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北朝鮮の賃金100倍に

2013-11-18 | ラジオ
北朝鮮から思いがけないニュースが届いた。輸出用鉄材を製造するムサン鉱山のキム・チェク記念製鉄工場で先月、これまでの100倍の給与が支払われたたというのだ。この製鉄工場は一例に過ぎず、複数の工場で同様のことが起こったらしいのだ。
もっとも、支払われたのは30万北朝鮮ウォンに過ぎない。ドルに直せば、せいぜい30ドルから40ドルだ。ですが北朝鮮市民にとっては途方もない金額だ。何しろこれまで米、1キロから2キロを買うのに、やっと足りる3000ウォンで生活していたところ、一気に100倍なのだ。
ムサン鉱山その他重点産業従事者たちは、副業に副業を重ねることからも解放され、ここ20年で初めて、文字通り物理的生存が可能なだけの賃金を得ることになったのだ。

しかし賃金引上げに伴い、一連の問題が派生する。先ずはインフレだ。彼らが頂いた給料を市場に持ち込むや、ただちに物価は上昇し始める。賃金引上げがほんの一握りの労働者に限られるのであれば、インフレは抑制可能な範囲にとどまるかもしれない。
ですがそれでは、同じ街の同じ労働に対して片方が他方の100倍もの給与を得るという事態になる。このことが政治的、経済的混乱を呼ばずに済むとは思われない。
混乱とインフレどちらが増しかと言えば、インフレだろう。というわけで大方、インフレが発生するだろう。

平壌もこのことは、恐らく間理解しているのだろう。だからこそ新たな賃金の一部を現物で支払う決定を下したのだ。また重点産業従事者に対して、今後、市場サービスを利用しないこと、との禁止も発令された。
ですが禁止など何の役に立つだろうか。2009年の通貨改革の経験を思い出してみよう。当時北朝鮮政府は、今回と同様、賃金の100倍増を宣言し、物価の急激な上昇に遭い、行政禁止を多数発出して状況を安定化させようと試みた。結果、何の利益もなしに事態は収束した。

今回の動きが示すこと、それは北朝鮮政府が経済改革の必要を、噛み締めているという事実だ。今回の試みがたとえ失敗に終わったとしても、次なる経済改革がなされ、それが成功するということは十分あり得る。
もっとも、北朝鮮改革推進派の直面する重要問題は実は経済ではない。北朝鮮の内情に鑑みると、中国型の改革は政治的に危険であり、場合によっては内部に混乱を来たす恐れもある。
故金正日将軍はこのことを痛いほどよく理解していた。だからこそ恐らく改革を敬遠したのだろう。
金正恩第一書記率いる最高指導部には、このことへの理解が欠けているようだ。もっともたとえ深い理解の上に立ったとしても、やはり状況は変わらないだろう。第一書記はリスクは承知の上でも、改革の道に踏み込まざるを得ないのかもしれない。

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11月9日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル