阪神タイガースが日本シリーズを制覇:
実は、昨日の午後にあの第7戦の予想として「宮城大弥が2回も左打者が多い阪神を抑えきるほど話が上手く行くのか」と指摘してあった。それは、勿論プロの人たちがやっている野球だから、その面目に賭けても「同じ投手に2試合も続けて捻られるような醜態は絶対に演じない」と固く心に誓って試合に臨んだのだろう。
だが、「固く心に誓った」くらいで、あの重大な試合に勝てるものではないと思う。では何がその背景というか裏にあったのかということだが、私は阪神が「徹底的なスカウティング」を実施してあったのだと思う。ご存じの方は多いと思うが、現代の野球では故野村克也氏が実行された「ID野球」が示すように、相手のティームの手のうち、足の裏まで完璧にデータが取れていたと思っている。
オリックスにしたところで、阪神のデータくらいは十分すぎるほど取りそろえて、シリーズに臨んだのだと思っている。この辺りを宮城大弥だけに限って考えてみよう。阪神があのように前回は6回まで完全に抑えられてしまったのは、推定すれば宮城は勿論「上手いな」と感心したほど良い投球をしていたが、宮城がスカウティングの裏をかく投球をしていたのだったらどうだろう。
阪神は昨夜には改めてスカウティングをかけて「2試合も続けてやられて堪るか」と、宮城の投球の組み立てを読み切っていたと考えれば、あの雑なバッテイングしか出来ないノイジーが、宮城得意のチェンジアップが低目に来ると読み切れていて見事に掬い上げて、高々とホームランにしてしまったのだ。打たれた宮城があれほどしおれていたのは「何で、あの球が打たれたのか」と衝撃を受けていたのだと読んだ。
だが、打たれる伏線はその前にあった。それは振り回すだけのノーテクのバッテイングをする森下に打たれ、大山に明らかにすっぽ抜けか投げ損ないの死球を与えて、動揺があったと見えたと思えば、あのホームランである。私は正直なところ、これでほぼ試合は決まったと思って見ていた。それは、カメラが映し出すオリックスのベンチの中の雰囲気が余りにも沈滞気味に見えたからだし、中嶋監督の表情には精気が消えていた。
そこに、中嶋監督が投手交代で失敗をしたのだ。比嘉を出したのが良いか悪いかは別にして、4点目を取られたときに諦めて代えるべきだったが放置して7失点になってしまい、「オリックスさん、ここまで楽しく観戦させて貰って有り難う」状態にしてしまった。宇田川があれだけチャンと投げられたのだから、比嘉の起用は明らかに失敗だった。まさか、宮城を信じ切って交代の用意が出来ていなかったというのではあるまいな。
一方の阪神は「勝つときはこんなもので、やることなすこと上手く行く」ものなのだ。MVPを取った近本などは楽しそうにバッテイングをやっていたし、何故使わなかったと思わせられていた青柳もオリックスを寄せ付けなかったし、森下などは新人の打点記録を作ってしまったし、伊藤将司も前回登板の失敗を充分に補っていた。岩崎が頓宮にホームランを打たれたのは、言い方は悪いが「ご愛敬」だった。
纏めてみれば、オリックスは中嶋監督の采配に随所に綻びが出ていたことと、意外にもエラーが多かったことと、案外に選手層が薄くて、広岡程度の者をトップバッターで使わざるを得なかった辺りは、吉田正尚の後を埋め切れていなかった欠陥だと見た。最大の誤算は初戦で山本由伸があれほど打たれて貴重な試合を落としたことではないのか。
阪神は「岡田彰布監督の経験十分な試合運びと選手の起用に敬意を表したい。それは近本に始まって木浪までの打線を固定した行き方で立派な成果を挙げたこと、中野を二塁に回して守備を安定させ、木浪をショートストップに使ってバッテイングまで成長させたこと、まるで実績がなかった村上頌樹を育てたこと、森下を使える領域まで持って行かれたこと等々、枚挙に暇がない。
「岡田監督さん。優勝お目出度とう存じます。流石です」と締めて終わる。