新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

世界各国の1人当たりの年間紙・板紙消費量に思う

2014-11-24 08:50:15 | コラム
ここには重大な問題が潜んでいるのでは:

私は「もしも中国でこのまま13億余の膨大な数の国民の生活水準が上がり続けていけば、何も紙パルプだけではなく世界中のあらゆる産業で原料不足が生じるのも遠い先のことではない」と本気で懸念している。現に中国は資源小国でありながら紙と板紙の生産量が世界一で、個人消費量は世界の平均の60%見当でしかない。もしも遠からぬ将来に世界の平均値まで成長したら、紙パルプ産業界だけでも深刻な原料不足が生じかねないのだ。

中国には紙パだけではなく国全体の需要に見合うだけの木材資源がない。それかあらぬか、嘗て小平はウエアーハウザーを公式訪問して言った「私は木を買いに来たのではない。その育て方を教えて貰いに来た」と。問題点の所在を承知していたのだった。

現に中国の紙パルプ産業はパルプも古紙も大幅に輸入に依存し、中国が買いに出たかどうかで相場大きく変動し大袈裟に言えば世界市場の需給関係のバランスが変わるほどなのだ。古紙ではアメリカが世界最大の供給国でありながら、その中国が輸出する印刷用紙に対して高率の関税を賦課して輸入を阻んでいたりする。

私はこのような古い表現で恐縮だが「加工貿易」に依存している中国が、国内需要を大幅に上回る生産設備を拡張し続ければ、何も紙パルプ産業に限定されたことではなく、エネルギー源等を始めとして全世界市場から買い漁っていくことになるのは明らかだと見なしている。もしも中国が原材料確保に自信があれば、あれほどアフリカだの旧ソ連圏に石油等の確保の為に進出してこなかっただろうと考えている。

紙パルプ産業界だけを見ても、BRICsの一角を占めるブラジルではその豊富な木材資源を有効活用すべく、大型のパルプ工場を続々と新設しているが、その中には中国市場での需要増を当て込んでいる企業もある。このような新増設は明らかに1人当たりの年間紙・板紙消費量が世界平均に満たない諸国の需要の伸びを期待しているとしか考えられない。

中国のオーストラリアへの原料供給の依存度が高いのは事実だろうし、また中国からの移民の急増にオーストラリア政府が対策を講じ始めたと宮崎正弘氏はその新刊の本で指摘されていた。私が指摘したいことは、新興勢力での原料の需要が増大することは明らかだが、中国は既に諸国に先んじて手を打ってあるので、いざとなった時に非常に有利な地位を占めることが予測できる。

「風が吹けば桶屋が儲かる」式な論法で行けば、その際には、何も紙パルプ産業だけではなく世界的な原料獲得合戦と価格上昇という時代になるだろうということ。そこには食料も、水も供給不足に陥る危険性があるとの専門家の予測もある。文明の発展とICT化の進捗が持たすだろう事態を考えると、悲観論者の私は、何となく空恐ろしいものを感じさせられるのだ。

11月23日

2014-11-24 08:03:09 | コラム
良い日だった:

三連休とやらの中日を主にスポーツの面から振り返ってみる。

先ずはゴルフだが、珍しくも国内で行われたトーナメントで男女とも日本人が勝ったのは非常に気分が良いことだった。男子ではアメリカと日本を往復していた松山英樹がプレーオフまで持ち込んで、同じ東北福祉大の先輩だという岩田寛を追い抜いて優勝した。韓国勢にしては珍しく金髪に染めたI.H.ホなる者はミスが出て終盤で沈んでしまった。しかし、アメリカやオーストラリアの者たちも迫ってきたので少しハラハラさせられた。

女子では横峯さくらが結婚後初という形容詞?を付けて、今年初という優勝を成し遂げた。ここでは珍しく優勝を競り合ったのは日本人だけで、韓国人がいなかった。だが、横峰が優勝したものの、賞金女王にはアン・ソン・ジュが3度目となるタイトルを獲得したと報じられて、「目出度さも中ぐらいなり」という気分にさせられた。

私が常々思っていることを包み隠さずに言えば「我が国のゴルフ界は度量が広く、何年も何年も韓国勢に蹂躙されていながら、何の対抗手段も講じていないのは不満である。一方では韓国の司法は産経の加藤前支局長を理不尽にも在宅起訴して出国禁止にしているではないか」なのだ。日本での道場荒らしを認めずに「アメリカか日本か何れの市場で活動するかを決めて我が国のトーナメントに参加せよ」くらいは言う狭量さ?があっても良いのでは」と言いたい。

だが、このような危ないことを言う前に、我が国のプロゴルファーたちに一層の奮励努力を期待したいのだ。もっと厳しい環境下に身を置いて韓国勢に負けないだけの技術と力を養えと言いたいのだ。現状ではウオン高に苦しむ韓国に対するゴルフによる資金援助かと思わせるほどやられているではないか。恥ずかしい。

次は関東大学アメリカンフットボール・リーグだ。昨日は横浜で日大対法政の優勝を決める試合があった。何年ぶりかで観戦に行こうかと考えたが、試合終了が夕方になるのでは万一のことがあってはならないと敬遠して、リーグのHPで経過を見ていた。結果では愚息の1人がお世話になっていた日大が17:14というFG(フィールド・ゴールは3点)差で勝って三連覇だった。

この辺りをフットボールに馴染みがない方の為に細かく解説すれば、TD(タッチ・ダウンは6点だが、キックで1点追加の7点)では双方とも2本だったのだ。これで一安心だった。実質的に年内に残ったのは甲子園ボウルで、恐らく昨年に続いて長年の宿敵・関西学院大学が相手になるだろう。

相撲は全く関心がないので誰が優勝しようと何だろうと、マスコミが騒ぐのに任せている。また、名優だったそうだ高倉健の死を連日マスコミが追悼しているのは解らないでもない。だが、彼の全盛期を知らず主演映画をテレビでしか見た記憶がないので、「なるほど、そういうものだったか。勲章まで貰っていた名優だったか」とあらためて知らされた感が深い。私の価値観の圏外の人だったと言うこと。

実は、1日前の11月22日は「良い夫婦の日」だったそうだが、私にとっては戸籍上は措くとしても実質的に82歳となってしまった日だった。感銘も感激もないが、2006年1月の心筋梗塞以来、大小の病気が続き体力も気力も気が付けば年齢相応の衰えてきた。だが、当人は未だに40歳台だった頃の積もりで動きたい時がある。危ないものだ。

その表れがフットボール観戦の横浜行きを見送った辺りだ。しかし、中学・高校同期の石原君は結局また衆議院選挙に出ると報じられた。偉いものだとは思うが、どうやって衰えた気力と体力を補っていくかが気懸かりだ。無事に当選して仮令「次世代の党」が野党であっても、お国の為に妙な野党が蔓延らないように活動して貰いたいと希望する。

私のアベノミクス論

2014-11-23 15:04:23 | コラム
第三の矢を放つのは財界というか産業界の責務ではないのか:

間違っていたらご免なさいとの覚悟をして論じていく。

解散・総選挙となってアベノミクスの効用というか、効果というか、至らなさまでが野党を始めあちこちで云々されるようになった。私は基本的に景気回復というものが、政府の政策如何だけで為されるものではないと信じている。故に、アベノミクスだけを論じているのは片手落ちであるだけではなく、責任転嫁であるとすら考えている。現在の円安による物価上昇やGDPのマイナス成長は、アベノミクスだけがもたらしたものとは考えていないのだが。

株価の上昇や業界や業種や会社によっては昇給していることは、確かにアベノミクスの2本の矢の成果だろうが、それほどまでに政府とその政策頼みで良いものなのかと大いに疑問に感じている。安倍総理が会社の経営まで携わっているのではない。経営者の責任であろう。不況だから、デフレだから業績改善がはかばかしくないから昇給どころではないなどと言っている経営者が、その責任を果たしているのだろうか。そうではないだろう。

円安になっただけで輸出依存度が高い企業が成績が良くなり、菅直人の負の置き土産で原発が止まったままなので、化石燃料や天然ガスの輸入で利益が挙がっている業界もあるのは確かだ。しかし、如何なる環境下でも業績改善の為の最善の努力と工夫があって然るべきだろう。現在の経営者たちの努力と工夫が不足している気がしてならないのは、眼鏡違いだろうか。手っ取り早い例では、デジカメの時代となったこの世の中でも、富士フイルムは経営体質の転換で切り抜けていたではないか。

例によってアメリカの例を挙げてみたい。アメリカの紙パルプ産業界はインターネットに早くから圧されて、印刷用紙の需要衰退が懸念されていた。そこで、世界最大のInternational Paper(IP)を始めとして最大の競争相手だったWeyerhaeuser(Weyco)等は、2005~2007年に大規模なリストラに着手し始めた。両社とも先ず印刷用紙事業の整理から入った。Weycoは上質紙(所謂模造紙)事業を分離独立させ、IPはコーテッド紙事業をあっさりと売却処分した。

IPはこれだけに止まらず、経営体質の転換と称する大リストラで「成長が望めないアメリカ市場には投資しない」と表明し、中国、インド、ブラジル、ロシア等の所謂”BRICs”に投資を開始し、特に中国では現地企業との合弁を含めて積極的に工場を新設し始めたのだった。現在のところはこの政策は功を奏して、経営体質の転換以前の売上高2兆6,000億円を維持できているのは、賞賛に値するとの説がある。

このようなリストラはアメリカでは現在でも続いており、所謂総合的な製紙会社がほとんど消滅した形である。このような手法は労働市場が流動的であり、経営者の思いきった判断でM&Aや事業の分離・独立が出来るアメリカだからであるとは言える。だが、二者択一的に物事を判断することが許される文化と思考体系の違いも手伝っているだろう。我が国にはこのような手法が許される土壌が育っていないものまた事実ではないか。

だからと言って、このまま拱手傍観していればアメリカが如何にオバマ大統領の経済政策が不備だったとは言え、景気が徐々に回復軌道に乗ってドル高/円安が進めば、円安インフレ傾向が進み、世界の他の地域での不況の為に輸出が捗らない状況を打破出来ずに終わる危険性がある気がしてならない。経営者と経営中枢にある管理職たちの奮起が必要である。この状況下では誰がやっても同じだという言い訳はもう通用しない気がしてならない。

確かに過剰な設備を抱えている業界は多いし、輸入品との競合も激化する一方だろうし、TPPの恐怖を論じている多くの議員たちの票田となっている分野もある。だからと言って、奮起して昇給させて個人消費を喚起して業績を改善させて昇給分を取り返そうという類いの気迫を見せる経営者は少ないようだし、蓄積はあっても新規設備か合理化や近代化への投資が進んでいない感は否めないのだ。

紙パルプ産業界だけを見れば、中国を始めとするインドネシア、韓国、タイ、ブラジル等の新興勢力は新興なるが故に最も近代的で生産効率が高い生産設備を導入している。そして、古き良きコスト高のマシンで対抗せざるを得ない欧米と我が国の業界を圧倒しているのが現在の状況である。価格競争では勝てる訳がないのだ。しかも内需がの規模が小さい以上、輸出に集約してくるのは当然で、世界市場を混乱させた時期があった。

言いたいことは、かかる状況を打破し、不況にせよデフレにせよ脱出していく努力と工夫が必要ではないのだろうか。我が国には世界のどの国にもないような質の高い労働力があるし、ノーベル賞を受賞し続けるような世界的な頭脳の持ち主を輩出しているではないか。頭脳的な人的資源は豊富である。これを適切に活かして景気回復に努力していく必要があるのではないかと思うのだが、如何なものだろう。

私はアメリカの景気が回復したからと言って、あの労働力の質では何れほころびを生じると危惧している。そこには我が国のチャンスがあるだろう。そこを意識しているのだろうか、未だにTPPを強硬に推進している、基本的に輸出国でもないにも拘わらず。

だが、不吉な材料も出てきた。エアーバッグのタカタがどうやら世界的に問題を起こしているのは憂慮すべき材料だ。あのアメリカの公聴会で清水という専務はこともあろうに”Deeply sorry.”と全面的に責任を認める表現を使ってしまった。しかも、苦しい言い訳で「生産したのはアメリカとメキシコ(だったか?)の工場」と逃げていた。こんな事をしていれば、我が国の評価が下がる。政府も解決に乗り出さねばならない案件ではないのか、技術の日本を守る為にも。

世界各国の紙・板紙の消費量が何を示すか

2014-11-23 08:16:41 | コラム
紙・板紙の1人当たりの消費量の大きさがその国の文明とICT化のバロメータ-か:

昨日採り上げた世界上位30ヶ国の国民1人当たりの年間紙・板紙の消費量は先進工業国では毎年減少し、中国が代表する紙パルプ産業の新興勢力の諸国では増加傾向が続いている事実が明らかだった。

私はこの消費量は依然としてその国の文明と言うべきか、鉱工業等のバロメーターであることは変わっていないとは思う。だが、最早それだけでその度合いが測れる時代は終わっている事実を、私が採り上げたRISIの統計が示していると見ている。即ち、欧米の諸国や我が国では少数の例外を除いて年々その数が減少する一方で、中国、韓国、インドネシア、インド、タイ、ベトナム、ブラジル、ロシア、トルコ、イラン等では成長が維持されているのだった。

アメリカ等はそのマイナス成長の最たるもので、インターネットに圧されて印刷(紙)媒体の衰退が続き、新聞用紙などは過去10年間にその需要が約60%も減少してしまっていた。即ち、極言すればICT化が進んだ国ほど紙・板紙の中で印刷用新需要が激減したということだ。そのために、その国での印刷用紙の衰退がICT化の進み具合、即ち最も近代的な文明の発展の度合いを示していると見て良いのではないのかと言いたいのだ。

RISIによれば、世界全体(175ヶ国)でも56.5 kgで▲0.5%だったので、中国の73.2 kgで+1.4%の成長などはその文明が未だ発展途上にあることを示していると思うのだ。

地域別には欧州(42ヶ国)が115.8 kgで▲0.8%、アジア(30ヶ国)が45.2 kgで+0.8%、中東(13ヶ国)が35.5 kgで+3.1%、オセアニア(8ヶ国)が111.4 kgで▲8.1%、北米(2ヶ国)が218.3 kgで▲1.0%、中南米(33ヶ国)が46.0 kgで▲0.6%、アフリカ(47ヶ国)が8.1 kgで▲0.9%だった。これらの数字からも文明とICT化の度合いが読めるのではないか。

13年度の世界上位30ヶ国の紙・板紙統計

2014-11-22 17:29:47 | コラム
2013年度の世界上位30ヶ国の紙・板紙の消費量:

アメリカの紙パルプ産業界の調査機関、RISIが昨13年度の全世界の紙・板紙の生産と消費量の統計を発表した。それによれば、消費は対前年比0.7%増の4億364万 ton、生産は0.8%増の4億261万 tonとはなっていたが、欧州は消費が▲0.7%で生産が▲1.0%、北米は消費が▲0.1%で生産は▲0.3%という具合で、先進国は挙ってマイナス成長。我が国は消費が▲1.7%で生産は▲0.6%で、遺憾ながら先進国であることを証明する結果だった。

この理屈はICT化が目覚ましく進んだ先進国では印刷(紙)媒体の続落傾向が続き、それが紙・板紙の消費量の減少に繋がっているということだ。私は大変遺憾な現象であると捉えている。即ち、全世界の消費の伸びは中国を始めとする途上国での成長が支えているということだ。中国は消費量が2.0%で生産量は3.1%という先進諸国との対比では目覚ましい?成長を維持していた結果となっていた。

因みに、アジア30ヶ国ではでは消費が1.8%で生産は2.6%の伸びを示していた。さらに中国は世界第1位の生産国で1億469万 tonで、何と世界全体の26.0%を占めていた。アメリカが世界第2位で17.8%、我が国は第3位でありながら6.8%だったのだ。因みに、全欧州の175ヶ国でもシェアーは26.3%に過ぎなかった。今や、紙・板紙の消費量が減少することが先進国である証明になるという皮肉な世の中になってしまった。

そこで、私の主張である「中国を何かにつけて世界第1位と言うのはおかしい。その13億超の人口を考えて言え」に基づいて、上位30ヶ国の人口1人当たりの消費量を採り上げていこう。この統計では中国の人口は13億8,469億人となっている。

第1位は12年と同様にベルギーで294.5 kgで前年比▲1.9%、2位はオーストリアで250.6 kgで+2.1%、3位はドイツで236.2 kgで▲0.8%、4位はアメリカで224.0 kgで▲0.9%、5位が我が国で215.1 kgで▲1.6%だった。以下、第6位のフィンランドは+2.4%だったが、7位の韓国は▲2.8%、8位のデンマークは▲4.6%、9位のスウエーデンは▲1.0%、10位のオランダが▲0.6%だった。

このように上位10ヶ国中では2国がプラス成長だっただけの事実に、私はICT化の悪影響を見出さずにはいられないのだ。因みに、第20位はチェコで134.7 kgの▲5.4%、30位にはポルトガルが12年と同様に108.3 kgながら0.5%の伸びを見せていた。問題の中国は73.2 kgで対前年比1.4%の成長だった。とは言え、GDPと同様に、アメリカや我が国のほぼ3分の1程度で、30位のポルトガルと比べてもその70%位である。ここに人口が大きいことの影響があるのでは。

私はICT化の進捗が紙・板紙の需要にマイナスに作用するのもさることながら、これから先の世界の消費と需要の伸びを支えていくのは中国を始めとする新興勢力となることが益々明瞭になって来たと思わせてくれた統計だったと痛感する次第だ。最早、紙の消費量は一国の文明を表す尺度ではないのだ。

参考資料:紙業タイムス社刊 FUTURE 14年11月24日号