新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

5月23日のTBS「報道1930」

2019-05-24 15:34:13 | コラム
「中国衛星が日本を観察空自スクランブル急増の裏に謎のドローン?」

23日の夜は上記のようにテレビ欄に載せられていたのでは何のことか解らないままに、読売巨人が負けることを期待していた野球の中継を放棄してTBSにチャンネルを合わせてみた。結果としては約2時間を息を抜く間もなく民主党政権時代の防衛大臣で現在は拓殖大学総長の森本敏氏と、自民党衆議院議員で元安全保障委員長の寺田稔氏の語るところを聞いて非常に勉強になっただけではなく、現在のアメリカ対中国の対立が何とも空恐ろしいことになりかねない状況にあることを知らされたことになった。

最も印象的だったのが森本氏が「アメリカのランド研究所が行った『アメリカと中国戦えば』というシミュレーションではアメリカが惨敗となってしまった」と指摘されたことだった。森本氏は司会の松原の質問に答えて「これからは陸・海・空軍が戦うのではなく、宇宙に打ち上げられている衛星や無人機(=ドローン)から発信される情報と指示で地上等にある軍隊も兵器もピンポイントで破壊されてしまうことになるだろう。その際には最早中国に後れを取っているアメリカが不利であるのが明らかだろうか」と解説された。

即ち、現在ではトランプ大統領を頂点に頂くアメリカが華為(HUAWEI)やZTE(これはアメリカに叩かれて倒産寸前まで弱っているとか)等を先頭にする5G等の情報機器の技術は言うに及ばず、世界の最先端を行っている中国の宇宙開発の進展と、世界最大のドローンのメーカー・JDI等はアメリカよりも優勢である。森本氏と寺田氏によれば「その背景には今やアメリカが懸命に中国を攻め改善を迫っている技術の強制移転や知的財産(Intellectual propertyと言うそうだ)を最新鋭の機器を利用して奪取された事実がある」とのことだった。

お二方の解説では「華為の強大さとその技術力は恐るべき物であり、ある分野では既にアメリカが後塵を拝していると言えるだろうという次元にある」とあらためて聞かされたのだった。現時点ではアメリカと中国の対立は貿易面だけであるかの如くに報じられているが、アメリカはこれらの最先端技術を有する華為等を自国内と同盟関係にある諸国からを締め出さねばならず、知的財産の防御にはあらゆる手段を行使して最善の努力を傾けているところである由だ。

今日ここまでに至る間にはオバマ政権の頃から中国の宇宙開発技術等の驚異的な進歩発展には注意してきたが、当時の中国に対する圧力のかけ方が不十分だったのか、アメリカが今日の劣勢に立たされていると森本氏は言われた。特に宇宙には中国が送った衛星が数多く回っているし、中国は既に宇宙に新たな衛星を送って他の衛星を撃ち落とす技術まで開発し実験まで終えているという。両氏が暗示されていたことは「これからは宇宙を制するものが世界を制することになりかねない」という点だと解釈して承っていた。

私にとって非常に印象的だったのは森本氏が「宇宙に行くには出入国管理局もなく、パスポートも不要だ。宇宙における国際法などは未だ存在しない状況」と指摘された点だった。私が受けたもう一つの印象は「トランプ大統領はこのような宇宙における中国優位の状態を承知された上で、中国を叩くべく先ずは貿易戦争を仕掛けられたのか」という点だった。兎に角、華為の製造する機器には検知できる限りのアメリカ側の情報(知財等)を中国に送る機器が埋め込まれていると言われているではないか。

それけに止まらず、他にもJDIが製造する恐ろしいばかりのドローンと無人機が何時領空侵犯するか解らない危険があるというのだ。そこには掲題の「空自スクランブル急増」という現象となって既に表れていると森本氏が指摘されたのだった。我が国の領空にも飛来しているかのようだが、図示された無人機には何の標識もなかった。

私はこういう説明と解説を聞いて慌てふためくのではなく、現在の世界最新鋭の機器は単なるICT化の急速な進歩と発展を示すだけではなく、20世紀までの戦闘機が急発進して戦うような次元を超えて、情報奪取合戦にもなっているのだと知ることが出来た。そこで、これからは如何にして自国の知財を保護するかに最善の努力を傾けると共に、宇宙への進出をこれまでより以上に研究開発していかねばならない時期になっていたと解説された両氏に敬意を表しながら承っていた。

注:*ランド研究所(Rand Corporation)はWikipediaによれば、カリフォルニア州の本拠があるシンクタンクで、Research and Developmentの頭文字をとって“RAND”とした由だ。