ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

スーパー第三世代

2004年12月31日 | ITS
31日の日経朝刊トップによれば、次世代携帯(スーパー3G)の規格統一に関して、ドコモ、ボーダフォンを含む世界共通に・日米欧中26社が合意したという。

スーパー第三世代は光ファイバー並みの高速大容量サービスが実現される。
これはITS・テレマティクスにどのような影響を及ぼすのだろうか?

高速通信は地図データをダウンロードし都度更新する、いわゆるオフボードナビに有利に働く。
オフボードナビは常に最新の地図データを使えることと、ローカル(車内)に大きなデータを置かなくてすむことが有利な点だ。
一方で、使うたびに通信料がかかるというデメリットがある。消費者の心理としては都度利用料や通信料がかかる仕組みは、例え少額でも敷居が高い。
従って、通信料や利用料は一括で商品価格に組み込んでしまうというやり方が行われている。

スーパー第三世代は、ナビゲーションを一変させるのだろうか?
私はNOだと思う。理由は、オフボードナビは現在のナビの仕組みに大変化を起こさせるようなメリットがないからである。ローカルに光学ドライブを備えてDVDの地図データを読み込む方式に、ユーザーの大きな不満はない。地図データが最新でなければ困るという状況なんてほとんどない。
また、オフボードにしたからといって、圧倒的なコスト低減が出来るわけでもない。今の仕組みを根本的に変えるほどの要因はない。

高速通信がクルマにもたらすもう一つのメリットは、画像・音楽データのダウンロードだ。
これの方がビジネスモデルを構築しやすそうだ。ビジネスチャンスがある以上、著作権料の扱いなどはいずれ片が付くだろう。
しかし、クルマがダウンロードするわけではなく、携帯がダウンロードするわけで、ビジネスチャンスはテレマティクスというよりはクルマとケータイのインターフェースをどう作るかにかかってくるのだろう。

スーパー3G携帯は今の携帯とは様変わりしていると考えた方が良いだろう。それ自身、i-podの様なHDDプレーヤー機能や、映像ビュワー機能を持っていることは間違いない。
こうした携帯を持ちながら、敢えてクルマに似たような機能の通信装置を埋め込む必要はないだろう。車の中はあくまで生活の一断面にすぎないのだから。


生産性本部のITS提言を批判する その2

2004年12月28日 | ITS
生産性本部が発表したITSの普及・発展による「知的交通サービス」の実現に向けてという提言についての批判を続ける。

政府または地方自治体への提言として「ETCの積極的な活用」を呼びかけている。
「交通政策の観点から、ETC をTDM(交通需要管理)実施や社会的費用に応じた料金徴収等に活用できる。そのように、政府や民営化された場合の各道路関係4公団も含めて、ETC を料金政策の一環として活用すべきである。」

「ETC が交通円滑化のためのインフラと考えるならば、道路や路側の機器だけではなく車載器もインフラと考えて、車載器購入者に対する税制優遇や補助制度を、より積極的に実施すべきである。」

交通需要管理って、渋滞を緩和するために特定地域に入場する車両に課金するなどの行政による管理のことだろう。シンガポールやロンドンで行われ、日本でも議論された筈で、そのためにETCを使うなら車載器の無償配布以外にないと思うが。

で、次の提言になるのだろうが、交通需要管理やるなら全車装着が前提。税制優遇や補助制度じゃだめで、無償配布以外にない。そしてそれは今更出来るわけがない。
逆に車載器購入者へのインセンティブは現状ですらむしろやりすぎという感じがする。

最後に
「高級車のオプションでついているサービスで、例えば事故が起こった際に、自動的に警察に通報するようなサービスは安価にすれば、普通の自動車ユーザーでも利用するキラーコンテンツになりうる。
しかし、このシステムの価格は高額であることから、購入したくてもできない自動車ユーザーが数多くいるものと考えられる。人命はかけがえのないものであることから、事故が起こった際の自動通報システムの普及については、政府または地方自治体は例えば同システム購入に対するユーザーへの補助などを行うことにより、同システムの普及促進を行うべきである。」

自分の命をまもる装置に自治体補助って言うのは、ピンと来ない。
例えばエアバック付き車に自治体から補助金を出せといっているのと同じことだ。
逆にこういった事こそ、マーケットのダイナミズムに任せるべきだ。消費者が魅力的だと思う装備は実際にキラーコンテンツになるから、生産性本部に言われるまでもなくカーメーカーが戦略的な価格設定をするだろう。
いまそれをしていない理由は、そこまで消費者が求めていない事に他ならない。それに公共の補助金をだすというのは、全く意味のない提言である。

リストにあるようなそうそうたる学者が揃ってこの程度の提言しか出来ないとは、正直思いたくない。
現実性のない一般論をただ並べているだけで、実現可能な具体的方法論がない提言は何の役にも立たない。

生産性本部のITS提言を批判する

2004年12月28日 | ITS
生産性本部が12月22日、発表したITSの普及・発展による「知的交通サービス」の実現に向けてという提言について、もう少し突っ込みたい。

ITSの普及・定着を図るため今後すみやかに実施すべき提言として

まず
「ITS をより普及させるためには、官民の供給サイドが「サービスを売る」という考え方に、
考え方を大転換させる必要がある。本報告書では、ITS を「高度道路交通システム」から「知
的交通サービス」へと読み替えることを提唱する。」

ということで、最初の提言が名称の読み替え。これで何かが変わるとはとても思えない。

次に
「ITS は、官民がともに供給者となっているシステムであり、しかも、民の方は、自動車メ
ーカー、電機メーカー、通信事業者など、「業」としてITS の供給に取り組む事業者(産業)
のほかに、ITS ユーザーもまたITS の供給に不可欠である。従って、ITS の供給において
は官民のコラボレーション(協働関係)が要求される。」

これ意味判りますか? 
なんか直前にシステムと呼ばずにサービスと呼べ、っていったわりに「システムだ」と断言するあたり、なんだかなぁ。
「ユーザーも供給に不可欠」って、どういう事?何で「従って官民のコラボレーションが要求される」の? 要するに、単なる公共事業のスタンスはとっちゃ駄目で、消費者に受け入れられるサービスを提供しなさい、ということなんだろうか。

次。
「VICS 情報として公共交通に関する情報がリアルタイムに発信されれば、人・貨物ともに
インターモーダル輸送が非常にスムーズに実現することとなろう。VICS センターを管轄す
る警察庁、総務省、国土交通省は、VICS センターが公共交通情報等、幅広い情報の提供を
可能とすることを検討すべきである。」

うーん、電車の遅れや運休状況を、ナビのVICSの様に提供しろってことなのか?それだけでインターモーダル(鉄道や船舶などの交通機関を組み合わせて利用する物流)が本当に活性化するの?
専門家じゃないからわからないけど、モーダルシフトが進まない理由はもっと他にあると思う。

あと3つばかり提言があるけど、長くなるので今日はここまで。

ITS 2005年予想

2004年12月28日 | ITS
いろいろな雑誌などで2005年予想をやっている。
私もITSがらみで考えてみたい。思いつきレベルなので内容はぬるいが、勘弁。

ナビゲーション
市販・メーカー装着共にHDD化が主流となる。
一方、メーカー装着は更に拡大し、大衆車レベルでも標準装備が進むだろう。
標準装備が拡大することで、市販ナビはマニア化し、差別化の為の機能拡大が続くだろう。
同時に、中古車や軽自動車用の廉価ナビが見直される可能性も高い。
カーオーディオのたどった道をナビもたどることになる。工場装着がほぼ100%になり市場が飽和した結果、一般ユーザーは普通にいい音で音楽が聴ければ満足し、イコライザーやDSPにはあまり関心がなくなった。一方でマニアはどんどん深化している。ナビも同様に2極分化となるのだろう。
いずれにしても通信ナビが主流になる可能性は低い。

ETC
ETCは順調に拡大するだろう。高速料金所での差別感とコストを考えれば、既に十分商品的に魅力があるものになっており、新車買い換え時にはETCをつけるとことが、通常の乗用車では当たり前になる。

DSRCサービス
ETCを利用したDSRCサービスは2005年も結局パッとしないだろう。一部で始まった実験的な動きも、マーケットをドライブするような内容を実現出来ないだろう。
従って、サービス機能対応ETC自体の市場投入も、一部メーカーを除いては積極的にはならないだろう。確固とした市場ニーズ自体存在しないため、何をやってもセルフダイナミックな動きにはならないだろう。

テレマティクス
G-BOOKとCARWINGSに関しては、メーカーがインセンティブをつけてでも拡大させるだろう。しかし、これもマーケットによって牽引されるダイナミックな動きにはならない。ホンダのインターナビはこのまま順調に会員を拡大するだろう。

カーオーディオ
i-podに代表されるHDD携帯プレーヤーとの組み合わせでさらに新商品が投入されるだろう。
HDD携帯プレーヤーをストレスなくカーオーディオ機器で再生する仕組みや、アダプターが登場しそうだ。

ハンズフリー
ブルートゥースなどによるワイヤレスヘッドセットの使い勝手がもっとも優れていることが認識されるだろう。但し、電話機の対応状況と価格とがネックである。電話機への装備がすすみ、ブルートゥース機器が実売5千円をきれば爆発的に普及するだろう。
ハンズフリーはヘッドセットが主流となり、スピーカーによるハンズフリーはあまり人気がなくなるだろう。結果、テレマティクスのハンズフリー機能は売りには繋がらない。

アドバンスドセーフティー
レーダーやカメラによる車両のアドバンスドセーフティー機能は、高級車への標準装備が拡大し、価格も若干こなれてくるだろう。しかし2005年にはまだ一般的な普及には至らないだろう。トレンドとしては確実に拡大することは間違いない。

生産性本部のITSへの提言はいったい何なの?

2004年12月25日 | ITS
生産性本部は12月22日、ITSの普及・発展による「知的交通サービス」の実現に向けてという提言を記者発表した。

詳細はリンクから見て欲しいが、内容は?である。

まず、これまでITSが目覚しい普及を示してこなかったという前提を置いている。
これはまあそうだろう。国交省などが言っていた兆円規模の市場が創造されたとはとても考えられない。

しかし、生産性本部が指摘しているその原因と今後の提言は、ずれていると思う。

原因はいわく以下の4つ。
要因①:技術開発先行・ニーズ軽視の供給者側の姿勢
要因②:使い方や効果等に関する十分な情報提供の欠如
要因③:ITSの多様なニーズの認識の欠如
要因④:コスト負担についてのあいまいな原則

①から③を言い換えれば、官民ともにITSがもたらす消費者ニーズをきちんと把握せず、かつきちんと宣伝もせず、またその多様性についても鈍感だから市場が活性化しない、という感じである。
そうなのか?

私は一貫して主張しているように、もともと消費者ニーズがないことが活性化しない理由だと思っている。もし消費者ニーズがあるなら、生産性本部が心配しなくても、市場はセルフダイナミックなものだ。

ITSのSをシステムからサービスに変えよ、DSRCの民生利用を積極的にしろ、等と提案しているが、どんなサービスに消費者ニーズがあるのかといえば

以下引用
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ETCのDSRC民生応用については、ETCカードによる料金決済システムへの幅広い活用が定着し、さらにそれが公共交通の非接触ICカードと統合され、そしてさらにそれが小売店での支払いにも使えれば、多種類あるICカードやクレジットカードの収斂による「無線決済社会」への突破口としての意味合いが出てくる。
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なにが言いたいのかよくわからない。というか、単にETCカードはその他ICカードと統合するべきだと書いてあるだけで、どんなDSRCサービスに可能性があるのかには触れられていない。
ETCカードがスイカや通常のクレジットカードと統合されると何故無線決済社会への突破口になるのか、さっぱり判らない。

三菱商事&ITSでググってみたら・・・

2004年12月24日 | ITS
三菱商事のDSRC事業がその後どんな状況か知りたくて、三菱商事&ITSでググってみたら、なんと私のブログが三菱商事のプレスリリースに次いで3番目に表示されてしまった。
しかも、「かなりヤバイ」という強烈なタイトル。関係者の方にはお気の毒だが、私のせいではないので悪しからず。

罪滅ぼしに、三菱商事さんのITS事業会社「ITS事業企画(IBA)」のサイトへのリンクを貼ります。
皆さん訪問してください。

ここ!

DSRCサービスの裏側

2004年12月23日 | ITS
DSRCサービスは車載器のハード対応が必要で、チキンエッグだと指摘した。

しかし、よく考えてみればETC車載器メーカーはDSRC路側機などの機器全般を製造している。ということはDSRCサービスの普及は彼らのビジネスオポチュニティーなのだ。従ってETC車載器に売価反映なしにDSRCサービス機能を付加する戦略が成立する。
ここからチキンエッグの打破があるかもしれない。

しかし、仮に近い将来全てのETCにDSRCサービス機能が付いたとして、事業者側の対応はどうなるのだろうか?

まず、ノンストップ決済だが、営利事業者でこのサービスを採用する可能性があるのは駐車場だけだろう。
但し自発的に投資するケースは限定的だと思う。近隣の駐車場と競合により稼働が100%に満たず、差別化を図りたいケースと、百貨店のように収益性とは別の視点で顧客サービスを提供したいケースだ。

次に路側機による情報提供は、これは公共投資に限定されるだろう。民間への開放は運転の注意を逸らすという意味から許されるべきではない。なおかつ、ドライバーにとっては迷惑メールのようなものでしかなく、私はあり得ないと思っている。
問題は、この公共投資だ。
全ての主要道路にトラフィック情報を提供する路側機を設置するとなれば、かなりの規模になる。DSRC関連メーカーにとっては狙い通りのうまい話だ。

しかし、当然通行料または税金による支出であることを忘れてはならない。
通信による道路情報提供が本当にコストパフォーマンスが高く、死亡事故低減に寄与するのかを冷静に評価する必要がある。

ITSや通信といった言葉で惑わされないようにしたい。

国交省・次世代道路サービスの共同研究を公募

2004年12月22日 | ITS
国交省は次世代道路サービス提供システムに関する共同研究への参加者を公募している。
国交省 ITSホームページ
国交省 国土技術政策総合研究所

次世代道路サービス提供システムとは、まさにDSRCのことである。
まあ公募といっても、資格をみれば大手電機メーカーなどに限定される話で、ほぼ決まっているのだろう。

興味深いのは対象サービスがぐっと絞られていること。このブログでさんざん批判してきたGS、ドライブスルーやコンビニのキャッシュレス決済には言及されておらず、以下の3点に集約されている。
(1)公共駐車場決済サービス
(2)道の駅等情報接続サービス
(3)道路上における情報提供サービス

駐車場はたしかにあり得る。ETC装着の付帯メリットとして駐車場のノンストップ入退場があれば、消費者としては結構な話だ。普及のポイントは事業者側のメリットだろう。

駐車場ビジネスはいくら付加価値を向上させても総需要が増加することはない。
また、省人化も既に進んでおり、コスト面でのDSRC導入メリットはない。
しかし付加価値向上はパイの取り合いに有効である。近隣駐車場との競合がある場合は、客数増加に繋がるだろう。大手駐車場なら、数パーセントの客数増加が見込まれればDSRC決済機に対する投資の価値はある。

しかし、道の駅やSA,PAでの情報提供サービスって、いうほどあるのだろうか?施設内の掲示板以上に価値がある情報自体が存在するかどうか、私は疑問である。

道路上における情報提供は、おそらくVICSビーコンの次世代というイメージだろう。
現在のVICSビーコンは電光掲示板の表示内容がナビ画面に表示されるだけ、という感じで魅力がないが、DSRCで情報量を増やせれば、違う展開はあるかもしれない。

これらのDSRCサービスを実現するためには現在のETC車載器ではだめで、専用器が必要となる。しかし、上記程度のサービス提供では、車載器購入時に消費者がプレミアムを支払うかどうか微妙だ。
サービスがなければ、専用機は売れない、専用機が普及しなければ、サービスは提供されないというチキンエッグをどう打破するか。
サービス内容から明確なプロフィットモデルが見えてこない以上、極めて困難だとしか言いようがない。

ネット家電のばかばかしさ

2004年12月21日 | ITS
本日の日経1面で、電線ネットが2006年に解禁されるという記事があった。

電線ネットは、家庭のコンセントがつかえるので有線LANよりは使い勝手が良さそうだが、2006年までには無線LANがもっともっと普及しちゃうんだろうな、と思う。

さて、私がここで言いたいのはそんなことではない。日経いわく、「通信用の大掛かりな配線工事が不要なため、ネットを通じてエアコンや冷蔵庫などを遠隔操作するネット家電が利用しやすくなり、普及に弾みがつく」

うーん、なんかITSの話に似ている。「ETCが全てのクルマに装着されれば、クルマのネット化普及に弾みがつく」

忘れられているのは、ネットに繋いで何をするのか、だ。

日経は3面の解説で冷蔵庫をネットにつないで食品の在庫管理をするという話を紹介しているが、これなどは家事をしたことがない人が頭で考えたリアリティーのないアプリケーションだと思う。

生鮮を含めた全ての食品にICチップがつけば多少は話が変わってくるが、そうならない限り収納や使用の度にデータをインプットすることなど絶対にあり得ない。

仮にICチップが食品に組み込まれたとしても、そこまでやって家庭で得られるものがなにかを考えたら、割に合う話ではない。冷蔵庫の食品賞味期限管理なんて、主婦の直感で管理をしても7-8割は上手に回るものだ。最悪賞味期限を過ぎたって、捨てるだけのことだ。はっきり言って、ネットで管理はおおげさ。

日経の3面には洗濯機も例に挙げられていたが、ネットに繋いで何をするのだろうか?洗濯物の内容をインプットすると、それに合致した最適な洗濯メニューがネットを介してセットされる、なんて言う話を聞いたことがあるが、洗濯ってそんなに高度な技術・知識が必要なものなのか?

本当に有用なら、コンセントがつかえなくても無線LANで実現しているはずだね。

国交省・参宮橋実験への疑問

2004年12月21日 | ITS
国土交通省はAHS(アドバンスドハイウェイ)の実証実験を首都高速4号線参宮橋付近で実施する。
国交省道路局ITSホームページ

具体的には、事故多発地点である参宮橋付近のカーブにセンサーを設置し、センサーが把握した停止・低速車両情報をVICS車載器を通じてドライバーに提供することの検討を行うそうだ。
ちなみに参宮橋付近は首都高速の事故ワーストワン地点で、平成15年度に181件の事故が発生したとのこと。

私は首都高速4号線沿いに住んでいるので、この地点は良く知っている。環状線から来ると新宿の手前で大きく3-4回左右にカーブする。首都高レーサーにとっては格好のコーナーだ。

さて、この計画には大きな疑問がある。

今回の実験はVICS車載機への情報提供だという。
しかし、その先にはETC技術(DSRC)活用による路車間通信が視野に入っていると思う。

以前、国交省にとってDSRCに代表される路車間通信普及の錦の御旗が「安全」だと書いた。
まさにこれは高速道路の安全性向上の為の実証実験だ。

しかし騙されてはいけない。この実験が実証することは、見通しの悪いカーブの先にある渋滞や停止車両の情報を事前に手前のトラフィックに提供することが、事故防止に繋がるのかどうかであり、決してETC(DSRC)等の路車間通信の有用性ではない。
VICSやDSRCは単にその情報提供手段にすぎないのだ。

おそらく、良い結果がでるのであろう。そして、「路車間通信は安全向上に有効である」という結論を出すつもりだと思う。しかし、それははっきり言って欺瞞だ。路側の警報信号や電光掲示板でも危険情報の伝達手段として十分機能する。

むしろここがワーストワン地点であるなら、実験なんていわずに今すぐにでも電光警告灯を路側に設置して「センサーが把握した停止・低速車両情報」を表示するべきではないのか?
この実験をして、「VICS付き車は事故を回避できたが、付いていないクルマは衝突した」という報告書を提出するつもりなのか?その事故が死亡事故になったらどうするのか?

私にはやろうとしていることが全く理解できない。

モバイルして思ったこと

2004年12月20日 | ITS
先週末、札幌へ出張していた。
たまたま金曜日中に提出しなくてはならない資料が未完成だったので、いく途中で作成し送信するというモバイル企業戦士みたいな行動を余儀なくされた。

思ったことは、PCの起動時間の長さがかったるいということ。空港のラウンジで20分余裕があったのだが、PCを立ち上げてネット接続(PHS)が完了するまでに5分以上かかってしまう。
(デスクでも使っているので起動時の読み込みファイルが無駄に多すぎるのは事実だが)
結局ラウンジでは資料をダウンロードするのか精一杯。機内でファイルをアップデート、札幌のタクシーの中でバッテリーを気にしながらも送信することが出来た。

PC立ち上げ時間やバッテリーの持ち時間などを考えると、結局の所モバイルPCでの出先での通信は決して快適な事ではない。その辺もホットスポットが今ひとつ活性化しない理由の一つなのかもしれない。

バッテリーは省電力CPUや燃料電池など、まだまだこの先も技術革新があるだろう。そうすれば常時スタンバイモードにしておくという使い方も有りなのだろうが、現状では起動時間を考えると出先のラウンジやカフェで気軽にPCを立ち上げる気にはならない。

運転中の携帯使用禁止とハンズフリー

2004年12月16日 | ITS
11月1日から道交法が改正され、運転中の携帯電話使用に関する罰則が強化された。これに伴うハンズフリー機器の販売が意外と盛り上がっていないと以前書いたが、ここに来て販売が伸びてきているらしい。11月の取り締まり検挙2万件と、警察も結構本気だ。
やはり売れ筋の主流は手軽なマイク付きイヤフォンだが、ブルートゥース対応機もオートバックスなどでは一部品切れになるような売れ行きらしい。

以前の記事で私は「運転中は電話に出ない、停まってかけ直すというような対応をするのだろう」と書いた。実際電車のなかでは、降りてからかけ直すというのが今の普通のやり方だろう。
しかし、電車は「マナー違反」という社会的な縛りがあるから出るわけにはいかないが、運転中はやはり受話したくなるものだ。
その辺を実際に体験して不便を感じ、ここに来て購入するという人が増加しているのかもしれない。

もし今後ブルートゥースのヘッドセットが一般化したら、携帯の使い方が変わってくるんじゃないかと思う。本体は鞄かポケットに入れておいて、着信したらヘッドセットをつければ良いわけだ。
そうなると本体が電話機のような形状をしているということに意味がなくなってくる。

将来の携帯がメールやゲーム、AVコンテンツを楽しむ事を優先したスマートフォンの発展型のようなものになるというのは、それこそ既定路線なのかもしれない。

前にも書いたが、そうなったらそれと同じようなものをクルマに「固定」車載する意味はなくなる。

DSRCサービス利用推進の裏側

2004年12月15日 | ITS
官はしきりとDSRC商業利用を推進しているがそれが意味するものはなんだろう?
まず、国交省(旧建設省プロジェクト)はDSRCの路側通信機を主要道路へ設置したいと思っている。道路に張り巡らされたセンサーは将来道路をインテリジェント化するための神経網として最も基本的なインフラとなる。

一方、ご存じの通り道路への公共投資に対しては小泉改革と世論という大きな逆風が吹いている。DSRCのインフラ整備は当然金がかかる。
渋滞センサーや安全センサーの機能を果たすためには、500m毎くらいの設置は必要なのだろう。例えばJHの高速道路総延長は7300キロ。上下線に設置として約3万機。
路側機本体が200万円といわれており、設置費や運営などを含めれば1000億円単位の費用がかかる投資である。

この逆風を払いのける方法は二つ。一つは「安全」を錦の御旗とすること。もう一つは「民間需要喚起」による経済活性化・費用分担である。

民間需要についていえば、実際のところ民間企業の興味は、実現すれば1000億円単位となる公共投資の部分だろう。DSRC機器メーカーにとってはその分け前争いとなる。
しかし官が民間需要喚起を打ち出しているからには、その姿勢を見せてプロジェクトに入り込むことが肝心だ。実際に民間マーケットがあるかないかは別の話になってくる。

うがった見方をすれば、11月26日に書いた三菱商事のDSRC事業はそれ自身での収益というよりも、世界初のDSRC活用ビジネスモデルを立ち上げるという「官に対する」アドバルーンをねらっているのかもしれない。

だが現実には安全も民間需要もどちらも望み薄である。
事故防止効果という点から見れば路側機との通信はプライオリティーが高いとは言えない。レーダーや路線認識カメラなど車載の自律型装置の普及拡大が明らかに優先事項だ。
また、民間活用のビジネスモデルはまず成立しない。

ITS推進派にしてみれば、ようやくETCは普及の目処が立った。しかしもう一方の路側DSRC網を整備しなければ、スマートハイウェイ構想は何も出来ない。だからなんとしてもやりたいのだろう。

でも整備して何をするのか、という一番大事な事が忘れ去られている。

DSRCデモから感じる有用性への疑問

2004年12月14日 | ITS

三菱総研社会システム研究本部という組織がある。スタッフコラムを読んでみるとどうやらDSRC(ETCの通信技術)サービス推進に熱心なようだ。

11月18日付けコラムでITS世界会議名古屋の一環として名古屋城(名城公園)の駐車場で行われたDSRCを用いたサービスのデモンストレーションの記事を見ることが出来る。

報告者は、最も便利であったのがサービスエリア等での高速インターネット接続だったといっている。このインターネット接続はブラウザによるWEBページ閲覧を指しているのだろう。

しかし、実際の行楽途中のサービスエリアやコンビニの駐車場でそんなことするか?どちらかといえば、早く用事を済ましてさっさと出発するのではないか。

名古屋ではWEBカムをつかってペットの状態をチェックするというデモが行われていたようだ。
こうした映像サービスは有望だと報告者は述べているが、本当に必要であればクルマでしか使えないDSRCよりも携帯を使うサービスとなるだろう。目的地のホテルに入ったら見ることが出来ないのでは全く意味がない。

これは、いわばクルマ版のホットスポットと言い換える事が出来るだろう。
しかし、ホットスポットの現状がビジネスとしてはかなり厳しいことは周知の事実である。

確かにドライブスルーの料金決済よりは遙かにベネフィットが高いが、このサービスがDSRCのキラーとなるとは私にはとても思えない。

世界情報通信サミット

2004年12月13日 | ITS
ちょっと古いが、今年の2月に日経新聞社が主催した世界情報通信サミットによれば、参加者がこの2~3年でITの次なるブレークスルーがもたらすと思う技術、インフラ、サービスは何か、という問いに対して、1位無線ICタグ・2位デジタル家電・3位ホームネットワーク・4位電子マネー・5位車のIT化(テレマティクス)、同位でIP電話と新たな携帯端末となったそうだ。

参加者はIT、家電業界の役員クラスを含むそうそうたるメンバーであるが、クルマのIT化を第5位とした理由をみてみると、案外単純な見方しかされていないことが判る。

大別すれば
・カーメーカーがやる気だからブレイクする
  マニュファクチャーオリエンテッド。その先に消費者ニーズがあれば成立するが...。
・クルマももっと情報化するべきだ
  いったいこれ以上何の情報が必要なの?
・クルマには皆沢山お金をかけるから有望だ
  そんな単純なものじゃないでしょ?
・VICSやETCがうまくいっているから、まだ先がある
  根拠なし。
・携帯も高機能化した。クルマもそうなる
  今でも十分高機能だけど。写真は撮れないが音楽きけるし、道案内もしてくれる。

ようするに、消費者ニーズがどうなのか以前の問題で、「クルマはでかい市場なのできっとなんかあるはずだろう」というおおざっぱな見方だ。ITSやテレマティクスの議論がいつもそうであるように、具体的な有望コンテンツについて明確に指摘している人はいない。

クルマのIT化に肯定的な意見を以下に転載するので、各自ご判断下さい。

・車にはユーザーの費やす金額が大きいということから考えて、今後の市場として有望。既に車のIT化は進んでおり、技術的にも実現可能性が高い。

・自動車メーカー各社が本格的に乗り出して来ている。安全面のコンテンツでブレイクすると思われる。

・身近にある機器の中で情報化が遅れているのが車だと思う。見方を変えると今後、急速な技術革新が起こり、爆発的な普及が期待できる。単なる携帯電話の真似では、成功しない。安全と情報サービスの2つ側面をカバーする必要がある。

・自動車会社が高付加価値化を図りたいし、携帯電話などのコンテンツプロバイダーが用途を広げたいと思っているから。

・ETC、カーテレビ、インターネット接続による情報収集、カーナビなどが普及することを期待している。特に、自動車メーカーが中心になって新たに情報提供サービスの仕組みを構築するのではなく、パソコンウェブサイトへの接続を実現すれば、ITブレークスルーをもたらすと考えている。

・1995年の横浜でのITS世界会議は、官民にわたるITSへの取組みを本格化するものとなり、VICSやETCはすっかり日本の交通システムに定着させるものとなったが、名古屋で開催される2004年のITS世界会議は、この分野で日本のITS関連産業が、「ユビキタス自動車」という目標像をもって、国際的な独自性や優位性を作りこんでいく引き金をひくものとなろう。

・携帯電話ではカメラ付きが標準化される等高機能化がすすみ、現にそのニーズがある中、生活において身近な機器・道具等の情報通信機能の付加が急速に進む可能性がある。その代表格として車があると思う。