ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

また出たETC2.0翼賛記事

2018年12月28日 | ITS
カービュー12月26日記事
じつは自動料金収受システムだけではないETC2.0
自動車評論家諸星陽一氏の署名記事だが、この時期になぜ「ETC2.0は高速道路料金収受だけではない」という記事を書く必要があるのだろうか?

記事の内容をサマリーすると
1.ETC2.0はETCと言う名がついていて紛らわしいが、料金収受だけの機械ではなく、交通情報をクルマに知らせてくれる。
2.更に圏央道迂回ルートで割引があり、一部道の駅に退出する場合追加料金なしなどの優遇がある。これは将来拡大することも検討中。
3.なので、「これからETC車載器を付けようという人は間違いなくETC2.0を選ぶといいでしょう。」と言い切っている。
4.しかし、その後で「ただ現在の状況だと通行料金ベースで考えると圏央道を使うユーザーでないとその優位性は享受できない」と微妙な発言。
このニュアンスから、諸星氏は圏央道割引以外は大したメリットがない、ということはわかって書いてらっしゃるように感じる。ではなぜ「2.0を買え」と言い切っているのかは「この記事の発注元が存在する」と考えるのが自然だろう。

さらに面白いことは、この記事の下にあるコメント欄。
「付けても恩恵なかった」「割引されたから2.0にしたけど価格差の価値はないのでそうでなければ付けなかった」「付けたけど意味はなかった」「どうでもいい情報が多い」というコメントばかり。
「2.0を付ける意味は全くありませんし、高いだけです。後悔しています。こんな記事に騙されないよう気を付けてください。」というコメントに「そう思う」58件、「そう思うわない」4件。これは正直なユーザーの声だろう。

ETCに対して2万円近く高価な出費を強いるETC2.0。本当にユーザーの事を考えたらこのような記事はかけないはずだと思うのだが。

またETC2.0モニターキャンペーン。もういい加減にしたら

2018年12月17日 | ITS
コメントでも情報頂いたが、またETC2.0の補助金対策が始まった。VICSセンターWEBページリンク
5000名に10000円、計5000万円。
まず間違いないことは、すでに300万台近く普及しておりモニターを募集する必要なんてまったくないということ。実際は補助金であり、モニターやらアンケートやらは100%茶番だ。

なんで今さらまた5000万円も補助金をつけなくてはならないのかさっぱりわからない。メーカー在庫消化の手助け?
この予算も出どころは通行料か税金か、いずれにしても国民が負担しているのだ。

出国税(国際観光旅客税)で思うこと

2018年12月11日 | 雑記
来年の1月7日から通称「出国税」、正式名「国際観光旅客税」の徴収が始まる。日本出国時に一人1000円。2歳未満の赤ちゃんと24時間以内のトランジット客以外はすべて該当する。
来日観光客に対する観光基盤の拡充・強化を図るのが目的ということだが、日本人も納税しなくてはならない。これは国籍によって課税差別をしてはならないという租税条約によるもので、仕方がない。

納税方法は空港使用料と同じで航空チケット代金に上乗せされる。近距離格安チケットでも3万円程度はするし、時期による振れ幅が大きいので1000円増加はほとんど気が付かないレベルだろう。
(余談だが、ある旅行系WEBサイトでアンケート調査をしたら、13%の人が出国税により旅行をやめる、減らすと回答している。1000円負担が増えたからやめる人って本当にいるのだろうか?)

航空チケットに巻き込む方式は支払っている実感がないので徴税感がなく、また外国人観光客からは文句の出ようもなく、さらに他国(オーストラリア等)が導入済みという言い訳もできるため、国的には「非常に取りやすい」税金だと言える。
そうはいっても実際にその税金が来日観光客の利便を向上し、日本の観光資源をより魅力的にするために使われるなら、それは良しとしよう。

では、その具体的な使途はどうなっているのか?

財務省HPからの抜粋では
「基本方針では、(1)ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、(2)我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化、(3)地域固有の文化、自然等を活用した観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上、の3分野に税収を充当することとされました。」
と書かれている。
これ以上の具体的な記載はないが、tabizineによれば「具体的には、Wi-Fi環境の改善や多言語表記、海外に向けた宣伝活動、空港整備など」だそうだ。

このtabizineの記載が事実かどうかはわからないが、こんなことだけに使われるのなら出国税はやめたほうが良い。

1.フリーwifiって、そんなに便利なものか? その場所その場所でいちいち設定しなくてはならず、場合によっては登録やらパスワードやらあり面倒くさい。どこでもつながる通信SIMのほうが圧倒的に便利。日本には基本的にSIMフリー携帯がないため日本人にはピンとこないのかもしれないが、海外からの観光客の多くは日本対応の通信SIMを刺したり格安ローミングで自分のスマホを使っているのでフリーwifiはいまさら、という気がする。むしろトラベルSIMを空港など入国時やコンビニなどで気軽に購入できるようにするべきだと思う。

2.多言語表記は本当にいるのか?ピクトサイン、日本漢字、英語(ローマ字)だけでほとんど事足りるのではないか?カタカナと畑等、特殊な日本独特の漢字以外は中華圏旅行者は理解できる。
当ブログ関係記事「観光客向けハングル、中国語表記について考える
誰でもわかるトイレのピクトサインの下に日本語、簡体、繁体、ハングル、英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語の表示をつける、といかいうお馬鹿なことに無駄使いされたらかなわない。
むしろ、上記ブログでも指摘している通り、本当に外国語表記がないとわからないものについて補足記載をするべきだろう。これは自身が日本語読めない旅行者になったつもりで総点検してほしい。

3.海外に向けた宣伝活動っていうけど、「この商品の良さを知らない人にもっと宣伝しようと思います。ついては購入いただいてる皆さんにその費用を負担してもらいます」といって納得する消費者はいないだろう。実際に企業はそうして広告費を捻出しているわけだけど、それは表立っていうことではない。

4.空港整備って、じゃあいま徴収している空港使用料は何に使っているのか?

以上のように簡単に疑問符がつくことばかり。この税金、結局のところ実効ある使われ方がされないのではないかと非常に危惧する。
私が思うには、主要観光地には公的、かつサービス内容を国が規定した「ビジターセンター」を設置し少なくとも英語ができる係員を配置する、等の施策が良いのではないかと思う。


中国に焼餃子はない?

2018年12月08日 | 中国生活
日本では、通常以下のように信じられているようです。

「中国には焼餃子ほとんどなく、焼餃子は日本独特のもの。中国は茹餃子であり、焼餃子は茹餃子の残り物を温めるために鍋で焼いたもので鍋貼と呼ばれるが、あまり一般的ではない」
事実、WIKIPEDIAでも概ねそのようなことが書かれています。

しかし、ここ広東省佛山では焼餃子はごく普通に飲茶系レストランのメニューにあります。
会社の中国人にきいても、「普通のメニューだよ」ということで、実際私の家の近くの中華系ファーストフード(カフェテリア式)店内のポスターには、当店人気メニューの第三位に焼餃子(煎餃)がランクインしてました。

なので、最初は焼餃子という食べ物は日本からの逆輸入で最近流行してきたのかな?などと思っていました。
そこで中国の検索サイト「百度」で調べたところ、以下のようなことがわかりました。

まず、焼く餃子の言い方には「鍋貼」と「煎餃」の2つがあります。(なお、広東では「鍋貼」という言い方はほとんど見たことがなく、「煎餃」です。)
百度をみると「鍋貼」も「煎餃」も「中国の点心(この手の小吃の総称)である」として
鍋貼=是中国著名的伝統小吃(中国の有名な伝統的小吃)
煎餃=中国北方地区特色伝統小吃之一(中国北方地区の特色伝統的小吃の一つ)
ときちんと項目だてて紹介されており、また中国のクックパッドのようなサイトでも「鍋貼」も「煎餃」もたくさんでてくるので、やはり「ほとんど食べられていない」ということはないようです。

また、「残り物を焼くのが焼餃子」に関しては、百度の鍋貼の記事中「北宋時代、宋太祖が料理人が余った餃子を鍋で焼いているのをみて、とても匂いが良いので食べたら美味しかった、料理人に料理の名前を聞いたら答えられないので、宋太祖は鍋に貼り付けたから鍋貼だ、とした」という言い伝えがあることが紹介されていますが、家庭で残り物の茹餃子を焼くという記載は見当たりませんでした。

次に、百度によれば「鍋貼」と「煎餃」は当の中国人でも区別していない人が多いが、実は違うものだそうです
曰く、「煎餃」は茹でてから焼く、もしくは焼いてから茹でるが、「鍋貼」は茹でないとのこと。
具体的には「煎餃」は前もって茹でる、もしくは同じ鍋の中でまずたっぷりの水で茹でてから水分を飛ばして焼く。一方「鍋貼」は焼く際に多少の水か料理酒を入れるが、基本は焼くだけとのこと。

東北地方で主食代わりに食べられている「餃子」は日本で言う「水餃子」(茹、蒸餃子)であり、また中国の常識として餃子といえばこちらを指すことは間違いありません。
また、中国で煎餃が一般的になったことの背景には日本からの逆輸入食文化という一面も確実にあると思います。しかし、現在の状況からは焼餃子は日本独特のもので中国にはないのだ、というのはもはや都市伝説に近いような気がします。

ETC2.0データを活用した民間サービス(案)

2018年12月04日 | ITS
国交省は8月から9月にかけて生産性革命プロジェクトの一環として公募していたETC2.0のデータの民間活用案に関し、19のサービス提案を選定したと公表した。
国交省プレスリリースPDF

19件の内容を見ると、残念ながら特段目新しいものはない。
ETC2.0でなくともGPSと通信機能があれば実現できるものばかりだ。というか、すでに民間のプローブで実現されているものもある。むしろ民間のプローブがそれを実施していないのはマーケット性がないからなのではないか、とすら思う。
「周辺エリアのヒヤリハット情報を飲料購購入者に自販機の情報ディスプレイや発話機能を通じて提供」などは、なぜ飲料自販機に交通情報???という感想しかない。

ETC2.0は通信をつかうプロープと異なり、リアルタイムの情報は取れない。あくまでポスト通過時にそれまでの情報をアップリンクするので、その情報には時差がある。統計的な予測には使えるが今どこがどのくらい混んでいるかはわからない。
例えばこれをバスロケに使うという案が提示されているが、通信型に比べ使い勝手が良いとも思えない。

現在ETC2.0のセットアップ件数は300万件を超え、それなりに普及している。
300万というと多いように感じるがすべてのETCに対する割合で言えば数%にすぎない。とはいえ300万台の車に装着されていれば走行データ収集という意味では十分機能する。
しかし、ホンダのインターナビ等カーメーカーやパイオニアなどがすでに通信をつかったプローブでこのレベルに匹敵する情報を持っている。
繰り返すが、それで新サービスのビジネスがあるならもうすでに彼らによって行われている筈だ

唯一ETC2.0に有利な点としてはトラック。現在の300万台のうち1/5はトラックなのだ。トラックは大口割引適用や圏央道通行等の極めて現実的な経済的理由から装着率が高い。(とはいえ、これは国交省による普及のための優遇であり、トラック業界はいやいや装着をしたのだが)
一方、民間のプローブ情報は乗用車中心。提案にもそれを考慮したものが何件かある。
それらはそれで活用すればいいと思うが、一般消費者が便利になるようなサービスがETC2.0で新たに始まるとは到底思えない。