ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

バルミューダフォン値下げ

2022年04月08日 | モバイル・ウエアラブル

いろいろ話題をふりまいてくれたバルミューダフォンですが、3月初めに25%を越える値下げを発表しました。
これは何を意味するのでしょうか?

商品はその総利益が最も大きくなる価格を設定します。総利益は数量x利益で、当たり前の話ですが価格は安い方が数量は出る、ということなので総利益が最大となるようにうまいところでバランスをとって価格は設定されるものです。

おそらくバルミューダフォンの最初の定価10万円+もそうやって決められたんでしょう。一部の人はバルミューダのブランドバリューがあるから高めの価格設定をしたのだろう、といっていますが、多分違います。バルミューダは30億円の開発費をかけた、という話がありました。
それを製品コストに上乗せして回収するためには、10万台販売するとして一台あたり3万円。ハードウェアのコストよりこの開発費の割り掛けのほうが高いのではないでしょうか。

こうした開発コストの割り掛けが大きく乗っかってる商品は、販売が計画を下回ると非常に面倒なことになります。開発費を回収できず、損費を計上しなければならなくなります。

そうした事態に陥ると、まず考えることは「利益は吐き出してもいいから開発費だけは何とか回収しよう」ということでの値下げです。
今回の値下げはそうしたことかもしれません。

さて、ここで一つ考えなければならないことがあります。

バルミューダフォンはすでに27億円を売り上げており、それは実は計画を上回っている、ということです。
あれだけボロカスにいわれている商品が実は販売好調?
いや。そうではありません。この売り上げはソフトバンクへの初期分の卸売り(おそらくは3万台程度)で、消費者への実売ではありません。

もしこの初期ロットが多少計画を下回ったとしてもそれなりにさばけているとしたら値下げなんてするバカはいません。在庫を抱えて相当困っている、と見るべきでしょう。
しかし、定価10万+だったのでソフトバンクはおそらくその8掛け程度で仕入れているのではないでしょうか。スマホ業界の価格建てをしらないのでこれは想像です。
まあ、多少の差はあったとしても、25%定価がさがってしまったら赤字販売を余儀なくされます。通常そんなことは受け入れられるはずがありません。
おそらくはバルミューダからソフトバンクに対して何らかの補償が出ているのでしょう。

しかしバルミューダさんの苦労はこれで終わらないでしょう。
なぜなら、あのスマホは7万円台でもまだ値ごろを外しているからです。10万でも7万でも売れ行きはあんまりかわらないのではないかとおもいます。

おそらく売れ行きを向上させるための値ごろ感は2-3万円ってところではないでしょうか。
好みは人それぞれですが、私個人はあのスマホ、ただでくれるといっても10万円出してiPhone買うほうを選びます。

寺尾社長はバルミューダフォンが発表されて酷評をうけたことに心底驚き、しばらく落ち込んでいたらしいですが、この商品が本当に売れると思っていたとしたら絶望的にセンスがないし、センスというのは先天的なものなのでもうこの先しばらくはトースターに専念したほうが良いのでは、と思いますね。


日本のキャッシュレス、スイカが実は足かせなんじゃないか

2022年04月07日 | モバイル・ウエアラブル

新500円玉が自動販売機で使えない問題というのが発生しているようです。対応するのに費用が掛かるし、それ以前に半導体不足で対応ができないということで結構な自販機が新500円玉使えません、状態のようです。

そうはいっても最近の飲料自販機はたいていスイカなどの交通系キャッシュレス決済機能(以下、Felica)がついていて、この先2024年には新札もでるしいっそ自販機なんかはFelicaだけにしちゃえばいい、という議論もあるかと思います。

日本におけるキャッシュレス決済はFelicaが先行しました。この手の「近距離無線通信」は入門証カード等で一般的で、NFCと呼ばれて世界中で使われています。
FelicaはNFCの一種ですが、日本独自規格で実は日本と香港でしか使われていません。一般的なNFCより高速で信頼性が高いのが特徴です。
実際私も上海では交通カードという一般的なNFCのカードを使っていましたが、読み取り速度、精度ともスイカより劣るものでした。
しかし、日本独自ということが足かせにもなっています。この手の技術で先行するけど、主にコストの問題で世界スタンダードにならない、ってのは日本のお家芸ですね。

でも、ここでお話ししたいのはFelicaがグローバルスタンダードにならなかったということではありません。それはそれで残念なんですが、NFCには限界があるんです。

日本でもQRコード決済が普及してきましたが、中国ではAlipayとWechatpayの2つのQRコード決済が主流です。
これに対して、Felicaのほうが「手軽、早い、セキュリティに勝る」のですぐれている、ということを言う人がいますが、そんな単純なことではありません。

中国のQRコード決済は商店での会計に加え、通販決済、公共料金支払い、自転車、モバイルバッテリ、マッサージ機等のシェア、自動販売機、タクシーの配車から支払い、レストランの予約、注文から支払い、高速道路支払い、駐車場、出前の支払い、友人同士の割り勘等、ほぼ生活のすべてをカバーしてます。完全に「エコシステム」が構築されており、レジでの決済はその中のごく一部に過ぎないのです。
この環境は経験しないとわからないと思います。レジでの支払いだけを切り取ってキャッシュレスを語ってもあまり意味がありません。

Felicaに限らず、NFCの場合はリーダーが必要になります。基本的にはリーダーが設置された設備での支払いにしか使えません。拡張性がないんです。一方QRコードは表示するだけでいい。中国では物乞いがQRコードを表示している、と話題になりましたが、そういうことなのです。

日本はFelicaが先に存在し、レジでの支払いに関しては早く便利だからQRコード決済が普及しない、したがって生活全般に拡張できない、という残念な状況になっています。


さらにQRコードもXXペイが乱立し、エコシステムどころではありません。店によって使える使えない、なんてのは論外です。
単なる顧客囲い込みだけを目的とし、生活のすべてをカバーするエコシステムを構築するというビジョンがないXXペイはさっさと市場から退出するべきでしょう。