新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカは変わってしまったのか

2020-11-15 11:31:36 | コラム
W社ジャパンの長老と懇談した:

暫く振りで長老と連絡がついて、電話で懇談した。何と言ってもお互いに嘆き合ったのが「長い年月務めてきたアメリカ今日のように混乱し、すっかり変貌してしまったという点」だった。因みに。長老は92歳だがW社勤務が30年近く、その前の商社時代に北アメリカに10年の駐在経験があり、私はM社と合わせて22年半のアメリカの会社勤めを経験している。と言うことは、2人とも白人が支配する会社というか、その世界に身を置いて「彼らの一員として働き、内側からアメリカを経験し観察してきた」という事になるのだ。

長老の嘆きというか指摘した点は「目下続いているトランプ大統領の敗北を認めない姿勢は、アメリカ人(=白人)の特徴である『自分さえ良ければ』というか『自分が第一』という意識の強烈な表れである」だった。換言すれば、彼らの世界にいれば解ることで「吾こそは」という自己顕示欲が余りにも強烈に出ているという見方だった。その辺りを私なりに解説すれば「周囲との協調を図るよりは、自分こそが優れている」ということを何としても示してみようという強硬な姿勢である。この辺りは彼らの中にいてこそ見えてくる、日本人との相違点である。

より解りやすいだろう簡単な彼らの自己顕示欲と「自分さえ良ければ」という意識に表現はNPBに来ている元MLBの野球選手たちのプレー振りに露骨に出いる。彼らは、何度か指摘したが、打つ方では所謂「テイームバッテイング」などな全く無視して「自分が如何に優れているか」を顕示する打ち方しかしないし、投手の場合では「どうだ。俺様の投球が打てるか」とばかりに持てる球種を「これでもか」と投げ込んでくるだけで、相手打者の欠陥を突くような日本の投手のような精密さはないのだ。

長老はトランプ氏はその点を飽くまでも押しているのであって、何処までも我を張って「吾こそは」という意識を徹底的に表しているのだと見ているのだ。即ち、バイデン側に不正があると主張し続けていくか、あるいは敗北を認める声明を出すかの二択を迫られて、恐らく押し続けられる間は前者を採って行くぞとの意思表示だ。お互いにトランプ氏の4年間の実績は評価するが、あの品位に欠けた姿勢と支持層向けの語り口を嫌悪する階層の支持を得られなかったのは、寧ろ気の毒だったのではないかという点では見解は一致した。

ただ、アメリカの人口の構成が我々が現職だった頃と余りにも変化してしまい、白人の支配が及ばなくなってしまったのではトランプ大統領が再選されなかったのは、時代の流れではないのかという見方である。我々は良き時代にアメリカの大手企業に身を置いていたのだという、我々が屡々若い世代に言われる「貴方たちの時代は良かった」と言われるのと同じような感覚であろう。私が屡々引用する「アメリカの人口が我々が引退した後で6千万人も増え少数民族が激増し、アメリカが変貌したことがトランプ氏の敗北に繋がったではないか」とも言える。

専門家や評論家はアメリカの分断が一層激しくなったと言うが、我々が勤務していた90年代まででも大手企業の経営陣は言うに及ばす、本社機構の中堅幹部にも事務担当の中間層にも、アフリカ系は勿論ヒスパニックでも(アジア系も)極めて希な存在だった。これは分断(division)だったし、現在はその傾向が一層明らかになってきたのではないのか。トランプ大統領はヒスパニック等の不法移民の流入を嫌っていたのは白人の支配者としてはごく普通の考えだったのではないのだろうか。私は何度も「22年半の間にアフリカ系アメリカ人と膝付わせた経験がない」と述べてきた。

終わりにお断りしておきたいことがある。それは、私はこれまでに何度も何度も「彼らの一員としてアメリカの為に働いてきた」と語ってきた。それは高名な評論家や専門家とは異なる立場と視点からアメリカを語って来たということだ。そういう方々は学識経験と豊富な知識と資料に基づいてアメリカを見ておられるが、インサイダーだった訳ではないので、その論点は自ずとこの長老や私とは異なっていると思うのだ。アメリカ側の一員だったという点では、早稲田大学の中林美恵子教授は10年も上院に勤務されたので、その視点と論点にはインサイダー色が濃厚であると思う。

私はこの長老と同じW社に19年半も勤務したので、その間に彼の並々ならぬアメリカの企業社会における文化の知識と経験に学び、時には剽窃もしてきた。だが、彼は私ほどにはその知識と経験を書き物にもしてこなかった。何故か、アメリカの企業に永年勤務され、native speakerにも劣らない英語力を持っておられる方々は余り「アメリカとは」や「我が国とアメリカとの相違点」について語られないのだ。私は勿体ないと思っている。私は「内側から見たアメリカ」を、我が国の方々にもっとより良く知って貰った方が良いと思っているのだが。