日本大学の学内とフットボール関係者の声を聞けば:
先頃、日本大学理事会が「継続審議」としていたアメリカンフットボール部を廃部とする決定を下した。この決定については学内でも異論を唱えておられる向きもあると聞いているので、関東大学リーグ1部リーグでの経験者が得ている複数の取材源からの情報や、彼らの意見と批判等々を訊いてみた。その結果を下記のように纏めて紹介しようと思う次第。
彼らは「今回の日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件で、まず確認しておきたい事がある」と言われる。それは、この事件は日本大学アメリカンフットボール部の寮で起きた事案であるという点なのだそうだ。この寮は120数名の部員の中から20名程度しか寄宿しておらず、残る100名近い部員はこの事件に無関係ではないかと見ているのだ。廃部ともなれば、日本大学に入学し、アメリカンフットボール部に入部する計画で推薦入学を決めた現在の高校3年生にまで連帯責任を問う事になるのが、正しい判断なのかという疑問を呈しているのだ。
廃部の決定をした理事会では「アメリカンフットボール部を廃部にするが、現役の部員らについては活動ができるよう受け皿を設ける」と取り決められたとも報じられていた。それにも拘わらず、NHKのニュースでは「大学当局は関東学連を脱退する」と報じていた。何処からそういうニュースを得ていたのか。
この報道には矛盾があり、大学当局は学生たちを欺こうとしているとすら疑いたくなると言われていた。学連を脱退して、理事会の決定のように来年になってから新組織を作るのであれば、改めて加盟を申請する手続きを踏む事になるのではないのだろうか。この場合には、1年目は準加盟にしかなれないと規定されているので、実質的に来季も出場停止と同じ結果になってしまうのではと懸念を表明していた。即ち、再加盟できても2年目には3部に出場できるだけなのだ。
それで、学生たちが納得したとしても、3部リーグに参戦では既存の大学には迷惑がかかるのではないと危惧する意見が出ていた。常時甲子園ボウルを目指していたようなティームが、最下部のリーグに参加したら、かえって危険が誘発されるのではないのかと危ぶむ意見が出ていたそうだ。何よりも問題になるだろう事は「甲子園ボウルを目指していた在学生や新入生の受け皿にはなり得ない」という点ではないかと言われていた。
彼ら大学フットボール界の事情に明るい人たちは「このような最悪であろう事態を避けるためにも、下記のような行動を一刻も早く起こした方が良いのではないか」と示唆していた。
*日本大学理事会と当局に向かって「新しく組織されるアメリカンフットボール部が、そのまま今日までのアメリカンフットボール部の学連加盟を引き継ぐように強く要請する方が良いのではないか。譬え『廃部』を決定しても、それは日本大学内部の問題でしかないように思える。脱退の申請をしない限り、学連は脱退させないのではないか」という意見が出ていた。
彼らフットボール界の事情に通じている者たちは「廃部にした後で、新しい組織ができるまで、学連の事業継続に支障のない対応さえ出来ていれば、脱退の必要はないはずだし、学連もそれで問題ないはずでは」と見ていた。事件には無関係な現役生と、連帯責任を問われるべきではない新入生には、入部への保障されるべき権利があるはずだと見ていた。譬え学連のルールが「廃部にしたら脱退する」となっていても、学連に配慮を求めて脱退を免れるように最大限の努力をするのが、受け皿を約束した大学側の責務ではないのかという意見も出ていた。
*関東学連に向けては、事件に無関係な現役生と連帯責任を問うべきではない新入生を救済するために、日本大学当局が不当な脱退を申請した場合には、受理しないように要請しておいた方が良いだろうとの考え方を示す人もいた。その根拠は「関東大学アメリカンフットボール連盟は、学生のための団体なはずです。日本大学が、法的な根拠を持たない罰則を事件に無関係な現役生と、連帯責任自体が存在しない新入生にも問うというのであれば、それを救済する側に立つのが道理ではないか」と主張する人もいた。
*さらなる手段としては「一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS ユニバス)とスポーツ庁に対して、廃部と関東学連の脱退の不当性を訴え、このような場合に関する指針を示してもらう」事もあるだろう。日本大学はユニバスに加盟していない由だが、学生スポーツを統轄する団体が現時点ではユニバス以外に考えられない以上、ユニバスに救済を求めるのは正当な手段ではないか進言していた。またスポーツ庁は、まさに日本のアスリートを統轄する組織なはずだから、ここに救済を求めるのも必要ではないのかの見解だった。
*文科省に対しては、日本大学でアメリカンフットボール部に所属する心算で推薦入学を決めた高校生への救済を要望する方法があるのでは。日本大学理事会と当局が、責任の存在しない高校3年生にまで、不利益を及ぼうそうとする危険性が見えている以上、これは大学入試業務に関する問題であり、文科省に救済を求める事もあり得るのではないかという見方すらあった。
*主要な報道機関に対して、あらためて日本大学理事会と当局の廃部決定の判断の不当性と不適切性をも併せて訴えて、世論を喚起する事までも考えても良いのではという意見すら披露する人もいたそうだ。そうまで言われる理由は「法的根拠がないのにも拘わらず処罰され、連帯責任を取らされ、権利を制限され、不利益を被ったりする事などあってはならない」点にあるのだと聞いた。「その点を遍く一般社会にも認識して貰えれば良いのだ」という事であるそうだ。
現状を何とか打開するためには、現役の部員とその保護者及び卒業生が糾合して、大学当局との交渉をする組織を可及的速やかに結成して、行動を起こすべき時ではないのかと言及する人もいた。
廃部に賛成した11人の理事たちは、試合もできない準加盟の新組織を設ける意図だったら、甲子園ボウルに出場することを夢みて入学してきた新入生たちの心中を何と考えていたのか理解不能だとの批判も出ていた。もしも、そう認識しているのであれば、アメリカンフットボール部、フェニックスに関しては無知ではなかったかと疑いたくなると言う。廃部に賛成された11人の理事一人一人の見解と説明が聞きたくなるそうだ。
日本大学理事会と当局が誠意ある善後策乃至は改善策を速やかに取採る事を期待したい。「廃部」がフェアーな姿勢かとの疑問をあらためて申し立てていた。