新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

岸田文雄内閣総理大臣の考察

2023-12-14 07:32:17 | コラム
12月13日夜の記者会見から:

興味があったというよりも、総理が如何なる表情で何を語られるかに関心があったので、登場されるのをジッと待っていた。一昨日だったか、報道1930で毎日新聞の論説委員だったかが(氏名も肩書きも失念で申し訳ないが)「総理は憔悴しているのではとの観測もあったが、それどころか意気軒昂としておられ、現在の難局などものともしていない感じさえある」と語っていたのが印象的だったので「さて、今夜は?」との興味があった。

語り始められると、これまでのように原稿を間違いなく読むためなのだろうか、下の方向にばかりに目が行っていたのではなく、堂々として岸田文雄としてしっかりとした声音で信条を述べ始められた。原稿読み上げとは違う(それなりの?失礼)迫力を感じさせられた。言うなれば「岸田文雄」という方の個性が出ていたと見たのだった。

そこで思い出したことがあった。確かPrime Newsに以前登場された日本大学危機管理学部教授の先崎彰容氏が、その日の菅首相の演説を評して「原稿無しで菅義偉自身の言葉で語っておられたので、個性も出ていたし十分な迫力を感じさせられた。要人の演説はかくあった欲しい」と述べられたことだった。岸田総理の昨夜の冒頭の語りにも、これが当て嵌まると感じていた。言うなれば、「伸び伸びとしていた」のだった。

国会閉会直後だったので、原稿が間に合わなかったのか、あるいは総理自身が自分で用意された文案で行くと決められたのかも知れないが、私は一国の総理大臣や閣僚は自分の思うところを、自分の言葉で語ってほしいものだと言いたいのである。総理の語りを聞いて「なるほど、毎日新聞のあの方が指摘された通りで、総理は落ち込んではおられないようだ」と推察した。でも、何故そうしていられるのだろう。

総理の語りを聞いていて、2点感じたことがあった。その第一は「政治への信頼の回復と自民党の体質改善に戦っていく」と言われたこと。疑問に感じたことは「信頼回復と自分の党の体質改善に何処の誰と戦うのだ」と言われるのかという点。小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」と声高らかに唱えて総裁選に立たれた。それと同じ意味で抵抗勢力と戦うことを予期されているのか、あるいは清和会と戦うのかが分からなかった。

次は「一致結束して事に当たる」と言われたこと。「一致団結」と何処がどう違うのかは不詳だが、我が国では何も政界だけのことではなく、企業社会でもスポーツの世界でも、指導者も社員も選手も何か事があれば「全員一丸となって」と言うし、政治家の中には「全員野球で」という当方には意味不明な旗印を掲げてその場に臨んで行かれる方もおられる。

昭和20年から蹴球部に入って「全員が纏まっていこう」という世界を、大学を終えるまで経験していたので、こう言うというか、このように言いたい精神は良く分かる。だが、現実にその組織に入れば「全体のためには個性などは消してその輪(和?)というか、その団体の決まりと伝統の中に全員が一糸乱れずに、心を一にして団結していかねばならない」のだ。これは目的達成のためにはテイームワークが極めて重要なことは言うまでもあるまい。

だが、異文化に国、アメリカの会社に転じてからは、同じように会社と言っても、全く違うのだと分かるまではある程度の期間を要した。どう違うのかを簡単に言ってしまえば「全員が即戦力としての中途採用で、各人が異なるjob descriptionの下に与えられた任務の達成に努めるのだから、言わばバラバラで一致団結などしている暇はないのである。私はteam workなど聞いたことがなかった。

私はこの様子を「我が社という大海軍の艦隊には旗艦がいて全部の艦船に指令を発するが、どのように戦うかは各艦船に任せているから、それぞれのやり方で任務を遂行していく。一方の我が国では全艦戦は旗艦にいる長官の指令の下に一致団結して、同じ方向に一糸乱れずに進んで事に当たる」という違いがあると、部会で語ったことがあった。

何が言いたいのかと言えば「岸田総理は今や主要5派閥をそれぞれが思うように動くのを止めさせてまでも、全党員が一致結束して司令長官である総理/総裁の下に一糸乱れずに、国民の政治に対する信頼の回復と党の体質改革に火の玉となって当たって行かねばならない」のだ。安倍派から猛烈な反発があったからといって、人事を躊躇っている場合ではないのかも知れないのでは。

昨夜の演説に見せた個性を発揮されるべき時ではないのか。それが出来るか否かを今後は注目していくつもりだが、前途多難ではないのか。