東シナ海が新たなアメリカと中国の対立の場に変わろうとしている。アメリカのB52戦略爆撃機が火曜の26日、中国側に事前の通告なく、中国が新たに設定した防空識別圏を飛行したのだ。
この識別圏には、日中の間でその領有が争われている尖閣諸島、中国名ジャオユイダオ諸島が含まれる。アメリカ国防総省は、中国の要求を無視し、中国側に飛行計画や航空機の機体のロゴタイプなどを通告せず、パイロットが通信用に用いる周波数も伝えなかった。
B52、2機はグァム島のアンダーセン・アメリカ空軍基地を飛び立った。2機の爆撃機は事前に予定されていた演習の一部として飛行したものだ。
機体には如何なる戦略兵器も搭載されておらず、戦闘機が一緒に伴うこともなかった。アメリカ国防総省スポークスマンのスティーヴ・ウォーレン大佐は、B52は尖閣諸島周辺を飛行した事を確認したが、その際、大佐は日本の尖閣という名前を使った。
こうした立場は以前、中国の激しい反発を呼び起こした。その際、中国側は日中間の領土紛争に直接干渉するものであるとの見方を示している。
ロシア地政学問題アカデミーのエキスパート、コンスタンチン・スィフコフ氏は今回の出来事に付いて、中国に対する新たな挑戦であると指摘している。
「今回の目的は明白だ。アメリカが中国が設定した防空識別圏を無視していること、そしてそのゾーンに含まれる島々が、日本領に属すると認めていること、それをデモンストレーションすることにあるのだ」
スィフコフ氏は、このように述べている。
中国空軍はアメリカ軍機が飛んでいる間中、追跡し適時にアメリカ軍機であると確認した。これは水曜日、中国国防相が発表した声明のなかで述べられているが、そのなかで中国側は我々は防空識別圏での、航空機の飛行を効果的に監視する力を持っていると述べている。
こうした挑発ともいえる行為に対して、中国が対抗する可能性は、どのくらいあるのでしょうか。
ロシアの声記者は再びスィコフ氏にマイクを向け意見を聞いてみた。
「もし中国側が、アメリカ軍機に対する行動をとった場合、アメリカ側からの反撃を受けることになるだろう。それゆえ中国は慎重さを示したわけだ。
今になっても中国が設定を発表した防空識別圏に、対空防衛瞬が、その力があるのかどうかはっきりしていない。もしないとしたら、どうやって他の航空機を迎撃するのだろうか。
確かに海軍を使っても、この課題は解決できた。中国の艦船には高性能の地対空ミサイルが装備されているからだ。それらはロシアのS-300のようなもので、完全にアメリカのB52を撃墜することができる」
スィコフ氏は、このように述べている。
またロシア社会政治調査センターのウラジーミル・エフセーエフ所長は、尖閣諸島上空のアメリカのB52は地政学的な課題を解決したのだと述べている。
「肝心なのは、日中間の領土紛争中の島の上空を直接飛行した点だ。恐らくアメリカには、これに関して日本への何らかの義務があるのだろう。アメリカは朝鮮半島での演習でB52を使用している。恐らくアメリカがパトロールするゾーンが拡大したということなのだろう。アメリカは自分達がアジア太平洋地域での軍事プレゼンスを強化するつもりであること、また日本と韓国の安全を保障する意向であることことを示したいのだ」
所長は、このように指摘している。
アメリカ国防総省による力のデモンストレーションを背景に、日本政府は国内の航空各社に対し、防空識別圏通過に際し、中国側に通告しないよう説得する事に成功した。先に日本の旅客会社、大手のJALとANAは、自社の台湾や香港便について、中国の然るべき機関に飛行プランを送っていたが、今後はそれを止める意向だ。
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11月27日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル