ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

未来投資戦略2018

2018年06月25日 | ITS
政府は国の今後の投資戦略の最新版、未来投資戦略2018を公表した。PDF

ICT、AI、ビッグデータ、自動運転、キャッシュレスといった、必ずしもすでに日本が世界をリードしているとは言い難い、しかしこの先もっとも重要なテーマについての我が国の戦略であり、非常に重要な国の政策の姿を語っているが、その中身をみるとこれらBUZZワードはきれいに散りばめられているがいかにも具体策に欠けていて、本当にこれでうまくいくのか心配になる。
野党はモリカケへの熱意と同じ、もしくはそれ以上の熱意でこの中身について突っ込んで政府を追求してほしいと思うのだが、そうした動きが見られないのは残念だ。

私の分野である自動車・交通関係に限定し、気がついたことを記しておく。

1.自動運転
オリンピックの2020年には公道での地域限定移動サービスの自動化を実現し、来日観光客へのショーケースとする、とあるが、私の予想は羽田国際ターミナルと国内ターミナルを結ぶ無人小型シャトルが精一杯。とてもショーケースというレベルには行かないだろう。
自動運転には道路インフラの根本的な見直しが必要であり、それには時間がかかる。2030年までに本格的な無人自動運転移動サービスを地域限定全国100箇所で実施、というのは現実的な線だが、これで世界をリードすることはできないだろう。
(どうでもいいけど、年表を西暦で書いた後、その詳細説明に平成をつかうのはやめてほしい。いちいち頭の中で換算する必要がある)

それ以上に不可解なのは、自動運転とカーシェアは切っても切れない関係であるはずなのにカーシェアについての言及は一言もない。というか、全体をとおしてシェアリングビジネスへの言及はほとんどない。既存のタクシー等運送業への配慮がにじみ出ているように思うが、そんなことではインベーションはできないはずだ。

2.新幹線のネット予約
「本年度中に全ての新幹線・在来線特急の海外インターネット予約を可能とし、将来的な予約ページの共通化や-略-ジャパン・レールパスの利便性向上等を推進する」
結構なことだけど、今更かよ、という感想しかない。過剰なセキュリティで使い勝手がわるいとか、スイカ購入が必要とか、プリントアウトした確認書を有人みどりの窓口で切符と交換とかはやめてほしいけど、私の予想では面倒くさいシステムになるな。

3.ETC2.0
この報告書の中でのETC2.0への言及は2箇所のみ。全文を引用してもこれだけ。
-ETC2.0で収集したプローブデータの活用を官民連携で推進する。
-ETC2.0等を活用したピンポイント事故対策の実施
正直、プローブデータは民がすでにたくさん持っている。官民連携で活用を推進する、という絵はあまり想像できない。
また、事故対策に関してはこのブログで散々こき下ろしているとおり、ETC2.0にその効能はほとんどない。(というか、その他手段のほうが費用、効果ともに優れる)
そもそもETC2.0が構想された時点ではだれも自動運転なんて考えもしなかった。もはやETCにノンストップ料金収受システム以外の機能は不要。おそらくここに書かれている2点についての進展はない。

日本は息が詰まる社会を目指すのか

2018年06月20日 | 雑記
先週末から昨日まで私用で一時帰国していた。
羽田からリムジンバスに乗車。国際ターミナルで7割方席は埋まり、半分近くは外国人だった。
前の方に雰囲気からシンガポールか香港人だと思われる中華系外国人家族が乗車。小さい子供二人がちょっとはしゃいでいたが、特に気になるような騒ぎ方ではなかった。

国際線ターミナルから国内線ターミナルに移動する間の赤信号で停車したとき、ドライバーが車内にやってきて子どもたちにむかって指を口に当てる仕草をし、親にQuiet pleaseと注意をした。
そこまでのことではないにの、と思ったのだが、その後国内線ターミナル出発後ドライバーは改めてマイクで日本語で車内では静かにしてほしい旨の注意を行い、最後にBe quiet pleaseと付け足した。

その後新宿に着くまで車内はお通夜のようにシーンと静まり返り、横の若い白人カップルは口を相手の耳に当てて話をしていた。彼らは日本は怖い国だと思ったに違いない。

帰国時の羽田空港。カードで入れるラウンジでコーヒーを飲んでいたら電話が入った。
ラウンジにはたいてい電話するための個室のようなスペースが有るのは知っていたが、とっさに見当たらなかったので周囲に誰もいない隅に移動して受話したら、すぐに係の方から電話ブースへ行くように促された。それがそのラウンジの規則なんだから文句をいう筋合いはまったくないし、係の方の対応も規則通りなんだろう。しかし、間違いなく誰にも迷惑をかけていない。

通話はご遠慮ください、という日本のルール、私は全く理解できない。通話を遠慮するべきシチュエーションなら会話も禁止だろう。図書館とか。
公共交通機関等は普通の会話レベルで通話をする分には全く問題ないと思う。むしろ新幹線車内で大声で酒盛りをする会社員や、東京から大阪まで一分たりとも途切れることなく話をするおばちゃん連中を規制してほしい。

日本人はマナーがいいという。しかし、マナーとは人の迷惑にならないような声で話をすることであり、携帯電話をしないことではない。
いや、日本人はマナーがいいのではないのだ。同調圧力が強いだけ。ゴミが落ちていないところには絶対にゴミを捨てないが、たくさん落ちているところなら捨てる。
また、これが問題だと思うが、同調しない人に対する批判が異常に強い。携帯電話はマナー違反ということになれば「自分に全く被害が及ばないことでも」それを無視する人間を許せない。苦情が出る。

苦情は昔からあったんだとおもう。しかし最近SNSで簡単に拡散するもんだから企業側が炎上を怯れて過剰に対応する。そしてそれが風潮となって広がっていく。
公務員や消防団員が制服で飲食したりコンビニで買い物したりしてるだけで苦情がはいり、役所が記者会見をして謝罪するというのも過剰な苦情対応によるものだろう。

この過剰なコンプライアンスはゼロリスクの追求にもつながる。
企業が問題を起こすと、昔ならそれほど話題にならなかったような話であってもSNSで拡散し、いまやSNSを主情報源としているメディアが飛びつく。企業はそれを怯れ徹底的にリスクゼロを追求する。
社内に監査専門部門ができ、すべての企業活動はその部門の監査を通すことになる。監査部門はそれが仕事だから重箱の隅をつついてくる。以前よく言われた80点ならGOだ、という考え方はもう日本にはない。95点でも5点とれない理由を延々と説明させられる。

当然、スピード感がなくなり、かつ冒険的な企画は潰されるか、もしくは説明が大変なのでそもそもだれも言い出さなくなる。

こんな状況でイノベーションは生まれない。
実際、この10年間で日本発のイノベーションって何が有る?

中国偽国際免許

2018年06月13日 | 雑記
この件は前にもちょっと書いたけど、メディアもSNS界隈も非論理的な意見が溢れているからもう一回。
なお、私は偽の国際免許を認めろと言ってるわけではない。そこは論点ではないことをお断りしておく。

よく見る意見は大体こんな感じだ。
「偽の国際免許で中国人にレンタカーを運転させるとはとんでもない。日本の道路法規も知らず、めちゃくちゃな運転をする中国人に無免許で車を運転させ、事故が起こったらレンタカー会社は責任を取れるのか?国は早急に対応をするべき」

この話には独立した3つの事柄が含まれているのだが、しかしこれら論調はそれをごちゃごちゃにしているのだ。

1.中国人が持ってくるフィリピンの国際免許証が偽物であるという問題。
2.日本の道路法規を知らずに慣れない中国人がレンタカーを運転するのは危険だという問題。
3.中国人の運転は荒いので、日本で運転させるべきではないという意見。

1については、前提として彼らは中国の運転免許は持っているので無免許ではない。ただ中国は国際条約に加盟していないことから国際免許が存在しないという制度の問題が根本になる。だから偽の国際免許というものが出てくる。一方、旅行者がレンタカーを借りたいという需要は存在するわけで、実際英国、ドイツを含む多くの欧州国家、カリファルニアを含む多くのアメリカ州、オーストラリア、ニュージーランド等では規定の翻訳書があれば中国の免許での運転を認めている。日本人もハワイなら国際免許は不要。
我が国が中国からの観光インバウンドを重視するなら欧米豪のような処置をして法的な問題をクリアすればいいし、それよりも偽免許問題に厳格に対処するというなら中国人のフィリピン国際免許での運転を禁止すればいい。

2についてはそのとおりだが、どこの国の人間であろうが関係ない。そもそも国際免許というものは免許証の翻訳書であり、その取得にあたって外国の交通法規の試験や講習などまったくないのだから、どこの国の人間であろうが皆日本の交通法規なんか知らずに運転している。実際、沖縄では結構外国人による事故が発生しているようだが正規の国際免許で運転している台湾、香港、韓国からの観光客で9割だそうだ。これを問題にするなら国際免許での運転は一切禁止にするべきだろう。

3については一般論として運転が荒いことは事実だが、それをもって全体に適用するのは差別的だろう。黒人は犯罪率が高いから宿泊禁止なんて言ったら大問題になる。それと本質的に同じことを言っている。

つまり、理屈的には2.3は問題とは言えない。存在している問題は1の「国際免許がどうやら偽物である」、ということだけ。運転免許自体は持っているが、制度的に必要となる国際免許が偽物だということ。
(蛇足だが、中国の免許で正式に日本で運転する方法はある。香港は中国の免許保有者に対して香港の免許を無試験で交付している。香港免許を取得しその国際免許を持ってくれば100%合法。中国人が香港免許を取得するためには2回香港に行く必要があり手間がかかるのでこの方法は一般的ではないようだ)

一番の解決策は他国のように中国の運転免許があれば運転できるようにすることだが、政府は踏み切らないだろう。
まず、中国ということで感情的な反対論が噴出する。韓国は済州島に限り中国免許での運転を認めたが、そのときもかなりの反対論があったらしい。
許可することで交通事故死者が出たりしたら叩かれる事は必至。しかも、事故というものは必ず起きる。日本人による海外でのレンタカー対人死亡事故だって発生している。そんなリスクを役所がとるはずがない。

そんなことで、問題だ、問題だというばかりで今の状況から全く何も変わらない状態が続くんだろう。

中国、ナンバー読み取り駐車場が急増中

2018年06月08日 | ITS
中国ではナンバー読み取り式の駐車場がものすごい勢いで増加している。従来のカード発行式駐車場はどんどんナンバー読み取り式に機械を入れ替えている。
日本でもナンバー読み取り式は存在するが駐車券は発行され、精算済みの場合は出口ゲートがそのまま開くというようなものが多い(日本を離れて6年経過しているので最近の事情はよくわかりません)。事前精算機対応のためだろう。
しかし、中国のナンバー読み取り式は駐車券を発行しない。入り口では表示器にナンバーが表示され、そのままゲートが開く。
精算所に人がいて集金するケースが多いが、スマホで決済が済んでいるとそのまま通過できるようになっている。

スマホ決済は二通りあり、一つは駐車場に貼ってあるQRコードを読み取り、自車のナンバーをインプットし支払う方式。要するに事前精算機がなく、自分のスマホで精算をするということ。決済はWechat Pay。もう一つが商業施設利用割引。レジで専用QRコードを読み取り、同様に自車のナンバーをインプットして完了。QRコードは一回読み取れば次回以降は自動的に自車ナンバーが表示されるので、二回目以降は精算はあっという間に終わる。
駐車場によっては出口に人がおらず、必ずスマホ決済をしなければならないところもある。それほどに現在の中国ではスマホ決済は当たり前になっている。

この方式、DSRC技術をつかったETCでのノンストップ料金収受に比べればローテクだが、ユーザーとしての使い勝手としては大きな差はない。スマホ決済はチャチャっとできるのでさして手間には感じない。さらに、ETC駐車場決済の課題である商業施設利用割引が簡単にできる。ETCの場合はETCカードの親カードで支払った場合に限り、カード会社でマッチングしカード決済時に駐車代を割引くというような方法しか今のところはないようだ。

さらに、ETC決済に比べ駐車場側の導入費用は遥かに安い。ハードウェアはナンバー読み取り機だけ。システムも集金はWeChatがやってくれるのでそれほど大掛かりなものは必要ない。

日本において、ETCの駐車場利用は駐車場側の設備投資負担を考えるとあまり進まないだろう。
ETC(DSRC通信)の商業利用はまだスマホが存在しなかった20年前のアイデアであり、現在はより良い方法がいくらでもある。
まだスマホ決済の統一プラットフォームがない日本ではこの中国式の導入は難しいが、どちらが現実的かといえばナンバー読み取りだろう。

外環道三郷南-高谷開通で思うこと

2018年06月02日 | ITS
本日、東京外環道三郷南-高谷が開通した。計画から半世紀かかったという。
政府が計画したら有無を言わさず道ができちゃう中国に住んでいると全く別世界の出来事に聞こえる。事実、別世界だけど。
強制立ち退きがある中国が良いと行っているわけではないが、社会インフラ整備にこれだけ手こずるというのもどうなのかな。

そして、もっと難しいのは大泉から南。一旦は断念したが石原都知事時代に再スタートし、きっといつかは開通するのだろう。
山の手の住宅街を縦断する高速道路を新しく高架で作ることはできないということは理解できる。したがって地下化となったのだが、地下でも反対している人たちがいるのだ。

いま、ちょっと検索してみたら「地下水脈が絶たれる」「排気ガスが心配」ということらしい。
地下水脈はきちんと科学的に調査し、問題がないように手を打てばいいだけのことだろう。
さらに、大きな勘違いは排気ガス。いま、外環道がないために環八を通っている車は相当ある。
これらの車が信号や渋滞で発進、加速を繰り返すことで発生する排気ガスが、高速道路ができれば相当量削減できる。

さらに大きな問題は、交通事故。一定速度で車だけが走行する高速道路は一般道に比べ死傷事故発生率は1/10程度。事故がおきれば大きな事故になるという人も多いが最近は車の安全性能が上がってきていて高速道路の死亡事故は毎年減少傾向にある。高速道路での事故死者は全事故死者の4.6%でしかない。(平成29年)

一方で歩行者、自転車には安全装置の進化はない。今も昔も車に衝突することで死亡につながる。不幸な交通事故死をへらすためには、車はできる限り自動車専用道を通行するべきなのだ。

圏央道により多少は改善されたとは思うが、外環道がないために環八を走行する車は多い。
同じようなことは中央道高井戸インターにも言える。住民運動の結果、高井戸にはいまだに下り方面の進入路がない。そのため環八から山梨長野方面に行く車は甲州街道を調布まで走らなければならない。

もちろん、外環道が完全に整備されれば渋滞がなくなり、また物流も飛躍的に効率化することによる経済効果があることは言うまでもない。しかし、経済効果をいうと反対派の方は決まって「お金より命だ」とおっしゃる。
では、環八や甲州街道沿線住民の環境問題や死亡事故の犠牲者についてどうお考えなのだろうか?