もうずいぶん前のことだが、前職時代の一つ先輩が突然退職した。どちらかと言うと将来嘱望されてた人なので驚いたが、しばらくして呼び出された。
結局話しは米国系のMLM(アムウェイのような奴)の勧誘。実名出すのも何なので「新皮」としておこう。(これで分かる人はわかるでしょう)。どうやら奥様が結構成功したので夫婦で法人化して本格的にやろうということのようだった。
そこで色々説明を受けたんだけど、なぜあんなに優秀だった人がこんな事言うのか?と驚かされた。曰く、「今後電力、ガス等が自由化される。新皮もこのビジネスに参入する。上流メンバーになっておけばものすごい利益が手に入る」「これからはインターネット時代。新皮もネット販売を始める。下部会員がネット注文したものも上部会員にマージンが落ちるようになる」
私は、インターネット販売が主流になるということBtoCの方向なんだから中間マージンなんか取れなくなる方向なんじゃない?と言ったが、うやむやな答えしか返ってこなかった。
ちなみに現在の彼の動向は昔の同僚たちに聞いてもさっぱりわからない。
さて、その時の話ででてきたのは例の「羊水から石鹸の匂いがする」というやつ。これはMLM系の洗剤化粧品等を扱う人たちの常套句であり、それも知っていたので聞き流した。
この話は典型的な都市伝説で、実際の産婦人科医の証言は存在しない。(知り合いの親戚の産婦人科医が言ってた、という例のパターン)
要するに、洗髪したり体を洗ったりすると皮膚から化学成分が体内に浸透し、内臓などに貯まるいわゆる「経皮毒」という話。
経皮毒で検索するとたくさん闇が見つかる。実際Googleで「経皮毒」を検索すると真っ先に「日用洗剤に含まれる有害物質でがんなどの原因になる」と断言するコマーシャルサイトがでてくる。このような不安をあおって商売するサイトがメインだが、無邪気に信じてしまっている人たちは驚くほど多い。
皮膚を通過して体内に化学物質が浸透するということはほどんどない。化学物質を扱う時に手袋をするのは皮膚が荒れることを防ぐため。
また市販されている化粧品やトイレタリー製品にそんな危険があるわけがない。国の安全基準は相当に厳しい。
しかし、不安を煽る(商売にしてる)人たちの言うことはとても上手だ。
・成分を見てください。聞いたことがないような化学物質がたくさん書いてあります。(当然検証済みでむしろ体に良いものが入っている)
・人間が化学物質が入った石鹸を使い始めてからまだ数十年。いつ重大な病気が発症するかわかりません。(そんなこと言ったらなんでも危険)
一番狙われるのは小さいお子さんがいる女性。確かにそういう事を言われれば不安になるからこれはとても簡単な商売なのだ。
その販売促進は自然と不安を過激に煽ることになり、非常に闇が深いビジネス。「XXはがんに効く」というと薬事法違反だが「XXはがんになる」といっても違法ではない。
いずれにしても「経皮毒」は医学用語として存在しない。この言葉がでてきたら100%商売と思って間違いない。