Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『動物農場』

2017-03-08 22:48:46 | 読書。
読書。
『動物農場』 ジョージ・オーウェル 川端康雄 訳
を読んだ。

動物たちが反乱をおこして人間を追い払う。
そして独立した「動物農場」はどのような共同体になっていくのか?
1945年に出版された作品で、
ソビエト連邦の真実をあぶりだしたようなおとぎ話だということです。

以下、ネタバレありです。

人間に完全に支配されている動物たちの蜂起は、
はじめ平等と平和という理念のためでしたが、
反乱が成功してからはちょっとずつ変容していく。
知識階級が牛耳るようになっていくのが
悪い方向へ行く徴候なのだけれど、
外敵がいるから知識階級が指示をだしたり計画を練る立場に
ならざるをえないんですよね。
そして、知識層の「ぶた」たちには公共心が薄いところが、
他の動物たちにはみえていなかった。

知識階級が権力を手中にするのをためらわず、
そしてその権力欲と支配欲を詭弁をつかってめくらまししつつ、
いつのまにやら支配体系ができあがっていく。
平民にはわからないインテリ言葉で彼らを欺きながら、
ウソも用いて、洗脳とも言えるようなことをし、
さらに暴力で脅かして掌握するという方法。
ソ連とスターリンの風刺だそうです。

人間、頭が回らない老人になっても
「ずるさ」ははっきり残るひとには残るし、
頭の回転が速くて人生の全盛時にいるようなひとも
「ずるさ」から離れられないひとは離れられないし、
そういうひとたちって多いと思う。
公共心の有無だとか強弱ですかね。
人間の「ずるさ」という根本的な性質が、
共産主義なんかを成立させないポイントだと思ったり。

そういうのもありますから、
インテリ層が力を与えられて、
計画を練り政策を行うということになったとき、
彼らに求められるのは、
公共心をはっきり持てないならば、
「善いことをしているときには、
悪いことをしていると思ってやんなさい」
という吉本隆明的、ポール・ヴァレリー的姿勢なんじゃないか。

動物農場のインテリ層が権力を牛耳り始めたのには、
「俺たちは善いことをしているのだから、
ちょっと悪いことをしてもいい」という
モラルライセンシング効果が働いたとみることも
できるんじゃないだろうか。
そして、それは、ソ連にも当てはまるのかもしれない。

根本的な「ずるさ」とモラルライセンシング効果が重要でしょうか。
反乱をおこして、
外敵がいるからインテリ層が指導します、としても、
そこで権力をふところにしまいこむのが間違いだ。

でも、
そこで間違わないやつのいない世界がどこにあるんだ!?
と思うほうなんですよね、ぼくは。

読んでいくと、どんどん腹が立つし、
最後までいくと義憤にかられます。
サブタイトルに「おとぎばなし」と題されていますが、
そういう単純化されてわかりやすいからなお、
憤りを感じるのだと思います。

この「動物農場」で展開されることは、
パロディですけれども、
現代にも通じることだし、
その根っこのところは常につかんでおきたいものです。


Comments (2)
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