新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

5月21日 その2 昭和一桁生まれの密かな悩み

2019-05-21 15:01:21 | コラム
内心忸怩たるものがある:

私は今となっては昭和・平成・令和と3元号をまたぐ世代となってしまっただけではなく、嘗ては良く言われ且つ言っていた「昭和一桁」の生まれである。この状態を真正面から認めれば、最早古き良き時代を過ごしてきた高齢者と化してしまったのではないだろうか。その高齢者がICT化がここまで進み、世界が超高速で大規模に変化していく時代に、我が国や世界の動きを論じるのは烏滸がましいのではないかと「内心忸怩たるもの」があるのだ。

即ち、今や第一戦を離れて早くも25年。「大きく変化し進歩もしてしまった現場と接触の機会もなく、何かと言えば経験を基にして批判的に論じてきた現代の経営者の年齢層とは、年齢も違い過ぎてしまったかと危惧している。その現代の経営者や現場にいる者たちを、過ぎし時代の感覚で批判するのは如何なものか」という思いに囚われる時もある。「時代が変わったと知らないのか」と切り返されれば、応答できないかも知れないと怖れている。

現実には滅多にコンビニも利用せず、スマートフォンも持たず、キャッシュレス決済の方法も知らず、電車の中でもゲームに熱中する感覚も知らないのである。「そんな時代に遅れた世代がしたり顔で口を出す時は終わったのだぞ」と言われれば甘んじて受け入れねばならないかと密かに悩むことすらある。だが、戦前・戦後を切り抜けてきた去りし時代の経験を次世代に伝えて残して置きたいという願望は捨てたくないので、こうして毎日書き続けているのだ。

1~3月期のGDPの速報値に思う

2019-05-21 09:01:36 | コラム
私の街角景気診断の勘の通りだった:

20日の夜はTBSの「報道1930」とフジの“Prime News”をかなりの興味と関心を持って掛け持ちで見ていた。1~3月期の速報値の結果は「矢張りそうだったか」と思わせてくれただけで驚きも何もなかった。最早現職ではない以上、街中を吹く風から感じ取る以外に景気の動向を知る術もないと思っているので、「ずっと好景気ではなかったのでは」と見ていたことが「当たらずと雖も遠からず」よりも近かったのは残念なことだった。

私が特に共感したのはPrime Newsに出られた伊吹文明元大蔵大臣・元衆議院議長他という大物の経済の見方だった。覚えているままにお復習いしておくと「最早資本家ではないしたから成り上がった経営者たちは単なる経営担当者に過ぎず、先行きの不安からか自分の在任中には資金の固定化を招く設備投資を避け、内部留保に走り賃上げを躊躇っている。これではGDPの大部分を占める内需は伸びないのは当然」と指摘しておられた。これらの諸点はつい先頃私が述べた「景気観」と似ている点が多いので大いに気を良くしていた。

私はそこに加えて、自分がその一員である我が国の人口全体の25%以上を占める高齢者として「最早寧ろ終活に入るべき時であるという観点からも、年金生活であるという制約からも、極力出費を避けるというか必要最低限の食べ物を買う程度の支出しかしないのであるから、内需が伸びないのもまた当然だろう」と思っている。自分のことを言えば、ここ2年ほどは出費の中で最大の項目は医療費である。下着以外の衣料品など買ったこともない。他人様のことは解らないが、そういう生活をしているのではないかと推定したくなる人たちが全体の25%を占めて未だ未だ増えていくのが我が国ではないのか。

そういう国内の退っ引きならない事情がある時に、トランプ大統領は立ち上がられて世界制覇を目指しているが如くにしか見えない習近平と中国と、彼らが持つ対アメリカの貿易黒字叩きに出られた。何度も言ってきたことで、私はそのこと自体は結構な方向にあると思っている。だが、これも既に指摘したことだが、トランプ大統領のやり方は「その大目的を達成する為には何が起きても構わないでアメリカファースト」と割り切っておられるようにしか見えないのだ。世界中の専門家とエコノミストたちは、そのトランプ方式が残る世界の諸国の景気に大いなる影響を及ぼすと警告してきた。

そのような恐ろしい結果が具体的には我が国の経済には現れていないが、輸出が不振に陥り副産物的に輸入がそれ以上の率で減少していたことは、既にアメリカと中国の対立の影響が現れてきたのだろうと思わせる。だからと言って「それは困ります、トランプ様。どーぞ方針の転換を」と同盟国である我が国が今更お願いに行ける情勢でもあるまいと思う。既にアメリカは具体的に華為の締め出しに進んでいるし、GoogleはOSの供給を停止するそうだ。

それでは我が国では如何にして現状に対応するかだ。内需が伸びない理由はすにこれまでにも指摘して来たが、私は先行きばかりに不安感を示している経営担当者に従業員に対して(貯蓄に回らせられることも覚悟で)思い切った昇給に踏み切らせることが最も有効だと思っている。同時に経営担当者たちも、アメリカの金融証券業界のエキュゼキュテイブたちやカルロス・ゴーン氏程までとは行かずとも、もっと高額な報酬を与えて「これに見合うほど働け」と士気を鼓舞すべきだと思っている。株だって持たせるべきだ。私は高齢者には内需の伸びへの貢献は期待できないと思う。

とは言うものの、ここから先の世界の景気の動向はアメリカ対中国というか、トランプ大統領対習近平の作戦如何にかかってくる。だが、6月に迫った我が国で開催されるG20で両者の会談があるにしても、そこまでの僅かな期間に両者が「落とし所」の具体案でも持ってこられるのだろうかという疑問は残る。私は常に主張してきたことで「アメリカのビジネスパーソンの辞書には『妥協』も『落とし所』もない」以上、マスコミがビジネスマンだと形容するトランプ大統領が妥協する為の会談の席につくかということだ。