DeNAと自動運転プラットフォーム開発のZMPが自動運転タクシー事業を進める新会社「ロボットタクシー」を設立した。最近の自動運転に対するメディアの視線も熱いことから結構大きく報道されている。
はたしてDeNAがGoogle等の世界的な巨人と戦って勝てるのか、という話はそもそもあるが、日本初ベンチャーとして参入することは好ましいことだとおもう。
しかし、2020年の東京オリンピックまでに無人タクシーを走らせるというのはどう考えても不可能だ。特定のクローズドな環境で無人の輸送機械を走らせることくらいしかできないだろう。
各メディアの論調もハードルは高い、としているがその理由に法規制を上げている。しかし法規制以前の問題としてインフラ整備が必要なのだ。というか、その辺の構造が固まらないと法律も作れない。
ロボットタクシーである以上は乗客には運転責任がない。言うまでもなく完全自動運転車となる。それが自動車専用道以外を走行するとなると、極端に安全に振ったロジックを組むしかない。他の自動車、自転車、歩行者の動きが予測できないので、おそらく人や自転車と混交する道路ではほとんど徐行でいくしかない。これは交通渋滞にとって大きな問題となる。
私は完全な無人タクシーが実現するまでにはまだ相当な時間がかかると思っている。都市設計のやり直しレベルのインフラ整備と、非自動運転車の排除、自転車歩行者等を察知できるような携帯端末携行義務化など、やらなくてはいけないことが山のようにあり、それはある日突然実現するものではない。これには物理的な時間がかかる。
自動車専用道での部分的な自動運転の解禁、市街地でも人車分離による自動車専用道化や専用レーン化等をすすめ、自動運転非対応車がだんだんと減ってきて、その最終段階でやっと完全運転ロボットタクシーの走行が可能となる。そこから、一気に自動車は保有からシェアリングへと傾いて行くことになるだろう。
だからロボットタクシーなんてのはそんな簡単に事業化できるものではない。
あと、自動運転に参入するIT系の企業はどうも周辺ビジネスに過大な期待をしているように思える。エンタメ、ヘルスケア、観光等可能性は無限にひろがるというような論調があるが、それって自動運転でなくてもある話だろう。タクシーの中でスマホを弄る以上の何かなんて、それほどあるわけじゃない。所詮車の基本的価値は移動手段ということ。IT系の人は「究極のモバイル端末」という見方をしている事が多いが、ここにあまり大きな期待をするのは危ない。
いずれにしてもはじめなければ何もはじまらないので今回のこの合弁企業設立も頑張って欲しいが、事業化までの道のりは遠い。