新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

世襲議員と閣僚を取り上げて考えて見た

2023-11-23 09:41:08 | コラム
野田佳彦元総理は岸田総理に「ルパンだって三世まで」ですと:

野田佳彦元総理は岸田総理を「総理は四世です」と指摘したのをニュースで聞いていた。注目されそうなユーモアのセンスを見せた論議の仕方だと思った。ここだけを見れば、野田元総理が「国会議員を世襲するのは宜しくないし、閣僚に登用するのは宜しいことか」と質したかのようだった。

私が知る限りでは野田氏は世襲ではない。現在の岸田内閣には総理を除けば4名の世襲議員が任命されている。第2次というのか、その前は20名中12名だったとかだ。

私のような一国民には世襲の議員乃至は閣僚が良いか否かではなく、キチンと国家と国民の為に働いてくれれば、それで充分なのである。だが、今日までに自由民主党から選ばれた親子代々の政治家業の一族から登用された者の中には、芳しくない業績があったが為に指弾されていた閣僚がいたように思えるのだ。

だが、政界を離れて経済界というか実業の世界を見れば、先祖代々のような家系の企業や店舗が多いのもまた確かなことである。私が新卒後17年もの間勤めていた紙流通機構の中で、二次・三次の販売店(所謂「卸商」)の中には同族経営が多く、それこそ江戸時代から延々と続いている所もあった。即ち、創業者の一族が経営して繁盛し続けてきたのだ。

何も紙流通分野だけを取り上げなくても、我が国には江戸時代から創業者一族が経営している有名店など幾らでもある。銀座の交差点にある時計台の服部時計店など何代・何年続いているのだろう。和菓子の分野にも多いだろう。要するに、言いたい事は「創業家一族が暖簾を守って元禄の時代から経営を続けてきたことの素晴らしさ」なのである。

中には「売り家と唐様で書く三代目」などいう川柳もあるように「初代が営々と築き上げた家業を三代目ともなると駄目にしてしまう」と皮肉ったものだ。野田佳彦元総理がここまでのことを言外に含めて総理を批判したのではないだろうが、確かに我が国では「政治を恰も家業にしたかの如くに世襲すること、に対する功罪が論じられて久しいもの」がある。

その世襲の自由民主党系の一族がその地方で「地盤・看板・鞄」を占有しているので、中々独立系の有能な人材が頭角を現しにくいのであるとも聞いている。その選挙区の有権者の人心を引きつけて当選を重ねるのと、創業者の息子であり孫であるからと兄弟で社長や専務となって社員の心を掴んで経営していくのとは異なる課題というか仕事(job)であろう。

私が「世襲議員には世襲の経営者が継承した家業を繁栄させ会社を大きくして、増益させ、海外にまで進出していった業績の裏に如何なる手法と努力があったかのような経営の“know-how”を、国家の政治に如何に活かせるかと、経営者たちと腹蔵なき知識と意見交換の場があっても良くはないのか」と思うのだ。

いや、政治と経営、政治と学問/教育の間での有為な人材の交流が、アメリカほどの流動性は要らないかも知れないが、より積極的に行われても良いのではないのか。自分の殻に閉じこもらず、相互に他の分野を見て、聞いてきても失うものはないのではないか。

政治の場における世襲の是非や良いか悪いかを論じるよりも、如何にすれば世襲からも優れた前途有望な人材を育てられるかを考える方が有効ではないのかと思えるのだ。例に挙げるのが的確かどうかとは思うが、小泉純一郎元総理は「二男の進次郎の方が政治家に向いている」と語られて、進次郎氏を送り込まれたが、成果がどれ程上がっているだろうか。

立憲民主党や国民民主党に元官僚が多いのは自由民主党に世襲議員が多いので、彼らが入り込める余地が残っていないからだとの解説を聞いたことがある。なるほど、立憲民主党には逃げ場がないように相手を追い詰める議論を吹っ掛ける議員が多い訳だと妙に納得した。現在までの所では「世襲派の政党が優位に立っている」のではないか。

岸田総理は四代目だ。矢張り今回も「岸田さん。一層奮起して下さい。危機が迫っていますよ」と激励の言葉を贈って終わる。