とかかれていたが、実態はかなり厳しいようだ。

ETCの普及は昨年末に1000万を超え、今年も500万近くの増加を見込んでいる。
このETCは、高速道路料金決済専用機であり、多機能ETCではない。

2006年末には1500万ユーザーが、高速道路料金決済専用ETCを装着してしまうのだ。
このユーザーが「駐車場がノンストップになる」と言う理由で車載器を買い換えることは全く期待できない。

更に悪いことに、ETCは車を買い換えても機器を付け替えて再利用するユーザーが多いのだ。それはそうだろう。料金所をノンストップで通過するための機械であり、性能・デザインやそれ以外の付加機能には殆ど価値がないので、古い機械を買い換える意味がないのだ。したがって、車の買い替えをきっかけに新型へグレードアップする、というのもあまり期待できない。
 (標準装備のナビとインテグレートされれば、別だが)

一方、仮に日経の言うとおり今夏に多機能器が発売されたとしても、通常のETCに比べて相当割高になる。
しばらくは使い道もない機能に対して対価を払うユーザーはいないし、仮に将来追加されるであろう機能も、駐車場ノンストップという程度の利便では、精々500円~1000円のプレミアム評価だろう。

つまりこれを市場に普及させるためにはコスト割れで販売しなければならないのだ。
通常の経済原則に基づけば、成立しない話であり、官によるなんらかしらの動きがない限り、民は動かないだろう。

そこで官がまず動き出しているが、その内容が公共駐車場への機器設置や道の駅駐車場での情報提供では、殆どインパクトがない。

結局、官としては物になりそうな(あるいは税金を投入しても文句がでなそうな)カーブ先危険回避やVICS渋滞精度向上というあたりを攻めていくしかなくなっている。
しかし、それでも多機能ETCの価格プレミアムとしては不十分だ。
もはや、多機能ETCは機器売価に対する官の助成が必要だ、という議論まで出ている。

なぜこんなことになったのか?
それは、「ETCはITSへと進化する」ということが既定事実となり、誰もそれを見直すことをしないからだ。
単純な民間のプロジェクトであれば経済原則に基づく経営判断がはいるが、官民共同プロジェクトは往々にこうした落とし穴にはまる。

ここはひとつ原点に返って、「ETCは料金所をノンストップで通過する機械」ということで終わりにした方がいいと思う。