ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

4KテレビとETC2.0

2018年11月30日 | ITS
明日、12月1日からNHKと民放キー局のBS4局などで新4K,8K衛星放送が始まるが、肝心のチューナー内蔵テレビがあまり売れていないという。
4K対応テレビはそこそこ(とはいっても思惑よりもかなり低い)売れているが、対応というだけであってチューナーがなければ4Kコンテンツは受信できない。

それはそうだろう。5年半前の当ブログ記事でも書いたが、消費者が観たいのは面白い番組であって、より細かな画面じゃないんだから。
そうはいっても地デジ移行期にたくさん売れた32インチ程度の液晶テレビが50インチ前後への買い替えタイミングになり、売り場で「大画面なら4Kテレビのほうがきれいですよ」と言われれば多少高くてもそれを買う人は多いだろう。それもあって今年一年間で4K対応テレビは100万台程度の出荷になりそうだ。本当に4K対応が必要なのかどうかは別問題だけど。

これはETC2.0に似ている。ETC2.0のほうがいろいろなサービスがあるから良いですよといわれれば、1万円程度高くてもそちらにする。車を買うときは2-300万円の出費なのでプラス1万円は気にならない。

さらに、メーカーもETC2.0に主軸を移してきているので、近い内にETC2.0が当たり前ということになるだろう。

これに関してはブルーレイに似ている。いまディスクプレーヤーといえば普通ブルーレイプレーヤーだけど、本当に消費者はDVDの画質に満足せずブルーレイを求めていたのか? ハード、ソフトともにメーカー側がブルーレイにしたからそれを買ってるだけのように思える。
ネット配信が主流になっていまさら物理ディスクについて云々しても仕方がないけど、レンタルビデオがさっぱりブルーレイにならなかったというあたりからも消費者がブルーレイの画質にこだわっていたようには思えない。前述のとおり、観たいのはコンテンツであって画質ではない。

それと同じようにETCも消費者の意向とは別のところで2.0に変わっていくように感じる。
しかし、DVD→BDはそれが本当に消費者にとって必要だったか別にしても画質の向上という明らかなメリットが有ったが、ETC→ETC2.0は「圏央道をよく使う人」以外にはほとんどメリットがない。

4KテレビとETC2.0がもう一つ似ているところは政府によるプッシュだ。4Kはなんだかんだいってもいずれ世界がそちらに動くのは明らかだし、それに対して日本の家電メーカーが中韓メーカーに対抗してやっていくためには足元の国内需要が必要、という事情だったのだろう。結果をいえばそれでも日本の家電はテレビから撤退の方向だけどね。

我が家(東京留守宅)は55インチのハイビジョンだけど画質に全く不満がない。それでも、より高画質が欲しいと思う人は4Kを買えばいいし、相応の満足は得られるだろう。
だけどETC2.0に関しては自信をもって言い切れる。圏央道を使わないなら絶対に買う必要はない。

中国ローカル自動車メーカーの状況

2018年11月22日 | 中国生活
2018年広州モーターショーを見てきた。
平日だったせいか、さほどの混雑もなく見ることができたが、中国の展示会場はバカでかく非常に疲れた。
また、これは中国に限らずアジア圏はどこもそうだが、モーターショーは個人ユーザーとの商談の場であり、マジに車を買う気で来ている来場者に売る気満々のセールスマンが群がるという、日本のモーターショーとはまるで違う状況。

一番人気が高いのはドイツ車のブース。BMW、ベンツ、アウディ、VW、どのブランドも中国企業との合弁による現地生産。特にベンツ、アウディ、BMWのブースはかなり混雑していた。続いてはトヨタ、ホンダの日系。中国ローカルブランドの展示ブースはほとんど人がいない状況。また、現代、KIAの韓国ブランドも閑散としてたのが印象的。

広州等沿岸の裕福な地域では純ローカルブランドは「田舎の人の車」という感覚が強く、車を買うお金があるなら日系、欧系ブランドを選ぶという人が多いのでローカルブランドのブースが閑散としていることは驚くに値しない。しかし内陸部では依然として安いローカルブランドが主流でありマーケット規模も非常に大きいので、こうしたブランドもまだまだ生き残っていける。
しかし、10年先を考えると相当淘汰されるのではないかと思う。

ローカルブランドも決して馬鹿にできない。ローカルブランドで最も売れている車の一つにHAVAL H6がある。
これは長城汽車のSUVブランド哈弗が出している中型SUVだが、車格、作り、内装と10万元(160万円)そこそこという価格は相当に魅力的だ。とくにHAVALはローカルブランドとしては高品質という評判で、故障しないのであれば日用使いなら私もこの車で十分だと思う。

もう一つ、そしてここからが今回の本題なのだが、ローカルブランドが展開する新ブランドに注目したい。

前述のとおり、一汽、東風、長城、北汽、吉利、広汽、BYD、奇瑞といったローカルブランドとそのロゴには「田舎の人の車」というイメージが定着してしまっている。
そこで中国各社は新ブランドの開拓に乗り出している。
先の長城によるHAVALブランドの切り離しもそうだし、上海汽車はすでにブランド展開をしている。
また欧州のブランド買収によるブランド化としてはMGブランド(上汽)やボルグヴァルド(福田汽車)の例があるがこれはそれほど成功してはいない。
当ブログ記事「ボルグヴァルドというドイツメーカーの謎

むしろ成功している、または成功しそうなのはスタイリッシュなデザインとハイテク機能を売りに若者向けにイメージを振った新ブランドだ。
代表的なのはLynk&Co.。(写真)
これは吉利汽車とボルボによる合弁ブランドだが、ボルボ自体吉利傘下なので実質吉利といっていいだろう。
ただ、Lynk&Coの場合は欧州ボルボの人材がかなりの主導権をもって車・ブランド作りをしているように感じる。いわば、日本で企画設計されるLenoboのThinkpadのような感じ。
車の名前というよりはファッションブランドのようなその名前と、非常にスタイリッシュな外観、内装。さらにコネクテッドによるライフスタイル提案と、かなりのレベルに仕上がっている。
広州モーターショーでも若い人を中心にブースは賑わっていた。
あとは、長城のWEYブランド。これもデザインにこだわったハイクラスのSUVに特化している。

欧系、日系と合弁をしているローカル企業はそれらの車作り、品質管理手法を学び自社ブランドの車のレベルもここ数年でかなり進歩している。
中国ローカル車というとデザイン100%コピーとか、衝突試験をしたら★一個だった、などの笑い話的イメージが未だにあると思うがそれはもう10年前のことで今は相当に進化している。

私が中国に来た2012年、中国ブランドのアンドロイドスマホは全く購入対象外、HTC、モトローラ、ソニエリあたりが選択肢だった。それからわずか6年。いまやHTC、モトローラ、ソニーは跡形もなく、当時は歩歩高ブランドだったOPPOやまだ端末に参入したばかりだったHUAWEIが今や市場を独占している。そしてこれらは性能、品質的にも非常に優れており、海外にも進出している。

スマホより遥かに複雑な車の世界でこれが直ちに起きるとは言わないが、この先10年を考えるとなにが起きるかわからない。EVや自動運転を視野に入れ無くてはならないがそうしたハイテク分野でも中国は侮れない。
日本メーカーが走り続ければ絶対に追いつかれることはないが、イノベーションを怠ったら危ない。

駐車場シェアリングとETC2.0

2018年11月17日 | ITS
日本を離れて6年以上経つので日本の事情に疎くなっているのかもしれない。
日本でのシャアリングビジネスで最も成長しているのは駐車場シャアリングだというのを最近知った。

たしかに日本は基本的に路上駐車ができず、また都市部ではコインパーキングが増えているとはいえ駐車場が見つからない事が多い。
一方で都市部では車を持たない人が増えてきているし、高齢世帯ではすでに車を手放して駐車場が空いているという戸建ても多くなってきた。

空き駐車場の登録、管理、予約や料金支払い、受け取りなど、貸す側、借りる側どちらもスマホの通信を使えば簡単にできる。そうしたビジネスが「akippa」「B-times」など続々登場しており、急速に成長している。サイトを見ると、実際に駐車したかどうかは物理的には把握していないようだ。まあ、その程度の管理でも成立するのだろう。
今まで一円もお金を産まなかった土地がコストゼロで収入源になるのだから、貸す側としてはメリットしかない。借りる側も一般の駐車場より安いのでメリットが有る。
これは普及しないわけがない。

ETC2.0普及促進研究会もそれに目をつけてこのような研究をしているという。
まあ、正直やっておられる側ももはやこれくらいしかETC2.0の活用方法のアイデアがないので無理は承知だろう。
でも常識で考えて個人宅や農家がおそらく100万円はくだらないと思われるETC2.0の読み取り、通信ポストを設置する訳がない。
(しかし農家のイラストは笑っちゃうね。なんで「おじさんが現金を受け取る」んじゃだめなんだろう)

何回でも繰り返すが、ETCには高速道路のノンストップ料金収受以外の用途はないと思ったほうが良い。

ETC2.0と光ビーコンの情報は「迷惑」か「有用」か

2018年11月13日 | ITS
レスポンス掲載の自動車評論家岩貞るみこ氏記事。
ETC2.0と光ビーコンの情報は「迷惑」か「有用」か

私はETC2.0の渋滞情報サービスや途中下車サービスが始まる前に中国に来てしまったので、ETC2.0についてさんざん悪口を書き散らしているくせに自身では体験をしていない。
しかし、日本から離れて暮らしていてもだいたい想像通りの結末だということがよくわかった。

高速道路に入ると行く予定のないはるか先の渋滞情報が流れてくるという。岩貞氏の言う通り大半のドライバーには意味のない情報だ。
確かにそこまで行く人には有用だろうが、日本の高速道路はそれほど経路の選択肢がないわけで、わかったところで対して役に立たないのではないか。
中央道に入ってから長野で渋滞といわれてもいまさらどうしようもない。

道の駅途中下車に関しては岩貞氏もご指摘の通り、なぜ通常ETCを除外するのか全く理解できない。メカニズム的には問題なく対応可能であるが、単に普及促進策としてETC2.0に限定しているだけ。
まあ、道路会社は民間企業なんだから普及促進のインセンティブを何にどうつけようが構わないが、この施策に関しては国交相が「長時間ドライブによる疲労運転を防止する効果がある」と明言されており、交通安全の施策を普及促進のためにETC2.0に限定している、という実に不誠実な実態が浮かび上がる。

氏は最後に「これについて絶対、効果評価の検証していないよね?やればいいって思っているよね?それ全部、税金だよね?って思うんだよね。」と述べられているが、多分役所はやらないだろう。
ETC2.0つけて便利だという声はネット上のどこにもない。効果測定してもポジティブな答えは得られないことは国交省は百も承知だと思う。
(官製アンケートの18番、「とても便利」「まあ便利」「不便」の三択で、『過半数が便利と言ってました』的なのはやるかもしれないけどね)

あと、蛇足だけど「ETC2.0と光ビーコン」という、国交省(高速)と警察(一般道)という監督官庁違いで同じようなものが違う規格で用意されているというのもなんだかな~。ITS推進の謳い文句に、一つの車載器ですべての情報、というのがあったと思うんだけど。