Fish On The Boat

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『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる』

2017-03-04 00:50:04 | 読書。
読書。
『いっしょうけんめい「働かない」社会をつくる』 海老原嗣生
を読んだ。

エグゼンプション(例外という意味。ここでは残業代不払い制度のこと)
をうまく活用して、
日本型の雇用環境から欧米のジョブ型雇用環境へ半歩でも進もう、
そのためにはどういうビジョンと知識を持っていればいいのか、
そして、移行していくためにはどうしたらいいのか、
どう構えればいいのか、を説いた本です。
ただ、そこでは、新卒採用からはずれたり、
中途退職したひとの再チャレンジについては、
あまり立ち入っていません。

本書の三章を読んだ時点で、
日本型のよさが、若者たちの就職しやすさという恩恵にあり、
そこが捨てらずに欧米のジョブ型に移行できないのならば、
定年を35歳くらいにして、
35歳からはジョブ型で、
そこから再雇用・再就職したらダメなのかなと思いました。

60歳定年だとかを維持するよりか、定年を無くすか、
思い切って30代で定年にして労働市場に放るかすると
いいのではないかなんて思い浮かんだんです。
それとは別に少数のエリート層がばりばり働けばいい。
フランスはエリート層が長々と働き、
そうではない多数のひとはワークライフバランスを考えるようだ、
と三章までには書いてあった。

そうして読み進めていくと、
著者もちょっと似たような結論を持っていました。
30代くらいまでは日本型のメンバーシップタイプの、
新卒採用で総合職として「人に仕事をつけていく」やりかたを残し、
それから限定社員など欧米型のジョブ型の雇用方針にしていくというのです。
僕のぼんやりした思いつきが、詳しく論理的に展開してく感じで、
その後は読み進めました。

欧米型のジョブ型というのは、「仕事に人をあてがう」タイプです。
同一労働同一賃金で、仕事は総合職のように
あれこれいろいろなことをさせられずに、ひとつに決まっている。
そして本書のかかげるイメージだと、
ワークライフバランスを考えて、有休休暇などもとるし、
残業はあまりしない働き方だと言うことです。

欧米では、労働者は家族と一緒の時間を大切にして働く、
そして、自分の時間もあって、
そこで自分に投資して自己を開拓していくイメージがあります。
欧米人は自分の考えを強くもっていて、
たとえばヨーロッパではいまも哲学は廃れていないだとかあるようです、
本書以外の知識ですが。
そこらを考えれば、日本人は政治についても教養についても、
あまり成熟していない印象がありますが、
それこそ、この日本型メンバーシップ労働体制によって、
長く働き、自分の時間を持てないことに理由があるからかもしれない。

悪い言い方をすると、日本型の労働者は、
会社に振り回されていろいろな仕事をする。
一方、欧米型は、決められた仕事を自律的にこなす。

と、まあ、こんな印象を強く持つ本でした。
『若者と労働』の濱口桂一郎さんが登場したりして、
本書の著者は彼をリスペクトしているようで、
内容にも繋がりを感じられました。
というよりも、正月頃に『若者と労働』を読んでいたから、
本書をすらすら(それでも難しいところはありました)読めた。
本書を読む方は、ぜひ、『若者と労働』
いっしょに手に取ってほしいです。
そのほうが理解が深まりますよ。


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