新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

6月23日 その2 安売り、それとも投げ売り

2022-06-23 16:12:20 | コラム
コスト上昇分の売価への転嫁は不十分:

つい先日、こんな事を採り上げたばかりだった。良く考えるまでもないことだろうが、このような努力をするか、試みている間はその企業は未だ健全経営の状況にあるのだと思うのだ。

つい一昨日だったか、高田馬場のジムの道路を挟んで反対側のバス停の前のドンキホーテの店頭で、「売り切れ御免」と張り紙があって国産のマスク10枚入り1箱が100円で売られていた。迂闊にも「これはお買い得だ」と信じて一箱買ってしまった。目的はジム内では未だ必要なので、その用途に適当と思ってしまったのだった。

だが、「何とかの知恵は後から出る」で、買ってから意気揚々とリュックサックにしまい込んだ後で、我が百人町の名物イスラム横丁の直ぐ先にある中国製品を中国人が売っている店では、50枚一箱で290円だったと気が付いたのだった。何の事はないドンキホーテの商売の上手さにしてやられたのだった。

ドンキホーテでは屡々「本当にこの値段でマブツ(紙流通業界の隠語かも知れない「正規品」という意味)を売るのか」と驚かされるのだ。噂では、「この店では、過剰在庫や売れ残った名が通った商品を巧みに仕入れして目玉商品にしている」とかだ。理屈を言う前に「誰でも安い方を歓迎するのだ」と思う。

だが、正規品がメーカー希望小売価格よりも廉価で出ているのは、「コスト上昇分を売価に転嫁して売りに出せない業者が未だ未だいるということではないか」などと解釈している。

私には「景気回復は未だし」だと思わせる現象がここに現れているのではないかと思っている。デフレーションがどうのこうのと論じるよりも、20年以上も初任給が上がっていない、上げられない経営者がいることの方が大きな問題だと思うのだ。コスト上昇分の売価への転嫁を考える前に、少しでも在庫を売り切って起きたいと考えている苦境に立たされている中小企業が多いのではないか。

不況から脱却できていないからこそ、ドンキホーテのような大規模な小売業が繁盛し、大久保通りの同店内には外国人の買い手ばかりとなって「安い日本現象」を見せていると考えている。

岸田総理にはマスコミが騒ぎ立て始めたらしい、党内の勢力争いもほどほどにして「安い日本」の改善策を懸命に慎重にご検討願いたいと真剣に考えている。


“security”を考えると

2022-06-23 07:58:00 | コラム
誰が“security”を「安全保障」にしたのか:

来たるべき参議院議員の選挙では、物価高対策と安全保障を論点とする争いが展開されると報道する向きがあった。物価高にどのように対処してくれるかには大いに関心がある。だが、それは参議院だけで対応する問題ではなく、国を挙げて「これ以上悪化しないように最善の努力をすること」であり、参議院の議員の方々に背負わせる課題ではないと思う。

安全保障、即ち英語で言う“security“にしても同じ事だろう。防衛費をGDPの2%にするか否かだけでも「外交力で解決する」と主張する政党までくるのが我が国の「安全」に対する国会議員たちの物の考え方だ。こんな事では迂闊に彼らにお任せしようという気にはならない。私は国民に向かって広く「我が国の安全がどれほど危うくなりつつあるか」を認識して貰うべく動いて貰いたいと思っている。私は我が国がそれほど安全ではないと危惧しているから。

また英語のことを言うのかと思われるだろうが、委細構わずに論じていく。私は英語の“security”(「セキュアラテイーが本当の発音だ」)を何処の何方が「安全保障」と訳し、全国津々浦々に普及させたのかと不思議に思っている。誤訳とまでは言いたくはないが、かなり大胆な意訳でなければ、勝手な拡大解釈である。

Oxfordによれば“the activities involving in protecting a country, building, a person against attack, danger, etc.”とあり、例文には“national security (= the defence of a country)と出ている。即ち、国を守ることで「国防」のことだ。それを「安全保障」としたのだろうが、「保障」とは広辞苑には「ささえ防ぐこと」とある。私にはsecurityを勝手に拡大解釈したとしか見えない。それでは「お為ごかし」ではないか。「国防」で何処がいけないのだろうか。

理屈を言っている場合ではないと思う。「中国、北朝鮮、ロシア等から如何にして我が国を守るのか」という事が焦点であるべきだろうが、そう言っては角が立つとでも考えているのではあるまいな。2%を5年以内にと掲げているような自由民主党にも「それで良いのですか」と尋ねてみたい気がする。答えが「慎重に検討中」かも知れないが。

筆者注:余談である。文中にOxfordにdefenceとあったのでそのまま引用したが、アメリカ製のソフトではしつこく赤線を引かれてしまいdefenseにせよと言ってくる。これが英連邦の英語とアメリカ語との違いである。


6月22日 その3 「企業のコスト上昇分の価格への転嫁動向」は「その2」であるべきでした

2022-06-22 09:21:19 | コラム
各位

謹んで訂正します。先ほど掲載した「企業のコスト上昇分の価格への転嫁動向」は6月22日 その2とすべきでした。粗忽さをお詫びします。

真一文字拝

企業のコスト上昇分の価格への転嫁動向

2022-06-22 08:42:32 | コラム
100円のコスト上昇の売価への転嫁は44円:

帝国データバンクが6月3日から6日までの間に実施した「価格転嫁」への調査では「自社の主な商品・サービスにおいて、仕入れコストの上昇を販売価格やサービス料金にどの程度まで転嫁できているか」を尋ねたのだった。

その結果では「多少なりとも価格に転嫁できている」企業は73.3%に達していた。しかし、内訳を見ると、仕入れコストの上昇分に対し「全て転嫁できている」は6.4%に止まっていた。続いて「8割以上できている」企業は15.3%、「5割以上8割未満まで出来ている」企業は17.7%、となった。一方では「全く転嫁できていない」企業も15.3%に上る。

総じて見ると、価格転嫁をしたと考えている企業で、コストの上昇分に対する販売価格への転嫁の割合を示す「価格転嫁率」は44.3%と半分以下に止まっている。これでは仕入れコストが100円上昇した場合は、そのうち44.3円しか販売価格に反映できていなかったことを示している。

一部の企業からは「零細企業の為仕入れ価格の上昇分を販売価格に100%転嫁しなければ経営を維持できない。今後も上昇分は販売価格に転嫁していく」(家具・建具卸売)と言った声が聞かれる一方、「何とか値上げしたいが、取引先の了解を得られない」(梱包)や「価格交渉を進めたいが、他社との競合もあり困難な状況」(印刷)などと厳しい声も上がっている。

上記の調査の背景には、「新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵攻などの情勢を背景にした原材料費の高騰に加え、極端な円安の進行などの様々な要因で仕入れコストが上昇している。経済産業省はこうした状況に鑑み、下請け企業がコスト上昇分を取引価格に転嫁しやすいようにする為に、5月24日に開いた中小企業政策審議会の専門委員会に「下請け中小企業振興法」の基準改定案を示したこと」があった。

私には上記の零細企業の声の中で「何とか値上げしたいが、取引先の了解を得られない」(梱包)や「価格交渉を進めたいが、他社との競合もあり困難な状況」(印刷)辺りが、我が国独得の二重三重の下請け構造の下にある業者が何時までも直面している困難な状況を表していると思って読んだ。デイビッド・アトキンソン氏ではないが、我が国の会社の99%が中小業者である以上、ここすとjyの問題点がここにも現れているのだろうと考えさせられた。

参考資料:紙業タイムス社刊 Future誌 22年6月27日号

アメリカのインフレーションの状況の続編:

2022-06-22 07:32:10 | コラム
従業員の給与を上げる為に値上げ:

昨21日に紹介したアメリカの元の同僚の意見の中で、私が重要なことだと感じた事柄があった。それは、

「アメリカでホテルの部屋代が値上げされている一つの理由は、それによって収益を改善し給与を上げて、不足している従業員がより多く集まるようにしたいとの狙いがあるようだ。」

との記述である。私には「これこそが経営者のあるべき姿である」と見えたのだった。

我が国でも現在数多くの業種のメーカーが、高騰するコストの負担に耐えかねて10%かそれ以上の値上げを打ち出して、マスコミが何のかのと騒いでいる。だが、それらの値上げでも上昇したコストを補い切れておらず、収益の改善にまで至っていない模様で、給与の増額にまでは至っていない様子だ。

私が先日取り上げたアメリカのホテルの値上げは何と50%だった。その幅を私の同僚は上記のように解説してくれたのだ。私は我が国の経営者を屡々批判してきたが、このアメリカのホテルの一例を見ても、単純に二進法的に物事を考えるアメリカ人の方が、経営者のあるべき姿を示していると見えるのだ。

我が国の経営者たちが思い切った値上げに踏み切れない心情と、アメリカとの文化と市場の相違点は理解できないでもない。だが、彼らにはもう少しの決断力と割り切りを求めたくなる。別途採り上げようと考えているのだが、帝国データバンクの調査では「100円のコスト上昇が売価には44円しか反映できていない」のだとあった。経営者たちの奮起を促すのは見当違いになるのだろうか。