Fish On The Boat

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『舟を編む』

2017-03-02 21:46:34 | 読書。
読書。
『舟を編む』 三浦しをん
を読んだ。

笑いあり涙ありの辞書編纂物語。
2012年本屋大賞受賞作です。

ヒロインの香具矢さんみたいな女性を、
女性作家が書くのか!と嬉しくなりました。

以下、ネタバレもちょっとあり、かな!?

女性だから受け身なんだというのは固定観念で、
美しくてしっかりしたひとだから、
ぼさぼさ髪でおずおずとした性格の主人公の男を
好くはずはないというのはこれも固定観念だ、
と、この作品上ではそうなっています。
男の夢想みたいだねと思ってしまいましたが、
なかなかどうして、ねえ。

最初の方の、主人公・馬締の章がおわって、
この段階からイチャイチャがはじまると読む気なくなるな
と思いつつページを繰ると次は西岡の章で、
これが馬締の章に負けず、いやそれ以上によかった。
擦れたヤツの内面が、いやらしくなくわかる感じというか。
ある意味、人間臭いんだよね、西岡。

西岡の章が挟まることで、だいぶ作品としての幅が広がりました。
小説とか文学とかに適合しやすい人物ばかりで話が進むと
枠にはまった作品になっちゃうんだろう。
そこを、この作品では特に西岡が枠を破って面白みさえ生みだしている。

つづく、岸辺さんの章も、
作品の都合上、この辞書編集部にマッチした人材という登場ではなくて、
やはりそこに違和感を感じるような、現代的な人物なわけでした。
それが仕事をしっかりしていくうちに、
辞書編集部に適合するようになってくる。

大きな筋は、辞書を作ることなんだけれども、
副次的なテーマとして、
ひととひとの間の距離や亀裂が、
受容や理解などによってうまっていく話でもありますね。
それがひとの成長としても描かれている。

最後まで楽しくおもしろく読めました。

ぼくが読んできたものはたいていそうだけれど、
力作っていうか、いい仕事したね、っていう感想を持つ小説が多い。
そこの高みまで到達させてこそ、
世に出せるレベルなんでしょうね。
ぼくもそういう基準を客観的に持ちつつ、
自分の小説を書きたいです。


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